NEXT Rainbow!!   作:A×K

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そういえばなんだかんだで60話目です。
この先何話までやるかわかりませんが…みなさんのおかげで続けていられます
本当にありがとうございます。

投票も58票入ってました。ありがとうございます。


第60話

「…いよいよ、生徒会長選挙の…投票日、だな…」

せつ菜「…はい…」

 

朝起きて洗面台に行くと、せつ菜が既に歯を磨いていた。

もうこんな風景にも慣れてきた。

 

…あの日の後…スクールアイドル同好会に顔出した。

みんな少し身構えたり顔色を伺ったりしてたけど…せつ菜や歩夢…みんなのおかげで、いつも通り過ごせるようになった。

 

…この、選挙当日まで、は…。

 

 

せつ菜「勝ったら…今まで以上に両立させて三船さんをあっと驚かせますよ!」

「うん、その意気だよ!」

 

ニカッと笑い合いながらグータッチをする俺とせつ菜だった。

 

 

 

 

──────────────────────

 

 

せつ菜は一足先に学園へと向かった。

俺は歩夢と一緒に学園に向かうことに。

 

「…歩夢、もし俺が…前みたいになったら…」

歩夢「分かってるよっ…安心して、しっかり見ててあげるから♪」

 

…まぁ、最後の演説があるみたいだけど…。

目に見えて苛立つのが分かる。

…前もって、歩夢に言っとかないと…って感じだし…。

 

 

 

そうこうしてるうちに…選挙前最後の演説となった。

 

選挙運営員会【では、選挙前最後の演説を行います

まずは、現職・中川菜々さん、お願いします】

 

せつ菜「はい」

 

 

かすみ「先輩、自信に満ちた顔をしてます…っ!」

しずく「うんっ、大丈夫そうだねっ!」

 

せつ菜「私が目指す…学園は、公開討論の時にお話したのと変わりありません

皆さんの大好きなことを実現出来る学園作りを目指します!

…まずは、その1歩としてアプリなどを活用しようと考えています

皆さんの…3年間、充実したものにできるよう…私にお手伝いさせてください!

…これで、私の演説を終わります…最後まで聞いてくださり、ありがとうございます」

 

(…すげぇな、せつ菜じゃねぇみたいだ…まるで初めて会った時みたいだ…)

その拍手は…まさに現職の生徒会長に相応しい位鳴り続けていた。

 

そして、次は…三船栞子の番。

まるで鳴り続けた拍手を物ともせずに演説をし始めた。

 

栞子「皆さん、おはようございます。三船栞子です

私から言いたいことは……ただ一つです」

 

その言葉に周りが少しザワザワする。

…余程の自信、なのだろう…。

 

栞子「虹ヶ咲学園で過ごす時間が将来に直接繋がる成長であるよう、成功体験をお約束します」

 

「…これまた、デカく出たな…」

愛「少しでも不平不満が出ないって踏んでるのかな…」

歩夢「でも…その成功体験が…学園生活で全部、なのかな…」

「…………………」

 

 

栞子「私は、皆さんの未来がより確かなものになるよう、全ての生徒に全ての指針を示します」

「…全て、か…」

 

あくまでも、アリ1匹の反逆も許さないってところか…。

それとも、愛が言うように不平不満が出ないとでも思ってるんだろうか。

……しかし、それじゃあ…いつか…糸がほつれると思う。

どこかで、何かが崩れると思う。

そして…一度崩れたら…何もかも崩れていくと思う。

 

しかし、俺の考えとは別にせつ菜と同じくらい拍手が起こっていた。

……縛られるだけ、だと思うのは…俺だけだろうか。

 

 

しかし、次の瞬間…予期せぬ出来事が起きた。

 

栞子「中川さんの公約は、ある意味では理想的と言えます」

なんと、三船栞子がせつ菜に牙を向けたのだった。

…そう、彼女の演説はまだ終わってなかったのだ。

 

「…っ…アイツ…っ!!」

歩夢「峻くんっ…待って!」

手を掴む歩夢。

…冷静になった俺だった。

(そうだ、ここは…落ち着いて…っ…)

 

栞子「前回の討論会であやふやだった部分を立体的、かつ、明確にした部分は私自身も感銘を受けました」

 

…あの三船栞子が…せつ菜のやり方を認めた…?

