鬼喰いの針~人間失格になった私は鬼として共食いします~ 作:大枝豆もやし
狛治:クロコダイルオルフェノク
童磨:ドラゴンオルフェノク
兄上:ゴートオルフェノク
無残:アークオルフェノク
葉蔵:ファイズブラスターフォーム
隊士:ライオルーパー
柱達:ファイズ、カイザ、デルタ(フォトンブラッド制限)
赫灼+痣:フォトンブラッド制限解除
縁壱:オーガアクセルブラスターフォーム(時間制限なし)
やっぱバケモンだわ縁壱さん。
コイツ本当は人間じゃなくてアギトかオルフェノクに進化してるんじゃないの?
蝶屋敷の中を炭治郎はゆっくり歩く。
人が呼んでいるので出来るなら早く行きたいが、生憎今は全身が痛い。
あまり早く歩くと服が擦れて傷が痛み、振動で骨折に響く。
「失礼します」
一言入れて戸を開け、中に入る。
座敷には二人の美しい姉妹。
花柄の座布団にはカナエが、蝶柄の座布団にはしのぶが座っている。
「あら。こんにちは、炭治郎くん。怪我の具合は大丈夫?」
「こんにちは、カナエさん。はい、おかげさまで、大分痛まなくなりました」
「そう、流石しのぶね。もう大丈夫だって」
「いえ、そんなことはありませんよ。……炭治郎くん、貴方は今でも痛みが残っている筈です!」
「はい、けど大分マシになりました! ありがとうございます!」
カナエは優しく微笑み、しのぶは若干困った顔をする。
「炭治郎くん、あまり無理はしないでね。私の治療はあくまで日常生活を送れる程度ですから」
「はい。けどソレで充分です。ありがとうございます」
挨拶はこの辺にして早速本題へと入る。
「炭治郎くん、貴方は葉蔵さんと長く一緒にいたのね?」
「はい、あの人は俺たちの家でしばらく居候していました」
「では、葉蔵さんが鬼ということは知ってましたか?」
「はい。俺が人とは違う匂いがすると言うと、あっさりと鬼について話してくれました」
「そうですか…。ではその時の葉蔵さんってどういった感じでしたか? 例えば気まずそうにしていたとか……」
「そんなものはありませんよ。だってあの人、鬼であることを受け入れているだけじゃなくて楽しんでますから」
「……やはりそうでしたか」
寂しそうに、カナエは呟いた。
「……炭治郎くん、私はね……葉蔵さんと仲良くなりたいの」
「……無理だと思います」
歯切れが悪そうに、炭治郎は言った。
「あの人は仲良くなるとかそういうのを求めてないんですよ。求める必要もありません。人を使うことはあっても、あくまで娯楽品。あの人にとっては全てがゲーム……遊びの一種です」
「あ…遊びですって!?」
炭治郎の発言に、しのぶが過剰に反応する。
「じゃあ…何? 鬼を倒しているのも、隊士たちを助けるのも……全部お遊び気分でやっているっていうの?」
「そうです。あの人にとって人生とはゲームオーバー…死ぬまで如何に楽しくやるかという遊びです。だから遊びを充実させるために手抜きはしません。良く言えば高みを目指している、悪く言えば修羅の道ですね」
「何よそれ!? ふざけているじゃない!!」
「し、しのぶちゃん落ち着いて!?」
立ち上がって狼狽するしのぶを、カナエが抑える。
「コレが落ち着いてられるもんですか! 少しいい鬼だと思ったのに、戦う理由がお遊び……そんなの他の鬼と同じじゃない」
「同じじゃないです。あの人にはあの人なりのルールがあります」
「……ルール? ごめん炭治郎君。私達横文字には疎いの。どういう意味が教えてくれないかしら?」
「すみません。俺も最近使い出したので俺自身良くわかないんですよ」
しのぶを抑えながら、炭治郎に質問する。
「ルールは規則や法律という意味ですがこの場合だと……美学と言ったところが妥当ですね」
「美学?」
「ええ、あの人は自分の美学を曲げません。たとえ死ぬことになっても貫き通すでしょう」
「何が美学よ!? あんなの美しくもなんともないわ!!」
「あの鬼は私たちの目の前で村の人たちを虐殺したのよ!!」
「……………………え?」
「まず、経緯を聞かせてくれませんか?」
「「………」」
しのぶとカナエはゆっくりと話しだした。
とある寒村。
カナエとしのぶは村人相手に苦戦していた。
