鬼喰いの針~人間失格になった私は鬼として共食いします~   作:大枝豆もやし

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鬼滅の刃での禰豆子は人間を愛し、最期は人間になる道を選びました。
しかし主人公は違います。
本文にあったように、葉蔵は人間から化物になった系、或いは化物の力を持った主人公みたいに、人間の側に成りたいとは願ってないですよ。
だから漫画やアニメの人外の力を手に入れた系のキャラみたいな最後は彼に用意されてないんですよね。



最終バトル 第四ラウンド

「お、おい聞いたか!? アイツ、俺らの味方じゃねえのかよ!?」

「ああ!聞いちまったよ! あの鬼、ただ暴れたいだけだったのかよ!?」

「そ、そんな……! あんなのが暴れたら、町なんて簡単に吹っ飛んじまうよ!!」

 

 葉蔵達が暴れている空の下。

 隠や隊士たちは葉蔵の発言に動揺していた。

 

「……やはり、所詮は鬼か」

 

 ポツリと、誰かがそう零した。

 

「そ、そうだ!アイツも鬼なんだ!俺らの事なんて何も思っちゃいねえんだよ!」

「ああ、危険な存在なんだ!だから退治するしかねえ!」

「こうなったら、弱ったところを全員で……!」

 

 途端に拡がるアンチ葉蔵の空気。

 しかしソレに待ったをかける者がいた。

 

「何を言ってるんですか!?」

 

 我らが主人公、炭治郎である。

 

「葉蔵さんは最後の鬼を倒すために戦っているんですよ!?なのに何でそんな酷い事が言えるんですか!?」

「……炭治郎、それも仕方ないと思うよ」

 

 気絶から立ち直った善逸が炭治郎の肩を掴む。

 

「あの鬼は禰豆子ちゃんと違う。人間の事なんて全然好きじゃなさそうだし、邪魔になるなら虫のように踏み潰すと思う」

「そ、そんなことない!葉蔵さんは確かに鬼神みたいに強いけど、器は広いし!」

 

 葉蔵を庇おうと炭治郎は思考を巡らせるが、反対する者は善逸だけじゃなかった。

 

「俺も同意見だぜ、竈戸」

「う、宇随さん!?」

 

 

「アイツは、一つの国みたいなモンだ」

 

 

「己という領土を、己という王のみが、己の美学という法でのみ統治している。他国からの干渉を受け付けず、武力を行使しようとも己を貫く。そういう鬼に成る事を選んだ」

 

「お前の妹とは派手に違う。妹はお前っていう鎖があるが、アイツには縛る枷が何もねえ。もし仮に友人とかを人質に取ろうとしても、アイツは武力でソレを黙らせるだろうな」

 

「俺ら人間とアイツが共存できる道は二つに一つ。葉蔵に服従して奴の法を受け入れるか、俺らが奴を倒して俺たちの法で縛るかだ」

 

 

「……」

 

 炭治郎は何も言えずに黙るしかなかった。

 

 違う種族が共存するとはそう言う事なのだ。

 どちらかがどちらかのルールを受け入れなくてはならない。

 

 もし漫画やアニメなどでよく見る化物の力を得た主人公のように、人間の心を持ったままなら、人間側に寄り添いたいと思うなら、人間に戻りたいと願うのなら、まだワンチャンあったであろう。

 しかし、葉蔵はそれらを望んでない。

 

 葉蔵は、無惨と無惨が率いる鬼とはまた別種の鬼として、人間から種族的に独立してしまった。

 鬼の力を楽しみ、鬼としての立場にいることを望み、人食いも自分はやらないが知っている人間以外なら肯定する。

 彼は自分から人の道を降りたのだ。

 

 故、二つの種族が共存する方法は天元の言う通りになる。

 支配か降服である。

 

「だから、コレを使って戻す必要がある」

「そ、ソレは……」

 

 天元が懐からガラス管―――人間化薬を取り出す。

 

