鬼喰いの針~人間失格になった私は鬼として共食いします~   作:大枝豆もやし

123 / 128
最終バトル 第二ラウンド

「誰か、まだ動ける奴はいないか!? 上弦の壱が無惨の全ての血を継いだ!!」

 

 作戦は失敗した。

 無惨の弱体化は失敗し、そのまま戦う羽目になった。

 戦果は惨敗。柱の中には赫刀に目覚める者もいたものの、あの男には到底及ばない。

 触手を振り回すだけで柱達を相手取り、それ以下の隊士では逆に養分か鬼にされて手駒と化す。 

 無駄の一言。巨大な龍を相手に群がる蟻のように、まるで効いてない。龍の方は鬱陶しい蟻を巨大な身体を少し揺する程度で潰してしまう。

 

 最早戦う力は残されていなかった。

 悲鳴嶼は特に年若い者を庇い、重症を負っていた。

 他の柱も似たような状況である。もう刀を振るえる力は残っていない。

 善逸や伊之助、そしてカナヲも致命傷は避けたようだが、衝撃で気絶している。

 

 完全に死に体である。

 これ程までに無惨とは圧倒的な存在なのだ。

 

「落ち着け冨岡。……ここまで来たら、葉蔵さんが勝つ事を願う事しが出来ん」

「そうよ。あの人なら、絶対に勝ってくれる!」

「くっ……!」

 

 かろうじて動けるのは、義勇と実弥、そして蜜理のみ。

 どちらにせよ、彼らは最後に残った二人の鬼の戦いに割って入れる力はない。

 ただ葉蔵の勝利を願うだけである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 星一つない黒い空。

 そこで二体の鬼による狂乱が行われていた。

 針鬼こと葉蔵は翼を広げて。剣鬼こと黒死牟はオーラを纏って。

 各々の能力を駆使して空中戦を繰り広げる。

 

 九閃。

 長刀より全く同時に現れた九つの剣閃。

 首、両肩、両わき腹、両腿の付け根、両膝。それらを狙う驚異の九連撃。

 しかし、葉蔵も驚愕の者。

 半数は飛行技術のみで避け、その他は弾丸で相殺してみせた。

 上弦を打ち破り、鬼の始祖に挑戦する者として恥じぬ御業である。

 

 次の瞬間、攻撃直後に隙を見出した葉蔵は銃撃を開始。

 しかし、外れる。

 予め打ち合わせでもしたかのように絶妙なタイミングで放った弾丸は空を過ぎ去った。

 弾丸の狙いは正確無比。故に読みやすく、避けるとしても最小限の動きで対応できる。

 葉蔵の射撃技術が高いが故の対応策である。

 

 だが問題はない。

 避けられることは想定内であり、次の手もちゃんと考えてある。

 

 

【針の流法 血喰砲・散弾】

 

 繰り出される血鬼術。

 瀑布の如き質量。

 津波の如き勢い。

 落雷の如き威力。

 

 黒死牟は剣一本で突破する。

 受け流し、切り伏せ、薙ぎ払いながら。

 己の進む道を切り開いて突き進み、乗り越えてみせた。

 

 

【月の呼吸 玖ノ型 降り月・連面】

 

 

 今度は黒死牟の番。

 弾丸の雨を進み切ったと同時、葉蔵目がけて斬撃の雨を繰り出す。

 

 降り注がれる無数の月刃。

 複雑な軌道を描きながら。

 倍々に分裂しながら。

 勢いを増しながら。

 

 葉蔵は飛行技術のみで振りきる。

 縦横無尽に急転回を、曲芸のように宙返りを、慣性を無視した減速と加速。

 自然界ではありえないような飛行技術を駆使してそれらを回避してみせた。

 

 

【血鬼術 神足通】

 

【時の流法 この瞬間こそ全て】

 

 

 同じタイミングで時空の血鬼術を発動させる。

 葉蔵は相手に致命的な隙を晒させる為、黒死牟は無防備な相手の懐を占領する為。

 勝敗を左右する大きな布石を打ったのだが、想定していなかった事故が起きてしまった。

 

