鬼喰いの針~人間失格になった私は鬼として共食いします~   作:大枝豆もやし

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第10話

「ガハ…!」

 

 私より二倍も巨大な鬼がスレッジハンマーをふり下ろそうとする。

 私はそれが振り下ろされる前に鬼の腹を巨大な針で刺すことで内部をズタズタにしてやった。

 

「ゴフュ!?」

 

 拳が異様に巨大化した鬼が殴りかかる。

 私は鬼の腕を空手の中段受けで止め、受けの手を伸ばしながら針を指から伸ばすことでその鬼の首を貫いた。

 

「ゲボッ!?」

 

 足が異様に長い鬼が後ろから飛び掛かる

 とある裏技で気配を察知した私は、後ろ蹴りを食らわせ、蹴りのインパクトが鬼の身体を浸透すると同時に針を踵から出して貫いた。

 

 それからも私は鬼を殺し続ける。敵をカウンターで倒し、コチラから仕掛け、中には同士討ちしたとこをまとめて殺し。

 

 殺す殺す殺す。ただひたすら向かってくる鬼共を殺す!

 

「ふ…ふふふ! フハハハハハ!!」

 

 楽しい。

 自然とほほえみが零れる。

 もっとだ、もっと私に闘争を…活きている感じをよこせ!!

 

 

 

 ……おっと、その前にやることがある。

 

「そこのガキども、今のうちに円陣を組め! まだ戦える奴は負傷者を取り囲むようにして防御態勢を整えるんだ!」

「「「は…はい!」」」

 

 子供たちは私の言った通り、いやそれ以上の動きを見せてくれた。

 負傷者の救助、防御陣形の形成、敵の牽制。まるで軍隊…とまではいかないが新兵ぐらいの精度ではやってのけた。

 

「ヒャハハハハハ!亀みてえに守っても意味ねえぜ!!」

「ヒィィィィィィ!!」

 

 ……しかしやはり所詮は子供。生物的に上位である鬼には到底届かない。

 仕方ない、少しぐらいは援護してやってもいいか。

 

 子供に襲い掛かる鬼目掛けて針を投げる。

 細かい針だ。一部を拘束こそできるが、絶命させるには出力不足だ。

 私に襲い掛かる元気な鬼たちを倒し終えたらソッチに向かう。怖いとは思うが少し我慢してくれ、少年。

 

「や…やあ!」

 

 少年が鬼の首目掛けて刀を振るった。

 鬼の動きが止まったのを見てチャンスだと思ったのだろう。

 しかし無駄なこと。鬼は通常の手段では殺せない。

 たとえ首を刎ねられようとも胴体を割こうともすぐさま再生しやがる。

 倒すには全身に偏在するあの因子を取り出さなくては……。

 

「…………なに?」

 

 私の予想に反して、鬼は絶命した。

 一体あの少年は何をした? 一見するとただ首を刎ねただけのようだが……まさか毒か? 藤の花のような、鬼の嫌う成分が含まれているのか? ……いや、あの刀にはそんな『臭い』は存在しない。ならば何故?

 

 私は鬼たちを殺しながら他の少年少女たちに目を向ける。

 彼ら彼女らも先ほどの少年同様に鬼たちを殺していった

 刀で首を刎ねる。たったそれだけであのしぶとい鬼たちは黒い灰となって消えていった。

 

 なるほど、どうやらあの刀は特別な刀らしい。

 首のみを狙っているあたり、どうやらあの刀は首を刎ねることでしか効力を発揮出来ないようだ。

 

 しかしこれは驚いた。まさか私の針と日光以外にも鬼の命を絶つ手段があったとは。

 これではあの刀を持つ相手との戦闘法も考えなくては。

 そのためにも彼らを生かして話を聞こう。

 

 鬼目掛けて針を投げる。

 一つ二つではない。何本も同時に投げる。

 ただ針が刺さるだけで鬼は次々と絶命していった。

 それもそのはず。鬼以外の生物にとってはただ針が刺さるだけの嫌がらせにしかならないが、鬼にとっては一本一本が絶命しかねない凶器なのだから。

 

 投げる投げる投げる。

 避けられないように、時には誘導して、時には同士討ちを狙って。

 そうして着実に数を減らし、比較的強い鬼が生き残った。

 

「針鬼ィィィィ! 今日という今日はもう我慢ならねえ! ここでテメエをぶっ殺してやる!」

 

 巨大な鬼だ。まるで象のよう。ただ針を投げる程度ではあの肌に傷一つ付かず、刺さっても針の根が全身には届かないだろう。

 こういう時こそアレの出番だ。

 

「トドメだ」

 

 私の人差し指が赤く染まる。

 第一関節まで赤く染まると同時に、全ての手の指から針が発射された。

 

 

【針の流法・血針弾(バレットニードル)】

 

 

 指先から射出された針の弾丸は鬼の眉間を貫き、脳内で根を張る。

 悲鳴もあげる瞬間もなく鬼は絶命した。

 

