アズールレーン─トリカゴ基地の日々─   作:大和亀蔵

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ランキング入ってました、ありがとうございます! 調子に乗って連投です。

唐突にオリジナル要素をぶっこむのは二次創作の特権(


「一日限定レンアイガスコーニュ」 その1

 

 

 

アズールレーン本部、技術開発局

 

トリカゴ基地の指揮官にとっては、まさに鳥籠と言わんばかりに行きたくない場所堂々の上位に輝くその研究所に、二人の計画艦がいた。

 

ネプチューン、そしてガスコーニュ。

 

メンタルキューブの研究により顕現した空想の産物である二人は、特別性である艤装のメンテナンスでしばらくの間ここに訪れている。

 

かれこれ一週間となり、そろそろ解放されるとは聞いてはいるが、ネプチューンは憂さ晴らしに勝手に研究所のキッチンを独占し、ガスコーニュに話を投げながらお菓子作りに専念していた。

 

「はあ、退屈ですわ。ちょっと呼び出されてテストして、またメンテナンス。以下その繰り返し......早く帰って指揮官様に甘えたいです。ガスコーニュさんも、そう思いません?」

 

大人しく椅子に座って紅茶を口につけ、ネプチューンの動向を見守っていたガスコーニュは、目線で反応を示すと口を開いた。

 

「艤装の点検作業はこれからの戦いにて必要案件と判断。しかし、主との接触が不可能なのは不満と提唱」

 

「あなたも、結構指揮官に惚れ込んでますのね......ちなみに、好きになったのはどういう経緯ですの?」

 

「......解答の必要性を判断しかねる。よって黙秘を主張」

 

「あらあら、照れ隠しですか。はい、出来ましたわ」

 

あわよくば恋バナといきたかったが拒まれてしまい、ネプチューンはクリームを絞る手を止め、完成したお菓子をガスコーニュにへと出した。

 

「これは......エクレア?」

 

「そうエクレアですわ。アイリス、ヴィシアのお菓子でしょう? 気に入っていただければいいのですけど」

 

「......ありが『計画艦ネプチューン、A101研究室へ参られたし。繰り返す、計画艦ネプチューン......』

 

ガスコーニュがお礼の言葉を言おうとしたところで、招集の放送が割り込み、感謝の声は儚く千切られてしまう。

 

「どうやら、またテストみたいですわ。ごめんなさいガスコーニュさん。お味の感想はまた後で。後片付けは私がやりますから、そのままにしておいて下さい。それではまた」

 

ネプチューンはそう言い残して、招集場所にへと姿を消していった。

 

一人だけになってしまったキッチンで、ガスコーニュは黙々とエクレアを口にし、咀嚼し始める。

 

「......」

 

美味しいのか美味しくないのかよくわからない。

 

ただ、何かが足りないと思ってしまう。

 

誰かと一緒に分かち合う、そう、ヨロコビ。

 

「......主」

 

そのヨロコビを教えてくれた、貴方が......足りない。

 

「寂しそうね」

 

「......っ!?」

 

聞いた覚えのない第三者の声に、ガスコーニュは即座に臨戦態勢をとり、その先にいた相手を見据えた。

 

黒いワンピースのような衣服から人のものと思えない白い肌がのびており。黄金色の瞳が不気味に輝いている。

 

本能的に敵であると、ガスコーニュは理解した。

 

「あらあ? そんなに殺意のこもった目をむけられて、お母さん悲しいわ」

 

「......」

 

お母さんだなんだと何かほざいているが、ガスコーニュは目の前の敵をどうやって対処するべきかを考えていた。

 

艤装はメンテナンスによって展開することが出来ない。近くにある武器もフォークくらいかしかなく、勝算を見出すことは出来そうにない。

 

そもそも、どうやってこいつは本部にまで──

 

「うっふふ」

 

「......っ!」

 

そこまで思考を走らせたところで敵は不敵に笑ってみせると霧となって姿を消し、気付けばガスコーニュを優しく抱擁してみせていた。

 

「大丈夫、恐怖は必要ないわ。私はスペクテイター。そう、ただの見物人なの。世界に愛されたあの子を見守るだけの観客。ガスコーニュ、貴方はもっと素直になるべきよ。大丈夫、お母さんに任せて」

 

「......っ!?」

 

軽く頬を撫でられた瞬間、猛烈な眠気がガスコーニュを襲い、立っているのもままならなくなる。

 

「世界に愛されたあの子が誰かを愛せるのなら、お母さんはそれでいいのよ。ああ、喜んでくれるのかしら? 生きてくれるのかしら? 誰かを愛するのかしら? あはっ? あははははっ!」

 

段々と霞む視界の中で、敵がただただ面白そうに笑い声をあげている姿を最後に、ガスコーニュの意識は闇にへと落ちていった。

 

