鬼喰いの針~人間失格になった私は鬼として共食いします~   作:大枝豆もやし

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悲報:無惨、裏切られる。


下剋上

「おのれー!おのれおのれおのれ………!」

 

 無限城のとある一室。

 城主である無惨は苛立っていた。

 門番として用意したはずの鬼二体。それがいとも容易く撃破された。

 大した時間も稼げず、消耗させるどころか逆に血を吸われた役立たずめ!!

 折角血をふんだんに分け与えて限界まで強化してやったというのに、何だこの体たらくは!?

 クソ、やはりどれだけ優れた血鬼術を持っていても、持ち主がカスが意味ない! さっさと食って力だけ回収し、他の鬼に渡せば良かった!!

 

「こうなったら予定より早いが分身たちを……鳴女、準備だ! ………鳴女? 何故返事がない………!!?」

 

 いつもならすぐ行動する筈の鳴女が返事をしないことに苛立ちながら振り向く無惨。

 その顔はすぐさま驚愕に変わった………。

 

「………そう言う事か!?」

 

 肝心の鳴女が、葉蔵の針によって浸食されていた。

 

 琵琶と琵琶を持つ手が赤い針に貫かれている。

 既に針の根が張られており、徐々に肉体へと侵攻しようと、根を伸ばしている。

 

 鳴女の容態を見て、やっと無惨が合点がいった。

 何故異界にあるはずの無限城に葉蔵が忍び込めたのか、その答えがコレだ。

 

 

 葉蔵は入れてもらったのだ、外ならぬ鳴女から。

 

 

 針によって鳴女を無理やり操り、無理やり血鬼術を発動させ、無理やり無限城に侵入。

 そのあとは余計なことが出来ないように動きを封じ、帰りにまた無理やり動かすつもりである。

 何時何処で針を刺されたのかは分からないし、今はそんなこと等どうでもいい。重要なのは葉蔵に鳴女の制御権を奪われない事である。

 

「……おのれ!」

 

 すぐさま無惨は自壊の呪いを発動させた。

 ここまで深く刺さった葉蔵の針を切除するのは不可能。

 ここは一時肉体を融解させ、後に細胞を回収すればいい。

 大事なのは鳴女の空間制御能力と無限城の制御を奪われないようにすること。

 何なら、回収した細胞を吸収する事で、鳴女の血鬼術をコピーするのもアリだ。いや、そうした方がいい。

 

「鳴女よ、その力、少し貰うぞ」

「む、無惨様……何故……」

 

 鳴女の言葉に耳を貸すことなく、無惨は細胞を吸収した。

 

 

 

「……フン、最初からこうすればよかったのだ。他者を使わなければ、余計な失敗や面倒事も最初から存在しない」

 

 鳴女を吸収して数分後、無惨はその血鬼術を完全に支配下に置いた。

 発動条件は琵琶ではなく指を鳴らす事。

 鳴らしながら移動させたいもの、移動したいものの正確な場所と移動先を同時に思い浮かべることで術が発動する。

 

 早速無惨は上弦たちを集めようと早速習得したばかりの血鬼術を使おうとする。

 しかし、指を鳴らすその瞬間、彼は異常に気が付いた。

 上弦のトップ3から、呪いの繋がりが感じられないのだ。

 

「!!?」

 

 パチン。

 指を鳴らすも、慌てて無惨は転送先を自身の前から別の部屋に変更。

 続けて、伝心(テレパシー)で上弦たちにメッセージを送る。

 

『どういう……事だ……黒死牟!?』

『……下剋上ですよ…無惨様。私は…いや私たちは…あなたを倒し…葉蔵に挑む』

『………何?』

 

 ギシリと、歯軋りする無惨。

 そんな彼に追い打ちをかけるかのように、また別の鬼が伝心に割り込んでくる。

 

『そういうことですよ~無惨様~?』

『童磨!』

『無惨様、貴方は臆病だ。ずっと何かに怯え、必死に恐怖を消そうとしている。……俺は、そんな貴方を救ってやりたいのさ。死という絶対的な救済でね』

『……やはり貴様は異常だな!』

 

 ギシギシッ。

 無惨の歯軋りが更に強くなる。

 

『無惨……俺はお前を許さない』

『猗窩座……!』

『やっと目が覚めた。記憶も戻った。俺はやっと本来の俺を……あの人との約束を思い出した!』

 

 

 

『俺は憎い!貴様にまんまと踊らされた弱い自分も! 死を選ぼうとも思ったが、まずは俺を鬼にした挙句、あの人達との約束を長い間破らせたお前を殺す! ソレが俺に出来る償いだ!!』

 

 ギッシッギッシ!ぼこーん!

