彼方のボーダーライン   作:丸米

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よーやくランク戦。


ランク戦ROUND1 ①

「──ラウンド1の相手が決まった」

 

 作戦室の中。

 隊長の弓場から相手が伝えられる。

 

「茶野隊、玉狛第二、吉里隊との四つ巴戦だ」

 

 うえ、と加山は思わず声を上げる。

「玉狛第二ですか....」

「おゥ。──新興部隊だが、知っているのか加山」

「知っていますね。空閑は黒トリガー使いで、雨取さんは、ありゃあとんでもないトリオンモンスターでしたね。もう一人は.....うん、まあ....」

「ほぉ。どんな印象だ」

「空閑は、ノーマルトリガー使ってる所は見てないんですけど。──黒トリガー持っていたとはいえ、大規模侵攻で敵さんの最大戦力を足止めできていました。普通に脅威です。雨取さんは.....以前臨時接続でハウンドぶっ放したとき笑っちゃうほどのデカさだったんですよね。二宮さんと比べても笑えるくらい」

「隊長の三雲は?」

「だいぶ前の印象ですけど.....よくもまあB級上がれたな、って。C級の時、身体の動きがあんまりに悪いんでこれは無理だろうなって。ただ、今成長している可能性もありますね」

「ふむ....」

 

 弓場はジッとこのカードを見つめる。

 

「加山。今回のカード。どういう展開になると?」

「間違いなく言えるのは、茶野隊と吉里隊は早めに取っとかないと玉狛第二に食われる事ですね」

 

 今回の勝負。

 弓場隊と玉狛第二、どちらが残る二隊から点数を稼げるか──という構図の勝負になるのではないかと、加山は予想していた。

 

「戦略としては二つ考えられます。まず玉狛第二の戦力を削って、食われる心配がなくなってから残り二隊を片付けるのか。それとも玉狛第二を無視して狩れるだけ狩って、後で玉狛第二と対峙するのか」

「ふむ。お前はどちらがいいと思う?」

「正直。玉狛第二の実力がどの程度なのか未知数な部分があるので。序盤で勝負を仕掛けたくないとは思いますね。序盤で点を食われるかもしれないですけど、俺は他の隊がいなくなった後に戦う方を支持します」

「.....」

 

 弓場は、しばし思考する。

 隊が献策を行い、そして隊長が決定する。

 弓場隊の作戦会議の流れは、こういう流れで行われる。

 

「解った。お前の方針を採用する」

「了解です」

「外岡ァ」

「はい」

「お前は玉狛の空閑についておけ。撃てる場面があったらいつでも撃っていい」

「了解です」

「帯島と加山は合流を優先。加山は序盤でビーコンの設置に回らなくていい。点を取る事を優先しろ」

「了解ッス!」

「了解です」

「俺は──いつも通りだ。点をかっぱらってくる。いいか、お前ら。今回は点の取り合いだ。そして、これからも点を取り続けなくちゃいけねぇ。俺達は最下位だ」

 

 弓場はそこまで言うと。

 ニッと、笑んだ。

 

「だが──何の問題もねぇ。このメンバーで、上位に殴り込んでトップ2になるぞ。俺達だったら出来る。──という訳で、気合いれっぞ!」

 

 次から始まるランク戦。

 新メンバーを迎えて──上位への逆襲が始まるのだ。

 加山は一つ目を閉じ──先日加古に言われた言葉を思い返す。

 

 ──自分を見てくれる誰かの為に頑張ってみろ。

 

 将来的な展望とか。

 復讐とか。

 そういうものは一旦脇に置いて。

 

 今ここでランク戦をする時には──この隊の為だけにやってみよう、と。

 ひとまず、思う事にした。

 

 

「相手は......弓場隊が入っているか」

 玉狛支部。

 玉狛第一の木崎レイジは一つ頷いた。

 

「弓場隊.....あちゃあー弓場ちゃんが最初から相手になるのか―。下位から結構ハードね」

 対戦表を見ながら、小南もまたそう呟いた。

 

「ほうほう。そんなにお強いのですな」

「元々上位よ。非公表の隊務規定違反食らって下位に落っことされただけで」

「ふむふむ。──まあ、でも前向きに考えれば。初めから上位部隊の戦いが見れるわけだし。悪い事ばかりでもない。こなみ先輩、ここのチームの強みって、どういう所?」

「銃手の弓場ちゃんがとにかくタイマンで強いわね。割とボーダーの古株の一人で、とんでもない早撃ちが出来る人。攻撃手相手にすこぶる相性がいいから、遊真も油断できないわよ」

「ふむふむ。後でログを見ておこう」

 

「.....加山君、弓場隊に入隊したんだ」

 修はごくり、とつばを飲み込む。

 加山は、修にとっての大恩ある隊員の一人だ。

 C級時代にレイガストの使い方を指南してくれた人で、遊真をボーダーに入隊させる為に本部と連絡を取り合ってくれた人物でもある。

 

「あの黒トリガーを使っていた人か。ボーダーのトリガーを使った時、どんな戦い方をするんだ?」

 そう遊真が尋ねると。

 迅が答える。

「すんごい特殊な戦い方。高いトリオンを活かしてダミービーコンを撒いたりエスクードで有利な条件を作ったり。基本的に高いトリオン活かしての援護役をすることが多いね」

「援護役か.....」

「アイツと弓場ちゃんが連携している時は一人で突っ込んじゃダメだよ。マジで強いから」

 

