鬼喰いの針~人間失格になった私は鬼として共食いします~   作:大枝豆もやし

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今更ですが、私はこのssでジョジョ風の書き方にチャレンジしてます。
もし見にくかったら言ってください、すぐ直します。

2020/12/3(木)に設定変更のため文章を足しました。
私の勝手な都合で申し訳ないのですが、話の都合上どうしても必要でした。
申し訳ございません。


第44話

 回転の血鬼術を操る下弦の壱―――羅戦(らせん)は葉蔵の戦闘力に焦りを抱いていた。

 

「(……この鬼、後ろに目でもついてやがるのか!?)」

 

 やはり、戦場は葉蔵の独壇場であった。

 血鬼術を操って蛇活を牽制、接近戦を挑む羅戦に対しては攻撃の意図を与えない様に立ち回っている。

 

 

 羅戦は唯の鬼ではない。

 下弦の壱。十二鬼月の中で7番目に強い鬼である。

 戦闘向けの血鬼術を使い、彼自身も他の鬼とは一線を画す強さを誇る。

 事実、彼は針鬼の首を献上することを条件に、上弦の陸への挑戦権を得た。

 

 やっと俺も上弦の仲間入り。たかが野良鬼の首なんて簡単にとってやるぜ!

 そう息巻いてたのだが……。

 

「(この鬼強すぎだろ! 何なら上弦の陸よりも強いんじゃねえのか!?)」

 

 鬼を一撃で倒す特殊な針。

 死角の存在しない超感覚。

 上記の能力を十全に使う鬼自身の戦闘力。

 どれもこれもが鬼にとって最悪の武器であり、尚且つ十全に使いこなしている。

 

 葉蔵の強さに羅戦は戦慄した。

 なんだこの鬼は。これほどの強さの鬼があの方に逆らう愚かな鬼なのか? 冗談も大概にしてほしい。

 そして何よりも厄介なのは……。

 

「(しかもコイツ! 俺の血鬼術の正体にも気づきやがっているっ!)」

 

 葉蔵自身の分析能力だッ!

 

 葉蔵はただ暴れているだけではない。

 二体の鬼を牽制しながら血鬼術の情報を集め、対抗策を戦闘中に編み出している。

 これこそ葉蔵最大の強みなのだ。

 

「蛇活! もっと援護しやがれ!」

「で、出来たらやってまさぁ!」

「(……役立たずが!)」

 

 蛇活の首には、羅戦の血鬼術が掛かった日輪刀のかけらが埋め込まれている。故に、蛇活は彼に逆らうことが出来ないのだ。

 こんな手間のかかるものを用意した理由は葉蔵対策だ。

 蛇活は攻撃力こそないが、相手をかく乱させる血鬼術に特化している。羅戦はそこに目を付けたのだった。

 しかし蓋を開けて見ればただの役立たず。現に今は殆どサポート出来ず、ただ針鬼をおびき寄せるだけでもボロボロになってたではないか。

 

 この場には罠があるからおびき寄せると言っておきながら、罠が発動する気配もない。

 

 羅戦の中で蛇活は『無能』の烙印を押されていた。

 

【血鬼術 悪性腐癌・泡爆】

【針の流法 血針弾・散】

 

 これまた同じタイミング。

 ほぼ同時に繰り出された血鬼術は互いにぶつかり相殺され、黒煙となって姿を隠す。

 しかし、葉蔵は気づいている、これが陽動ということに。

 次、また別の攻撃が来るッ!

 

 

【血鬼術 劣勢血膿】

【針の流法 血針弾】

 

 

 同時に血鬼術を発動する両者。

 しかし血鬼術の性質からなのか、蛇活の血鬼術の方が早かった。

 

「うっ!」

 

 鬼の血鬼術によって生成された潤滑液によって体勢を崩す葉蔵。

 そのせいで弾丸は見当違いに飛んでいくも、この弾丸は追尾機能が付いている。

 故に弾丸は蛇活の方へと飛んで行った。

 

 

【血鬼術 執固凝液】

【血鬼術 車輪走脚】

 

 

 葉蔵の針を血鬼術で防ぎ、血針弾を放った葉蔵の隙を突いて羅戦が接近した。

 足を車輪に変化させ、血鬼術で回転させて加速。

 一瞬で葉蔵の懐に入り、腕を振りかざした。

 

 

【血鬼術 回転滑刀】

 

 

 腕をチェーンソーのように変形させ、回転させながら振りかざした。

 

「(………考えたな)」

 

 葉蔵は羅戦の猛攻を避けながら感心する。

 

 大半の鬼は血鬼術を直接攻撃力として使用する。

 中には頭を使おうとする者もいるが、血鬼術を応用しているとはとても言い難い。

 だがこの鬼は違う。

 

 眼前の鬼は己の血鬼術を理解し、使いこなしている。

 回転という簡単な血鬼術を弾道制御、移動、防御、そして攻撃に応用している。

 

 特に肉体操作の速度と練度。

 使用する血鬼術に合った形に肉体を瞬時に変形させる。

 ただ目的に合った肉体に変形させるだけでも難しいのに、瞬時に変形させている。

 

 強い。

 血鬼術を使いこなし、ソレをサポートするための術も身に着けている。

 

「(けど、相方は使いこなしてないようだね)」

 

 相方の鬼の血鬼術は補佐に向いているが、味方が接近戦をしてると手を出せなくなってしまう。

 一対一の戦闘は得意だが複数での戦闘は苦手のようだ。

 

