鬼喰いの針~人間失格になった私は鬼として共食いします~ 作:大枝豆もやし
だってアレ、見た目が魚人じゃないですか。
まあ、鬼殺隊相手に水中戦の機会なんてないと思いますが。
あ、炭治郎が沼鬼を水の中で倒してましたね。
水の呼吸の使い手なら……。
「針鬼……よくも私の最高傑作を!」
【血鬼術、千本針・魚殺】
【針の流法 血針弾・複】
聞くに堪えない金切り声を上げながら、玉壺は血鬼術を行使した。
取り出した壺から金魚が出現し、その口から無数の針が葉蔵目掛けて発射。
迎え撃つのは無数の銃口。葉蔵の周囲が赤い点のようなものが複数現れ、血針弾を発射。全ての針を撃ち落とす。
「なんの!この程度は想定済みだ!」
【血鬼術 水獄鉢】
【針の流法 血針弾・連】
玉壺が叫びながら、壺から水を出す。
しかし一瞬で喰われた。
針が吸水スポンジのように、瞬く間に水を吸収し、針の根を形成。
針の根同士が合わさって一つになり、自動で折りたたまれ、一つの赤い塊になった。
流れ弾が壺を砕くも、そこに玉壺の姿はない。
「ヒョッヒョッヒョ!それも想定内!喰らえ!」
【血鬼術 蛸壺地獄】
【針の流法 血針弾・貫】
壺から巨大なたこ足が現れ、葉蔵を捕らえようと触手を伸ばす。
葉蔵はその蛸を弾丸一つで貫き、一瞬で喰らった。
「な……ならこれならどうだ!?」
【血鬼術 一万滑空粘魚】
全くの別方向から魚群が飛来する。
金魚たちの毒針で弾幕を張り、水獄鉢で足止め、壺の瞬間移動で葉蔵の背後を取り、蛸壺地獄で拘束。そして渾身の攻撃を叩き込む。
これが最初から玉壺の描いたシナリオなのだが・・・・・・。
【針の流法 血喰砲・散弾】
葉蔵が玉壺如きの思い通りになるはずがない。
散弾の雨が次々と魚群を撃ち落とし、針の根を張り、毒含めて吸収。
針の根はそれぞれの魚の肉体を飛び出し、互いに結びつく。
折り畳み傘のように自動で絡み合いながら、一つの塊にまで縮小した。
魚群から吸収した鬼因子。
葉蔵はソレを拾い、針をストローのように刺し、チューチューと因子を吸い始める。
「お、おのれぇええ!私の愛くるしい魚たちをよくも食ったな!?」
「貴様がけしかけたんだろう」
更に怒りで身体を震わせる玉壺に対し、冷めた目でため息を付く葉蔵。
「……弱い。弱すぎる。上弦の参と比べて貴様はあまりにも弱い。上弦とはこの程度か?」
「(お…己ェ!芸術のげの字も知らん無知無教養な脳筋の分際で好き勝手言いおって!!)」
ギリギリと目の位置にある口ではぎしりする玉壺。
しかし、普段おしゃべりなその口から反論が飛ぶことはなかった。
なにせ、埋め難い実力差があるのは事実なのだから。
玉壺に出来る事と言えば悔しさと屈辱で歯軋りするぐらい。
弱者が強者に反旗するなど不可能……。
「勝てないから後ろから攻撃か。……ありきたりすぎる」
虚空から壺が現れ、中から玉壺が飛び出してきた。
葉蔵はソレをノールックかつノーモーションで迎撃。見事に弾丸は命中したのだが……。
「……ほう」
少しだけ驚いたような顔をする葉蔵。
撃ち落としたのは、空っぽの皮。抜け殻である。
「貴様……脱皮できるのか。気持ち悪いな」
葉蔵は嘲るような声で上を見上げる。
そこにいた玉壺の姿は先ほどまでと大きく形を変えていた。
半魚人に蛇が混ざったような姿で、玉壺は自慢げに己の肉体を誇った。
「黙れ芸術を理解出来ぬ愚か者が! 知るが良い、真の芸術を! 私が真なる姿を以て! 金剛石よりも硬く強い鱗、練り上げた美しき姿を以て! 真の芸術を教えてやる」
【血鬼術、陣殺魚鱗】
真の姿となった玉壺が一気に仕掛ける。
常軌を逸したスピードで、縦横無尽に飛び跳ねる。
凄まじいスピードの前に葉蔵は………。
「キモッ!?」
「―――ッガ!!?」
気色悪そうに弾丸を命中させた。
玉壺の進路上に打ち込まれた……いや、置かれた弾丸。
自分から当たりにくる形で銃弾は命中。金剛石よりも硬いハズの鱗を放射状に砕き、地面に叩きつけた。
「気持ち悪いなぁ。私、蛇は好きだがその姿は受け付けないな」
「ぐ、ぉぉおおお!?我が美しき完全なる姿がァアア!?」