 あまりにも歯軋りが強すぎて、無惨の前歯が粉々になった。

 

 

 皆さんは葉蔵が猗窩座にかけたおまじないを覚えているだろうか。

 去り際に血針弾を頭に撃ち込み、そのまま放置していたあのおまじない。

 実は猗窩座だけでなくトップ3全てに撃ち込んでおり、その効力が今発揮されるところである。

 そうとも知らず、無惨は怒り狂う。

 もっと早く気づいて取り除いていれば結果は違ったかもしれない……。

 

『~~~~~~~~!!? 貴様ら…!!? もういい、貴様らも殺して血肉を回収することで我が糧に成れ!!』

 

 パチンと、怒りを込めた指パッチン。

 三人の鬼を『処刑場』へと飛ばした。

 

 本来なら対葉蔵に作った五つの部屋。

 その部屋の主こそ、罪人を裁く刺客である。

 それぞれが上弦を超える力を持ち、尚且つ無惨と同じく鬼殺しの細胞を持つ。

 当然である、なにせそれらは無惨の分身であり、鬼との戦闘に特化したものなのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだこの部屋は?」

 

 戸を開けると、そこは異世界だった。

 辺り一面に広がる荒野。

 天井の代わりにどこまでも続く闇夜が、床の代わりに果てまで続く地平線が。

 イヤ、本当にどこだここ? 明らかに城内にあっていい部屋じゃないよね?

 強力な鬼の気配がしたので蹴飛ばして開けたのだが、ここだけ異世界に繋がっているかのようだ。

 

「……どこでもドアかな?」

 

 一旦振り返る。

 うん、ちゃんと戸はある。

 戸だけがぽつんと荒野に存在している。

 本当にドラえもんのどこでもドアみたいだ。……いや、少し違うか。

 

 おそらくこれは空間操作稀有の血鬼術によるものだろう。

 屋敷内部の空間を弄って拡張、或いは他所から繋いだといったところか。

 そう考えたら辻褄が合う。

 現に、この空間そのものから鬼の匂いがする。

 というか、この城そのものが血鬼術によって構成されているものだろう。

 

 さて、とりあえずここまで見ればいいだろう。

 

 

「すまないね、放っておいて。でも決して無視していたわけじゃないんだ」

『………』

 

 私は部屋の主と思われる鬼に目を向けた。

 

 戸の後ろにある、巨大な柱のような岩の上に佇む一体の鬼。

 滅茶苦茶デカい。恐竜の生き残りを見ているかのようなサイズ。ここまで大きいと『外』に出すのは難しそうだな。

 巨大な鳥のような姿をしているが、れっきとした鬼だ。上弦……いや、ソレすら超える鬼としての圧がそう語っている。

 

『ピィィィィィ!!!』

 

 鳥の鬼は巨大な翼を拡げ、空を飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 無限城のとある一室……いや、ソコを部屋と呼ぶには少し不適切だろうか。

 

 辺り一面が水に満たされた別世界。

 暗く、光が一切ないその光景はまるで深い海の底。

 そこに黒死牟はいた。

 

 彼は咄嗟に鰓を喉に創り出し、水中でも呼吸出来るよう対策を施す。

 水中戦を想定しておふざけに開発した変化技だが、こんなとこで役立つとは。

 黒死牟は若干の感動を覚えた。

 

「成程…これが無惨様が…創り出した切り札か……」

 

 後ろを振り返る。

 そこにはこの部屋の主と思われる巨大な魚がいた。

 蛇や鰻のように長細い外見。

 巨木のように太く、川のように長い胴体。

 尾ヒレに当たる部位はタコのような触手が生えている。

 

『ホオオオおおオオオオオオオオオオオオオ!!!!』

 

 巨大な魚は、水中でありながら大音量で吠えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 無限城のとある一室

 その部屋もまた別世界のような場所だった。

 辺り一帯が炎。

 上も下も左右も、全てが炎一色の部屋。

 そこに童磨はいた。

 

「成程成程。ここで葉蔵を処刑する算段だったのか」

 

 後ろを振り返る。

 そこにはこの部屋の主と思われる巨大な獣がいた。

 

 獅子や狛犬のような外見。

 家一軒なんて簡単に踏み潰せそうな程に巨大な体。

 鬣は燃え盛る炎そのものであり、牙や爪は赤い熱気を帯びている。

 

「ぐるあああああああああああああああああああああ!!!!」

 

 獣は炎の中で盛大に吠えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだここは?」

 

 猗窩座が飛ばされた先は、石造りの部屋だった。

 石造りの巨大な柱や壁に支えられているのは、同じく石造りの天井。

 だだっ広い部屋の床は砂で満たされており、砂漠のようになっている。

 他の鬼達は別世界のような場に飛ばされたというのに、何故猗窩座だけ異質な部屋とはいえ、まだ部屋として認識出きるような場に飛ばされたのか……。

 

