彼方のボーダーライン 作:丸米
ちょっとあまりにも選抜試験が書けそうにないので、お茶濁し編が始まります。
茶を濁すにあたっても可能な限り全力でやりまする。
あとアンケ置いておきます。私個人の興味半分ですが、結果を踏まえてどっちをメインに書くか決めようと思います。
期限は次の更新まで。
対応する側される側
こうして。
ランク戦は終わった。
終わってみれば、これまでB級上位を独占していた二宮隊、影浦隊の二部隊を──弓場隊、玉狛第二が押しのける結果となった。
「やあ。みんなお揃いで」
三門市内の中華料理店。
王子一彰は、同隊の蔵内を伴って──眼前の円形型のテーブルに座る人間に、そう声をかけた。
「おう」
「おせーよ」
「どもっす」
「お疲れ様です」
そのテーブルには──弓場隊の面子に加え、もう一人。
「おおー。王子久しぶり。蔵内は一週間ぶり」
短髪の男が一人、そう二人に声をかける。
彼の名は、神田忠臣。
──加山が弓場隊に入隊する前に、部隊の一員だった男である。
「カンダタ。合格おめでとう。はいこれ」
「気い遣わなくてもいいのに」
王子は手に持った花束を神田に手渡すと、そう神田は言葉を返す。
「.....」
加山は。
ただ黙してその光景を見守っていた──。
こんにちは。
加山雄吾です。
現在、ランク戦終了の打ち上げの為、弓場隊の面々と共に隊長が予約した中華料理屋にいた。
さて。
そこに、以前弓場隊に在籍していた神田がいると聞いた加山は当然のように「以前の隊員の方がいるなら自分は邪魔だろう」と打ち上げに行くのを断ろうとしたが、当たり前のように弓場と藤丸にシバかれ連行され今に至る。
神田忠臣。
加山が入隊する以前の弓場隊の中心人物。彼が除隊した事をきっかけとして、加山は弓場隊に入隊する事となったわけだが。
実のところ、面識はほとんどないと言ってもいい。
この打ち上げは実際の所、部隊が一位になった祝い半分。そして──神田が大学合格を決めた事への祝い半分といった具合であろう。
ならば面識のない自分が行ったところで邪魔になるだろうと。一旦は断ろうとしたものの。まあそんなことが許される訳もなく。
「──しかし今回のランク戦は凄かったね。まさか二宮隊と影浦隊の牙城を崩す部隊が出るなんて」
「いやー。この神田忠臣がいなくなった後の弓場隊を心から心配していたんですけど。順位を落とすどころか、まさか一位を取れるだけの力をつけるなんて。──アレ? 俺の存在の重要性皆無っすか?」
「残念だったな! お前はもういらん!」
「冷たいっすよー、ののさん」
ランク戦の順位の話になると。
神田の視線は、加山へと移る。
「いやいや。まさか後任の子が鍵となって、一位まで行けるとはね」
「ありがとうございます」
「いやー。俺も出来れば今期のランク戦見たいなぁ」
「.....とはいえ。次期も同じように二宮隊を倒せるかと言えば。それは怪しいと思いますね」
今回弓場隊が1位になれたのは。
8ラウンドという短い戦いの間に、それぞれ別の戦術を持って臨めた部分が大きい。
研究と対策が積まれた時期以降。同じように勝ち続けられるか、という部分は──非常に厳しいと感じる。
総合力で言えば、間違いなく自分たちは二宮隊よりも明確に下だと言える。
「だからこそ。今期はA級昇格試験が無いのが中々キッツイですね。来期はずっと上位戦を続けなければならない訳ですし」
「──だったら。次のランク戦までに隊全体が二宮隊にも劣らねぇ力を付ければいいだけだ」
弓場はそう言うと、加山を見る。
「今までお前が見せてきた手札は、そう易々と対策されるものじゃねェ。後は、俺達自身の練度と能力を上げていけば──A級でやっていけるだけの力はつけている。それに」
「──それに?」
「うちにはまだまだ伸びしろはある。──なァ、帯島」
「.....ッス!」
弓場が、少し微笑みながら帯島にそう声をかけると。
その言葉に、帯島もまた返す。
「ここまでの経験、全部吸収できてるってなら。こいつはこれから伸びていく。加山もアレで成長が打ち止めって訳でもねぇだろ。──まだまだ伸びる余地はあるぜ。ウチは」
「ウチも来期は負けるつもりはないよ。弓場さん」
「おうおう。一旦中位に落ちていた奴がよく言うじゃねぇか王子」
弓場の言葉に王子が口を挟み。更にそこに藤丸が噛みつく。
──ああ。終わったのだなぁ。
弓場隊に入隊してから、大規模侵攻を経て、そして今日を迎えるまで。
己の内外共に様々な変化が生まれてきたこの日々に。
一先ず。一つの決着を迎える事となった。
その事に少しばかりの感慨を覚える。
それと同時。
──撃つのか? この化物めぇ!