 よし、これで強そうなのは片付いた。後は流法も異形部分もない雑魚のみだ。

 

「あ…あの!」

「ん?何だ少年?」

「向こうにはぐれた女の子がいます!どうか助けてくれませんか!?」

 

 少年の指さす方角に目を向ける。

 確かに人間の気配がする。しかも複数だ。

 おそらく先ほどの襲撃で散り散りになってしまったのだろう。

 

 それほど遠くでもないからいいか。そう思っていると他の子が突っかかってきた。

 

「お…おいお前何言ってんだ!? あの子を殺す気か!?」

「け、けどよぉ。このまま放っても死んじまうぜ?ならこの鬼に賭けようぜ?」

「何を無責任なことを言ってやがる!?」

「じゃあお前が行けよ!」

 

 喧嘩しだす二人。

 

「分かった分かった。私がその子を保護しに行くから喧嘩をするんじゃない」

 

 そう言って私はたいして喧嘩も止めずに行った。

 行くなら早く行かねば。向こうの子たちが殺される前に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちきしょうちきしょうちきしょう! 針鬼め、あんなに強い癖して独り占めかよ!!」

 

 山の中、一匹の鬼が木々の間を抜けならが走っていた。

 目的地など存在しない。

 遠くへ。出来る限り遠くへ。

 あの鬼に追いつかれないほど遠く逃げる。

 

「(クソが! どいつもこいつも役に立たねえ!)」

 

 当初の予定では、彼は他の鬼に紛れて子供たちを食らうつもりだった。

 騒ぎを嗅ぎつけて針鬼が来ることは予想済み。

 故に暴れる鬼たちを餌にして自分はこっそりと子供たちを食らう。そういう予定だった。

 

 だが実際はどうだ? 針鬼は予想以上に早く駆け付け、瞬く間に鬼を殲滅した。

 鬼殺隊のガキ共も予想以上に粘りやがった。おかげでこっそり食う暇もない。

 

「ちきしょうちきしょうちきしょう! あの優男め……うん?」

 

 針鬼から逃げる道中、子供の集団からはぐれた女の子供の剣士を見つけた。

 思ってもいなかった駄賃だ。どれ、ありがたく頂くか。

 

 鬼の身体から『何か』が飛び出た。

 

「!?」

 

 咄嗟に避ける少女の剣士。

 続いて二撃、三撃と。何かが飛んでくるも、蝶を模した髪飾りを付けた黒い長髪と蝶のような羽織を靡かせながら、剣でそれらを弾く。

 

「よお姉ちゃん、俺と遊んでいかね?」

「…鬼!」

 

 月明かりが両者を照らす。そこで周囲の子供たちも鬼の姿をハッキリと確認した。

 鬼は異形の鬼だった。

 ゲゲゲの鬼太郎に登場する百目鬼のような姿。

 百目鬼はギョロリと全身の目で少女を睨む。

 

 ──全集中・花の呼吸

 

 鬼を見た途端、特殊な呼吸法を用いて神経を研ぎ澄ます。

 対する百目鬼は何もしない。全身の目をニヤニヤと歪ませる。

 

【伍ノ型・徒の芍薬】

 

 繰り出される複数の銀閃。五つを超える桃色の斬撃は全てが鬼を切り刻まんとするが……。

 

「おっそ」

「あぐッ……!」

 

 鬼は全ての斬撃を避けながら少女の懐に潜り込み、彼女の腹をぞんざいに殴り飛ばした。

 蹴鞠のように吹き飛ぶ。ごろごろと地面を転がり、痛みを堪えながら何とか体勢を整えて少女は両足を付いた。……剣を杖にしながら。

 

「(こ…呼吸が……)」 

 

 横隔膜をやられたせいか、呼吸が安定しない。

 呼吸法によって肉体を強化している鬼殺隊にとって、呼吸法が使えないということは死に繋がる。

 早く呼吸を整えて戦う体勢を取らなくてはやられる!

 

「(ダメ…出来ない……)

 

 呼吸は戻らない。視界も霞んできた。

 気概だけで立ち上がるも、終幕は呆気なく降ろされる。

 

 

 

【針の流法(モード)血針弾(バレットニードル)

 

 

 

「じゃあ死……うおッ!?」

 

 突如、鬼の背後から針が投げられた。それを咄嗟に掴んで針を防ぐ。

 

 わざわざ確認するまでもない。こんな攻撃する鬼など奴ぐらいだ。

 

「は…針鬼ィィィィィィ」

「やあ、私も混ぜてくれよ」

 

下弦の伍の塁でアレなのだから、下弦の鬼ってめっちゃ強いよね?

  • いや、下弦など雑魚だ
  • うん、塁がもっと真剣なら義勇にも勝てた
  • いや、塁が強いだけで下弦は雑魚だ
  • 分からない、下弦自体強さにバラつきがある
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