身体を再生させながら壺に逃げ込み、次から次へと周囲に予め置いた壺に瞬間移動する。
葉蔵はあくびをしながらソレを少し眺め、そろそろいいかと零しながら血針弾を撃ち始めた。
撃ち出されたが壺を粉々に割り砕くが、肝心の中身は既に別の壺へと移動している
わざとである。
やろうと思えば当てられるが、それでは面白くない。
ギリギリ当たらないモグラたたき。
当たれば負け、移動して間が1秒以上空いたら大負け。
こんな感じのゲームをしているのだろう。知らんけど。
「ほらほら、早く打開策を出さないと全部の壺が割れるよ?」
「(ぐぅう……!まずいマズイ不味い!私の壺移動より奴の方が速い!)」
玉壺の壺移動は非常に厄介な技だ。
速い上に現れる壺もランダムな為、たとえ柱でも何処から出てくるか見極めるのは難しい
しかし葉蔵には鬼を感知する超感覚がある。これにより移動した地点をいち早く察知し、血針弾で次に来る壺を撃ち抜いている。
このゲーム、最初から葉蔵が優位なのだ。
「これで最後だ」
葉蔵はゆっくりと最後の壺に指を向けた。
「……ヒョ、ま、待たれよ針鬼殿………!」
「ゲームオーバーだ」
放たれる銃弾。
バリィンと壺を割り、玉壺を外へ放り出す。
打ち上げられる玉壺の禍々しい姿。
ソレを見て葉蔵はつい顔を顰めながら血針弾を撃った。
「(死ぬ……のか? 私は……こんな、とこで? 何も作れずに……?)」
「(い…嫌だ! 死にたくない! もっとやりたいことが…。作りたいものがあるのに!)」
「(そうだ、私の作品をあの方は認めてくださった! 今も私の作品を楽しみにしている! あの方のためにも……芸術のためにも……傑作のためにも!!)」
「……ッ私は、真の芸術家だァァアアアアアアアア!!!!!!!」
「!?」
月夜に玉壺の慟哭が響き渡れる。
先日、分け与えられた無惨の血。
あの時は適応出来なかったが、今なら出来る!
目を見張る超速再生に驚く葉蔵に、玉壺が吠えた。
「私の究極の芸術を見せてやる!」
【血鬼術 波乱万滑空粘魚】
玉壺の持つ壺の中から幾多の毒魚がそれぞれ放出させる。
一万滑空粘魚とはまた違う、更に強化された毒魚。
しかもそれらは毒水の波に乗っている。
【針の流法
葉蔵はそれらを血鬼術で迎え撃つ。
爆発する針をまき散らし、爆炎で毒の水を吹き飛ばし、毒の化け魚を迎撃した。
「ヒョッヒョッッヒョ!これで倒せぬのか! ソレもまた良し!ならこれでどうだ!?」
今度は壺の中から、大量の水が葉蔵を襲う。
圧倒的な質量の毒水。
ソレが波となって葉蔵を飲み込まんとする。
【血鬼術 津波海遊壺】
【針の流法 血喰砲・爆轟】
これもまた迎撃。
ナパーム弾のように爆炎を発生させ、水を蒸発させる。
しかし、そのせいで水蒸気爆発が発生。
「これも防ぐか! ソレもまたまた良し! 今度こそ死ねッ!!」
【血鬼術 津波海遊壺】
【血鬼術 波乱万滑空粘魚】
玉壺の周囲を囲むように壺が現れ、その口から一斉に毒水が噴出された。
毒の粘液を纏う化け魚も現れ、まるで波のような大群で葉蔵に襲い掛かる。
「……ガボッ!!」
荒れ狂う洪水に飲み込まれる葉蔵。
毒水が体外と体内から蝕もうとするも、この程度の毒では死なない。せいぜい嫌がらせ程度である。
「(水中戦か。面白い!)」
もっとも、葉蔵自身はなかなか出来ない対戦に少し楽しそうだが。
毒を溶かし込んだ海水の中、彼は大量の魚群を散弾で牽制する。
たとえ水で身動きが取れずとも、弾丸はいくらでも飛ばせる。
水中抵抗など、とっくに対策済み。任意のタイミングで針の根を張る機能のON/OFFを切り替えることで、針の暴発を防止。
こうして葉蔵は水中での的当てゲームを楽しんでいた。
「ヒョ……ヒョッヒョッヒョッヒョ……。さ、流石は針鬼。あの方が危惧されることはある。まさかここまでとは。……ならこれならどうだ!?」
【血鬼術 大漁将来】
玉壺は巨大な壺を幾つか創り出した。
人をすっぽり包み込めそうな大きさの壺。
ソレを壊しながら様々な魚を人型にした化け物が現れる。
蛸と二枚貝と人手が、烏賊と巻貝と海鼠が、海牛と芋貝と海栗が合わさったような怪物。