「………な!?」

「………何?」

 

 黒死牟が頓珍漢な方角へ転移してしまったのだ。

 彼が飛んだ先は、葉蔵の弾丸が集中している箇所。

 瞬間移動するにしてはあまりにも不合理な場所である。

 

「な、なにが……ック!」

 

 考える前に転移しようと血鬼術を発動させる。

 させるかと葉蔵も時間を操作しようとするも、再び奇妙な現象が起こった。

 

 

 弾丸が急激に遅くなったのだ。

 

 スローモーションの動画のような、ゆっくりとした動き。

 当然、そんな無意味な命令を葉蔵はしていない。

 ならばなぜこのようなことが……。

 

「……なるほど、互いの時空系血鬼術が干渉しあってエラーを起こしているのか」

「エラーとは…何か知らんが…概ね…同意する…」

 

 一応の決断を出すが、あくまで推測。こうだと断定するための証拠などない。

 当然である。時空というものは概念であり、物質的にこうだと判別出来るものではない。故、術者がこれらの術を完全に把握することは現段階では不可能である。

 分からないものを分からないまま乱用して自滅するのは愚の骨頂。ここは大人しく別の血鬼術を使う方が賢明であろう。

 

 問題はない。

 たとえ時間系血鬼術を使えずとも、葉蔵には幾らでも選択肢がある。

 ありとあらゆる状況に対応できる豊富且つ強力な血鬼術の数々。

 たとえ新技が披露できなくとも、既存の術でも十人分に戦える。

 

 

【針の流法 血針弾・連】

 

【針の流法 血針弾・振】

 

【針の流法 血針弾・貫】

 

 

【血鬼術合成 血喰砲・爆連弾(ブラッド・ストライクリボルバー)

 

 

 思わぬアクシデントで停止している敵目掛け、特大の砲撃を繰り出す。

 コンマ一秒の差もなく、ほぼ同時にで吐き出された六つの砲弾。

 超高速で回転しながら、空気を切り裂いて音速をも超える針砲。

 常人なら弾丸が発射されたことすら気づかずあの世行きである。

 だが、敵はすぐさま再起動して対応してみせた。

 

 

【月の呼吸 捌ノ型・改 月龍輪尾・六連】

 

 

 激突。

 同時に振るわれた六つの巨大な斬撃が弾丸全てを捉える。

 砲弾の超高速回転は速度だけでなく威力も底上げしているにも関わらず、黒死牟の剣戟はそれらを真っ二つに切断……。

 

「ッグ!!?」

 

 切断出来なかった。

 血針弾・振はただ弾丸が振動したり回転したりしているだけではない。

 回転の方向も振動数も葉蔵の意志一つで変化自在であり、これを利用することで叩き落そうとする力を“流す”ことが出来るのだ。

 黒死牟は今まで通りの感覚で砲弾を斬り落とそうとしたのだが、これは葉蔵の罠。血針弾・振の効果によって体勢を崩す隙を狙っていたのである。

 

 葉蔵にとって絶好のチャンス。

 これを逃すなんて選択肢は彼にはない。

 

 

【針の流法 自律血針】

 

【針の流法 血針猟犬】

 

 

 牙を剥く葉蔵の兵士達。

 十体全てが本体と同等の血鬼術を駆使する恐るべき兵隊。

 それらが黒死牟目掛けて攻撃を開始した途端……。

 

 

【玖ノ型 降り月・連面】

 

【拾ノ型 穿面斬・蘿月】

 

【拾肆ノ型 兇変・天満繊月】

 

 

 瞬間、剣戟の壁が生まれた。

 

 一閃、十閃、百閃…。万を超える剣閃を重ね続けた結果、生まれた斬撃による月刃の防壁。

 ほんの熱さ数mmしかない刃が重なり合った結果、葉蔵の兵士たちを迎撃する事に成功。

 同時、百を超える斬撃の檻が葉蔵目掛けて襲い掛かる……。

 

 

 

「私を檻で閉じ込める?……笑わせるなよ」

 

 

 ドォォォォォォォン!

