御門先生と一般男性が恋愛を始めたようです 作:ヘル・レーベンシュタイン
「あー疲れたなぁ……」
今日も俺は、仕事を終わらして帰路に立っていた。仕事上、月末月初が特に忙しいため早めの出社となっていた。
そして無事に終わらせて、帰宅してご飯を食べて寝たくて堪らない気分である。
(こんな時、涼子さんがご飯でも作って待ってくれたらなぁ……)
と、つい交際相手を連想してそんな甘い妄想をしてしまう。頼めばもしかしたら承諾してくれるかもしれないが、彼女を医者として求めている人達は多い。
「まあ、休日とかに色々話してみるか……ん?」
自宅に到着し、鍵を開けた直後にスマホからバイブを感じ取る。画面を見てみると、誰かからメッセージがきていた。
「リトくんから……」
【よかったら今週末、一緒に海に行きませんか?】
海……思えば学生の頃に友達と一緒に遊びに行ったきり、ほとんど行くこともなくなってた。水着はまだタンスの奥にある。ならば行けないことはない。
そう考えると、俺は涼子さんに誘いのメッセージを送った。すると思いのほか早く返信が来たのだった。
【分かりました、私も一緒に行きます♪】
その返信を確認すれば、俺はリトくんに了承の返事を送った。今週、俺は何年振りかの海水浴へと向かうのだった。
そして週末となり、ビーチへ到着した。
俺は涼子さん、そしてリトくん達と一緒に向かう事となった。どうやらリトくんとララちゃんが一緒に行くことになったらしい。俗に言う、ダブルデートというものをしたくなったとか。確かに俺としても、今までやったことないから興味も湧いていた。実際のところ、到着したビーチには幸いあまり人が見られないから多少はしゃいでも問題無さそうだ。
「うわぁ、暑いなぁ……子供の頃より日差しが強くなってる気がする。」
「ですね……飲み物は大量に持ち込んでて正解でした。」
俺達は男だからと言うこともあり、着替えを手早く終えて場所を取って荷物を下ろした。
無論、女子達も着替えに行ってる。男と違って色々と準備がある以上、遅くなるのも必然である。
「お待たせ、待たせてごめんなさい。」
「リトー、終わったよ。一緒に海入ろう!」
声のする方を振り向けば、水着に着替えた涼子さんとララちゃんがいた。ララちゃんはビキニを着ており、涼子さんはビキニとパレオを来ていた。何はともあれ、すごく目の補養となる光景だった。
「どうかしら?初めてこういうのを買って着てみたのだけど……あまり自然じゃないかしら?」
「い、いやいや……凄く似合って、ますよ。」
我ながら、久々の海ということのためかどうにもドギマギした返答をしてしまった。何となく、リトくん達がどうなっているのか気になって視線を移した。
「ねぇねぇリト、早く一緒に泳ごう。私端まで泳いでみたーい!」
「ま、待てよララ!」
どうやら彼女は、遊びたくて仕方ないようだ。なんとなくだが、そんな2人の姿を見て微笑ましく思えてきた。
ふと隣を見てみると、涼子さんも優しく微笑みをあげていた。
「ふふ、2人とも元気いっぱいね。」
「そうだね、見ていて微笑ましく思えるよ。だけど俺も学生の頃はあんなだったかもなぁ……」
「あら、そうなの?」
「まあね、俺だって昔は友達とよくバカやってたよ。」
そう言いながら、学生だった頃の自分を思い出す。大してあまり泳ぎが得意じゃないくせに、ちょっと遠いところまで泳いで溺れかけたり、漫画みたいなでかい砂の城を作ろうとしたりなんてことをしていた。
と、考えていたら不意に右手から柔らかい感触がした。視線を移すと、涼子さんが手を握って海に向かって引いていた。
「なら、今日は私と一緒にそんなことをやりましょうか。」
「え、涼子さん?」
「ほらほら、早く行きましょう。私もこういうの初めてだもの。」
と、涼子さんがまるで無邪気な少女のような笑みを浮かべながら砂浜へと駆け出そうとしている。思えば、この人のこういう表情は初めて気がする。
「ほら龍弥さん、冷たいわよホラッ!」
「ちょっ、プハッ!やったな、お返しだ!」
「きゃっ、もう大人気ないわよ……うふふ」
などと、突如海水を顔面に掛けられたことでつい我ながら子どものように返してしまった。しかし、こんな大人らしくない雑な遊びでも不思議と楽しくなってきた。
普段なら俯瞰的に見て何も感じないと思うのだが、大好きな人が純粋に楽しんでいるのをみると、まるで共鳴するように自然と心が弾んでくる。
「ねぇ、折角だし端まで泳いで競争してみない?」
「そうだな……久々だけど、やってみるか。」
さて、俺だって昔は部活だってやっていた、泳ぎだって昔から最低限はできてた。ならちょっと足を伸ばす程度に、少し遠めに泳ぐことはできるはずだ。さて、涼子さんにカッコいいところを見せてやるぞ!
