彼方のボーダーライン   作:丸米

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サブタイの色のレパートリーもうない。
すみません。



加山、入隊

「──チ。やはり、まだ太刀川サンまでは届かなかったか」

 弓場拓磨は舌打ちしながら、自らの隊室に戻っていった。

 

「お疲れ様ッス、隊長」

「お疲れ様です」

「おう」

 ふぅ、と一つ息を吐き──弓場と加山はお互いに目を合わせた。

 

「お疲れ様です。──さて、じゃあ行きましょうか」

「おう。──上層部の連中にカチコミだ」

 

 お互いに拳を突き合わせ、──実ににこやかな表情を浮かべ、二人は意気揚々と隊室から消えていった。

 

「......何だか」

「......うん。言いたい事は解るよ」

 

 物凄く。

 弓場と加山は、息が合っていた。

 

 

「呼び出される前に自ら来るとは.......随分と聞き分けがいいじゃないか。ええ?」

 鬼怒田本吉は、こめかみに血管を浮かせながらそう呟いた。

 されど加山はそんなもの何処吹く風。笑みすら浮かべながら上層部の面々と向かい合っていた。

 城戸は何も言わず加山と向かい合い。

 忍田は顔を顰め。

 根付は頭を抱え。

 鬼怒田は怒りに顔を紅潮させ。

 唐沢は笑みを浮かべていた。

 その全員を前にして。

 虚勢を完璧に張り付けた笑みを、そのまま。

 

 城戸司令主体で行われた、極秘任務。

 黒トリガーを持つ空閑遊真を目的に──玉狛支部へ襲撃をかける。

 そして。

 この二人──加山雄吾と弓場拓磨両名は特段の命令もなく、その任務の妨害を行ったのだ。

 

「そんな鬼怒田さん。我々はただ弁解しに来ただけです」

「弁解? 弁解だと!? 寝言は寝て言え!」

「いえいえ。まあ、まずは俺と弓場さんがどうしてああなったのか聞いて頂けませんか」

 加山は実ににこやかな笑みを浮かべながら、──言葉を紡いでいく。

 

「俺と弓場さんは──迅さんに。そう迅さんに! お話があるという事で本部から呼び出しを食らっていたんです。あんな深夜の時間帯にですよ。酷くないですか?」

「何をいけしゃあしゃあと.....」

 加山は実に演技がかった身振り手振りで、言葉を紡ぎ、隣にいる弓場はただ笑みを浮かべて成り行きを見守っていた。

「俺と弓場さんがお手々繋いで仲良く玉狛に向かっていた時に──あの事件が起きたんです!」

 A級部隊が連帯し玉狛支部に向かい、その道中で迅が向かい合い、会話をしていた。

 

「あの時俺と弓場さんは何があったのかと思いました。──そうしたら、狙撃手の面々が迅さんを囲うように四方を囲む動きをしていたではありませんか。俺は思ったんです。これはまずい。恐らくこれは、──A級部隊が独断で玉狛支部の襲撃を仕掛けに行っているんだって」

 

 は? 

 そう──鬼怒田の声が響く。

 

「そんな事する訳が無かろうが! 独断での襲撃だと? A級部隊がそんな事を──」

「だって。処分保留の通告をしてからまだ二週間もたっていない時期ですよ。空閑君が特段の問題行動もしていないそんな時期に、何で襲撃なんかかけるんですか。空閑君を追い出したいなら、その旨の通告を与えればいい。──まさか黒トリガー目的に、自ら通告した内容を握り潰して極秘で襲撃をかけるなんて俺には思えなかった。そんな強盗まがいの命令を、まさか城戸司令が行うなんて思ってもいなかったです」

 

 これは。

 半分加山の本音でもあった。

 そう思っていたからこそ、加山は上層部を信用して情報を与えたのだ。そして東を引っ張ってまで交渉までしたのだ。合理的な要素を与えておけば、上層部は認めてくれるだろうと。そう思っていたから──迅の予知を聞くまで。