 相手の拳を半歩右前へ進みながら避ける葉蔵。

 羅戦は攻撃の勢いで止まれず、背中を向ける形となってしまった。

 葉蔵は隙だらけの背中目掛けて砲弾を撃とうとした瞬間……。

 

「なめやがって!」

「!?」

 

 突如、羅戦が葉蔵に振り返って後ろ回し蹴りを繰り出した。

 ありえない体勢からの蹴り。

 通常なら体重移動の関係で出来るはずない一撃。

 予想すらしなかった反撃は、葉蔵が今まさにトドメをさす一秒前の腕を刈り取った。

 

 しかしそこは葉蔵。

 彼は動揺しながらも後ろに下がって体勢を立て直そうと行動する。

 だが、相手はそう簡単に逃がしてはくれなかった。

 

 

【血鬼術 回転滑刀】

 

 

 今度は体ごと回転し、空中から後ろ回し蹴りを繰り出した。

 不自然な体重移動による軸足の脚撃。

 通常ならばダメージを与えるどころか、失敗して逆にダメージを受けるような最悪の手だ。

 それが葉蔵に命中した。

 

 切り裂かれる葉蔵の胸板。

 そこへ透かさず次の攻撃―――空中からの横蹴りが飛んできた。

 

 

【血鬼術 螺旋貫突】

 

 

「がはッ……!」

 

 切り口が開いた胸元目掛けて蹴りが貫通。

 ドリルのように回転して岩のように頑強なはずの体躯を貫く。

 

「「勝った!」」

 

 勝利を確信した瞬間、二体の鬼は同時に血鬼術を発動した。

 羅戦は刃を腕に生やし、己の血鬼術である回転滑刀で切断しようと、蛇活は毒液で葉蔵を更に弱らせようとする。

 

 しかし、それが決定打となってしまった!

 

 

 

 

 

「ぎゃあああああああああああ!!!!?」

 

 

 なんと!毒液は『羅戦』に命中したッ!!

 

 

 

 

「な……なんで……!?」

 

 蛇活は混乱した。

 おかしい、確かに自分は針鬼目掛けて血鬼術を使ったはず。

 なのに何故羅戦に命中しているッ!?

 

 理解不能理解不能理解不能ッ!!

 

 

 次の瞬間、蛇活の眉間に血針弾が命中した。

 

 

 

「………へ?」

 

 

 なんで。

 最後まで疑問を抱きながら、蛇活はこの世からブラックアウトした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なかなか楽しめたよ、二人とも」

 

 今回のバトルはなかなか楽しかった。

 

 ある程度血鬼術を使いこなせる戦闘役。

 ある程度サポート技が使える援護係。

 ある程度バランスの取れた獲物だった。

 

 惜しむとするならもう少し打ち合わせをするべきだった。

 役割分担は出来ていたが個々の行動が多く、コンビプレイをいまいち活かしきれてない。

 もしあの二人がちゃんとコンビ出来ていたら私をもっと追い込むことが出来たかもしれない。

 

「まあ、最後のアレは私自身反則だと思うけど」

 

 私が最後に取った手札。それは、体内からの血針だ。

 

 私はあらゆる個所から血針弾を生成できる。

 指先からでも、背後からでも、そして体内からでも。

 普通なら自分の体の中に針生やしてどうするんだと思われるが、今回のように肉体を素手や血鬼術で貫かれた場合はその限りではない。

 血鬼術を体内から吸収して再生出来る。

 

「(こうしてみると、やはり体内からの方が血針の吸収効率がいいな)」

 

 鬼の血を原料とするせいか、このやり方の方が普段よりも一気に因子を取り込めたような気がする。

 おそらくその通りなのだろう。私がそう感じたのだから。

 まあ、検証は後になるだろうな。

 

「……眠気がやばい」

 

 急に眩暈がした。

 気を抜けば夢の世界に旅立ちそうな眠気。

 間違いない、これは急激の鬼因子の濃度が上昇したことによる酔いだ。

 

 私は自身の鬼因子の許容量を超えると強い眠気に襲われる。

 藤襲山にいた頃はまだ大して容量がなかったせいか、少し鬼を食った程度でずっと寝ていた。

 

 必要な睡眠時間はその時摂取した因子の量で決まる。

 最初鬼を食ったときは一日中寝ていて、それからは日中ずっと寝てたり、4時間ぐらい寝てたな。

 最大では一週間ぐらい。確か、あの手鬼を倒した後は山の外でソレぐらい寝てたな。

 

 早く寝床を確保しなければ。

 しかし、その前にやることがある。

 

「……宇随、これが約束の物だ」

「……気づいてやがったのかよ」

 

 後ろに向かって針を投げると、宇随はソレを難なくキャッチした。

 

「それが解毒剤だ。注射のように刺すことで解毒剤が出る仕組みだ」

「……お前本当になんでも出来るな」

「別に何でもできる訳じゃない。その針はあくまでも体内にある鬼の因子のみを食らう。だから回復させることは出来ない」

「流石にそこまで求めちゃいねえよ」

 

 針を懐に仕舞う宇随。

 これでもう私の役目は終わりだ。さっさと消えよう。

 

「ありがとうよ。……それで、どうだ?」

「? 何がだ?」

「お前って普通の飯も食えるんだろ? 今回の礼も兼ねて俺がおごってやる」

「………」

 

 私は黙ってブラッディ・ミストを煙幕として発動。その場からすぐに逃げた。

 

 私は早く寝たいんだよ

 

 

 




気づいてると思いますが、回転滑刀は某カーズさんの技をモチーフにしてます。
無論、威力も美しさも本家が上ですが。
こっちはただのチェーンソーなので光らないしあそこまで鋭くありません。

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