 

*

 

 

『こちら旗艦ウォースパイト、セイレーンの消滅を確認した。他にはもういないのかしら?』

 

「こちらトリカゴ了解した。もっと会いたいなら、王冠に行くことをオススメするよ」

 

『了解、帰投するわ。指揮官も休んでちょうだい。才あるものとは誰かを頼る事が出来るものよ』

 

「ネプチューンも言ってたなそれ。ケーキ食べさせる羽目になったけど」

 

『......ちょっとその話、後で詳しく聞くわ』

 

「本人に聞けばいいよ。メンテナンスもそろそろ終わって、戻ってくるだろうし」

 

『そうさせてもらうわ。あと、感情を持ったセイレーンとは交戦しなかった......以上よ』

 

「......はぁ。今日も全員生きてたか、よかった。ガスコーニュとネプチューン抜きでもどうにかなったな」

 

西日が差し掛かる執務室にて、通信が終わると指揮官は大きく安堵の息を吐き出した。

 

基地近くに現れた鏡面海域反応によるデータ採集のため、ウォースパイトを旗艦とした艦隊はセイレーンとの交戦に入っていたのだ。緊張も自然と大きくなる。

 

加えて、セイレーンに対しての切り札とも言える計画艦ネプチューンとガスコーニュは艤装のメンテナンスで本部にある技術開発局に行っており、基地をあけている。

 

状況的には飛車角落ちに近いものだった。

 

しかし、指し手が優れているのであれば負けない戦いはできる。指揮官は今回、それを証明してみせた。

 

「指揮官が見てくれてたからだよ、お疲れ様。コーヒーいる?」

 

そう言いながら、細く湯気のたつマグカップを手渡したのは唯一無二の鉄血艦、アドミラル・グラーフ・シュペーだった。

 

本日は秘書艦業務だからだろうか、艤装による派手派手しい服装ではなく、少女らしさを引き立たせる可愛らしい装いとなっていた。

 

どこかに出かけに行く日曜日の時のような、そんな愛らしさがある。

 

「ありがとうシュペー、いただくよ。でも、俺は居場所を教えてただけだ。実際に戦ったのはウォースパイト達だから労いは向こうに頼むよ」

 

「それでも指揮官がいるから、みんな頑張れてる。ありがとう」

 

「んー、どういたしまして? で、いいのか? ところで、鉄血との連絡はついたか?」

 

「うん、データを送ってくれたらすぐに解析に動くって」

 

「そうか。鉄血もセイレーンのデータを集めて何がしたいのやらだが」

 

レッドアクシズにて大きく権力を握っている鉄血を、トリカゴに参戦させるのにはいくつかの条件があった。

 

セイレーンとの交戦があった場合、優先的に戦闘データを渡すのもその内のひとつ。

 

「......私がここにいてごめんなさい。本当なら、私がデータをとってくるべきなのに、横取りするみたいになっちゃって」

 

「......秘書艦になっちゃったわけだし仕方ないさ。わかっててウォースパイト達も協力してるだろうし、気にしなくていい。誰もシュペーを責める人は......すまん、大鳳は何か言ってくるかも」

 

苦笑を浮かべる指揮官。

 

後々確かに大鳳に文句を言われるような気がして、シュペーもつられて軽く微笑んだ。

 

「ふふっ......お詫びと言ったらあれだけど、ビスマルクさん曰く、テレポーテーション技術の研究って言ってたよ」

 

「テレポーテーション? それってあのテレポーテーションか?」

 

瞬時に離れた場所に飛べるという、どこでも的なドア的な。

 

「うん。そのテレポーテーション。セイレーンはこちら側に来る時、テレポーテーションに近い形で来てるんだって。その時の磁場とか重力とか、その他諸々を応用すれば出来なくもないみたいな」

 

「へえ。というか、俺に教えていいのかそれ? 軍事機密もんだぞ」

 

「大丈夫。ビスマルクさんに、私の口から伝えるように頼まれてもいたから。鉄血はあまり協力してあげられてない分、話してもいいって」

 

「そうは言ってもなあ、シュペーを寄越してくれただけでも十分なのに......」

 

「ふ、ふうん」

 

指揮官の中で自分が特別扱いされていた事実を知り、我にもなく優越感にシュペーは浸った。

 

もちろん気付かれる訳には行かないので、マグカップを傾けコーヒーを飲むふりをして誤魔化しておく。

 

「しかし、テレポーテーションか。時代は進むんだなあ」

 

「戦争はいつだって時代を進めるよ。セイレーンとの戦いがなかったら、今はもっと遠かったかもしれない」

 

「残酷だけど、間違ってはいないな。それでもせめて、俺達で時の流れを緩やかにしてあげたいものだよ」

 

