鬼喰いの針~人間失格になった私は鬼として共食いします~   作:大枝豆もやし

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無惨の用意した分身体は大体同じぐらいのスペックです。
ただ、相性やら能力の性質やら用意された環境によって戦況が影響を受けているだけです。


岩の鬼と炎の鬼

 辺り一面を砂塵が舞い、地面が鳴り響く。

 そんな中、二体の鬼が激突していた。

 狛治と岩鬼である。

 

「グオオオオオ!!」

 

 砂嵐の中、岩鬼が血鬼術を発動させる。

 狛治目掛けて、岩の雪崩を引き起こした

 人一人分はある巨大な岩を、これでもかと大量にぶつける。

 

 

【破壊殺・乱式】

 

 

 狛治は増えた腕をフルに使って、桃色のオーラを身に纏ってソレを防いだ。

 装甲と闘気に覆われた、四本の腕。

 ソレで防御、受け流し、時には拳を突き出して。

 足場が安定しない以上、足腰は使えない。

 よって腕力とオーラでこれらを防いでみせた。

 

「グオオオオオ!!」

 

 再び岩鬼が血鬼術を使う。

 石の礫を創り出し、発射。

 十個二十個なんて生易しい数なんかじゃない。

 千個、二千個、三千個…。拳大程の礫が無数に撃ちだされる。

 

 

【破壊殺・照明しだれ柳】

 

 

 桃色の光―――闘気を身に纏い、無数の礫から身を守る。

 鎧のように闘気は針を防ぎ、礫の嵐の中を狛治は突き進む。

 弾幕を切り裂き、一歩ずつ、確実に。狛治は前に接近して……いかなかった。

 

「(クソ、やはり足場が悪すぎる!!)」

 

 足場は最悪。

 地面が波のように隆起と陥没を繰り返し、移動を阻害している。

 

 視界も最悪。

 砂嵐が無規則に舞い、砂の一粒一粒から発せられる気配によって敵の攻撃が読み難くなっている。

 実際に、この砂には童磨の凍て氷と同じような機能があり、砂の鋭い粒子が狛治の甲殻に当たる度に硬い音を立てている。

 もしこの外殻が無ければ、おろし金で擦られたように肌を裂かれ、体内に入り込まれるようなら内臓をズタズタに引き裂かれているところであろう。

 だが、眼前の敵を相手取るにはまだ足りない。

 

 この場の環境は、彼にとってあまりにも不利であった。

 狛治は葉蔵や童磨と違って、環境変化に対抗出来る血鬼術がない。

 同じく身体強化系の傾向が強い黒死牟は呼吸と血鬼術の合わせ技で無理矢理環境を対策してみせたが、狛治はそのレベルに到達していないのだ。

 

「(何かないのか? あの鬼を倒せる何かは……!?)」

 

 摸索を中断して敵に向き直る。

 何やら血鬼術を使おうとしている。

 ソレに対処するため、狛治は足場の悪い場でも踏ん張りがきく構えを取って迎撃の態勢を整えた。

 

「グオオオオオ!」

 

 岩鬼が地面目掛けて拳を振り落とす。

 瞬間、生じる衝撃波。

 地割れ。

 血鬼術によって地面を操り、地面に巨大な穴を創り出したのだ。

 グラグラと常に揺れ動く地面が、更に大きな振動となって狛治の足を止める。

 

「ック!?………せい!!」

 

 揺れる地面によって体勢が崩れる狛治。

 しかし何とか持ち堪え、足にオーラを集中。血鬼術を発動。

 グラグラと揺れる地面を踏み抜いて、術を無理やり止めた。

 そして踏み抜きの反動を利用して跳び、更に距離を縮めようと試みる。

 

「グオオオオオ!!」

 

 岩鬼が地面をたたく。

 途端に起こる隆起。

 家屋一軒程の大きさに盛り上がった巨岩達。

 岩は巨大な鈍い刃となって飛び出し、狛治に迫り来る。

 

 

【破壊殺・砕式・鬼芯八重芯】

 

 

 左右四発づつ、合計十六発の強力かつ正確な乱打を放つ。

 四本の腕にオーラを纏わせ、極限まで引き上げた腕力から撃ちだされた拳のオーラ砲。

 それらは迫り来る岩砲を見事撃ち落とし、粉々に粉砕。砂となった岩の残骸が周囲に漂う。

 

「はあッ!!」

 

 ソレを足場にして、狛治は更に跳び上がった!