「だ、大丈夫?龍弥さん?」
「ハァ、ハァ……だ、大丈、夫……」
あ、危なかった……溺れるところ、いや一瞬溺れた。唐突に身体の重みが増した時は、心臓が跳ね上がった。幸いどうにか海岸に戻ってこれたが、長時間筋トレした時くらいにヘトヘトになった。
思い返せば、当たり前のことだった。俺は普段はデスクワーカー、長年座る時間が多くなって体が鈍って運動が下手くそになってるのは当然じゃないか。テンションが上がってたとはいえ、それくらい自分で気付くべきだった。
「ほら、これ飲んで。海で泳ぐのって見た目以上に疲れやすくて海の中にいても想像以上に発汗して、脱水症状になりやすいんだから。」
「は、はい……面目ない。」
涼子さんから飲み物を受け取り、それを口へ含んでいく。言われた通り、失ってた水分が身体の中を巡っている実感が湧いてくる。
やれやれ、カッコいいところを見せるどころか情けない醜態を晒してしまった。
「ふふふ、だけど意固地になって泳いでいる龍弥さんは見応えあったわね。」
「見えてたんだ……涼子さんはなんか、静かに泳いでたから落ち着いて見れたんだね。」
「なんてことは無いわ、マイペースに泳いでただけよ。実際のところ、私も戻ってくる時結構厳しかったし。」
「そうなんだ……そんな表情には見えなかったけど。」
「思ったけどなんだかこれ、プールを終わった後の生徒みたいな会話ね。」
「あはは、言われてみれば。」
砂浜で腰掛けながら、2人でそう笑い声を挙げた。すると涼子さんが、俺の顔を覗き込むように見つめながら口を開く。
「もし、私達が同じ学校にいたら、こんな風に話すことあったのかしら?」
「そ、それは……あった、のかな?」
その儚く問いかける表情を見て、自分の心臓が殴られたように跳ね上がった。学生時代に出会っていれば、こんな風に一緒に遊べる時間を作ることができたのだろうか?
無意識、かつ真剣にそう考えてるとそれを遮るように涼子さんが笑い声を上げる。
「うふふ、そんな真面目な表情で受け止めなくても……そもそも学生の頃の私はこの星に居ないから確率はほぼ無いわよ。」
「あっ……そうか。」
そういえば忘れがちだが、涼子さんは地球人ではなかったんだった。あまりに人間として違和感のない振る舞いと、見惚れるような美貌でそんな雰囲気を一切感じさせないが。だが、そんな彼女も学生時代はあったんだなと思った。
「御門先生と龍弥さん、大丈夫ですか?なんか表情が曇ってるんですけど……」
「2人とも大丈夫ー?」
すると、リトくん達が駆け寄ってきてくれた。2人とも休憩で戻ってきたのかもしれない、飲み物を手に取って渡しながら言葉を返す。
「いや何、ちょっとはしゃぎ過ぎて疲れただけだよ。やっぱ運動不足だったみたいでね……」
「あ、ありがとうございます……何事もなかったようなら、良かったです。」
「ふふ、だけど本当に私達も学生の頃ならまだまだ遊べたのかしらね……」
「そこは、出来るものだと思いたいなぁ……」
と、なんとなくボヤいていたら、ララちゃんが突然声をあげた。
「じゃあさ、2人とも若返ってみようよ!」
「えっ」
「ララさん……もしかして?」
「お、おいララ!」
なんだろう、ちょっと嫌な予感がする。しかも涼子さんもなんだか、薄々勘づいてるような雰囲気をしているし。
リトくんの静止の言葉よりも早く、ララちゃんは持ってきた鞄の中を物色してきた。すると奇妙な拳銃型の機械を取り出す。
「じゃーん!これは、かちかちモドールくん。えっと、大体10年前の設定でいいかな?これで若返えられるよ、えい!」
「ちょっ!?」
「あら」
瞬間、その機械から奇妙な光線が発射され俺と涼子さんが巻き込まれる。すると土煙が舞い上がり、周りが見えなくなる。
「ゲホッ……大丈夫?涼子、さん……」
「……」
土煙が晴れると、隣にいたのは身体が大人の時よりも小さくなり、何処となくあどけなさがある表情をしている涼子さんがそこにいた。
というわけで、中々強引ですが御門先生を若返らせてみることにしました。ララの発明品に関しては、ご都合主義そのものみたく見えますが目を瞑ってもらえると助かります。
学生だった頃の御門先生が、同年代の男子とどんな絡みをするのかと考えて見たので、ちょっと挑戦してみようかなと思います。