 当然、その考えは本当にただただ甘いものだったが。

 危機を乗り越えた今ならば──危機を招いた自分が積み重ねてきた行動が、武器にもなる。この言葉に、ある程度の説得力が生まれる。

 

「これは処分に納得いっていないA級部隊が、事前に情報を握っていた東さんが主体となって独断で襲撃をかけているんだ──そう判断した俺はすぐさまトリガーの換装を行って、今にも迅さんを狙撃しようとしていた奈良坂先輩を爆破しました」

 後は流れです、と加山は言う。

「本部長命令で嵐山隊が来た瞬間、やっぱりと思ったんです。これはA級の独断で襲撃をかけていて、そして慌てた忍田本部長が急いで止めに入ったのだと。自分の判断は間違っていなかった。ここは何とか止めに入らなければならない──そう思って私はあの戦いで迅さんの味方をしました。そして、俺を庇うために一緒に来ていた弓場さんもあの場で戦いに参加しました。以上」

 

「成程。──で、そんな論理が通用するとでも?」

「えぇ、そんな。通用するもしないも、事実ですし......。なら、他にどんな可能性が考えられると?」

「迅はあの襲撃を未来で予知していた。その情報を君に与えたと考えるのが自然であろう」

「うーむ。確かにそう考えたら、そういう可能性もありますね。俺と迅さんは結構仲がいいですし。──お、丁度迅さんが来たみたいですし。聞いてみたらどうですか?」

 

「お。皆さんお揃いで」

 迅はドアを開き、部屋に入る。

 ──上層部の視線が、更に厳しいものとなる。

 

「迅....!」

「何をしに来た」

「何って......加山と同じ。事情を説明しに来たんですよ。俺がわざわざ弓場ちゃんと加山を騙してまで襲撃を阻止させてもらった理由をさ」

 迅は加山と目を合わせると、一つ頷く。

 

「──ごめんな二人とも。騙しちゃったみたいで。呼び出したのも、ここで戦ってもらうためだったんだ」

「そうだったんですね、迅さん......見損ないました......」

「──借りは返してもらうぜ」

「ごめんごめん。まさか俺の方も城戸さんがこんな強硬な手段を取るなんて予想外でさ。こっちも、手段を選ぶ余裕がなかった」

 

 にこやかなやり取り。

 完全なる茶番劇。

 だが──迅がそう言ってしまえば、加山の主張が間違っている証明は、出来ない。

 

「俺は提案しに来たんだよ、城戸さん」

「提案?」

「要は、本部と支部とのパワーバランスを危惧しているんだろ、城戸さんは。支部に黒トリガーを二つも置いておくわけにはいかないから」

「......どうするつもりだ」

 そう城戸が言葉を返すと、迅は──

 

「風刃、本部に返却するよ」

 

 と。

 そう、言った。

 

 

「丸く収まりましたね。──あの感じだと、首が飛ばされることはなさそうです。まあもう少しでマスターランクまでいってたポイントが没収されたのは悲しいっすけど」

「ああ。それはなさそうだね。──でも、弓場ちゃん大丈夫?」

「はん。チームランクと幾らか個人ポイントの没収はされるだろうな。──まあ、その程度で済んだなら別にいい」

「すみません、弓場さん」

「気にするこたねぇ。──最下位スタートだろうが、幾らでも返り咲ける。という訳で、お前は明日から弓場隊の一員だ」

「うす」

 弓場に頼った時点で。

 これはもう覚悟していた事であった。

 

 加山雄吾は、決意した。

 

 弓場隊で──自分は、A級を目指すと。

 相当に険しい道であるが──それでも、自分が着実に成長していけば、不可能な道ではないと感じていた。

 

「それじゃあ、頼みます」

「アテにさせてもらうぜ。──お前には期待しているぜ、加山ァ」

「了解っす」

 

 こうして。

 加山雄吾(15)

 個性派揃いのボーダーの中でも、一際独特の空気感を持つ弓場隊所属の隊員となりました。まる。

 

