鬼喰いの針~人間失格になった私は鬼として共食いします~   作:大枝豆もやし

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次回で最終回です!


ゲームセット

「う、あ…あぁ……」

 

 ドサッと、私の身体が倒れた。

 同時に転がる私の首。

 ゴロゴロと転がりながら転換する視界が気持ち悪い。

 

 転がった首が止まると、黒死牟の姿が見えた。

 瀕死状態だった。

 既に針の根が全身に伸びきっており、もう助かる見込みはない。

 死ぬのは時間の問題。多く見積もっても数分が限度だろうね。

 

「(無理もないか。なにせ私が撃ち込んだ箇所は、鬼の第二の弱点である心臓なんだから)」

 

 本来、鬼は不死身に近い再生力によって急所などあってないものだが、状況次第では弱点になる箇所がある。

 心臓と脳の二カ所だ。

 

 脳は言うまでもない

 意識を司る重要な部位である以上、長時間再生出来ない状況になれば死ぬしかない。

 

 次に心臓。

 血を動かす役目を持つ為か、心臓は鬼因子が最も多い箇所だ。

 私はその性質を利用して、鬼を倒す際は大体狙っている。

 藤襲山を出てからは血針弾の性能も上がって狙う必要は無くなったが、まさか最後の最後でその機会に巡り合えるなんて……運命を感じちゃうね。

 

「相打ち、か……」

「そのよう…だな…」

 

 私は首だけの状態で、黒死牟は動けない状態で会話を始める。

 お互い死ぬ寸前の状態。全く、お似合いだな。

 

「葉蔵よ…礼を言う…。お前のおかげで…俺は…満足して…逝ける……」

 

 ボロボロと、黒い灰を身体から零す黒死牟。

 どうやら、タイムリミットは向こうが限界らしい。

 互いの力の性質がここで出たようだ。

 

「結局…私は理想の…侍になれなかった…。だが、未練はもう…ない……」

「………」

「これも、また……一つの、結末……。私の、生まれてきた、意味……」

「………そうか」

 

 ボロボロと、黒死牟の体が崩れるスピードが早まってくる。

 

「存外に…悪く、ないものだな……。この感覚を味会う為に……この五百年近く、生き恥を晒してきたが……少しは、生きた甲斐が…あったと受け入れられる」

 

 にこりと笑いながら、黒死牟の体は完全に崩れ落ちた。

 最期に、真っ二つに割れた笛をコトリと落としながら。

 

「……さよなら、黒死牟」

 

 正直、私には彼が死ぬ間際に何を思ったかなんて考えもつかない。

 

 私と彼とでは何もかもが違う。

 生い立ち、生きてきた時間、価値観も求める物も。

 けど、あの消える間際の顔を見れば分かる。

 最後に彼は、自身の鎖から解き放たれたと。

 

「っと、今度は私の番か」

 

 私の身体も崩れ始める。

 斬られた箇所から徐々に灰化が進み、視界の端に見える私の胴体は半分も黒い灰へと変わっていた。

 どうやら、私のゲームもここまでのようだな。

 

「よ、葉蔵さん!」

「……ああ、炭治郎くんか」

 

 いつの間にか炭治郎くんがすぐそこまで近づいていた。

 ここまで接近されても気づかないなんて、相当キているようだ。

 まあ、死ぬ間際だから警戒する必要もないんだけどね。

 

「葉蔵さん、しっかりしてください! 日輪刀で首を斬られても死ななかった鬼がいました! 葉蔵さんも出来る筈です! こんなに強い葉蔵さんなら!」

 

 首だけの私を抱え、泣きながら必死に話す炭治郎くん。

 こうなると分かって、こうなることを望んでこの道を選んだ私を心配してくれているのか。

 ありがたいと言えばいいのか、お人よしめと言えばいいのか……。

 

「いいんだ、炭治郎くん。私の願いは叶った。……もう、生きる必要はない」

「何言ってるんですか!? 生きる必要がないなんて……! そんな…そんな悲しいことを言わないでください!!」

 

 

「生き甲斐なんていくらでもあるじゃないですか! 何かを作ったり、行ったことのない所に旅したり、お嫁さんにしたい女の人を探したり! まだまだ楽しい事はいっぱいあるんですよ!」

 

