鬼喰いの針~人間失格になった私は鬼として共食いします~   作:大枝豆もやし

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鬼が主役のssが少ない! なので自分で書いてみました。


藤襲山編
第1話


 私はいわゆる転生者というものだ。

 

 私には前世とも言える記憶を持っている。そのことに気がついたのは子供の頃、いつものように近所の友達たちと外で遊び、川に落ちて気を失ったときだ。

 

 頭を打った衝撃で全て思い出した。

 電車、飛行機、ネット、アニメ……。この時代にはない未来の歴史と科学技術、そして私ではない『俺』の記憶。それらが一気に蘇った。

 

 

 

 私……俺はつまらない人間だった。

 

 衣食住に不自由どころか恵まれた場所。毎日おいしいものを食べられて、暖かい風呂にいつも入れて、ネットなんて神話のような娯楽もある。大正の時代である今から見れば到底考えられない生活。一部の上流階級……いや、極楽の世界と言ってもいい。なのに俺は満たされなかった。

 

 毎日毎日何の目標もなくただ無意味に生きているだけ。ただ何となく生きて、何となく満たされない日々だった。

 何が足りないのか自分でも分からない。漠然とした不安と不満をずっと抱え、不平不満を言って過ごしていた。

 かといって何かを変えようとする気概もない。必死になれる何かを見つけようとはしなかったし、努力する気力も持つ気にはなれなかった。

 満たされない。何処か生き苦しい。……私から見れば実にふざけた話だ。

 

 

 

 いや、今も同じようなものだ。

 

 

 

 満たされない生活をしていたのは私も同じだ。

 私の家は裕福な家庭だ。三男坊でありながら家族は兄上と変わりなく愛を注いでくれた。

 こんな贅沢な生活を送れる人は、大日本帝国にもいくらかもいない。しかし、どれだけ自身が恵まれていても、あの頃……平成と比べてしまう。

 

 記憶が戻ってから6年、12になった今でも思う。何故記憶など取り戻したのだと。

 私は自分の記憶があることを隠して生活してきた。前世の記憶があるなんて話、一体誰に話せると言う? 平成の世なら兎も角、この時代では憑き物でも憑かれたと思われるのがオチである。

 

 退屈でつまらない毎日。なのに無邪気な子供を演じなくてはならない。

 そしてそのうち私は何で生きているのか。なぜこうまでして生きなくてはならないのか。生きる理由を見失って空っぽになってしまった。

 そして気が付けば、全てがどうでもよくなった。

 

 

 

 

 

  あの日が訪れるまでは

 

 

 

 

 

 あの日。私は人でなくなった。その証拠が目の前にある。

 水面に映る自身の顔。それは私の―――人間の顔ではなかった。

 

 雪のように白い肌、燃えるかのような赤い瞳、そして口元から覗く牙。

 己の顔は――まさに鬼。

 

 ここ数か月、何度も見た顔。この時代の私―――大庭葉蔵という名の鬼だ。

 

「(……ああ、最高だ)」

 

 悲嘆することはない。人間から鬼に変わっただけで私が私であることに何の変りもない。

 人間の頃の未練など何もない。冷暖房もネットもマックもないような退屈かつ不便な場所にどう未練を感じろと言うのだ。

 

 何が悲しくてまたつまらない人間、しかもよりハードな時代を体感しなくてはならない。

 どうせ生まれ変わるなら人間以外の生物でないと面白くないではないか。

 

 今の私は充実している。

 衣食住は足りているとは言えないが、元からこの身体はそんな下らないものなど必要としていない。

 ソレに今は娯楽も充実している。それもどれだけやっても飽きないほどの。

 

「たぁ……たすけ……」

「黙れ」

 

 私はあの日の事を思い出しながら、右手には相手の首を掴み、左手で竹筒に入れた『紅い液体』を飲み干した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの日、私は兄上と一緒に屋敷を抜け出して地元の連中と夜の街を歩いていた。

 隅っこで話を聞くふりして、適当なタイミングで頷く。それが定位置(ポジション)だった。

 いつも通りの下らない話。一体何がそんなに面白いのかと私は疑問に思いながら興味ありげな様子を演じる。そんな時だった。あの男を見かけたのは。

 