「......そうだね」

 

シュペー本人も決して、戦争が好きなわけではない。

 

出来るなら愛する家族達と、指揮官と一緒に平和に.......。

 

そんなシュペーの気持ちの前半部分は完璧に理解している指揮官は、技術の進む先に話を戻した。

 

「とは言っても俺も男だし、テレポーテーションに胸は踊るな。そのテレポーテーションってどのパターンなんだ? 量子に分解して再構成する転送装置系? それとも本当の瞬間移動か?」

 

「私も詳しくは知らないけど、多分量子の方だと思う」

 

「ほう。となると、テレポーテーションした俺は本当の俺なのかな」

 

「あっ、それ知ってる。テセウスの船でしょ」

 

「よく知ってるな」

 

「フィーゼちゃんが教えてくれたの」

 

「凄いなフィーゼ......」

 

テセウスの船とは概要だけで述べると、修理し続けた船は最初に使っていた船と同じと言えるのか? パーツを全て入れ替えたのであれば、違うのではないか? という一種のパラドックスによる問いである。

 

シュペーは持っていた答えを述べた。

 

「私は同じだと思うな。人にも船にも魂はあるし、たとえ再構成されても魂があるなら同じじゃないかな。科学の国でうまれた私が、魂なんて言うのはおかしいかもしれないけど」

 

「いや、素敵な解答だと思うよ。シュペーらしくていいじゃないか」

 

「そ、そうかな。指揮官はどう考えてるの?」

 

「俺か? 俺は......ん? ネプチューンから? すまんシュペー」

 

「うん、出てあげて」

 

指揮官が答えを返そうとした矢先、本部へメンテナンスに行っていたネプチューンから通信が入ってきた。

 

話の腰を折ったことを詫びてから、指揮官は通信を繋ぐ。

 

「ネプチューンか、どうした?」

 

『あら、指揮官様。待機時間わずか三秒で応答してくださるなんて、余程私の連絡が恋しかったようで。それと、変わらず素敵なお声でネプチューン感激ですわ。出来ればしばらく会っていない分、あと二十回ほど呼んでくれませんこと?』

 

「挨拶はいい。君が連絡を寄越すなんてよっぽどの事だろ? またメンテナンスが延びたとかか?」

 

『......そう大袈裟なものじゃありませんよ。明日の朝方に戻りますという定時連絡のようなものですわ。ただ、ひとつお伝えすることが......あっ! ちょっとどこに!?』

 

「......?」

 

どうやらネプチューンの隣に誰かいるようだ。考えられるのは、同じく開発局に行っていたガスコーニュしかいないわけだが、ネプチューンが取り乱すとは珍しい。

 

『ごめんなさい。ちょっと走りますので手短に。その......ガスコーニュさんにびっくりさせられる準備をしておいて下さい。私から言えるのは、これだけですわ。それでは、ごきげんよう!』

 

「えっ!? ちょっと待って!? それどういう......切れた」

 

何やら意味深なセリフをはいてから、一方的にネプチューンは指揮官との通信を切った。

 

傍からそれを見ていたシュペーは、当然疑問を投げる。

 

「どうしたの?」

 

「いや、明日の朝に戻るっていう連絡だったんだけど。何か、ガスコーニュに驚かされるらしい」

 

「ガスコーニュさんに?」

 

「よくわかんないよな。シュペーはガスコーニュと仲良いけど、なんだと思う?」

 

「う、うーん?」

 

少し考え込んで、シュペーはこれまでのガスコーニュ像を思い浮かべる。

 

シュペーは初対面の人間との人付き合いが、あまり得意ではなかった。

 

この基地に来てからも新しい場所で、しかも別の国の人と友達になれるのかと不安に思っていたのだが、そんな心配を必要のないものにしてくれたのが、ガスコーニュだった。

 

良くも悪くも機械的な彼女は、戸惑うシュペーの言葉をちゃんと最後まで聞き遂げ、それから考えを述べる。

 

当たり前のようでいて難しい事を容易にしてみせたガスコーニュは、シュペーにとってこの基地での最初の話し相手であり友達だった。

 

そんな冷静沈着で冗談なんて通りもしないガスコーニュが驚かせてくる......うまく想像できない。

 

「なんだろうなあ、俺は全然思いつかない」

 

「充電してたはずの端末の充電器をこっそり抜いて、朝起きたら残り三十パーセントだった、とか?」

 

「リアルに驚くというか焦るやつ!?」

 

「知らずのうちにポケットで操作してたも焦るよね」

 

「あー、いつの間にか電話かけてたりな。話脱線してるなこれ」

 

「じゃあ、知らず知らずのうちに端末の音量をマックスにされてて電車で恥ずかしいことになるとか」

 

「びっくりするなあ! それも確かにびっくりするけど!」

 