「アイツが弱ったところを人間に戻す。そうすれば、葉蔵は人間として生きられる」

「…けど、葉蔵さんに怒られません?」

「覚悟している。地味にいくらでも殴られてやる」

「………そう、ですね」

 

 炭治郎は力なく頷く。

 

「それに、アイツなら人間に戻ってもうまくいくだろう。顔も頭も御家も良い。むしろこれ以上に何を求めるんだ。贅沢過ぎだろ!」

「そ、ソレは……否定、出来ませんね」

 

「まあ、アイツなら人間になってもうまくやれるだろ。しばらくは力を失って引きこもるかもしれねえけど。派手に何か生き甲斐を見つけられるさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヴォン!

 

 

【針の流法 自律血針】

 

【針の流法 血針猟犬】

 

 

 重低音を発しながら、獣の爪牙と分身が大量に造り出された。

 何百何千と軍勢を組み、統率を取りながら、重力も慣性も無視した動きで黒死牟をすぐさま包囲。陣形を組んで一斉射撃を開始する。

 

 

【針の流法―――】

 

 

 現代兵器による猛襲。

 銃弾、砲弾、爆弾、ミサイル。

 ありとあらゆる科学の暴力が、科学の法則を無視した速度と質量で黒死牟目掛け迫り来る。

 そう、まるで軍隊のように。

 

 葉蔵は決して出鱈目に銃撃を行っているわけではない。

 敵の次の手を考え、フェイントをかけ、逃げ道を塞ぎ、誘導して。

 自身の優位に事が進むように、自律兵器達を統率して銃撃を行っている。

 完璧に支配下へ置かれ、忠実に任務を全うする兵士。しかも、ソレを操っているのはあの葉蔵である。

 避けることなど神業であろうとも不可能なのだが………。

 

 

シュン!

 

 しかし、外れた。

 何百と放たれた破壊兵器を、黒死牟は軽快な音と共に回避行動へ移行。

 巨大を畝らせながら。霞がかかったかのように相貌がぼやけるような、奇妙な動作を行いながら。

 放たれた暴力たちは追尾機能によって再び返ってくるも、また姿をぼやかしながら全て回避した。

 

 避けることなど普通なら不可能。だが、ここにそれを覆す者が現れた。

 

「(なら、これならどうだ!?)」

 

 

悪鬼食らう赤き血杭・時閃(クリムゾンスマッシュ・クロック)

 

 

 黒死牟の周囲を赤い杭が取り囲む。

 この杭は必殺技であると同時に拘束具でもある。

 向けられた者は動きを封じられ、処刑の瞬間を待つばかり………。

 

 

シュン!

 

 これもまた回避された。

 不規則且つ不気味な動作。

 ゆらゆらと、朧月のように輪郭がぼやけた不思議な動きで。

 黒死牟は実体がこの世界から消えたかのように弾丸の雨を通り抜けた

 

「(……なるほど)」

 

 これは、と葉蔵の中の疑念は確信へと変貌した。

 しかし、ゆっくりと答え合わせをしている暇はない。

 なにせ、今度は敵が攻撃する番なのだから。

 

 

【月の呼吸 玖ノ型 降り月・連面】

 

 

 黒死牟の攻撃。

 しかも、ただの斬撃ではない。

 黒い光を放ち、赤い刃を尖らせる剣閃。

 彼の新しい血鬼術の一つ、鬼殺しの刃である。

 当たればダメージは必須。下手すれば永遠に治らず、最悪は【死亡(ゲームオーバー)

 ここは回避や防御ではなく迎撃が正解である。

 

 

【針の流法―――】

 

 

 しかし、これもまた避けられる。

 自立血針達だけでなく葉蔵自身も黒い月目掛けて弾幕を張るが、先ほどの黒死牟と同じく通り抜けられた

 

 

ヴォン!