 突如、地面が揺れた。

 地震か? 猗窩座は一瞬そう判断するも、直ぐにソレが間違いだと気づく。

 ここは無限城。異空間に存在する建物だ。そんな場所に地震など起きる筈が無いし、百年近く過ごした猗窩座もこの城で地震を経験したことはなかった。

 では何だ?一体何故揺れる。

 その正体をすぐ知ることになる……。

 

 揺れが一層に強くなる。

 瞬間、砂の中からズズズと巨大な岩が現れた。

 否、ソレは岩ではない……。

 

『グおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!』

 

 ソレは巨大な鬼である。

 巨岩のような体躯をした鬼。

 典型的な鬼をベースに、鈍く尖った大きな一本角、岩のような筋肉と皮膚。

 これこそこの部屋の主である。

 

『……猗窩座、どうやって呪いを解いた?』

 

 岩鬼の口から、無惨の声が漏れた。

 無惨が岩鬼を通じて会話しているのだ。

 

「針鬼……葉蔵のおかげだ」

 

 猗窩座は律儀に答える。

 別に無視して攻撃すればいいものを、やはり彼の根っこは真面目な奴という事か。

 

「針鬼の撃ち込んだ」

『また奴か……!?』

 

 ギシリと、無感情に佇む岩鬼の口から、歯軋りが聞こえた。

 

「おそらく本人は実験のつもりでやったのだろうが、俺にとっては思わぬ幸運だ。棚から丹餅とはまさしくこの事だ」

『……まさか、他の鬼たちも!?』

「ソレは知らん。だがお前の様子を見るに、黒死牟や童磨にも裏切られたのだろ? ソレもそうだろう。誰がお前なんかに忠誠を誓うか」

『……何?』

 

 ギシギシ歯軋りギシギシ。

 表情筋すら一切動いてない筈の岩鬼の口から、激しい歯軋りが漏れる。

 

「所詮お前はその程度の器だったんだ。もし本当に鬼の王に相応しいのなら、俺に偽りの忠誠心も偽の記憶も植え付ける必要などない。黒死牟も童磨も同じじゃないのか?」

『適当にほざくな! 奴らには記憶がある!! 黒死牟も自ら鬼になると……証拠に産屋敷の首を私に差し出した!!』

「だから何だ? 記憶があることが忠誠心を植え付けられてない証拠にはならない。もし仮に黒死牟に当時は忠誠心があっても、ソレを維持しているとは限らない。……知ってるか。

鬼の心も意外とうつろいやすいらしいぞ? お前の嫌いな変化という奴だな」

『~~~~~~~~!!? もういい! 貴様はここで死ね!!』

 

 ブツンッ!

 無惨からの通信が一方的に切られる。

 同時、岩鬼の窪みのような目に光が灯り、ゴゴゴと音を立てながら、ゆっくりと体を動かす。

 

「……やっと戦いか」

 

 ゆっくりと、身体全身に力を送るかのように構えを取る。

 

 無惨は憎い。

 成りたくもない鬼にされ、大切な記憶を奪われ、悪事に身を堕とす事になった元凶。恨まないはずが無い。

 おそらくずっと前から無意識で気づいていたのだろう。いつも何処かで何か引っかかりを覚えていた。

 だが、この瞬間……戦っている時だけはソレを忘れられる。

 今もそう。

 この時だけは、猗窩座は恋雪のことを忘れている。

 戦う事に集中し、ソレに対して思考を巡らせている。

 

「(俺もやはり……鬼という事か)」

 

 ニヤリと、口元を歪ませながら、猗窩座は血鬼術を発動させた。

 

 

【破壊殺・悪鬼転身】

 

 

 足元に拡がる氷の結晶を模した陣。

 ブォンと重低音を発しながらが浮かび上がる。

 同時、猗窩座の肉体も変化した。

 

 

 全身を覆う甲殻類のような装甲。

 両肩から伸びる肉体同様に装甲に包まれた腕。

 眼の位置に当たる鎧の隙間から爛々と輝く黄色の光。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 全身を鎧によって武装した猗窩座……いや、狛治。

 彼は強烈なオーラを纏いながら、岩鬼に突進した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、これで役者は揃った。

 祭りも本番に近づいている。

 

 さあ鬼共よ、今宵は存分に暴れるがいい!

 




黒死牟って無惨にビジパ認定されてましたけど、本当にちゃんとした忠誠心があったのでしょうか。
無惨って記憶変えたり、忠誠心植え付けるのでいまいち信用出来ないんですよね~。
記憶は無惨にとって不利なものがなかったから放置しただけで、鬼に成る過程で脳みそをこっそり弄るなり、精神系の血鬼術を気づかれないよう黒死牟の無意識下にかけて忠誠心を植え付ける、或いは忠誠心を抱きやすくしたのではないかと疑ってしまいます。
現に呪いはちゃんとあるのですから。
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