御門先生と一般男性が恋愛を始めたようです 作:ヘル・レーベンシュタイン
今年中の投稿は今回で終わりになるかもしれません。
「うーん、なかなか取れないわねぇ」
上階にあるゲーセン内へと移動すると、御門さんはクレーンゲームのある方へと向かった。クレーンゲームは俺も何回かやったことはあるが、成功したことはほとんどない。せいぜいがミニカーくらいのものを偶然ゲットできた程度だ。そして、御門さんが狙っているものは、意外にも美少女フィギュアである。
「えっと御門さん....なんでこのフィギュアを狙ってるの?正直御門さんが欲しがるようなイメージはあまりないのだけど....」
「そういうイメージを持ってたのね....まあ、そう思ってしまうのは仕方ないかもしれないけど、実際はそうでもないのよ。」
俺がそう疑問を投げかけると、御門さんはクレーンゲーム内のフィギュアを見つめながらそう答えた。よほど熱心に取ろうとしていることが伝わってくる。
「実は最近スマホのあるゲームに熱中していてね、そのストーリーで出てくる女の子のことを気にいってしまったのよ。」
「え、そんなことが....てことは....」
「ふふ....おそらく想像の通りよ。」
まるで察したかのように、御門さんは少し小悪魔的な微笑みをした。間違いなく、目の前のフィギュアの美少女は、御門さんがハマっているソシャゲーの女の子なんだと。
確かに気持ちはよくわかる。俺は基本的にアドベンチャー系のゲームをよくプレイするが、主人公やラスボスなどのビジュアルや戦闘、そして思想などがカッコいいと、そのキャラが男女だろうと関係なく魅了されてしまう。そしてそのキャラクターのグッズがフィギュアなどさまざまな形で販売されたらそりゃ欲しくもなる。だからこそ、俺は御門さんもそんな心境でゲットしようとしているのだろうと思えた。
「だけど御門さん、もう千円近く入れてるからもうやめた方がいいんじゃ....」
「そうね、つい夢中になってやってしまったわ。今日はこのくらいで....」
「え、御門先生?」
不意に背後から若い女性の声が聞こえた。振り返ると、長い黒髪をした女の子がいた。加えて御門さんのことを先生て呼んでいたので、彼女が働いている学校の生徒であることが窺える。
「あら、古手川さんじゃない。ここで会うなんてなんだか珍しいわね。」
「御門先生こそ、ゲームセンターだなんてイメージとかけ離れている感じが気がするのですけど....」
「それは貴女もでしょ、風紀委員長なんですから。」
「へぇ、風紀委員長か....」
学生の割になんだか少しだけ大人びてると感じたが、そういうことかと納得した。確かに風紀委員長は真面目で大人っぽさのある落ち着いた生徒の方が適任だろう。
「ところで、そちらの方は?」
「ああどうも、俺は藤田龍弥といいます。」
「藤田さんは最近知り合った方なのよ。」
「はあ、そうですか....こちらこそはじめまして、古手川唯です。」
古手川さんはそう自己紹介をしてお辞儀をした。俺もお返しにとお辞儀を返した。ゲームセンターで律儀にやるのもなんだがシュールな気もするが、それが最低限の礼儀なのだから仕方ない。
「ところで古手川さん、貴女もゲームセンターに来たということは、何か遊びに来たのよね?」
「あ、えっとそれは....」
御門さんが古手川さんにそう聞くと、彼女はビクッと反応して気まずそうに目線を逸らしていた。その一瞬の間でチラッとクレーンゲームの方へと移していたのを、俺見てしまった。
「....もしかして、御門さんが取ろうとしてフィギュアが欲しかったか?」
「っ!?」
「あらぁ、そうなの?」
「ち、違います!私はそんな....」
古手川さんは明らかに俺の言葉に反応して体を震わせてた。どうやら図星だったようだ。彼女は必死に否定するが、顔が真っ赤になっているので恥ずかしがっていることが伝わってくる。
「まあまあ、そんな顔をしないで古手川さん。私もこの娘が出てくるゲームやってるから、少し欲しいなーって思ってやってたのよ。」
「え、御門先生もですか?」
「そうよ。だから古手川さんが欲しいのなら、やってみたら?大丈夫、誰かに言いふらすとか、そんなことはしないから。」
「は、はい....ありがとうございます。」
古手川さんはそう言いながらUFOキャッチャーの前に立ち、コインを入れて操作をする。そしてフィギュアの真上にUFOがピタッと止まり、ゆっくりと降りてフィギュアをガッシリと掴む。
「え?」
「あっ....」
そしてフィギュアはずり落ちることなく、UFOに取り出し口へと続く穴まで運ばれ
、穴へと落とされていった。
あまりにもあっさりとフィギュアがゲットされてしまい、俺と古手川さんは唖然としてしまった。
「あら、一発でゲットできるなんて古手川さん凄いわねぇ。」
「いやこれ、御門先生が撮り続けたお陰なんじゃ....」
「そんな事ないわよ、こういうのは早い者勝ちだから。ほら、この袋に入れて持って帰って。これなら持ち運びに困らないでしょ?」
「は、はい!ありがとうございます!」
古手川さんは嬉しそうに御門さんにそうお礼を言い、手に入れたフィギュアを渡された袋へと入れてその場から離れていった。実際、渡された袋は中のものが透けないようになっているので確かにフィギュアを持ち帰るのに便利なタイプの袋だった。
「良かったの、御門さん?」
「ええ、古手川さんも欲しそうだったし...それに、生徒の気持ちを優先するのは教師の務めでしょ?」
御門さんはニッコリと微笑みながらそう言葉を返した。俺はその御門さんの顔を見て、本当にこの人は学校の生徒達のことが好きなんだなってことが伝わり、改めて素敵な女性だなと思えた。
しかし一方で、一つ気になったことを俺は御門さんに聞いてみることにした。
「ところで御門さん、あのタイプの袋を持参していたってことはもしかして.....」
「ふふふ.....何が言いたいのかしら?」
「あ、いえ....何でもありません。」
改めて聞いた俺の質問に対し、同じように笑顔で御門さんは返答する。しかし無意識に感じる圧が全く違うので、俺は質問を撤回することにした。
「さて、そろそろ食材でも買って帰ろうかしら。良かったら、手伝ってくれる?」
「うん、もちろん!」
こうして俺と御門さんの初めてのデートは何事もなく終わった。特に大きな進展があったわけではないが、お互い楽しめたから良いデートになったと、俺は思った。
今回の話では御門先生と唯ちゃんがフィギュア好きって描写を入れました。
原作ではそのような描写はありませんが、御門先生とのこんな絡みがあれば良いなーって思いで書いてみました。
何卒、ご了承お願いします。