「.....」

 

 ラウンド1から、かなり厳しい戦いが待っている。

 修は一つ息を吐いた。

 

 

「──B級ランク戦、第一戦昼の部。まもなくはじまります」

 B級ランク戦、実況・解説ブース。

 その席には──

 

「実況はB級香取隊オペレーター、染井華が務めさせて頂きます。解説には──」

 その隣の解説席には、二人の男。

 黒い隊服に帽子を被った男と。

 オールバックの髪をカチューシャでまとめ上げた男の二人が、いた。

「B級の荒船だ」

「A級三輪隊の米屋だぜ」

「──以上三名で実況・解説をしていきます。よろしくお願いします」

 

 さて、と染井が声を上げる。

 

「今回の試合.....最下位に落とされた弓場隊が含まれる部隊戦という事もあり、少々趣の異なる戦いとなりそうです」

「非公開の隊務規定違反で下位に落とされた、としか聞かされていないんだが。.....弓場さん、何をやらかしたんだ?」

「さあね~。なにをやったんだろうね~」

 荒船の言葉に。

 実に楽し気な米屋の声が響く。

 

「お前.....なんか知っているのか?」

「いや、知らねぇっす」

「知ってんだな.....まあ、いいや。今回選択されたマップは何処だっけ?」

「新興部隊の玉狛第二が選んだマップは──市街地Aですね」

 

 市街地A。

 背の低い一般住居が並ぶ区画が広がる中、ぽつぽつと背の高い高層建築物が広がる、オーソドックスなマップだ。

 

「新興部隊の玉狛第二ですが、この狙いをどう見ますか?」

「玉狛も、結構苦慮したんじゃないかなーって思うんだよな。今回の試合、対策するとしたら弓場隊だけど。弓場隊はあんまり地形が関係ねーから」

「....地形が関係ない、というと」

「新加入した、加山のせいだな」

 

 荒船もまた。

 そう言葉を放つ。

 

「アイツは今までチームに入ってなかったが。結構厄介な駒でな。エスクードで射線を切る事も出来るし、ダミービーコンでかく乱も出来る。極めつけに、メテオラとエスクードを活用してビルを爆破して倒壊させる技術も持っている」

「邪魔な建物があれば爆破するし、防御できる障害物が欲しけりゃエスクードを生やす。極めつけにトリオンも多いと来ているもんだから、中々トリオン切れにもならねぇ。弓場隊は全員が射撃トリガーを持っている構成の部隊だから、連携を取られると滅茶苦茶厄介だろうな」

「だから。特殊な環境を用意して逆に利用されるより、最初からオーソドックスなマップを選択して加山の動きを最小限にしよう、という判断だろうな」

 

「成程。──玉狛第二に関しては」

「まだデータが揃っていない状況だからあまり多くは言えないが......A級の緑川に勝ち越している空閑の動きには要注意だろうな」

「あの白チビ。動きがとにかくすばっしこい。弓場さんを相手にするにあたっては、機動力で攻めていくのも正答の一つだからな。──その動きに注意しつつ、他二名がどんな動きを見せてくるか。この辺りをしっかり見極めたうえで、他二名の動きも注目していく形になるかな」

 

「成程。──それでは、残り十秒で各隊マップに転送されます。試合を見ていきましょう──」

 

 

 マップに各部隊が転送される。

 

 弓場隊は──。

 

「俺と帯島が近いですね。合流に向かいます」

 加山の位置は、マップ西寄りの集合住宅地の中にぽかりとある空き地であった。

 帯島は、そこから少々南下した先にあるマンションの付近。

 

「隊長と外岡先輩は......逆側か」

 弓場と外岡は、東側の区域であった。

 加山たちと丁度反対の位置。

「丁度いい。外岡ァ。お前は最初に言った通り、空閑の見張りだ」

「了解っす。――捕捉しました。空閑君は南東の反応がある所ですね。すぐに配置に付きます」

 

 遊真の位置は、南東方向。やや弓場・外岡に近い。

 

 

「東側には反応が二つありますね。そっちは隊長にお任せします」

「おゥ」

「──あーあ。空閑がこっちに向かっていますね。多分、あっちは吉里隊ですかね?合流に向かっている反応が二つ」

 

 マップ中央の地点にある二つの反応が、西側に寄っていっている。

 恐らくは、西側でバッグワームを着込んで隠れている隊員側に、合流した二人組が寄っていっている構図だろう。孤立を避け、連携が取れる二人組が移動していっている。

 

「ほいじゃあ、帯島~」

「はいッス」

「空閑が来る前に──取り敢えずマップ中央から寄ってきているあの二人を足止めしとくぜ」

「──了解!」

「まあそれじゃあ。──ちょいとルートを変えてもらいましょうかね」

 

 加山はそう言うと。

 ダミービーコンを道中に幾つか仕込んでいく。

 

「空閑がいい感じに真っすぐ向かって行ってくれてるから、やりやすいや。──ダミービーコン、起動」

 

 撒いたそれらが。

 浮かんで、起動する。

 

「──点を取るぞ。前衛は頼むぜ帯島」

「はい!」

 

 合流地点を指定し。

 加山と帯島は走り出した。

 

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