鬼喰いの針~人間失格になった私は鬼として共食いします~   作:大枝豆もやし

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半天狗 第二ラウンド

 

【針の流法 血針弾・連】

 

【針の流法 血針弾・爆】

 

 

【血鬼術合成 血針弾・爆連(ラピッドバースト)

 

 

 ランスから爆破機能の付いた血針弾を連射する。

 連続で弾丸が吐き出される駆動音、連鎖的に起きる爆発音。そして半天狗のヒィィという悲鳴。

 

「ヒイィィィィィィィィィィ! 誰か助けておくれぇぇぇぇぇ!!!」

 

 爆弾の雨が降りしきる中、半天狗は必死に逃げていた。

 

 大きさは既に元のサイズに戻っている。

 小さくなってもあの狙撃からは逃れられない。

 防御力を重視して硬くそれなりに面積のある姿になった方が得策だと判断した結果である。

 

「やめてくれえ! いぢめないでくれぇ! 痛いぃいい!」

 

 刺さった血針の箇所を抉ることでその効力から逃れる半天狗。

 

 痛い。

 血針も、ソレから逃れる術も痛い。

 あんな恐ろしい鬼に追い回され、痛めつけられる。

 痛い。苦しい。誰か助けてくれ……!

 

「何故じゃ…何故誰も助けてくれない!?」

 

 半天狗は思った、何故自分がこんな理不尽な目に遭わなくてはいけないのかと。

 生まれてから一度たりとも嘘など吐いたことがない、善良な弱者。

 これ程可哀想なのに何故誰も同情しないのか。

 

 そんなのはおかしい。

 皆もっと自分に優しくするべきだ。

 なのに何故誰もそうしない!?

 

 

 

『お前が悪いんだぜ、俺様のゲームを汚しやがったんだからな』

 

 その言葉を聞いた瞬間、半天狗の何かが切れた。

 

 

 

 

「──……くない。ワシは、悪くないィ!!」

 

 

 ワナワナと震える半天狗。

 

 そうだ、自分は何も悪くない。

 上弦の鬼としてあの方の命令を忠実に守って、真面目に働いているだけだ。

 正々堂々と勝負して、仲間と協力して怨敵を倒そうとしている。

 正義は自分にあるのだ。

 

 悪いのはあの鬼の方だ。

 卑怯な手を使い、仲間たちを無残に殺したあの悪鬼が悪いのだ。

 悪党はあの鬼だ。全てあの鬼が悪いんだ。

 

 許せない。

 非道の行い、鬼畜の所業。

 あの鬼のような者がいるから弱者は常に虐げられるのだ。

 あのように弱い者いじめをする悪党がいるから……!

 

 

「弱い者いじめをォ するなああああ!!!」

 

 半天狗が突如巨大化し、血鬼術を発動した。

 恨の鬼。

 通常ならばダミーの役割しかないこの分裂体だが、葉蔵というピンチの前に進化を遂げた。

 

 

【血鬼術 阿鼻狂騒】

 

 

 半天狗の影が伸びて、ヘドロのようにぬかるむ。

 瞬間、陰から無数の分裂体が這い出てきた。

 影のように真っ黒な、顔のない分裂体。

 それらが何十体も襲い掛かる。

 

 

【血鬼術 狂鳴波】

 

【血鬼術 激涙刺突】

 

【血鬼術 心火憤雷】

 

 

 その上、一体一体がオリジナルの分裂体と同じ血鬼術を使用。

 流石の葉蔵でもこれだけ一斉にやられたら……。 

 

 

『第二ラウンドか? いいぜ、受けて立ってやる』

 

 

【針の流法 血針弾・散】

 

【針の流法 血針弾・爆】

 

【針の流法 自律血針】

 

 

【血鬼術合成 自律・炸裂弾(ブラッド・サラマンダー)

 

 

 葉蔵の背中から巨大な針が生える。

 ソレはミサイルのように射出され、分裂体の群れに向かう。

 そしていい感じの地点に到達すると同時に爆裂。小さな爆破機能付き血針弾をばら撒き、更に分裂体を爆破させた。

 

