「………………」
────体が、重い。
体調が悪いわけでは無いが…体が酷く重たく感じた。
「…学校、行かなくちゃ…」
こうなる原因は自分でも、はっきりと分かっていた。
(寝不足だな…少し足取りがふらつく…)
最近、まともに寝れていない。
悠に戻れる方法を考えていると…刻々と時間だけが過ぎていくからだ。
「…余計な心配、かけられないからな…」
歩夢「峻くん…?」
「ん…歩夢、おはよう」
歩夢「起こしに来たんだけど…大丈夫…?」
「……うん」
歩夢「顔…何だか、怖いよ…?」
「平気平気っ、少し怖い夢を見てな…」
歩夢「…そう、なんだ…」
(………………ごめん、歩夢)
自分の心に嘘をついた俺は、歩夢とまともに目を合わせられなかった。
────────────────────────
【通学途中】
歩夢「…ねぇ、やっぱり何かあったの?」
「えっ?……あぁ、いや…なにも」
歩夢「顔色優れないみたいだけど…何かあったらすぐに言ってね?」
「…ああ、ありがとう」
(……言ったところで…何が変わるんだろ…
信じてもらえない…だろうし、今までみんなに嘘をつき続けてきた…それをただ自分で告白して自滅してるだけ…だと思うし)
………それでも…言わなきゃ、始まらないことも…あるのだろう、か…。
「─────────────あのさ」
────────────────────────
【放課後 部室】
「………………」
せつ菜「あの、峻さん…どうしたんでしょうか?」
しずく「改まってお話なんて…」
栞子「それに、顔つきが何だか険しいですが…」
「………………」
みんなの前に立ったまま身動きを取らない峻を全員が見つめていた。
「…………俺、みんなに嘘をついている」
かすみ「……嘘、ですか?」
彼方「これまた急な話だね~……」
ミア「Babyちゃんらしくないよ、とっとと打ち明けたら?」
「………………実は……」
「……俺は、峻じゃないんだ」
エマ「……えっ?」
果林「どういう……事、かしら?」
「みんなには……順を追って…全てを話す」
ザワつく部室内を落ち着かせて峻(悠)は話を続けた。
「……俺は元々、Aqoursの部長だった
でも、ある日突然……雷に打たれて意識が無くなったと思ったら……目が覚めて、宮之原 峻になっていたんだ」
愛「ちょ、ちょいちょい!そんな事ありえるの?!」
璃奈「あまりに、非科学的すぎるよ……」
ランジュ「でも、冗談で峻がこんな事を言うとは思えないわ」
「俺自身も信じられない……けど、事実……前の記憶があるまま……今日まで峻として生きてきた
……歩夢にも、みんなにも嘘をつきながら……皮を被って生きてきた」
歩夢「……………………」
「話をしたところで……何も変わらないことも分かってる……
けど、これ以上隠し続けるのも……辛い
そして、何より……みんなに嘘をつくのが辛い……だから、話させてもらった」
ニジガクメンバー「「「「「………………」」」」」
「信じられないよな……幻滅した、よな…………ごめん」
ニジガクメンバー「「「「「…………」」」」」
信じられない出来事に、みんなが口を閉ざしてしまった。
「……ごめん、ここにいる資格……無いよな」
そう言い残し、峻は部室を去ってしまった。
────────────────────────
せつ菜「……漫画等ではこういった事はありましたが……まさか、本当に起きるなんて……」
ランジュ「気の利いた事なんて、言えるはずないわね」
しずく「はい……なんと言い表していいか……分かりません」
果林「………………」
彼方「1人で悩んでたかもしれないけど……嘘は良くないからね~……」
歩夢「────────私は、そうは思わないよ」
かすみ「えっ……」
愛「歩、夢……?」
歩夢「確かに、信じられないし……峻くんが峻くんじゃなかったってショックはある……けど、峻くんじゃ無かったからこそ…出会えたものもあった、から」
せつ菜「歩夢さん……」
歩夢「みんなと出会えたもの……スクールアイドルに出逢えたもの……峻くんの中の男の子が、思い立ってここまで導いてくれたから
だから、私はこれまでの事を……感謝したい」
ミア「……まっ、幼馴染が言うんだから、説得力があるね」
かすみ「た、確かに…かすみんは元々の峻先輩がどんな人かは分からないから……違いとか分かりませんけど……うぅ、確かに…峻先輩が居なかったら…スクールアイドル同好会が無くなってたかも、しれません……し……」
せつ菜「……私も、悩みや困った事……不安や家の事……誰にも相談出来なかったかも、しれません……」
ランジュ「そうね……ランジュも出会ってなかったら……どうなってたか考えたくもないわね」
栞子「私もです……ここまで変われたのは、峻さんのおかげですから……」
しずく「……明日もう一度、峻先輩を呼び戻しましょう!」
彼方「まぁ、そうなるよね~」