「葉蔵さんなら出来ます! 今度は会社を大きくするげ~むをしましょう! 今度はすぐ飽きないように、皆で協力して! 世界一の会社にするのがくりあ条件ですからね!」

 

「大体、一人で完結しているからこんなに拗れるんですよ! 今度は皆で何かをやり遂げましょう! 言っておきますけど、葉蔵さん一人で全部出来る程、このげ~むは甘くないですよ!!」

 

 

 

「……炭治郎くん」

 

 ああ、確かにそうだ。

 別に鬼としての生に拘らなくても、この世界にはまだまだ色んな楽しめるものがある。

 美食、恋愛、仕事、冒険、趣味…。デカい事は勿論、小さな日常の出来事でも十分生きる理由にはなる。

 

 そもそも、人間を辞める必要自体、本来はない筈なんだ。

 周囲を見れば、幸せそうにしている人なんていくらでもいる。むしろ、私のような変わり者は少数だし、ソイツらも何だかんだで生き甲斐を人の道で見つけている。

 

 私も、その気になれば見つけられたかもしれない。

 あの時こうしていれば、ああしていればと、私自身心当たりは幾らでもある。

 けど、もうそんなことはどうでもいい。この道を選んだ事に、私は一切の後悔もない。

 

 ソレに、今更後悔したところでもう遅い。

 

「すまないね炭治郎くん。もう私は……助からない」

「………そう、ですか」

 

 私の限界は、こうなる前から来ていた。

 最初から分かってたんだ、この道にはもう先がない事を。

 ソレを知っていながら私は歩み続けた。これはその結果だ。

 

「炭治郎くん、生きるものはいつか死ぬし、今あるものはいつか壊れる。遅かれ早かれ、私はいつかこうなるんだよ」

「………」

「この世に永遠なんてない。長く続いた御家も、人の想いも、人類そのものも何時か途絶える。この世にあるものはいつか無くなるんだ」

「……かつて、この世界を支配していた竜のように……ですか?」

 

 あれ?なんで恐竜の事を……ああ、そういえば以前に話をしたな。そのことを憶えていたのか。

 

「……栄枯盛衰。確かに、その通りです。恐ろしい程に……神話の怪物みたいに強かった貴方が……今はこんなにも、弱弱しい…」

「弱弱しい…か。この私が……随分言ってくれるじゃないか」

 

 本当の事だから反論なん出来ないけど。

 

「それなのに、貴方はこんなに…」

 

 突然、炭治郎君の声が聞こえなくなった。

 同時に眼前の景色がぼやけ、頭が回らなくなる。

 どうやら、本格的にお迎えが来ているようだね。

 

「(ああ、楽しかったな……)」

 

 本当に、色んなことがあった。

 鬼の力という武器を与えられ、家という檻から出て、私は外の世界を……生きる実感を堪能した。

 

 走馬灯が走る。

 鬼に成った瞬間、鬼と戦った瞬間、血鬼術を使った瞬間、上弦と戦った瞬間…。

 どれもこれも楽しい思い出だ。

 

 無論、全てがいい思い出というワケではない。

 痛い思いはした。悔しい思いも、思い通りにいかず苛立った事もあった。

 けど、ソレも全部含めて価値のある体験……私の人生ならぬ鬼生だったと断言出来る。

 

 

 力を手に入れた。

 自由の身になった。

 存分に暴れ、やりたいことをやった。

 前世の叶えたかった夢を実現し、今世の欲望を満たしてきた。

 

 十分だ、十二分に楽しめた。

 もうこれ以上、戦いも奪う必要もない。

 満足して“鬼生(ゲーム)”を降りられる。

 

 

 鼓動を感じる。

 心臓も血管も失ったというのに、煩い程の脈動と、熱が私を満たしている。

 

「私は…満たされた。……満足だ」

 

 高まりに身を任せ、私は目を閉じた。

 

 

 




このssで私が書きたかったのは
①血鬼術をバンバン使って鬼を倒しまくる鬼
②倒した鬼を喰ってレベルアップする鬼
③原作にはない視点のキャラクター
④上弦の鬼との派手な戦闘シーン
⑤原作キャラ救済と鬼側の満足死
⑥鬼の更なる強化
この6つです。

書きたいものを優先した結果、鬼との戦闘に力を入れ過ぎて他がなおざりになってしまいました。
けど、書きたいものを書けたので概ね満足です!
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