鬼喰いの針~人間失格になった私は鬼として共食いします~ 作:大枝豆もやし
しばらくの試行錯誤の末、血液中だけでなく、細胞中に含まれる極上の因子を抽出することに成功した。
やり方は結構簡単だった。
まず私の針を相手の体の中に刺す。すると体内に入った針は周囲の因子と結合して根のように拡がってゆく。どうやらこの針は鬼の血に触れることで支配圏を広げることが出来るらしい。全身に広がった針の根は肉体に含まれる因子も絞り出してくれる。
そうして集めた極上の因子を液状に戻し、竹筒に注いで香りを嗅いだり飲んだりする。
「あぁ…助け……」
「黙れ」
針の根は無限にデカくなるわけでも、無限に絞り出せるわけでもない。成長限界は存在し、根が伸びない部分からは極上の因子を抽出出来ない。だから全身から搾るためには複数の箇所を刺す必要がある。
「では何本刺せばいいのか、全て吸い尽くしたらどうなるか実験する」
「や…やめ……」
鬼の命乞いを無視して全身に針を刺した。
コイツのおかげで大分針の扱いが上手くなった。回数を重ねることで針と血液の結合率も高くなり、結合するまでの時間も短縮出来るようになった。ま、気持ち悪いからコイツの因子には触れないけどね。
「これで最後だ。お前はもうお役目御免。死んでいいよ」
「ぅ……ぁあ……」
針を脳天に刺す。頭から生えた針の先から極上の因子が噴出し、同時に性犯罪鬼の肉体は黒い灰となってボロボロと崩れた。
「なるほど、やはり予想通りこの因子が私たち鬼にとっての命綱か」
予想はしていた。おそらくこれがあの男に注がれた因子―――鬼の源なのだろう。
これがあるから鬼は鬼として生きていける。しかし抜けば人間に戻るわけではない。不可逆ということだ。
そしてこれが濃ければ濃いほど強い。故に鬼たちは共食いでこの因子を取り込もうとしているということか。
「なるほど。つまりやることは今と変わらないということか」
そう、これでやることはハッキリした。……自己鍛錬と共食いだ。
より鍛えて強くなる。針の生成速度や強度を上げ、因子をより奪う事でより強い鬼となる。
より多く鬼を食らう。極上の因子を多く取り込み、支配下に置くことでより強い鬼となる。
「フ…フフフ……」
目標は定まった。強くなる、ただそれだけ。
手段も定まった。自己鍛錬と鬼を食うこと。
「フハハ……」
俄然やる気が出る。
前世の何をすれば分からない世界とは違って実にシンプルな世界。
手段も目的も分かりやすい。そして今の私には達成する力がある。
「ンフフフフ……フフフフフ……ハァーハハハハハハハハ! アッハハハハハハハハハッハッハッハッハ!!!」
笑いがこみ上げる。 さっきまで我慢していたというのに、堰が切れたかのように私は笑った。
見つけた。やっと見つけたぞ! コレだ……コレこそがそうなんだ!
コレこそ空っぽな私を埋めてくれる何かなんだ!
俺も私もつまらない人間だった。贅沢な環境にいながら満たされない。かといって自分から動くことも出来ず、ぬるま湯から出ることも出来なかった。
だが今は違う。今の私は鬼の世界にいる。
弱肉強食の世界。暴力と流血に塗れた、鬼の世界なら私の生きる理由が見つかるかもしれない。
「では、そのために成すべきことをするか……」
鬼の気配のする方角に足を向ける。
まだまだ夜は長い。休むにはあまりにも早すぎる時間だ。
ならば暴れよう。全ての鬼を狩り尽くそう。心の赴くまま生を実感する何かを探そうではないか!
「ククク…」
自然と笑いがこぼれる。
おそらく今の私は生き生きとした顔をしているのだろう。
そうではなくてはおかしい。なにせ今は……。
「さあ、私を楽しませてくれ」
こんなにもワクワクしているのだから。
下弦の伍の塁でアレなのだから、下弦の鬼ってめっちゃ強いよね?
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いや、下弦など雑魚だ
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うん、塁がもっと真剣なら義勇にも勝てた
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いや、塁が強いだけで下弦は雑魚だ
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分からない、下弦自体強さにバラつきがある