いや…そんなはず…。

 

栞子「私の目指す学園生活とは違いますが…もし実現すればそれは楽しい学園生活となるでしょう」

 

俺はある一言が引っかかった。

────もし?……何故そこで…もし、をつけたのだろうかと。

 

栞子「ですが、中川さんの公約は…実現不可能だと、断言できます」

「なっ……!!!」

 

実現困難…どころか、不可能だと…っ!?

しかも、断言するなんて…っ!!

 

「あの野郎…っ…何が足りないって言いたいんだ…っ」

愛「峻…」

 

栞子「なぜなら、中川さんの姿勢には、根底から齟齬が生じているからです」

──────齟齬…?

意見や事柄が食い違ってるって…意味だけど…。

そんなことは無いはずだ。

 

栞子「大好きが実現出来る学園を作る、大好きは力になる

そう…中川さんは言いました」

栞子「…しかし」

 

三船栞子がせつ菜の方をじっと見る。

栞子「中川さん、貴女の本当に大好きなことはなんですか?

…生徒会の仕事が一番大好きだと言えるんですか?」

せつ菜「……っ」

 

「っ……なん、だよ…これ…っ!」

誘導尋問だろ!!と言いそうになったが…歩夢が泣きそうな顔で服を掴んでいた。

……抑えろ…っ…そう言い聞かせて…強く、拳に力を込めた。

 

栞子「答えはノーでしょう

…大好きな事が他にもあるのに、その大好きな事からも…逃げようとしました」

 

…それが…スクールアイドル同好会の事って…言いたい、のかよ…っ…!

せつ菜は……せつ菜は逃げてなんかねぇ……!!

 

栞子「無理してまで生徒会長としての仕事をしてるのは…理想とは矛盾してると思いますが?

そんなちぐはぐな気持ちで生徒会長の仕事をしたところで…結果なんて目に見えています

私は言いましたよ、中途半端なんじゃないか、と」

 

せつ菜「そんな…っ…!私は…っ…生徒会の仕事が…なにより…っ…!」

栞子「中川さん、私の主張は間違ってますか?」

 

ひとつ、ため息をし更に攻めたてる。

栞子「そこが断言できないことが、明確な答えですね

…私は、生徒会長として学園のみなさんのために働くことが…''一番大好きな事''と考えています…でも、貴女は違うのでは?」

 

せつ菜「……っ…………」

栞子「だから改めて言わせてもらいます。

貴女の考える公約は夢物語です…反論、出来ますか?」

せつ菜「………………………………」

 

 

場の空気を感じ取ったのか、選挙運営員が演説を止めた。

【時間となりました、生徒の皆さんはそれぞれ生徒会長に相応しいと思う氏名を記入の上、投票してください】

 

 

かすみ「…峻先輩…今頃怒ってます、よね…」

しずく「…こうしてはいられません!先輩のところに行きましょう!」

璃奈「う、うんっ!」

 

かすみ・しずく・璃奈が峻の所に向かった。

かすみ「…先輩っ!せつ菜先輩…大丈夫ですよねっ…!?」

しずく「壇上であんなこと言うなんて…あんまりです!…酷いですよ…っ!!」

璃奈「せつ菜さん…すごく顔色悪かった…」

 

すると、3年生3人も峻の方に向かってきた。

彼方「最後の演説でああいうのは…ルール違反なんじゃないかな~…?」

エマ「あんなの、演説でもなんでもないよ…っ…ディベートでも無い…一方的すぎるよ…っ!!」

果林「あれは……決定打になりかねない、わね…」

 

愛「…せっつーのところにいこうよ!!」

歩夢「う、うんっ!…早く行こう!」

 

 

「待てよ、みんな」

そう言って、投票用紙を取り出す。

「…まずは、するべきことをしよう」

 

その言葉にみんなが立ち止まる。

「…それに…あいつだって生徒会長だ、プライドだってある…結果が、出てから…会いに行こう」

愛「でもっ……!!!」

 

「愛……頼む…」

深々と頭を下げる峻。

こんな姿を見たのはスクールアイドル同好会のみんなも初めてだ。

 