無論、二人ならばいくら人数を揃えてもこんな雑魚など一掃出来る。
しかし、ソレは出来ない。
「た、たすけ……」
「痛いイタイいたい!!!」
……彼らがこんな姿でなければ。
村人は無残な姿に改造されていた。
鬼の方がまだマシだという醜く歪な姿。
ある者はガラクタと無理やり掛け合わされ、あるものは体内部から触手みたいなものが飛び出し、又あるものは奇形化している。
見るからに異形の姿。しかし彼らは鬼ではない。鬼の寄って肉体を改造された哀れな村人たちである。
これが今回の鬼、人魔の血鬼術。
人間の身体を血鬼術によって無理やり形を変え、無機物や生物と融合させ、異形化させた自身の肉体を埋め込んでいる。
鬼は……人魔は改造した人間を兵士として、肉の楯として使ってしのぶ達を追い詰めていた。
「(ック! これじゃあ攻撃出来ない!!)」
カナエは、剣を振るのを躊躇していた。
眼前を遮る改造村人共。彼らが己の身を楯にすることで妨害していた。
柱の類稀な脚力を駆使して通り抜けようとするも、無理やり改造された力で彼女たちの攻撃の前に立ちはだる。
人魔に辿り着くには、眼前の肉盾たちを切り殺すしかない。
更に、もし仮に改造村人たちを突破しても次の問題があった。
「し、死にたくないよぉ……」
「助けてよォ……」
人魔の前に並べられた子供たち。
虫のように蠢く首輪を付けられ、ガタガタと震えていた。
彼らは端的に言えば人質である。
もし突破されても大丈夫なように人魔が用意したものだ。
「ハハハ、どうしたの鬼狩り? 攻撃しないの?」
「(この鬼……攻撃出来ないのが分かってるくせに!!)」
挑発する人魔を睨みつけるしのぶとカナエ。
しかし当の人魔はどこ吹く風。むしろソレをニヤニヤと見下していた。
「この…卑怯者め!!」
「卑怯だと思うなら君たちも似たような事すればいいじゃん。ま、出来るわけないけどね」
「~~~~~!」
人魔の舐めた様な態度に、しのぶは怒りを見せる。
「(まさかこんなことになるなんて……!)」
カナエたちの任務は、この村付近に現れた鬼の討伐。
何人も何回も返り討ちにされ、遂に柱であるしのぶと柱を引退したカナエが出向くことになった。
柱クラスが二人もいれば大丈夫。お屋形様はそう考えていたのだが、相手が上手だった。
件の鬼、人魔は村人を改造することで支配下に置き、カナエ達を罠に嵌めたのだ。
間一髪、カナエとしのぶは敵の企みを見抜いて最悪の事態こそ避けられたが、こうして
「大変だねぇ正義の鬼殺隊さんは。守るものが多すぎていざという時は何も出来ない。だから君たちは弱いんだ」
「………」
「つくづく鬼殺隊ってバカな連中だよ。見ず知らずの人間のために命を捨てるなんて。あの方の言った通りお前たちは異常者だ」
「黙りなさい! 異常者はあんたたちの方よ! どうしてこんな簡単に酷いことが出来るのよ!? 元が同じ人間だとは思えないわ!!」
「ハハハ。やっぱお前らはつまらないや。似たようなことばかり言う。お前たち人間だって動物を殺して食うじゃん。俺たちとどう違うの?」
「同感だ。生きるなんて所詮は事情の押し付け合い。違う種族同士でどっちが正しいか間違っているか言い合うなんて滑稽にも程がある」
瞬間、銃声が響いた。
パァンと破裂音と共に撃ちだされた銃弾。
何処からか飛んできた弾丸は人質の子供に命中し、一瞬で意識を途絶えさせた。
「……………え?」
「……………は?」
突然のことに呆ける二人。
人魔も一瞬同じような状態になるも、すぐさま銃弾の飛んできた方角―――空へと目を向ける。
「だから、私はこの力で私の言い分を通す。……貴様はとっとと死ね」
もう一体の鬼―――翼を広げている葉蔵は鋭い目を人魔に向けた。
「……可哀そうに。今すぐ解放してやる」
【血鬼術合成
葉蔵の姿が一変したと同時、弾丸の雨が降った。
全身の体毛が銃口と化し、一斉射撃を開始。
銃撃、砲撃、爆撃。ありとあらゆる形の攻撃、
ズドドドと激しい音を立てながら、豪雨の如く降り注がれる。
それらは人魔を遮っている肉盾共を一気にミンチへ変えた。
「…………え?」
数秒。
ほんの少しの時間で、村人の半数を集めた人垣が全て一掃された。
悲鳴を上げる時間すら与えない、無慈悲な虐殺。
