鬼喰いの針~人間失格になった私は鬼として共食いします~   作:大枝豆もやし

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最近思ったんだけど、葉蔵ってどれぐらいの強さんだろう?


不死川家編
第26話


 真夜中のとある山の麓。

 そこで二体の異形が相対していた。

 

 額に一角獣のような鋭く赤い角をを持つ美しい青年の姿をした鬼、葉蔵。

 もう片方は手に口のようなものがある異形の鬼、爆鬼。

 

 葉蔵の背後には、気絶した少女とそれを守ろうとする男、

 そして爆鬼と爆鬼の間には、砕け散った赤い欠片。

 この欠片は、爆鬼の吐き出した爆発性のある体液を受け止め、男の身代わりに砕け散った葉蔵の長針だったモノである。

 

「早く逃げろ。あの鬼は私が倒す」

「…………あ、あぁ」

「早くしろ。あの針のように砕かれたくないだろ」

「……うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 男は少女を抱えて逃げていった。

 それを確認した葉蔵は少女を狙う悪鬼―――爆鬼に目を向ける。

 

「嘗めた真似をしてくれたな!」

 

 狩りの邪魔……いや、獲物を横取りされたことに怒りを示す爆鬼。

 

 今すぐにこの場を離れ、別の獲物を探すのは難しくない。

 夜明けまでまだ時間があるとはいえ、わざわざ他の鬼とやり合うのも時間の無駄。

 ここで取り逃がした獲物に固執する意味も、葉蔵の相手をするメリットもない。

 

 だが、爆鬼には葉蔵を捨ておくという選択肢は存在しなかった。

 

 爆鬼は自身の能力に自信を持っている。

 既に何十人もの人間を食らい、更に自分を殺しにきた鬼殺隊も何人か返り討ちにしてやった。

 俺ならこんなヤサオなど瞬殺できる、そう考えた爆鬼は手の口から彼の血気術を吐き出した。

 

 手の口吻から吹き出された血鬼術は何らかの物質に触れると爆発する性質を持ち、これによって彼は他の鬼や鬼殺隊に勝利してきた。

 反射的に放たれた体液は、無意識に命中しやすい的に、胴体部分に向けて放たれる。

 体液の爆発力は驚異的なものであり、鬼相手で使う場合にも急所を狙う必要すら無く、胴体の何処かに当てさえすれば木っ端微塵に出来る。

 

 葉蔵は避けない。ただ指を相手に向け、何かを放った。

 血針弾ではない。

 彼は小さな針を投げただけである。

 それは爆鬼の吐き出した爆液に命中すると同時に爆発。葉蔵の身代わりに砕け散った。

 

「……クソが!」

 

 再び吐き出される爆液。

 一発だけではない、両手から無暗矢鱈に吐き出される。

 それら全てを葉蔵は血針で迎撃した。

 

「クソがァァァァァァぁぁぁぁ!!!!」

 

 攻撃が当たらなくて癇癪を起したのか、爆鬼は葉蔵に突っ込んできた。

 

 ただの突進ではない。

 足の裏にある口から爆液を吐き出し、爆破の勢いを利用して加速。

 ノーモーションで引き起こされる加速は誰にも予測出来ず、反応出来ない速度 

 この技で鬼殺隊の目を欺き至近距離から直接に爆液を吹きかけてやった。

 この技でお前も……。

 

「へぶしッ!」

 

 倒れたのは爆鬼の方であった。

 

 カウンター。

 葉蔵は爆鬼の動きを先読みして拳を突きだしたのである。

 ただ手を向けただけ。だというのに爆発の勢いが乗ったソレは、確実に鬼へ大ダメージを与えた。

 

「く…クソッ!」

 

 今度は爆発で空に飛びあがり、上から爆撃を行おうとする。

 この距離なら一方的に攻撃出来る筈。

 爆鬼はそう考えて爆液をばら撒き……。

 

「ぐげえええええええええええ!!!?」

 

 先に攻撃が当たったのは、葉蔵の物だった。

 彼が放った血針弾。それは爆鬼の放った血鬼術を全て迎撃し、そして彼の右腕を全部持って行った。

 その間はほんの一瞬。その僅かな時間で。

 