愛「峻………………うん、分かった…」

…悔しさで唇を噛む。

なんで…こんな時に…俺は、何もしてあげられなんだ…っ…。

何が……会長補佐だ……!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…結果、大差で…三船栞子が新生徒会長となった。

せつ菜を探したが…どこにも居なくて…今、スクールアイドル同好会のメンバーと探しているところだった。

 

 

 

 

 

 

 

────────────────

 

【屋上】

 

 

せつ菜「…負けちゃいました…」

分け目も振らずに地面に座り込む。

せつ菜「皆さんに…合わせる顔が…ありません…」

 

ここ数日…1週間、2週間の出来事が一気に蘇る。

せつ菜「私は…何をしてきたんでしょうか…」

 

皆さんをお騒がせして…迷惑をかけて…。

せつ菜「…わたしにできること…まだ、何があるの…かな…」

 

 

 

 

 

その瞬間、屋上の扉が勢いよく開いた。

「やっぱりここか…っ!!

居たよ、せつ菜!!」

愛「せっつーーー!!探したよー!!!」

 

せつ菜「えっ…………………あっ…あ、愛さん…っ!!」

かすみ「もー!!なんでこんな所で座り込んでるんですかー!!せつ菜先輩らしくありませんよ!!」

しずく「はぁ…っ…はぁ…!!

…良かった…っ…このまま、せつ菜先輩に会えなかったら…どうしようかと…っ!」

 

「…ごめんなさい…皆さん…」

エマ「私たち…せつ菜ちゃんの気持ちが落ち着くまで待とうと思ってたんだけど…」

その言葉でせつ菜が一気に現実に引き戻された。

 

せつ菜「わ、私のせいで…同好会が…!

すいませんっ…三船さんには、私の方から交渉しますので…!」

しかし、謝罪の言葉が…峻の抱擁で途切れた。

 

「…そんなことは…どうでもいいんだよ」

歩夢「そうだよ、せつ菜ちゃん!…今は全然関係ないよ!」

愛「学園中、隈無く探し回っちゃったよー!せっつー探しだけにっ!」

璃奈「せつ菜さんに…会いたくて…っ!」

彼方「もう彼方ちゃん…1年分のエネルギー使って走り回ったよー」

果林「せつ菜…みんな、貴女の傍に居たいと思ってるのよ」

 

「…虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会は!…9人いて、初めて成り立つんだからさ…せつ菜、部室に戻ろう」

かすみ「峻先輩っ!10人目が居るじゃないですかっ♪」

「…っと、そうか…10人居て、スクールアイドル同好会…だろ?」

 

せつ菜「それは…無理、ですよ…」

「……せつ菜…」

せつ菜「やっぱり、私にはその資格がありません…

生徒会長選挙も負けて…スクールアイドル同好会も廃部になってしまって……峻さんにも…あの時、あんなに言いたい放題言って…」

 

エマ「…あの時?」

果林「エマ、詮索しないのっ」

 

 

「…ふーーーーっ……………」

……あぁ、今日はいい夕日だなぁ……まるで学園ドラマで夕日眺めるシーンを思い浮かべるよ。

 

 

「せつ菜のバカぁ!!!!」

「「「「えっ……!?」」」」

せつ菜「……えっ…?」

 

「おうおう、何度も言ってやるよ!バカだって!

俺がやっと怖ーーーい顔が直ったって言うのにせつ菜が自分にウソをついて…せつ菜らしくねぇよ!」

せつ菜「なっ……い、いやっ…それはっ…」

 

「せつ菜はいつだって大好きを正面から受け止めてきただろ!

いつだってバカみたいに明るく大きな声でさ…!!!

 

…って、今のバカはそう言う意味でのバカって訳じゃなくて…」

 

頭を掻きながらビシッと指を差す。

「せつ菜はスクールアイドルが大好きなんだろ?