 程なくして、処分が決定した。

 弓場拓磨。個人ポイント3000を没収。

 加山雄吾。個人ポイント3000を没収。

 

 弓場隊。チームランクを没収。次ランク戦より下位スタート決定。

 

 想定していた通りの結果となりました。

 

 

 して。

 黒トリガー争奪戦を終えた、次の日。

 

「──という訳で。来期から俺達のチームランクは下位スタートだ。すまねぇ。必ず、来期が終わる頃には上に行く。だから、少し我慢してくれ」

「下位スタートかぁ。それじゃあ中位のチームの研究もちょっとしておかなければいけないっすね」

「......ッス! 来期は気合入れて、点数を取りに行くッス!」

「そして、代わりと言っては何だが。──神田に代わる追加メンバーをここで紹介しておく」

 

「はじめまして......じゃないっすけど。加山雄吾です。よろしくお願いするっす。ポジションは一応銃手です」

「よろしく加山君。俺は外岡一斗です。ポジションは狙撃手」

「藤丸のの。オペレーターだ! 神田の代わりだなんて思わねぇからなこっちは。あいつ以上にびしばし動いてもらうからな! 覚悟しとけ!」

「──」

 帯島は、自身の番が来ると、すぅ、と息を吸い込む。

「帯島。あの挨拶はもう一度されたからいいからね」

「ッス。帯島ユカリッス。ポジションは万能手。まだまだ未熟者ですが、よろしくお願いします!」

 

「──さあて、挨拶は済んだな。いいかお前ら。二月から俺達はまた再スタートだ。これから加山も交えて連携の訓練を行って行くからな。気合入れてやるぞ!」

 

 ッス! 

 

 一際気合の入った声が響き渡る。

 何とも独特な空気だなぁ、と加山は何となしに思った。

 

 

 その後。

 防衛任務も終わり、上がろうとしたその時。

 

 弓場に、止められた。

 

「加山」

「何すか、弓場さん」

 

 ちょいちょいと手招きを受け、弓場は加山を引き留める。

「忍田サンから聞いた。──お前、高校に行かねぇって?」

「えっと、まあ、.....はい」

「ふむん。──理由を聞いてもいいか?」

「理由は──」

 

 本当は色々あるんだけども。

 取り敢えずは、一番納得してくれるであろう理由を話す。

 

 家庭の事情。

 高校に行き、ボーダーの仕事もこなしながら、一人暮らしをする自信がない事。

 

 これらの事情を。

 

「成程なァ」

 弓場は。

 それを聞いて──じゃあ簡単な話だな、と呟く。

 

「A級上がって。固定給が入ればその問題は解決じゃねぇか」

 

 と。

 

「固定給入れば、高校で使う時間が多少あっても、安定して金が入る。出来高を無理に稼ぐ必要もねぇ。──お前はA級上がって、遠征に行くのが目的だったな」

「え。あ、はい」

「じゃあ問題ないな。俺もお前もA級上がるつもりはある。──なら、ボーダー提携校の入学申請書を出してきやがれ」

 

 その瞬間。

 どんな顔を、加山はしていたのだろうか。

 

 弓場はその表情を一瞥し──また、言葉をかける。

 

「いいか。加山ァ。──お前が俺の隊に入る以上は、お前がお前を勝手に追い込んでいく事だけは許さねェ。隊の全員が学校に行っている間、ひたすら仕事や訓練し続けるような事は絶対にさせねェ。俺が一番、隊についての負担は背負う」

 

 そう弓場は言って、

 

「ほれ。これが入学申請書だ。こいつに判を押して、忍田本部長の所に持っていけ」

 

 そう言うと──無理矢理判を押させ、そして忍田本部長の所までついてきて提出をさせた。

 何というか。

 本当に──強引な人だなぁ、と。加山は思った。




大規模侵攻まで、ちょい弓場隊+αコミュを進めていきます。
(私が大規模侵攻の構想纏まるまで)
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