 今まで接近出来なかったのは、地面が常に揺れ動いているから。

 揺れさえなければ何時でも接近し、攻撃を仕掛けられる。

 岩鬼は自分で自分の優位性を崩してしまったのだ。

 

「グオオオオオ!」

 

 よせばいいものを、更に岩砲を放つ。

 それらを四本の腕で受け流す狛治。

 今度は砕くことなく、むしろ足場として利用して更に接近した。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

 砂嵐の中を突っ切って、狛治が拳を岩鬼目掛けて振るう。

 もう肉弾戦が出来る距離まで接近した。

 後は殴るのみである。

 

「グオオオオオ!!」

 

 岩鬼も合わせて拳を振るう。

 十倍はある体格差と身長差、それ以上はある体重差。

 通常ならば小さい狛治が潰される筈だが、ここは鬼の世界。

 そんな常識なんて通じないし、もし仮に通じるのなら鬼殺隊も苦労しない。

 

「グオオオオオ!!」

 

 勝ったのは狛治。

 岩鬼の拳を破壊。上腕二頭まで砕き、右半身に罅が入る。

 痛みがあるのか、岩鬼は砕かれた自分の右腕を抑えながら、狛治目掛けて頭を振り下ろした。

 

 

【破壊殺 脚式・冠先割】

 

 

 頭突きに合わせて、後ろ回し蹴りを繰り出す。

 狛治の蹴りの威力と、岩鬼の頭突きの威力が乗ったカウンター。

 絶妙なタイミングで突き出された踵は、岩鬼の角を破壊し、頭部に罅を入れた。

 

「(!!)」

 

 狛治の拳が迫る。

 ヒビの入った頭部。

 このまま命中すれば粉砕出来る……。

 

「……なに?」

 

 拳が当たる直絶、岩鬼の形が崩れた。

 突然、砂になったのだ。

 

「!? そんなことが出来るのか!?」

 

 砂化能力。

 自身の肉体を砂状にすることで物理攻撃を無効化する。

 物理攻撃しか武器がない者にとって悪夢のような血鬼術だが……。

 

「問題ない!」

 

 もう一度殴る。

 今度は先程よりも闘気を込めて。

 

「グオオオオオ!!」

 

 再び砂になってやり過ごそうとする岩鬼。

 しかし、今度の攻撃は命中した。

 粉々に砕かれる鬼の頭部。

 続けて拳を全身に打ち続ける。

 

 狛治のオーラは、非物質にも接触可能であり、鬼因子にも直接ダメージを与えられる。

 葉蔵のアストラルニードルと同じ原理である。

 力の源である鬼因子を直接叩かれ、完全に非物質になっても防御不可。

 コレを超えるには、単純に防御力で防ぐしか、避けるしかない。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

 岩鬼を殴り続け、粉々にする。

 狛治には鬼を殺す能力はない。よって殴り続けて再生を阻害し、葉蔵か黒死牟が来るのを待つしかない。

 だが問題はない。疲労が存在しない鬼なら、殴り続けながら長時間待つことも可能なのだから。

 

 このままいけば狛治が勝つ。

 だが、そうはいかなかった……。

 

 

 

 

 パチン。

 突然、指を鳴らす音が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 辺り地面が炎の世界。

 そこで童磨は炎鬼と戦闘を繰り広げていた。

 

「グオオオオオ!!」

 

【血鬼術 蓮葉氷】

 

 

 氷の蓮を飛ばす。

 対する炎鬼は一吠えいて周囲の炎を操る。

 両者はぶつかり合い、混じり、蒸気となって消えた。

 

 

【血鬼術 寒烈の白姫】

 

 

 十体ほど、自身の氷による分身を創り出す。

 分身たちはすぐさま炎鬼を囲み、様々な血鬼術を繰り出す。

 しかし、炎鬼がダメージを負っている様子はない。

 炎の鎧を身に纏って防いでいるせいだ。

 

「グオオオオオ!!」

 

 炎の鎧を纏ったまま突進する炎鬼。

 白姫たちの包囲網を突破し、本体である童磨に牙を剥いた。

 

 

【血鬼術 枯園垂り】

 

 

 咄嗟に血鬼術で迎撃する。

 攻撃ではなく防御に重点を置いて、突進の威力を逸らすように。

 氷の斬撃は炎の鎧に突破され、童磨の扇子は炎鬼の爪によって粉砕された。

 だが、防御に専念したおかげか、衝撃を逃がす事には成功。吹っ飛ばされ地面に叩きつけられたが、大したダメージは受けずに済んだ。

 

「(……俺の血鬼術の威力が落ちている。やっぱり相性が悪いか)」

 

 童磨は万全とはいえなかった。

 彼の血鬼術は氷であるのに対し、向こうは炎の血鬼術。しかもこの一帯が火の海だ。

 おかげで血鬼術の威力は激減。分身もこの高熱のせいで溶けてしまい、本体と比べて大分劣化している。

 このままでは負ける。そう童磨は結論付け、次の手を打つことにした。

 

 

【血鬼術 寒烈の白姫】

 

【血鬼術 結晶の御子】

 

 

 童磨は再び分身を炎鬼にけしかける。

 振り切られた白姫たちも合流し、合計24体もの分身たちが炎鬼を足止め。

 その間に本体は準備を整える。

 

「……極楽転生」

 

 途端、童磨の肉体に変化が生じた。

 全身を氷が覆った。

 

 もうお分かりいただけるだろう。

 コレは繭。葉蔵が使う赤い結晶と同じモノ。つまり……。

 

 

 