 爆鬼は混乱した。

 バカな、ありえない。

 こんなヤサオみたいな鬼が、自分の血鬼術よりも強いなんて。

 鬼殺隊を逆に殺し、あの方にも目を付けてもらった。なのに眼前の鬼はそれ以上だと言うのか。

 

「ば…バケモノが!」

 

 ようやくだった。

 やっと爆鬼は気づいた。

 自分が狩るのでも、戦うのでもない。

 むしろ自分こそ狩られる立場だということに。

 

 爆液をまき散らすと同時に爆発させる。

 爆破の煙幕だ。これで少しでも相手の目を潰して……。

 

「へぶッ……」

 

 そう考え、本来ある口からも爆液を出して弾幕を張ろうとした瞬間。

 何かが口の中に当たった。

 何が、と、その思考が浮かぶよりも早く、爆鬼の意識は闇に沈んだ。

 

 爆鬼が吐き出す血鬼術は、彼の意識一つで爆弾となる。

 逆を言えば、彼に爆破する意思がなければ爆破しないということになる。

 

 しかし、葉蔵の針が刺さった途端、爆液は爆鬼の意思を離れて暴走してしまった。

 その性質に葉蔵は戦闘中に逸早く気付いた。

 発見したのなら利用しない手はない。

 葉蔵は爆鬼が体液を発射する瞬間を方針の超感覚で察知し、血針弾を撃った。

 発射される直前の血鬼術は口内で葉蔵の針によって暴走。見事に爆発を起こしたのだ。

 

 倒れ込んだ爆鬼の肉体に歩み寄る葉蔵

 その手には、針の短剣。

 葉蔵はそれを、まるで獣を解体するが如く躊躇いのない手付きで爆鬼の腹部に突き刺した。

 途端に拡がる針の根。

 それは余分なものは抜き取らず、針の主のみが求めるものを絞りだす。

 

 針の先から吐き出される赤い液体。

 これこそ、鬼を鬼たらしめる恐るべき血。

 鬼舞辻無惨の因子である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なかなか美味かったな」

 

 今回の食事はなかなか楽しめた。

 どうやらあの鬼は当たりのようだった。

 本人ならぬ本鬼は何度も鬼殺隊を返り討ちにしたと自慢していたが、どうやらアレはホラではなかったようだ。

 しかしそれにしても……。

 

「……やはり弱い」

 

 先程の鬼も私が満足させてくれるには程遠い鬼だった。

 

 私が強いのではない、鬼共が弱いのだ。

 

 あの鬼の血鬼術は私と戦い得る能力だった。

 私にとって爆発や炎などの針で防げない火力のある攻撃は天敵。使い様次第では私を倒せる可能性がある。

 私の針が伸びる前に破壊し、私に攻撃を当て得るのなら、私を追い込むのは可能だ。

 

 しかし例え私の天敵に成り得る血鬼術を持とうとも、使う鬼がカスなら意味はない。

 強い血鬼術が使えるからといってその鬼が強いとは限らないのだ。

 逆も然り。

 現にただ手を生やすだけの血鬼術しか持たない手鬼も私を追い込んだではないか。

 

 どいつもこいつも少し強いだけの血鬼術を使えるだけで調子に乗っている。

 貴様らなど井戸の中の蛙。むしろあの山の中では下位の鬼だ。

 その程度で威張り散らすなんて笑止千万もいいとこだ。

 

 

 つまらない。

 ああ、なんて退屈なんだ。

 誰か私を楽しませてくれないだろうか……。

 

「おっといけない。早く獲物を確保しなければ」

 

 今の私は居候の身なのだ。

 遊んでばかりはいられない。食い扶持と家賃程度には稼がねば。

 早く家族の分を捕らなくては追い出されてしまう。




原作では鬼の強さがあいまいに思うんですよね。
つい最近まで人間だった獪岳が、いきなり上弦の鬼になったり、何百年も生きてる鬼がずっと無名の鬼だったりと。かなり力関係がいい加減な気がします。
実際はどうなんでしょうかね。今の葉蔵さんはどれだけの強さなんでしょうかね。

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