鬼喰いの針~人間失格になった私は鬼として共食いします~   作:大枝豆もやし

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やっと無惨との戦いです!


vs無惨

「……来たか」

 

 3㎞程離れた先の山小屋。

 そこで葉蔵は罠―――地雷を仕掛けた場所を観察していた。

 

 彼が無惨の接近に気づいたのはついさっき。

 食後、竈戸家の子供たちと遊んでいると、何処かに血鬼術が発動したのを感知した。

 彼にとって何度も憶えのある血鬼術の気配。

 鳴女の空間転移の血鬼術である。

 

 気づいた彼の行動は早かった。

 炭治郎達に家から出ないよう言いつけ、気配のした地点を観察できる場所へ移動。

 いつでも狙撃と仕掛けた罠を起動する準備に入った。

 

「(さて、これで終わったらいいのだけど)」

 

 そんなことはないだろうと思いながら、爆煙に隠れている標的を観察する。

 根拠はないが、確証している。

 今度の鬼はこの程度で終わるような雑魚ではないと。

 むしろ、今まで対峙してきた敵の中で最も恐ろしい存在であると。

 

「……ほう」

 

 彼の勘が正しいことはすぐに証明された。

 爆煙を吹き飛ばす無数の触手。

 その触手から発せられる濃厚な鬼の匂い。

 そして何よりも、宿主の主から放たれる生物としての圧力。

 どれもこれもが今まで対峙してきた鬼のソレを遥かに上回る。

 前回、葉蔵が出会った上弦の参を軽く凌駕する鬼としての存在感。

 大分離れたこの距離から既に分かるのだ。近くで感じたらどれ程のモノなのか……。

 

「……震えている?私が?」

 

 気が付けば、葉蔵の肉体は震えていた。

 寒さを感じず、恐怖も抱くはずのない強靭な鬼の身体。

 そのはずなのに、葉蔵の身体は僅かに震えていた。

 

 恐怖しているのだ。

 彼自身は気づいてないが、葉蔵の中に存在する鬼の因子は知っていた。

 あの鬼こそ自身の起源であり、絶対的な主であると。

 牙向いた愚か者にあるのは死あるのみ。

 故に、あの方にだけは忠誠を誓え。

 彼の中にある鬼因子はそう言っている。

 

 

 

「……格上との戦いか。面白い!」

 

 だが、葉蔵は敢えて無視した。

 

 

 通常、生物とは格上の存在に出会った途端、敵味方に構わず恐怖する。

 生殺与奪の権限を容易く奪える存在とは、実在すると知った時点で恐怖を抱くのが自然の摂理だ。

 

 だが、葉蔵には“ソレ”がない。

 

 

 “スリル”とはゲームを面白くする最高のスパイス。

 

 

 

 “スリル”とは生きている証。

 

 敢えて死地に飛び込んでこそ、生を初めて視れる。

 

 死を実感し、乗り越えたその先にこそ生を掴み取れる。

 

 

「さあ、ゲームの始まりだ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とある雪山。

 この季節は大雪に覆われている筈だが、一部だけ雪が禿げていた。

 その中を悠々と歩く男が一人…。

 

「己己己ェ!! なんだこの鬱陶しいのは!?」

 

 男―――無惨は触手を振り回していた。

 

 背中に生える数本の管から延びる触手。

 亜音速で振り回されるソレらは、全方向から飛んでくる葉蔵の弾丸を迎撃。

 無論、全てというわけではない。中には触手の防御壁を通り抜けて無惨に命中する弾丸もある。

 しかし、針の根が無惨の身体を侵食することはなかった。

 針の根が伸びる前に、無惨が自身の肉体を自切しているのだ。

 

 鬼の能力の一つに、身体操作能力がある。

 血鬼術はそれぞれ違うが、身体操作能力は強弱の差こそあれど、鬼なら誰もが持つ基本的な能力。

 威力も応用性も、全ての面において血鬼術の方が強いと言っても過言ではない。……ただ一人を除いて。

 

 鬼舞辻無惨。

 彼には血鬼術なんて小細工は必要ない。

 極限まで高められた身体操作能力は、並の血鬼術以上の威力を発揮する。

 その一端が触手や自切である。

 あらゆる方角から来る葉蔵の弾丸を防げる時点でその性能は十分に推し量れる。

 

「(これがうわさに聞く針鬼の弾丸!? なるほど確かに厄介な能力だ!)」

 

 雪の下から現れ、弾丸を放つ自律血針砲スコーピオンと自律血針(ファンネル)、そして自律血猟犬ヘルハウンド。

 他にも踏めば発動する血針の地雷なども存在しており、無惨をこれでもかと苛立たせていた。

 

 この山は何日も葉蔵が針を埋めて要塞と化している。

 