ガスコーニュにされるオドロキは、そんなサラトガ的な方向じゃないだろうと、指揮官は続けた。

 

「指揮官はなんだと思う? 何をガスコーニュさんにされたらびっくりする?」

 

「うーん......」

 

そう言われると難しい。あのガスコーニュだし、何されてもびっくりする自信があるが。

 

「そうだなあ。俺のことをお兄ちゃんって呼んでくるとか、語尾がニャンになってるとか」

 

無意識に願望も入り交じっているような気もするが、本人はさほど恥ずかしげも無くひけらかした。

 

「......」

 

「シュペー?」

 

それを聞いてから、顎に手を置いてシュペーはしばらく思案すると、決が下ったのか持っていたマグカップを机に置くと、

 

「お、お兄ちゃんにゃん......」

 

潤んだ瞳で、更には猫のポーズで可愛さマシマシ。シュペーマジかわ成分増量ハイパーマックスで、彼女の姉なら高笑いした後に失神しそうな破壊力である。

 

「......」

 

「......」

 

「......」

 

形容しがたい静けさが部屋に流れ、やがて先に静寂に音を上げたのはシュペーの方だった。

 

「ごめん指揮官、死ぬほど恥ずかしい」

 

「ああ、うん。可愛らしいと思うよ? お姉さんにやってあげたら喜ぶんじゃないか?」

 

「あ、ありがとう。指揮官も嬉しい?」

 

「嬉しいというより、シュペーもそういうことするんだっていう驚きの方がでかい......」

 

「そっか」

 

少なくとも指揮官の心を動揺させることが出来たのなら、恥ずかしい思いをした甲斐もあったなと、シュペーは小さくガッツポーズをした。

 

「さ、戦闘の緊張も程よくほぐれたし、仕事するか。今日の交戦に使った弾薬とか全部本部に伝えなきゃダメなんだ。長くなったら大変だ」

 

「私は、全然朝まで付き合うよ?」

 

「シュペーは明日、商船の貨物輸送護衛任務だろ? そこまで付き合わせるわけにはいかないよ」

 

「......うん、ありがとう。やろっか」

 

「おう」

 

もちろんシュペーの言った朝まで付き合うとは、そっちの意味ではないのだが指揮官が理解するはずもなく、再び万年筆を握り仕事をはじめる。

 

ただ、指揮官は妹萌えでネコ属性に弱いのかもしれないという不確かではあるが大きな戦果をシュペーは手にし、満足気に筆を走らせるのだった。

 

ガスコーニュさんが帰ってきたら教えてあげようなんて、考えながら。

 

 

*

 

 

「主! もう朝だよ起きて! お日様もおはようって言ってる!」

 

「ん? ......んー?」

 

聞き覚えのある声、けど聞いた覚えのない声の波。

 

言われるがままに体を起き上がらせ、ぼんやりと霞がかる意識を晴らしながら、指揮官は視界にいた蒼髪の少女の名を呼んだ。

 

「ガスコー......ニュ?」

 

「うん、ガスコーニュ! 主に会いたくて急いで帰ってきたの! 褒めて!」

 

「ん、おー? ガスコーニュは偉いなあ」

 

まだまだ寝惚けた眼で言われたとおりの言葉を投げかけ、少女の頭を撫でる。

 

「えへへ、やったー」

 

少女は嬉しそうに表情を崩し、それを受け入れていた。

 

「ふわぁああ......ん?」

 

ひとつ欠伸をして意識が覚めてきたところで、指揮官はようやく違和感の存在に感づいた。

 

目の前にいるのはガスコーニュ。朝起こしに来るのは奇特なこともあるのだなと片付けられるが、そんな彼女が満面の笑みを見せて俺と接している!?

 

最近笑ったことと言えば、北風がガスコーニュの笑顔を見たいと色々模索したが何をやってもダメで、結局指で釣り上げてやってみせたあの時くらいの、あのガスコーニュが!?

 

果たして無理やり笑みを作ったことをカウントにいれていいのかはともかく、そのくらいガスコーニュは冷静だし感情の抑揚をあまりみせないKAN-SENだった。

 

だと言うのに、なんだこの大盤振る舞いは。

 

「ありがと主、元気出た! 今日はガスコーニュが朝ご飯作ったの! はやく着替えて執務室に来てね! それじゃあ!」

 

ある程度ナデナデされて満足したのか、ガスコーニュはそれだけを言うと嵐のように指揮官の私室を後にした。

 

「......痛いな」

 

試しにつねってみた頬の痛みは、現実を理解させるのには十分だった。

 




exボイスより5倍くらい元気なガスコーニュをご想像いただければ幸いです。

ネプチューンと仲いいのシュロップシャーだったよ......(運営神からのお告げ
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