…だったら、俺たちの答えはこうだよ

''大好きな事にいつだって全力なせつ菜が大好きなんだよ''

だから、これからも近くで見させてくれよ!…そして、俺に応援させてくれ」

せつ菜「…でも…負けたから…スクールアイドル同好会は…」

 

かすみ「ふっふっふ~…ここに、廃部の危機を救った事がある人が居るのをせつ菜先輩はお忘れですか?♪」

 

歩夢「ふふっ、無理だと思ってた条件を…乗り越えた人、いるよね♪」

果林「あ、もちろん…かすみちゃんの頑張りも分かってるわよ?」

かすみ「そこでフォローされても遅いですよ!」

果林「…まぁ、だったら同じことをすればいいだけ、よね?」

 

「………最初っからそのつもりだっつーの」

せつ菜「皆さん…っ」

エマ「三船さんがどんな風に思ってても私達も負ける気は無いよ!♪」

しずく「生徒会長と戦うなら、1人より多い方がいいですよ。せつ菜先輩っ♪」

愛「そうそう、せっつーの味方はいつだってここにいるからさ♪」

彼方「彼方ちゃん達の大切な場所をそう簡単には無くさないよ~…!!」

璃奈「だから、せつ菜さん…資格が無い、なんて言わないで…」

 

「…せつ菜だって、分かってるだろ?

同好会が一番好きな場所だって…ずっと前から」

せつ菜「……皆さん…っ…

私…皆さんと…一緒に居たいです…っ…!!

スクールアイドルを…一緒に…やりたいです…!!」

 

泣きながら、抱きついてきたせつ菜。

やれやれと、溜め息をつきながら頭を撫でた。

 

「…おかえり、せつ菜」

「「「おかえりなさい!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

せつ菜「……ただいま…っ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────

 

 

 

 

【後日 部室】

 

 

 

せつ菜「…やっぱり、この格好が一番落ち着きますね…♪」

「俺も、その格好の方に見慣れてるから安心感があるよ」

 

果林「それにしても、今回も大活躍だったわね、部長さん?♪」

かすみ「やっぱり、先輩部長は頼りになりますねっ♪」

 

「ったく、そんなみんなして部長部長言うなや、照れんだろ?」

せつ菜「ふふっ、皆さん…ありがとうございます♪」

 

かすみ「って!せつ菜先輩!!何しれっと先輩の横に座ってるんですかー!!明日はかすみが隣ですからねー!」

彼方「おやおや~?…そんな簡単に峻くんの隣は譲らないよ~?」

かすみ「えええぇーー!!??」

 

せつ菜「ふふっ、やっぱり同好会はこうでなくてはいけませんね!♪」

「…だな」

 

璃奈「2人とも笑顔が戻った♪」

「ん、そう…だな」

果林「さて、部長?…同好会継続はどうするの?」

歩夢「三船さんは理論的だから…同好会が必要だってアピール出来たら続けさせてもらえるんじゃないかな?」

 

「…だとするなら…スクールアイドルフェスティバル、か」

しずく「ですね…」

「あれだけ多いなステージに立ってライブしたら…認めざるを得ないよな」

 

Aqoursの時も…そうだった、しな。

 

せつ菜「そうですね、三船さんの場合なら…学園の為という事なのであれば認めると思います」

愛「うーん…あの子の前でライブするのが手っ取り早いと思うけど…」

せつ菜「もし、見てもらうのであれば…スクールアイドルフェスティバルで、ということになりそうですね…」

彼方「そういうとこ、シビアだよね~」

 

しずく「では……まず、今までの活動をまとめてみますか?」

「うん、そうしようか…俺も手伝うよ」

 

と、話しているときだった。

 

栞子「失礼します」

「なっ……三船栞子…っ!?」

 

部室に来たのは意外な人だった。

栞子「声、廊下まで聞こえてましたよ

声量はスクールアイドルといったところでしょうか」

かすみ「…嫌味な言い方ですね…」

エマ「かすみちゃん…っ…落ち着いて…」

 

大丈夫、かすみ…俺も同じ気持ちだよ。

…っと、そうじゃなくて…。

 

栞子「残念ですが、あなた方の茶番はここまでにしてもらいます…スクールアイドル同好会は廃部、それは変わりありません」

 

「「「ええぇーーー!!??」」」

栞子「では、私はこれで」

 

そういうと、三船栞子は出てってしまった。

せっかく、目標が決まったのにまたもや部室内は静まり返ってしまうのであった。

 




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