 

 突如、葉蔵の周囲が爆発した。

 

 爆撃。

 咄嗟に全身から血針弾・爆を放出。

 爆発によって斬撃の檻を弾き返し、爆発によって生まれた推進力での場から離脱したのだ。

 かつて戦った鬼殺隊の一人、宇随天元。彼が扱う全集中の呼吸、音の呼吸と同じ原理である。

 

 

【針の流法 刺し穿つ血鬼の爪(スパイキング・エンド)

 

【月の呼吸 拾壱ノ型 玉兎・弧月描き】

 

 

 爆発に乗った葉蔵は一気に接近。

 右腕を獣鬼態に変形させ、鬼火を纏って突き出す。

 対する黒死牟も大太刀と化した刀を居合のように振るう。

 空中で弧月を描きながら、音を置き去りにして降ろされる。

 

 ほぼ同時に繰り出された刺突と斬撃。

 人の領域を外れた速度で、人の領域を外れた威力で。人外の攻撃がぶつかり合う。

 否、速かったのは黒死牟の剣。そのまま鬼の腕ごと葉蔵を真っ二つにするかと思いきや……。

 

 

【血鬼術合成 血針弾・爆散】

 

【血鬼術合成 血針弾・爆連】

 

【血鬼術合成 血針弾・爆貫】

 

 

 突如、黒死牟の死角から血針弾が飛んできた。

 爆破機能付き散弾、爆破機能付き貫通弾、爆破機能付きマシンガン。

 黒死牟の迎撃に生き残り、黒死牟の死角に潜んでいた自律血針が、黒死牟目掛けて銃撃したのだ。

 

「ック!」

 

 

【月の呼吸 壱ノ型 闇月・宵の宮】

 

【月の呼吸 参ノ型 厭忌月・銷り】

 

【月の呼吸 伍ノ型 月魄災渦】

 

 

 背中から生える八つの刃から斬撃が繰り出される。

 腰を振ることで剣としての効果を無理やり引き出し、血鬼術を発動。

 繰り出された血鬼術は自律血針ごと爆発する前に弾丸を全て叩き落し、見事に迎撃に成功した。

 正しく神業。こういった咄嗟の判断にこそ本人の実力が如実に出るというもの。

 

 しかし、今回ばかりはタイミングが……いや、相手が上手だった。

 

「ッグ!?」

 

 葉蔵の刺突が黒死牟に命中した。

 無論、偶然ではない。

 全てとは言わないが、葉蔵の狙い通りである。 

 

 

「(虚哭神去は…役に立たぬか……)」

 

 幸い、咄嗟に大太刀を盾にしたおかげで直撃は免れたが、得物を破壊されてしまった。

 そして、葉蔵は武器を作るまで待ってくれる程、攻撃の手を止めてくれる程甘くはない。

 既に次の手を想定しており、今まさに発動させようとしている。

 

「(いいだろう、次鋒戦はお前の勝ちだ)」

 

 眼前まで迫り来る砲撃。

 刀がない以上、迎撃は不可能。

 瞬間移動による回避も先程のように失敗する可能性が高い。

 ならどうする。このまま大人しく目を閉じて敗北を受け入れるか……。

 

 否。

 戦闘はまだ始まったばかりなのだ。

 こんなところで終わる筈が無い。

 

 

 

「グルオオオオオオオオオオオオオ!!!」

「グルゥアアアアアアアアアアアア!!!」

 

 

 二人は同時に第二形態へと変貌した。

 

 黒死牟は眼前の障害を振り払う為。

 葉蔵は相手の変身に釣られて。

 両者は完全な人外へと変じる。

 

 

「「ガアアアアアアああああああああああああああ!!!!」」

 

 二体の化け物は吠えながら、更に天高く舞い上がった。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。