果林「えぇ、唯一無二……?の部長だもの」
愛「そそっ!アタシたちが居るのに、水臭いんだからウチのぶちょーはっ!♪」
────────────────────────
【次の日】
「……はぁー……何してんだろ……俺…」
1人膝を抱えて、海を眺める俺。
ここは沼津……当てもなく、俺は沼津へと足を向けていた。
「……居心地悪いからって……逃げて…はぁ、打ち明けたのに…これからどうしよう……」
どうすることも出来ずに、肩を落としていると…………。
???【まーた落ち込んでるし】
「えっ……!!??」
声がする方を振り返ると……そこには、確かに自分がいた。
「ゆ、悠……!」
悠【そのままでいい、手短に話すぞ】
「……ごめん、俺……元に戻れる方法、思い浮かばなかった…」
悠【だろうな、まぁ普通じゃ絶対ない事が起きてるからな
思い浮かばないのも無理は無い……それに、これが運命だと思えば、案外受け入れられる……かもな】
「…………………………」
悠【それに、見た目が宮之原 峻……という男でも俺の意志を引き継いでくれた……だろ?】
「でも……本当の峻は…そんな事望んてないかも知れない…
俺が勝手に行動して……好き勝手やって……そんなの、まかり通るわけ……!!」
悠【どうかな……少なくとも''アイツら''は理解してくれてると思うぞ】
「……えっ?」
悠【……まぁ、それは本人たちの口から聞くのが早いよ
……さっ、もう時間だな……お前の信じる事をすれば物事全部救われるはずだ】
「ま、待ってく────────」
突風が吹き荒れ、目を瞑った瞬間に……悠からの言葉が聞こえた。
悠【ま、たまには沼津に来てくれや、それくらいのお願いするくらいバチは当たらないだろ?】
「……くっ……」
目を開けると……そこに悠の姿は無かった。
「……信じる事をすれば……か……」
こうなった事には……必ず何か意味がある……だから、俺は……もう……!
千歌「あれー?峻くんがいるっ!」
「ち、千歌!」
曜「あ、ホントだっ!やっほーっ!」
「よ、曜も……!」
梨子「こんにちは、お出かけ?」
「うん、まぁ……そんなとこ」
話の最中、俺は曜を呼び出した。
「……あの、さ…曜に打ち明けたあの話のことなんだけど…」
曜「……?なんの事?」
「えっ……いや、俺が悠で……って」
曜「悠……?……だぁれ?」
「……えっ?」
曜「もう、峻くんは峻くんでしょ?おかしなのっ♪」
「……あっ……う、うん…」
───────────────────────
帰宅後、俺は自分の本棚を漁った。
「もう悠としての記憶が……曜にはなかった……恐らく、花丸にも…」
悠が言ってた……時間だって一言は……。
「……っ……」
唇を噛み締め、俺は作業を続けた。
これ以上は言ってはいけない……それに、知ってる人もいない……からだ。
「……これ……日記……?」
古びたノートには……僕の日記というタイトルが書かれていた。
「……小学生5年生…5年くらい前の日記だ…」
パラッとページをめくると……細い字でこう書かれていた。
【いじめなんて無くなればいいのに】
「……いじめ…峻は、いじめられていたのか…」
そう思うと、自分が峻として学校に行った時のクラスメイトの会話が蘇る。
茶化されていたし……体も細く、根暗な印象だったのにも頷ける。
【歩夢ちゃんにも言えない……お母さんにも言えない……】
(歩夢もその事を知らなかったのか……)
そう言えば、いつか言ってたな……私の方が峻くんを守ってあげるお姉ちゃんみたいだった、と。
そして、年月が飛び飛びだった日記の最後が…高校2年生になる直前の日付だった。
【小学校も…中学校も高校も……なにも変わらなかった…
こんな世界……もう……】と。
「………………」
(お前が絶望した日々の続きを……俺は変えてみせるよ、絶対に)
「……あれ、最後…なにか書いてある……」
【歩夢ちゃんに、好きって伝えたかった】
「…………そう、か……」
どういう因果かは置いておいて……。
意識を失った俺が、自分の手で意識を無くしたかった峻になった…という事、か…。
「……まだ、やる事……あるはず、だよな…」
俺は、これからも峻として……生きよう。
────────────────────────
「……って、言ったものの……」
部室、顔出しずれぇなぁ……。
「もう部長としての立ち位置も無いようなもん、だもんな……」
はぁ……と溜め息をつきながら、学園に向かおうとしていると…。
かすみ「どこ行くんですか……っ!!」
「……っ…………!!……か、かすみ……っ?」
かすみ「まさか……部室に顔出さないつもりですか……っ!?」
「いや、だって……俺は……」
かすみ「先輩は先輩です……っ!!何を今更迷ってるんですか…!」
「……えっ?」
かすみ「先輩が居たからこそ……ここまで来れたんですよ…っ!!