「おい、あの男見てみろよ。めっちゃ顔青白いぜ」

「見た見た。まるで病人みてえだぜ」

 

 これもまた下らない内容だ。俺も前世ではそうやってハゲの汚いおっさんを笑ったものだ。

 もちろん直接笑うような真似はしない。相手が声の内容が聞こえない距離まで行った瞬間笑う。今回もそうしていたはずだったんだが……。

 

 

「ほう…君たちには私の顔が病弱に見えるのか?」

「「「!!?」」」

 

 聞かれた。もう100m近く離れているというのに、あの男の耳は彼らの声が聞こえてしまった。

 

「私の連れが失礼しました。私たちもまだ未熟な子供でして……。どうかここは寛大な心で許してもらえないでしょうか?」

 

 私は咄嗟に謝った。

 どう見ても非はこちらにある。聞こえないからといって他人様を笑いものにしていい道理などない。まして聞かれたのなら謝罪するのが当然である。

 

「お気に障ったのならすぐに立ち去りましょう。申し訳ない」

「私の顔色は悪く見えるか? 私の顔は青白いか? 病弱に見えるか? 長く生きられないように見えるか? 死にそうに見えるか?」

 

 

 全身から嫌な汗が流れる。

 ヤバい。この男はマジでヤバい。

 まるで私たちを虫でも見ているかのような目。言葉が届いている気がしない。

 

「ど…どうか聞き流してもらえないだろうか」

「たかが人間の言葉など留める訳がない。だが、貴様らは私を不快にさせた」

 

 会話が成立していない。

 これ以上はマズいと思って逃げようとした瞬間、男の指先が胸に突き刺さった。

 

「がっ!?」

「報いが必要だ。私に口答えしたお前は並、その他は多めに与えよう」

 

 何かが体内に流れ込む。同時に全身の血が針のように逆立つ激痛。俺は地面に倒れ、のたうち回る。

 兄上たちの悲鳴が聞こえる。しかし私には何もできない。ただ地面を転がりまわっていた。

 

「私の血を与え続けるとどうなると思う? 人間の体は変貌の速度に耐えきれず細胞が壊れる」

 

 

「運が良ければお前だけは鬼となるだろう」

 

 

 

 男は嘲笑を残しながら去っていった。

 鬼? 血? 一体何のことを言っている? 訳が分からない。やはりあの男は異常だ。

 しかし私の身体は言っている。私は今から生まれ変わると。

 

 あの男に刺された箇所を起点に変化が加速した。

 全身に走るビリっとした僅かな痛み。腹から伸びた異物の神経を伝って、エネルギーが全身に行き渡る。

 それに続き、筋肉や骨や神経や皮膚…。肉体のあらゆる部位を、全身の細胞一つ一つに至るまで全てが変化を遂げていく。

 強靭な肉体。頑丈な骨格。野生生物を凌駕する感覚。

 この一瞬、ただの少年に過ぎない私が『何か』へと書き換えられていく。

 自分の体が自分のものでないような違和感。それでいて、これまでの自分の肉体が偽物だったかのように適合する身体。その感覚がとても……。

 

 

 

 その感覚がとても心地よい!

 

 

 

 私は…俺はこの瞬間、人間をぶっちぎりで超えた!

 実に清々しい気分だ。人間よりも上位の存在になる感覚はこんなにも気持ちがいいのか。

 今ならジョジョのDIOの気分も理解出来る。この感覚は抗いがたい。

 

「ぐ…グルゥアアああああああああああああああああああああああ!!!」

 

 俺は町の夜空目掛け、快感を吐き出すかのように叫んだ。




鬼滅の刃の鬼化ss増えろ! 炭治郎の鬼化モノとか

下弦の伍の塁でアレなのだから、下弦の鬼ってめっちゃ強いよね?

  • いや、下弦など雑魚だ
  • うん、塁がもっと真剣なら義勇にも勝てた
  • いや、塁が強いだけで下弦は雑魚だ
  • 分からない、下弦自体強さにバラつきがある

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