鬼喰いの針~人間失格になった私は鬼として共食いします~ 作:大枝豆もやし
とある列車。
乗員がほぼ全員眠っている中、三人の少年が剣を振っていた。
鬼殺隊の剣士達である。
太陽の耳飾りを付けた少年、炭治郎。たんぽぽのような頭をした少年、善逸。猪の被り物をした半裸の少年、伊之助。
彼らは列車と一体化した鬼、魘夢から乗客を守るために、彼らは剣を必死に振るう。
【ヒノカミ神楽 壱ノ型 円舞】
刀を振るって伸びる触手を叩き切る。
しかしその程度。鬼にとっては毛を切られた程度のダメージすらない。
鬼の動きを完全に止めるには、鬼の首を斬るしかない。
だが、今はソレだけで十分である。
【火の流法
妹の禰豆子が血鬼術で触手を燃やす。
腕を扇いでばら撒くように、炎を拡散させる。
列車内の触手は瞬く間に燃え上がり、含まれる鬼因子を食らった。
「ま、こんなモンね」
炎を吸収して、喰らった因子を取り込む。
今の禰豆子の炎は、葉蔵の針と似たような効果がある。
鬼因子のみに反応し、鬼因子のみを燃やして吸収し、回収した鬼因子を使い手が取り込む。
葉蔵と比べたらまだまだ甘いが、ソレでも鬼にとっては脅威、鬼殺隊にとっては頼もしい血鬼術である。
「よし、このままいくぞ!」
「待ってお兄ちゃん達!」
【火の流法
炭治郎たちの身体に、禰豆子の炎が纏わりつく。
しかしその炎が彼らを燃やすことも、消えることもなかった。
「な…何すんの禰豆子ちゃん!? いきなり炎を出すとか、俺たち殺す気!?」
「落ち着けタンポポ野郎! 全然熱くねえだろホラ!」
「ありがとう禰豆子! ほら行くぞ!」
「あ、待てかまぼこ! 俺が先だ! 行くぞタンポポ!」
「引っ張るなよ伊之助!?」
炭治郎が触手を切り裂きながら、その残りを善逸と伊之助が刈り取る。
最後に後ろの禰豆子が触手を炎で燃やし続けることで新たな触手が車内に入るのを妨害。
そうしながら前に進むことで次々と触手の支配圏を奪っていった。
「(ま…マズいマズいマズい! 早く奴らを殺さないと!!)」
無論、魘夢もただ黙ってみていたわけじゃない。
ただ触手を伸ばすだけじゃなく、己の分身を派遣したり、更に強い触手も用意して血鬼術を発動させたのだが……。
【血鬼術 強制昏倒催眠の囁き】
【血鬼術 強制昏倒睡眠・眼】
「そんなものは効かない! 禰豆子の炎がある限り、お前の血鬼術が俺たちに届くことはない!」
「(く~~~~~~~~~!!? 何だよソレ!? そんなの反則だ!! 正々堂々としろ!!)」
おまいう。
自分は安全圏に隠れ、触手や分身を使って一方的に殺そうとしてるのにこの言い様。
魘夢の気持ちも分からなくはないが、ソレでもコイツが言っていいセリフではない。
「(よし、相手の鬼は炎の力に動揺している! 今のうちに攻め込む!!)」
炭治郎は早期戦に持ち込むために汽車の先頭を目指す。
禰豆子の炎の鎧は決して万能ではない。
魘夢の血鬼術を受ける度に、どんどん削られているのだ。
持って後は五回ほど。禰豆子も分身や触手の処理で忙しく、消耗もしているため援護は期待出来ない。
冷静になれば気づく筈。しかし自身の血鬼術が無効化されるという初めての経験に冷静さを失ってしまった。
こうなれば勝負は決まったも同然。後はミスの無いように行うだけ……。
「よもやよもや! まさか柱以上に新人と鬼が活躍するとは! 柱として恥ずかしい限りだ! 穴があったら入りたい!!」
大声で話しながら刀を振るう煉獄。
彼も悪夢から脱出し、炭治郎が来るまで一人で戦っていた。
「煉獄さん、鬼は切符をトリガーにして血鬼術を発動させました! 能力は催眠と悪夢! 媒体は音波! 耳を塞いでも音を身体に当たる事で夢の世界に引きずり込まれます」
「うむ! 横文字は分からんが意図は伝わった!」
「(ま…まずい! 柱まで出てきたらもうどうしようもなくなる!)」
遂に、柱までも目覚めた。
これで勝敗は外もう覆らない……。
「ここです!」
「うむ!」
煉獄は先頭車両に続く戸に手を掛けた途端………。
べべん。
「「「!!?」」」
琵琶の音と共に、凄まじい鬼の気配を察知した。
強く、濃い鬼の気配。
そのあまりの強大さに、感覚の鋭い炭治郎たちは動けなくなった。
「なんだ、たったこれだけか」
ゆっくりと、その鬼は突然巻き起こった煙の中から全身を露わにした。
死人の様な肌の色に紅梅色の短髪。
中性的な顔立ちでありながら、無駄のない引き締まった筋肉質な肉体。
顔と全身に藍色の入れ墨のような文様が刻まれ、足と手の指は同じ色に染まり、爪は髪と同じ色。
素肌に袖のない羽織を直接着用、下は砂色のズボン状の道着と両足首に数珠のようなものを着けているだけの軽装。
アーモンドのような釣り目の白目部分は水色でひび割れのような模様が浮かび、黄色い瞳には……。
「上弦の……参…!?」
右目には“上弦”が、左目には“参”がそれぞれ刻まれている。
ソレは証。
最強格の鬼である上弦トップ3であるという証明である。
「……まあいい。久々に目覚めたんだ。ぬるい相手なら承知せんぞ!」
拳鬼は、空気が軋む程の圧を剣士たちに向けた。