「......」
あの時の己の言葉が。
吐き出した喉奥に、未だ突き刺さっている。
※
「で。俺達は無事B級1位となって遠征選抜試験を受ける事が可能となったわけだが」
「はい」
して。
日を改め、次の日。
「とはいえ、ただ時間を無駄にするのも勿体ねぇ。今期の個々の反省点の洗い出しを行うぞ。──選抜試験がどういう内容になるかは解らねぇが。始まる前までに上達できる所は上達させておいた方がいいだろ」
「うっす。ありがたいっす」
本当にありがたい。
加山にとって、ランク戦よりも──次の選抜試験からが本番と言える。今回でB級トップに立ったところで、次の選抜で落とされてしまえば、その実績は全く意味がなくなる。
「今回。ウチがB級1位になれた訳だが──その要因は何だと思う? 帯島」
「要因....」
弓場に問われた帯島は、少しだけ思考を巡らせ。
「......幾つか考えられるッス」
「おゥ。言ってみろ」
「一つ。加山先輩の加入によるウチの戦術の変化。神田先輩が抜けて、代わりに加山先輩が入って。部隊の戦術が大きく変わりました。変わった事で、相手の対策が定まらないままランク戦を進められた。これがまず一つ」
「.....他には?」
「二つ。──B級上位部隊に対して、対策する時間を与えなかった事。多分これが一番重要だと個人的には思うッス」
「.....だな」
弓場は一つ頷く。
「今回。ランク戦自体が8回しかなく、その上俺達はB級最下位からスタートして、中位戦から上位戦へと這い上がってきた。この流れがよかった」
「ああ、確かに。ウチは初期のランク別に与えられる得点こそなかったですけど。下位と中位に大量得点を得ることが出来て。そして上位との戦いの機会を少なくできた。──上位との戦いでウチの戦術の対策をさせる時間を減らすことが出来ましたもんね」
弓場の言葉に、外岡が一つ頷いた。
「今回。加山が入った事による戦術の変化に対して。”短いラウンド内で”かつ”上位部隊との戦いが削られている状態で”相手は対応しなければならなかった訳だ。──特に。ラウンド7、8で用いた他部隊を利用した戦術なんざ最たるものだな。アレはウチが一位部隊として出発してランク戦やるとなったら、絶対に出来ないだろう?」
「.....ですね」
ラウンド7では、村上を。
ラウンド8では、東隊を。
二宮と、雨取。それぞれ共通の敵を作り出し、誘導する事で──他部隊を利用する戦術。
次のランク戦から一位の立場として出発する弓場隊の立場では、間違いなく行使できないであろう。
「要は。俺達は加山の特異性による初見殺しを8回繰り返したもんだ。そうして掴んだギリギリの立場。──ウチには二宮サンや、玉狛のヒュースや雨取のような大駒はいねぇ。次も一位が取れると考えていたら、それは大間違いだ。今回俺達は相手に対応させる側だったが。次からは間違いなく対策する側になる」
「.....ですね」
「そして。──これは、お前個人に対しても言える事だぜ。加山」
「.....」
「最終戦での解説で、加古サンが言ってたろ。──お前は基本的に相手に対応させる戦い方をしていて。対応する側の経験が足りてねぇ、ってな」
「.....はい」
それは、まさしく加山にとって正鵠を射る言葉であった。
加山にとっての戦闘は。基本的に相手の思考に負荷をかけ、こちらに対応をさせるという作業を強制させる側面が大きかった。
事前に準備を重ね、戦術という弾丸を装填して、それを相手に撃ち出す。
今回のランク戦では、この弾丸が潤沢に得られる環境があった。それはランク戦の短さゆえに、新規の戦術をつぎ込んでも弾切れしなかったという事でもあり。対応力に優れた上位部隊との戦いが、下位・中位との戦いで削れていた事でもあり。そして加山自身が大きなリスクを負ってエネドラの経験を手に入れた事でもあり。
これが、本来の20戦繰り返す形式のランク戦だったら。常に新しい弾丸を携えて戦いきることが出来ただろうか?