 ソレは爆撃。

 分裂体を焼く爆炎。

 周囲を吹き飛ばす爆風。

 派手に鳴り響く爆発音。

 たった一体の鬼によって引き起こされた一度の爆撃によって、何十体も分裂した半天狗の分身は半数程に一掃された。

 

『ありがたい……わざわざソッチから材料をくれるとは!!』

 

 バラバラになった分裂体目掛けて突進する葉蔵。

 

 葉蔵にとっては餌にしかならない。

 武器を持って襲い掛かる鬼たちを直接食らう。

 狼のような大顎で、両手に持つ巨大なランスで、虎のような前足で。

 血針弾より直接手に持つ武器や、牙や爪などが一番吸収効率が良い。

 捕らえられた分裂体は一瞬で葉蔵の養分と化した。

 

『うまい。なかなかうまいぞ。分裂して質が劣化したと思ったが、そうでもないようだな!』

 

 最初から葉蔵は半天狗の特性を見抜いていた。

 血鬼術は鬼の因子をエネルギー源にして使用する。故に、半天狗も何かしらの形で消耗していることは予想していた。

 ならば問題はない。このままずっと分裂させて、その分だけ食らって己の力に変える。

 向こうが弱る分こちらは強くなるのだ。これ以上に得なことはない。

 

『トドメ』

 

 

【針の流法 血喰砲】

 

 

 ランスの先から放たれた血喰砲。

 逸れることなく真っすぐと標的を捉え、恨の鬼を貫いた。

 これでもう余分に分裂する邪魔者は消した。後は片付けるだけ……。

 

 

「のう、弱い者虐めは楽しいか?」

 

 

 

 ぞくりと怖気が立った。

 

 分身の中に、格段に強い鬼の気配を感じ取った。

 劣化版分裂どころか、喜怒哀楽の分裂体よりも強力な個体。

 ソレを感じ取った葉蔵は即座に迎撃する。

 

 

【針の流法 血喰砲】

 

【血鬼術 悋気重圧】

 

 

 血喰砲を重力波で相殺する。

 

 

【血鬼術、無間業樹】

 

 

 地面から竜の頭をした樹木が急成長しながら葉蔵に襲いかかった。

 葉蔵は跳び上がって樹木から逃れるも、竜の口が開き、そこから電撃が放出。

 あまりにも予想外の攻撃に葉蔵は面食らい、直撃してしまった。

 

「ッッぐ!?」

 

 痺れて動きの止まった葉蔵に、更なる血鬼術が襲い掛かる。

 上下左右。全方向かた襲い掛かる木竜の頭とその顎から発せられる血鬼術。

 風が、雷が、熱波が、音波が、重力波が、衝撃波が。

 あらゆる力と属性が葉蔵に牙を剥く。

 

「ガァ!!」

 

 葉蔵が高く跳ぶ。

 先程のケンタウロスのような下半身とは別の、異様に脚が発達した異形の姿。

 下半身がバネのような、逆関節の形状に発達した獣のような脚。

 これもまた葉蔵が取れる獣鬼の姿である。

 

「彼奴め、そのような真似まで出来るのか」

 

 木の陰から一人の少年が現れた。

 半天狗最強の分裂体、憎伯天。

 背中の太鼓を鳴らすことで血鬼術を発動。

 風を、雷を、熱波を、音波を、重力波を、衝撃波を。

 あらゆる力と属性を葉蔵に向ける。

 

『まだ分裂しやがるのか。いいぜ、もう分裂できなくなるまで吸い尽くしてやらぁ!』

「極悪人がァ……成敗してくれる!」

 

 

 第三ラウンド開始!

 

 




半天狗自身の強みってあの被害妄想の異様な強さだと私は思うんですよね。
自分が最後までか弱い善人だと、被害者側だと妄信することで、爆発的な力が出ると思うんですよ。
アレですよ、主人公が非道を行う悪党に抱く怒りや、仲間を想う絆によってパワーアップするアレですよ。
半天狗の場合は自身を傷つける悪党への怒りによって、自身を想う自己愛によってパワーアップするんですよ。
要するに主人公補正ですね。
ということは、半天狗は主人公だった?……それはないか。
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