その事に胸を張ってください!」
「…………っ……かす、み…」
せつ菜「そうですよ、あなたは1人じゃないんです」
「せつ菜……」
愛「水臭いぞー、ぶちょー♪」
栞子「貴方がした事は何にも変え難いものですよ」
「愛……それに、栞子…」
果林「貴方無くしてスクールアイドル同好会は語れないでしょ?」
エマ「このままお別れなんて寂しいよ~…」
彼方「何か困ってたり聞いて欲しいことあったら遠慮なく話していいんだからね~……?♪」
「果林……エマ、彼方……」
しずく「皆さん、心配してますよっ?」
璃奈「お願い、戻ってきて……!」
「しずく……璃奈……」
ミア「はいはい、男なんだからハッキリさせようよ、Babyちゃん」
ランジュ「どんな姿でもランジュは峻が好きよ!」
「2人とも……」
ニジガクメンバー達の顔を見渡すと…歩夢が歩み寄ってきた。
「……歩夢…」
歩夢「みんな…答えは同じだよ」
「…………」
歩夢「確かに、そんな出来事があったって…不思議な出来事だけど…でも、私たちの部長は峻くんだよ…それは絶対に変わらない」
「……歩夢…」
歩夢「……戻ってきて……くれ、る?」
「……あぁ、こんな俺で良ければ……戻らせてくれ」
我慢できずに涙を流した俺を、歩夢は優しく包み込んでくれた。
──────────────────────
【後日……】
「何だか、全部話したら…肩の荷が軽くなったよ」
歩夢「少しお疲れ気味だね……休む?」
「……ごめん、そうさせてもらうよ」
歩夢「はいっ、じゃあ膝枕っ♪」
「……あ、ありがとう…」
歩夢「もう、遠慮しなくていいからね?♪」
歩夢の膝を借りて……俺は目を瞑った。
歩夢「ねぇ、目を瞑ったまま……聞いてくれる?」
「……ん、どうしたの?」
歩夢「私ね……嬉しいし……とっても感謝してるのっ。
昔は心配しちゃうくらい弱々しくて……いっつも泣いてた峻くんが……かっこよくなってくれて、逆に私や他の子達を守ってくれるようになってくれて……私ね?峻くんって髪の毛目のところまで隠さない方がかっこいいのになーってずっと思ってたんだよ?」
「……そう言って貰えると……救われるよ」
歩夢「それに……スクールアイドルとして峻くんと一緒に歩めた事が嬉しいの
いつか、峻くんと一緒に何かしたいなって……思ってたから」
「……歩夢……」
歩夢「……だから、お礼を言わせて?
……峻くんの中にいた…男の子に」
「……中にって…」
歩夢「見た目は峻くんでも……心は違う男の子なんだよね?
一言でいいの……お礼が言いたいの
こんなにも毎日が楽しくて…峻くんとの思い出が増えていった……これまでの事を」
「……悠だ…冴木 悠……それが俺の名前」
歩夢「……悠くん……か
ありがとうねっ、悠くん!」
目を瞑ってても分かる…きっと、今の歩夢は弾けるような笑顔を浮かべている、と。
「……じゃあ、俺からも……いいかな」
歩夢「……?」
「好きだ、歩夢」
歩夢「……え…っ?」
「こんなこと言っちゃ……ダメ、だったかな…?」
歩夢「……ううん…すっごく…嬉しい…!」
頬に何か落ちる感覚がした。
それは暖かく…何度も頬を打ちつけた。
「色々迷惑かけちゃうけど……隣にいて欲しい」
歩夢「うん……うんっ……!!」
──────────────────────
【数年後……】
歩夢「峻くんっ、起きて~?」
「……まだ6時半じゃん……休みなのに…」
歩夢「もう、自分から言い出したのに…そこは前から変わらないね、ふふっ♪」
「……起きないからって頬を突っつくのはやめてくれ…」
歩夢「起きるまでやめませーん♪」
高校を卒業してから、俺と歩夢は実家の近くで同棲を始めた。
過去の事は変えられない……が、歩夢は気にせず接してくれる。
歩夢「でも、本当に見に行くの……式場……///」
「気が早かったか?」
歩夢「うぅん、そうじゃなくて……!!///
なんだか、実感がわかなくて……夢なんじゃないかなって…///」
「夢であってたまるか、せっかく歩夢とこうして過ごしていられるのに」
歩夢「うん……そう、だよね…///」
「ほら、朝ごはん行くよ?」
キスをすると、歩夢が名残惜しそうに腕を掴んできた。
歩夢「……もう、少し…///」
「……はいはい、遅くならない程度にな」
2人の愛を確かめ合うように……俺と歩夢は口付けを交わした。
(峻……約束通り、歩夢の事は絶対に幸せにするからな
お前が見たかった景色を……俺はこれからと守り続けるよ)
1人、心に揺るがぬ想いを誓う俺だった。
NEXT Rainbow!!
Fin
悠が目覚めたAqoursな日々を書き終わった後
NEXT Rainbow!!の方はどうすればいいのか
実を言うと結構迷ってました。
どの流れが1番平和になるのか
色んな考えや構想があるかと思いますが
作者としてはこれでいいのかなと思っています。
これでこの作品は本当の本当に終わりです。
長きに渡り、お読み頂き本当にありがとうございます。
心からお礼を申し上げます。
A×K