あまりにも現実離れした現象に、柱並の剣士ですら唖然とした。
「何をしている?さっさと眼前の敵を殺せ鬼殺隊」
冷たい表情と声で言いながら、人型へと意戻る葉蔵。
言葉に込められているのは怒りか、それとも呆れか……。
「へ、へえ~。お前が針鬼か。噂じゃ正義の味方をする裏切り者って聞いてたけど……こんなあっさり本性表すんだ」
「あ?」
【針の流法 血針弾・散】
【針の流法 血針弾・爆】
【血鬼術合成 血針弾・爆連】
ばら撒かれる爆発機能付き散弾。
人魔は咄嗟に懐へ入れていた縮小化された改造人間を元に戻して楯にするも、爆弾は瞬く間に改造人間たちを爆殺していく。
葉蔵の血鬼術は上弦の鬼をも屠る性能をるのだ。たかが改造人間程度に耐えられる筈がない。
こうして人魔は大分手駒を失った。すぐに待機させていた改造人間を呼び寄せ、楯を補充しようとするが……。
「やめなさい!」
「あ?」
突如、葉蔵の首めがけて日輪刃が飛んできた。
葉蔵は咄嗟に右手を異形化さ、飛んできた凶器をキャッチ。
持ち主の方に目を向ける。
「……何のつもりだ?」
「ソレはこっちの台詞よ! 貴方……自分が何してるのか分かってるの!?」
「……」
無言。
興味を無くしたかのようにしのぶ達から目線を離し、次の血鬼術を行使する。
【針の流法 自律血針】
【針の流法 血針弾・連】
【血鬼術合成
「!? やめなさい!!」
「辞めて葉蔵さん! 彼らは犠牲者なのよ!?」
邪魔しようと柱二人が動き出すも、童磨一人すら倒せない柱など脅威にもならない。
彼女たちの抵抗むなしく、縦横無尽に飛び回る赤い杭が瞬く間に残っていた改造人間も全て殲滅した。
「な、なんてことを……」
「こ、こんなにあっさり……」
一方的な虐殺。
鬼によって尊厳を奪われた哀れな人間を、まるで虫でも踏み潰すかのように殺された。
「ひ、ひどい……」
無意識に、カナエの口から悲嘆の声が漏れる。
村人たちを無理やり改造した鬼に対して……そして、葉蔵の選択に対して。
ああ、確かに彼らは異常な姿に変えられた。
鬼に操られ、どうしようもない状況になっていた。
しかし彼らも犠牲者だ。
鬼によって肉体を改造され、尊厳を奪われた、理不尽の被害者である。
救えたかもしれない。
鬼の事を忘れ、日常に戻れたかもしれない。
だがそんな可能性も潰えてしまった。
たった一人の鬼によって……。
「これで貴様を守る楯は無くなった。……じっくり料理が出来る」
スッと、葉蔵は赤く染まった指先を人魔に向けた。
一発で命を刈り取る一撃を、葉蔵は何時でも出せる。
勝敗はもう決した……。
「は……ハハハ! 所詮はお前も鬼だったのか! 自分の身可愛さに人質ごとあっさり殺すなんて!やっぱりお前は自分のことしか考えないただの鬼なんだよ!」
「は? 何故私が責められなくてはならない? 原因を作ったのは貴様だ。何故私が悪いことになる? 貴様が人間を操って攻撃してきたから対処した。悪いのは元凶の貴様だ」
「違うね! お前も殺さないって選択肢は取れた筈だ! なのにお前は殺した! 自分の意思で殺したんだ!!」
「だから何だ? 貴様がけしかけた事には変わらん。利用者である貴様が……この私に殺すという選択肢を用意した貴様が悪い」
「は、ハハハ…! 最後まで自分が悪くないと、自分の考えこそが絶対だって言うのか! お前は鬼の中でもかなり傲慢だな!」
「傲慢じゃない生物なんて存在するのか? 生物なんて所詮は他の生物を殺すことで生き永らえ、何かを得ている。何かを奪わずして得られる者なんてこの世には存在しない」
「詭弁だね! 言い訳して自分の罪をなかったことにしている! そこまでして悪者になりたくないのか!? この偽善者め!!」
「……くだらない」
「悪だの罪だのは一種の評価でしかない。基準や視点が変われば結果も変わる。その程度なんだよ、私にとっての善悪なんて」
「私は私のやりたいことをする。人間は邪魔だから殺した。貴様も腹が立つから殺すただそれだけだ」
「私を縛る者はこの世に存在しない。人間共のくだらないモラルやルールで支配できると思うな」
淡々と、機械のように話しながら、葉蔵は人魔に血針弾を撃ち込んだ。