「…本当に大丈夫なのか、歩夢?」
歩夢「うんっ、峻くんは部室で作業してて良いよ?」
「そっか…なんかあったら、遠慮せず言えよ?」
歩夢「うん!ありがとうね♪」
歩夢に休憩を入れるように促したが…彼女はこれを拒否。
1人練習場に籠って自主練を開始していた。
(…後で飲み物持っていくか)
そんな彼女の姿を見つつ…俺は部室に向かった。
歩夢「1、2、3、4……1、2、3、4…」
頭では分かっていたが…後半になるとどうしても動きが鈍くなってしまう。
歩夢「…基礎体力を付けないとなぁ…頑張らなくちゃ!」
そんな中、練習場に1人の姿が…。
栞子「上原さん」
歩夢「えっ!?…し、栞子さんっ!?…びっくりした~…」
栞子「…まだ残っていたんですか?」
歩夢「うんっ、本番も近いし…♪」
栞子「それは分かりますが…オーバーワークはかえってコンディションを低下させてしまいますよ」
歩夢「ありがとう、でも私は大丈夫だよ!」
栞子「…声をかけそびれて練習内容を見させて頂きましたが…
足運びがいつもに比べて疎かになっていました
あれでは、ダンスではなくただ足を動かしてるだけでした」
彼女はショックを受ける……のではなく…。
歩夢「栞子さん…やっぱりスクールアイドルの事…詳しいよね?」
栞子「…い、一般論です」
歩夢「そ、そうなの?…あのね、みんなの分も頑張らなきゃって思うと…なかなか練習の終わらせどきが分からなくて…」
栞子「みんなの分…ですか
上原さん、あなたは自分が出る事で他のメンバーに申し訳ないと思っているのですか?」
歩夢「えっ?…それはやっぱり…少し思うかな?」
栞子「そう思うのに…やりたいという思いは抑えきれ無かったのはなぜです?」
歩夢「どうしてかな…これから入学してくる中学生に部活動はこんなに楽しいんだよって伝えられるのは…私じゃ無いかなって思ったからかも」
栞子「…だから、私こそがステージに立つのが相応しい、と?」
歩夢「…ねぇ、栞子さん
私は…ひとりでステージに立つんじゃ無いんだよ
私のためにサポートしてくれる、峻くんや…
ライブが成功してくれるように応援してくれる同好会のみんな
私はみんなと一緒にステージに立ってるんだって…1人だけど…1人じゃない…そう言う感覚なの」
栞子「1人だけど…1人じゃない…」
(んっ…練習場に誰かいる…?)
飲み物を片手に練習場の前に行くと、中から誰かが話す声が聞こえた。
…聞き耳を立てると歩夢と栞子だった。
(…あの2人だけで話すなんて…珍しいな…)
歩夢「私の思う感覚には…峻くんや栞子さんもちゃんと入ってるんだよっ」
栞子「峻さんは分かりますが…私も、ですか?」
歩夢「だって、今だってこうやって声をかけてくれたでしょ?」
栞子「それは…その…上原さんは頑張りすぎるところがあるので…生徒会長としては気をつけて見ていなければと思っただけです…」
歩夢「ふふっ、それならそれでいいよ♪
私が勝手に思ってるだけだからっ」
「(…なんだかんだ…栞子も馴染んできてるんだな…これも歩夢の人徳かな…)…おっす、休憩中か?」
歩夢「あっ、峻くんっ!♪」
栞子「…どうも」
「ほら、歩夢…水分補給…何か作戦会議中だったかな?」
歩夢「ふふっ、思い出話…かな?♪
栞子さんはどう?私たちと一緒にスクールアイドルの練習をやってみて、何か気づいた事とか…あった?」
「おっ、それは俺も聞いて見たいかも」
栞子「…うっ……私は…スクールアイドル活動に意味があるとは思えません…」
峻&歩夢「…あはは…」
栞子「…けど…」
峻&歩夢「…けど…?」
栞子「皆さんが…同好会を守りたい気持ちが…少し…分かった気がします
他の部の人達が、どうして無駄だと思える事をやろうとしているのか…あくまでも…少しですけど…」
歩夢「そっか…栞子さんにも楽しいって思ってもらえたんだね、私たちとの練習」
栞子「別に、楽しいとは思っていません
…それに、無駄だと思っていることは変わりありません」
「…頑固だねぇ…」
栞子「事実を述べてるだけです。
もっと有意義な事に時間を使った方が良いという考えも変わってません」
栞子「…ただ、峻さんの言い分や…立ち振る舞いを見ていて…この同好会の活動の過程にある全てのことを無意味と否定するのは間違っているかも…とも思っています」
歩夢「…ふふっ、栞子さんって優しいんだね♪」
「…ああ、同感だな」
栞子「…あ、あの…どこをどうしたらそんな結論に行き着くのですか…?///」
「…そりゃあ…なぁ?」
歩夢「話してたら…自然に…だよね?」
栞子「…や、優しいなんて間違ってますよ…
私はただ、皆さんに間違った選択をして欲しくなくて…」
歩夢「…ふふっ…♪」
栞子「な、何故笑うんですか…っ」
歩夢「多分、峻くんも同じことを考えてると思うな♪」
「…あぁ、栞子が居ると心強いなってな」
歩夢「うんっ!♪」
栞子「心強い…?……どうしてですか?」
「俺でも見抜けないようなところを見てくれてたりするからな
…なんだかんだ言って…見守ってくれてるんだなぁって
こうやって、歩夢が悩んでいたら相談にも乗るし…一緒に進むべき道のアドバイスをしてくれるし」
歩夢「間違ったら正しい道に呼び戻してくれる…
そう思うとなんだか心強いなって」
「ま、同好会の皆もそう思っているかもな」
栞子「…そんな…こと……皆さん、私のことを煙たがってるはずです…」
歩夢「ふふっ、ここに正面からぶつかり合っても…分かり合うように向き合って今こうやって2人でおなじ場所に立っている人が…ここにいるよ?」
「…まぁ、俺もぶつかりたくてぶつかった訳じゃないけど…
人間、ちゃんと話し合ったりすれば分かり合えない人は居ないって事だ
その前に人は諦めたり遠ざかったりするからそこまで至らない人が多数なんだけどな
…だから…もう少し…ほんの少しでいいんだ…みんなのことを信用してもいいんじゃないか?」
栞子「…信用…する?」
歩夢「あっ、さっき栞子さんも言ってたね…っ!」
「あぁ、無駄かもしれないように見えるけど全部無駄なわけじゃない…そういうことはたくさんあるから…な
…こう、部長がお願いするのも…なんだかおかしいけど…もう少し、見守ってやってくれ………頼む」
栞子「……頭をあげてください……少し…考えてみましょう…」
その時見た栞子の顔は…とても複雑そうな顔に見えた。
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