 

 また重低音が鳴ると同時、葉蔵の肉体が黒い斬撃の背後に現れた。

 

「………!?」

 

 驚く黒死牟。

 一体何が起こった。目を一切離してないというのに、一体何時あの攻撃を避けたのだ。

 あれだけの巨体が、赤黒い有翼の獅子のような怪物が、音も予備動作も感じさせることなく回避した。まるで瞬間移動でもしたかのように、

 

「なるほど。種は分かったぞ」

 

 ニヤリと、葉蔵は不敵に笑う。

 手は止めない。自律血針や血針猟犬を操って血鬼術の雨を降らしながら。ソレを避けて時には反撃しながら。

 無論こんな場では声なんて戦闘音で掻き消えるので、両者は血鬼術による電波で通話を続ける。

 

「貴様は自分の位相をズラすことで私の攻撃を避けているのか」

「…ご名答。その位相とやらは…初めて聞く言葉だが…意味はおそらく…合っている」

 

 位相障壁。

 自身に空間操作をかけ、異なる次元にまたがらせることでこの世界からの干渉を無効化したのだ。

 輪郭がぼやけたのも、弾丸を通り抜けたのも比喩ではない。本当にこの世界から消えていたのだ。

 

「今度は…私の…答え合わせだ…」

 

 言葉を交わしていても手を緩めることはしない

 鱗から、翼から、尻尾から。

 様々な部位を剣に見立て、黒死牟は鬼殺しの斬撃波を放つ。

 

「貴様のソレは…己の時間を…早めているのだな…」

「ご名答。私は時間操作で私自身の時間を加速している」

 

 時間加速。

 自身の時間を早める事で物理法則を無視した高速移動と高速思考を可能としたのだ。

 高速移動や即興で自律兵器を作り出す事は兎も角、葉蔵でも一気に何百もの自律兵器を事細かく操るなんて芸当は不可能。

 相手の攻撃に対処しながら弾幕で牽制し、観察しながら作戦を立案し、配置や陣形を考えながら、血鬼術を発動させる。

 一つ一つが複雑かつ至難の業であるというのに、一瞬で全てをこなさなくてはいけない。

 いくら葉蔵でも無理である。

 

 その無理を可能にさせたのがこの時間加速である。

 

 自身の時間を早めるという事は、周囲よりも時間を多く使えるという事。

 本来なら一瞬で判断しなくてはならない事が、葉蔵には数秒程の余裕が与えられるのだ。

 

「(まあ、原理上は代償がないわけではないが……鬼にとっては無いも同然か)」

 

 もし人間がこの力を使えば、反動で何かしらのダメージなり寿命の代償などを払う必要があるだろう。

 しかし、無限の時間と体力を持つ鬼ならば、そのリスクを踏み倒せる。

 正しく鬼のためにある血鬼術である。

 

「まさか…考えることが…同じとは……」

「そうだね。“自分だけに掛けるなら問題ない”。まあ、誰でも思いつくか」

 

 時間と空間。

 本来なら密接し合って互いに干渉し合うが、干渉しない距離で掛けるなら、対象が自分だけならばその限りではない。

 物理法則を超えた概念でしかないものを、漫画やアニメでは最強の能力として扱われるこの血鬼術を。両者はこの短時間で使いこなせるようになったのだ。

 もしどちらかが生き残り、その血肉と力を食らえば、どんな凶悪な超能力を持つ鬼に進化するのか……。考えただけでも恐ろしい。

 

「…まあいい。どうせ…やることは…変わらん!」

「ああそうだ。持てる力全てで相手を倒す。そこは変わりない」

 

 

【月の呼吸 拾捌ノ型 朧月】

 

【針の流法 時流加速(クロックアップ)

 

 

 怪物の宴はまだまだ続く。

 

 





片や時間を操る領域に、片や空間を操る領域に達した二体の化物。
ダメだ、早くこいつ等を殺さないと。もしどちらかが生き残ってその血を飲み干し、鬼の王に成ったら人類が詰む。
たぶん、葉蔵は未来予知や時間逆行とかを、黒死牟は異空間創造や天眼などを習得するかもしれません。
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