蟹と磯巾着を、海老と海月を、海百合と鰻を人の形に無理やり留めた様な壺を持つ怪人。
そんな化け物共が壺を破壊して現れた。
「ほう……面白くなってたじゃないか!」
「ヒョッヒョッヒョ! そんな余裕もいつまで持つかな?」
出現した異形の化け物たちを血針弾で仕留めようとする葉蔵。
しかし、ここで予想しなかったような出来事を目にする。
【血鬼術 瞬間壺移動】
「………へえ」
なんと、魚人と怪魚たちが血鬼術を行使したのだ。
しかも、先程本体が見せた壺移動より一段階上の血鬼術。
壺から壺ではなく、壺や貝殻ごとの瞬間移動。
壺或いは貝殻に吸い込まれるかのように入った途端、その壺や貝殻こと瞬間移動したのだ。
そして、この程度ではまだ終わらない。
【血鬼術 滑空粘魚】
【血鬼術 千本針】
海牛と芋貝と海栗の怪物が、蟹と磯巾着の怪人と、海老と海月の怪人がソレゾレ針を飛ばした。
烏賊と巻貝と海鼠の怪物が、蛸と二枚貝と人手の怪物が、海百合と鰻の怪人がソレゾレのモチーフの化け魚の大群を創り出した。
玉壺が創り出した化け物もまた、本体と同じ血鬼術を使えるのだ。
上弦レベルの血鬼術が6つも同時に発動。
半天狗の分裂能力以上の脅威を見せつけるが……。
【針の流法 自律血針】
【針の流法 血針弾・複】
しかし、ソレがどうしたと言わんばかりに、葉蔵は血針弾を化け物共に当てた。
化け物共の血鬼術を自律血針に対処させ、自分は6発の血針弾をそれぞれの化け物共に当てる。
弾丸は逸れることなく
葉蔵には血鬼術を探知する超感覚がある。
これを駆使することで、何時何処に何がテレポートするのかすぐに分かってしまう。
そして葉蔵自身の射撃能力。これだけの情報があれば、絶妙なタイミングで獲物に血針弾を当てられる。
多少強化された雑兵程度では、葉蔵の遊び相手にすら成り得えない。
「窒息せず毒も効かず、愛くるしい我が鮮魚でも、そして我が精鋭たちでも倒せない……。なら、やはり私自らの手でやるしかないようだな!!」
毒水の中、自在に泳ぎ回る玉壺。
玉壺の完全体は水中でこそ十全に力が発揮される。
今まで水中戦の機会がなかったせいで、彼自身気づいてない特性。
しかし考えてみれば当たり前の事。
魚の姿をしているのだから、そりゃ水中が一番強いに決まっている。
「ヒョ、遊びは終わりだ。この神の手で直々に貴様を倒す!」
どんな物体も鮮魚に変える神の手。
コレなら針鬼とて無事では済まされない。
そう確信した玉壺は真正面から最高スピードで突撃した。
「ヒョッヒョッヒョッヒョッヒョ! これが私の力! あの方によって与えられた血の力! あの方に認められた芸術の美しさだ!」
「……ッグ!」
触れた。
指先が葉蔵の顔に触れ、一瞬で魚と化した。
南米の海にでもいそうな、派手で巨大な熱帯魚。
刃のように鋭く、光を反射する程にあでやかな深紅の鱗。
姿は変わっても一目で分かる、この派手な魚は葉蔵であると。
「ヒョッヒョッヒョッヒョッヒョ! 遂に……遂に針鬼を捕らえましたぞ! 無惨様、この私がやったのです! 私が成し遂げたのです!」
喜びのあまりその場で小躍りする玉壺。
毒水で形成された水獄鉢の中、ウネウネと蠢くようなダンスは生理的嫌悪感を想起させる。
端的に言って気持ち悪い。
そんな玉壺を、熱帯魚は冷めた目で見下していた。
「それはどうかな?」
ニヤリと、熱帯魚が嗤う。
次の瞬間、玉壺の意識は途絶えた。
葉蔵が楽々と倒したせいでインパクト薄いですが、パワーアップした玉壺はけっこう強いです。たぶん、無一郎くん一人では勝てなかったでしょう。
また、大漁将来で創り出した分身たちもかなり強力です。
お披露目することなく退場しましたが、分身たちは童磨が使う結晶の御子と似た血鬼術です。
それぞれが自律している上に、本体と同じレベルの血鬼術を使う。もちろん分身がダメージを負っても本体は何も影響はない。
更に分身たちはモチーフになった海生生物の特性を持っており、本体にはない能力を使うという厄介な点もあった。
おそらく鬼殺隊とぶつかっていれば、原作以上に苦戦していたでしょう。