恐らく──不可能だったであろう。そう思う。
だからこそ。自分はヒュースに敗れたのだ。
ヒュースに向けた己の弾丸を読み切り、防ぎ切り、そして──いざ自分が対応する側に回った瞬間に敗北が決まった。
「これは俺達自身の課題であり。そして俺達個々の課題でもある。──相手に対応する戦い方に関して、こっちは大きな弱点が残ったままだ」
「.....」
対応させる、ではなく。
対応する。
その部分で一番肝となる能力は──。
「.....指揮ですよね」
「だな。──その部分では、まだ俺達は神田の穴を埋められちゃいねェ」
現在の弓場隊には、明確に指揮官がいない。
「なので。──特に加山。お前は今回のランク戦じゃあ、ウチのMVPだ。そこは認める。よくやった」
「ありがとうございます」
「だから次は、対応する側の経験を選抜試験までに積んで来い。そこが明確なお前の弱点だ。それが埋まるだけ、ウチは更に強くなる」
弓場の言葉に、加山は一つ頷く。
「.....最終ラウンドでのヒュースとの一騎打ち。お前は挑んだことを後悔してんだろうが」
「....」
「俺はそうは思わねぇ。あの戦いがなければ、この弱点部分はここまで強く浮き彫りにはなっていなかっただろうからな。──ここからお前が成長できるなら、あの負けも有意義な経験の一つだ」
弓場の言葉に。
加山は、──あの時の記憶を回帰しながら、それでも諸々を飲み下し、頷いた。
※
「.....とはいえ。どうしたものかな」
要は。今まで戦術を練る戦い方ではなく、即応的な能力を用いた戦い方を覚えろ──という訳であろう。
と、なれば。
集団戦──それも、自分が陣頭に立って指揮を執るような訓練を想定しなければならない訳で。
そうなると。まず人を集める必要がある訳で。
「まあ.....指揮はひとまず置いておいて、集団戦をするだけでも.....。いや、もう戦い方知っている人とやったところで”対応力”の訓練にはならないよなぁ」
やはりというか。
自分は──心底、相手に”対応する”という事を避けようとしていたのだろう。
本部所属の部隊のおおよその戦い方は、しつこいくらい研究した。手の内はおおよそ解っている。手の内を知っている中で戦ったところで、対応力の訓練になるとは思えない。
「加山」
「どうしました隊長?」
そうして、どうしたものかと思い悩んでいるうち。
弓場が声をかけた。
「──面白い事やるみたいだからよぉ。来てみろ」
という訳で。
弓場拓磨に連れてこられた先は。
「──ランク戦ぶりだな。加山」
食堂で焼き魚を食っていた、東春秋の姿。
「久しぶりです、東さん」
「ああ。.......座ってくれ。弓場も」
「──ッス!」
東の対面の席に座る。
「まずは、ランク戦一位おめでとう。──正直、予想外だった」
「ありがとうございます。東さんの想定外を起こせたのなら、ボーダー隊員冥利に尽きますね」
「いやいや。この結果を予想できたのは、当事者のお前たち以外間違いなく誰もいない。まさか二宮隊、影浦隊を追い抜いた部隊が二つも生まれるとは」
「......まあ。客観的に見て元A級部隊の蓋を引き剥がしたのが、どっちも最下位からのスタートってあまりにもふざけた結果ですよねぇ」
「面白い結果だったよ。──という訳でだ。実はな、加山」
「はい」
「この結果を受けて。──お前に指揮に関して教えてやってくれと。弓場にお願いされた」
え、と。加山は弓場を見る。
「....今回、はじめて1位を取れた記念に。是非お前を鍛えてやってくれって話をしたんだよ」
「とはいえ。何かを教えるにせよ、まず色々と経験をさせてからの方がいいだろう。と、いう訳でだ」
東は、変わらぬ微笑みを浮かべたままで。
「人を集めて。ランク戦形式の集団戦を──別のメンバーの組み合わせでやってみようと。無論、お前が隊長でだ。加山」
そう言った。
遠征試験書けそうにないけどシャッフルやりたすぎて泣いた阿呆の叫び声でお茶濁すお話です。
あと、アンケは普通に多かった方が加山の即席部隊のオペになります。