 流石の葉蔵も一度でこれほどの血鬼術は使えない。

 しかし予め準備をするなら話は別だ。

 幸いにも葉蔵の血針は物質的なものなら保存が効く。よってこうして設置することで罠として使えるのだ。

 そうやって準備を進めていった結果、このように雪山は鬼撃退専用の要塞となったのだ。

 

 更に無惨が警戒しなくてはいけないのが……。

 

 

【針の流法 突き穿つ血鬼の爪(デッドリィ・スティング)

 

 

「!!? ぐおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 避けようとするも、針の兵隊たちの援護射撃によって足止めされ、すぐさま迎撃に変更。

 腕を蟹のような鎧に変えることで防ごうとするも、自律血針による自爆特攻で体勢を崩され、突き穿つ血鬼の爪デッドリィ・スティングが命中。

 無惨の体内から血を吸収し、ある程度したところで自爆した。

 

 そう、これが無惨の注意しなくてはならない点その二である。

 葉蔵本人も高い射撃能力を有しており、遠くからこうして大技を放つのだ。

 

「(これほどの威力の血鬼術、そしてこの正確さ! 奴は思った以上に近くにいるようだ!)」

 

 違う、葉蔵は遠くから射撃している。

 人間の頃から100m離れた標的を狙い撃つ技量を持つ彼にとって、この程度の距離など楽勝だ。

 それに、無惨の周囲に配置した分身からの情報で、標的の正確な位置を把握している。

 これで外れる方がおかしい。

 

「おのれ! このような小細工を!!」

 

 無惨は吠えながら体を変異させる。

 大きく体が上下に裂けて口のように開き、突き穿つ血鬼の爪(デッドリィ・スティング)が飛んできた方角に口を向ける。

 そして息を吸い込もうとした途端……。

 

「むぐぅ!?」

 

 突如、無惨の開いた口が一瞬で針まみれになった。

 葉蔵の血鬼術。ブラッディミストである。

 無惨の吸気に合わせて放たれたソレは、無惨の肉体を侵食していく。

 そしてある程度侵略したところで爆発し、無惨にダメージを与えた。

 

 

 これが葉蔵本来の戦い方である!

 これが針の流法の使い方である!

 

 

 本来、葉蔵はあまり接近戦が得意ではない。

 葉蔵の本来の戦闘スタイルは狙撃と指揮官。

 隠れて一撃必殺を狙う、或いは兵士や兵器や物資を操って戦う。

 罠、狙撃、奇襲、伏兵、等々。

 要するに、葉蔵はサモナー系。後衛にいる時こそ一番力を発揮する。

 

「~~~~! 鬱陶しいぞ!!」

 

 血をばら撒いて弾丸を止める。

 無惨の因子を吸収し、針がソレを喰らうことで、無惨の元にたどり着くことなく自爆。

 こうして無惨は葉蔵の攻撃を防いだ。

 

 別に、無惨は考えがあってやったわけではない。

 正直に言うと、子供の癇癪のようなものだ。

 鬱陶しいから範囲の広い攻撃をした。ただそれだけの認識だった。

 だが、そんな雑な攻撃でも十分な効力を発揮する。

 

 これが鬼の始祖、無惨である。

 本人ならぬ本鬼はクソみたいな技量と頭脳しかないが、そんな中身糞雑魚でも十分すぎる程に強い。

 やる事為す事全て力押しの一手のみ。だが、その一手で全てが完結する。

 それは、葉蔵の猛攻を受けても倒れない現状がその証拠である。

 

 葉蔵の能力は初見殺しであり、彼が鬼殺しにのみ集中すればどんな鬼でも倒せる。

 ここまで対策され、十全の力を発揮されたら、たとえ上弦の壱でもまず勝てない。

 そんな状況でも無惨は大した消耗もなくこうして立っているのだ。

 

 無惨だけは別格なのだ。

 猗窩座のように厳しい鍛錬を重ね、武術を学ぶ必要なんてない。

 黒死牟のように観察眼と分析能力、呼吸法なんて必要ない。

 童磨のように強い血鬼術なんて最初から必要ない。

 鬼の始祖の肉体。

 これだけで彼は最強たり得るのだ。

 

「針鬼ィ……貴様はこの私が直々に殺す!!」

 

 無惨は罠やら弾丸やらを無視して、無理やり突破した。

 

 

 




無惨の力は圧倒的です。
使う側が頭無残でも、上弦全員を相手取れるでしょう。
最低でも柱三人分の戦闘力を持つと言われる上弦ですが、無惨は弱体化した状態で柱五人と柱クラスの炭治郎達と互角以上にやり合えました。
頭無残の癖に。

もし葉蔵が勝つとすれば、上弦三人と手を組むくらいでしょう。

次回、葉蔵は負けます。
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