 

「アッハッハッハッハッハッハぁ!!!」

 

 氷の繭から童磨が飛び出た。

 

 仏像、特に菩薩を模したかのような姿。

 鉄仮面のように冷たく表情のない顔、豪華に着飾った法衣。

 後光を表す光背は氷で形成されている。

 

 極楽転生。

 葉蔵に対抗する為に編み出した切り札である。

 

 

【血鬼術 霧氷・睡蓮菩薩】

 

 童磨が氷の巨大菩薩を製造する。

 一瞬で生成された氷の巨像。

 葉蔵と出会う前はコレが切り札だったのだが……。

 

「グルア!!」

 

 炎鬼は炎を右前足に纏わせ、睡蓮菩薩に振り落とす。

 バキバキバキ!

 容易く破壊される仏像。

 冷気は熱気によってかき消され、氷は炎に溶かされ、形は力によって砕かれ。

 かつて切り札だった技は呆気なく潰された。

 だが問題はない……。

 

 

【血鬼術 寒烈の白姫】

 

【血鬼術 結晶の御子】

 

 

 いくらでも代わりは用意できる。

 

 すぐさま投入された分身体。

 十、二十、三十、次々と作りだされ、炎鬼へと向かっていく。

 

「グルア!!」

 

 そしてその度に破壊されていった。

 一吠えして全身から全方向に炎を巻き起こす。

 高温の熱波が、灼熱の火炎が。氷像たちを次と燃やしていく。

 

 

【血鬼術 蔓蓮華】

 

【血鬼術 散り蓮華】

 

【血鬼術 冬ざれ氷柱】

 

 

 再び血鬼術を発動。

 無数に降り注ぐ氷の連撃。

 百、二百、いやそれ以上はある。

 次々と氷塊が殺意を以て繰り出されるが……。

 

「グルア!!」

 

 これもまた呆気なく破壊された。

 

 炎鬼が口から炎の弾丸を連続で射出する。

 吐き出された弾は標的に着弾すると同時に爆発。

 爆炎をまき散らし、爆風を起こし、轟音を立てながら。

 次々と炎の爆弾を発射して、童磨の弾幕を破壊してみせた。

 

 

 

 

【―――血鬼術】

 

 

 氷塊が迫り来る。

 

 氷像が量産される。

 

 冷気が吹き荒れる。

 

 

 

 火炎が焼き払う。

 

 熱波が荒れ狂う。

 

 

 

 冷気と熱気が、炎と氷が、術と術がぶつかり合い……。

 

 

 

 

「ぐ、グルル……」

 

 炎鬼がよろめいた。

 

 一体どういうことだろうか。

 童磨が変身するまではあれ程に押していた炎鬼が急に倒れだすとは。

 確かに童磨の火力も上がったが、それでも同格すらなってないというのに。

 その答えは童磨の血鬼術の本質にある。

 

 粉凍り。

 数ある血鬼術の中でも代表するものといっていい代物である。

 葉蔵との戦闘で派手な血鬼術に目が行きがちだが、本来の童磨の戦闘ではコレを基礎としている。

 鬼との戦闘でも有効。氷を体内に侵入させ、内部から凍らせるという芸当も可能である。

 そして、最近はさらに改良を重ね、進化させる事に成功した。

 

 粉凍り・極寒。

 その効力の一つとして、鬼の因子を直接凍らせる事が可能。

 要は葉蔵のマイクロブラッディミストと同じ原理である。

 葉蔵と戦闘を重ねるうちに葉蔵の技を真似て再現……いや、それ以上の効果を発揮したのだ。

 

 

 

【血鬼術 寒狼の荒星】

 

 

 巨大な氷の狼の頭部が現れ、口から冷気の光線(れいとうビーム)を放つ。

 ソレに合わせて炎を吐くが、威力は先程と比べて格段に落ちている。

 結果、冷凍ビームは火炎放射を貫き、炎鬼に命中。

 着弾箇所を凍らせ、更にダメージを与えた。

 

「グ…グルァ……グゥアア!!」

 

 何やら血鬼術を発動させようと吠えるが、何も起こらない。

 粉凍りが鬼因子を凍らせ、血鬼術を封じているのだ。

 こうなってしまえばもう終わり。

 じっくりと凍らせれば……。

 

 

 パチン。

 突然、指を鳴らす音が響いた。

 




 粉凍り・極寒
童磨が対葉蔵用に開発した新技。
通常の粉凍りとは違い、扇子で仰ぐ必要がない上に、結晶ノ御子のように遠隔操作可能。
侵入した相手の体内をズタズタにするだけではなく、鬼因子を凍らせて力を封じることも出来る。
また、他の血鬼術との併用も可能であり、他の血鬼術で創り出した氷からこの血鬼術に遠隔操作で変換する技術も童磨は開発した。
しかし、葉蔵にはブラッディマイクロミストで相殺したり、獣鬼態の体毛で遠隔操作をジャミングする等の手段があるため、対葉蔵として役立ったことは一度もない。
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