余談ごとですがウォースパイトとケッコンしました...
「どう、主? 美味しい?」
「すっごい美味しい、左手を塞がれてて食べ辛いけど」
「えー? ガスコーニュ聞こえなーい。ふふっ」
「(なにあれ......?)」
執務室へ秘書艦業務の引き継ぎ書類を出そうと訪れたところ、中から楽しそうな声が聞こえてこっそり覗いてみるなり、飛び込んできた光景にシュペーは目を丸くしていた。
指揮官とガスコーニュが一緒に朝食を食べている、そこはいい。よくないけどまあいい。けど、なんか近い。近すぎる。
ガスコーニュは指揮官の左腕をしっかりと抱きしめ、とても楽しそうに太陽のような笑みを浮かべていて、執務室には、明らかにイチャイチャというオノマトペが漂っていた。
「あら、シュペーさん。ちょうどいいところに」
「あっ、ネプチューンさん。おかえりなさい」
「ただいまですわ」
執務室前で硬直していたシュペーをネプチューンが呼びかける。
ネプチューンの様子はそこまで変わっていない事に、シュペーはほっと息を吐いた。
「ガスコーニュさん、どうしちゃったの?」
明らかに様子がおかしい、もっと言うなら人が変わりすぎている。
その趣旨を捉えたらしいネプチューンは、首を横に振ってみせた。
「ぶっちゃけ、私もわかりませんの。エクレアを食べさせたらああなったとしか......」
「エクレア?」
「そうですの。どうやらガスコーニュさんにはエクレアを食べさせると性格が変わる機能があるようで......と言うのは冗談で、開発局曰く、艤装の機能向上による精神的な揺らぎによるものじゃないか、と」
「えっと?」
さっぱり意味がわからず、怪訝そうにシュペーは半音、音階を上げた。
「研究人の言葉は遠回しで分かりにくいので、平たく言えば、お酒に酔っているみたいなものですわ」
「え、ええ......」
ガスコーニュがお酒に酔う姿が全くイメージできないせいか、かえって分かりにくいが、概要はシュペーもそれとなく理解したのだった。
「一応、時間が経てば元に戻るらしいですから、なるべく時間を稼いで帰ろうと思っていたのに。勝手に......はあ」
「お疲れ様......」
「本当に疲れましたわ。ただ、先程指揮官様にも伝えたのですけど。どうも記憶喪失でもないようで。キチンと私のことも基地のことも、指揮官様のことも理解していましたわ。特に指揮官様のことは、言うまでもないですわね」
「......うん」
チラリとまた執務室を覗く。
イチャイチャ濃度が濃くなっているのがわかった。
「あんなに積極的なガスコーニュさん、私そっちの趣味は皆無ですけど、正直、女の私でも胸が高鳴りましてよ? 想像出来ます? 子犬みたいにじゃれてくるガスコーニュさん。マジヤバですわよ」
「まじやば」
メイドがマジヤバとはこれ如何にと思ったが、そういえばネプチューンはメイドさんではないのだった。
「お二人共、おはようございます」
と、立ち話をしていると夜間任務から戻ってきたらしいル・マランが声をかけてきた。
凛とした態度ではあるものの、瞼は少し眠たそうに開かれている。
「お疲れ様ですわ、マランさん」
「お疲れ様です」
「ありがとうございます。私も話の輪に入りたいのは山々ですが、次の任務のために、指揮官に報告書を提出して休息を取らねばなりませんので、これで。それでは」
「「あっ......」」
本音としてはさっさと寝たいからか、ガスコーニュの事を説明される前に、手際よくマランはイチャイチャで満たされた執務室へとノックをしてから入室していった。
「大丈夫かな?」
「どうでしょう?」
心配になった二人は、こっそりとマランの動向を見守ることにした。
「あ、マラン! おはよう! それと久しぶり! 今日も夜間の任務で頑張ってたの? いつもありがとう!」
「............」
「「(......あちゃー)」」
開幕普段と違うガスコーニュの様子に、マランは完全に凍りついて言葉を失っていた。
「えっと。マラン、大丈夫か?」
指揮官もマランの身を案じることしか出来ない。
数秒ほど間をあけて、マランは小さく口を動かした。
「指揮官」
「お、おう」
「どうやら過労による幻覚と幻聴の症状がでているみたいです。なので、休暇の申請をします。具体的には三日ほど、では...おやすみなさああああああい!!!!!」
現実逃避はお手の物、マランは猛スピードで報告書を置いていくとトリオンファンと同じ最速の脚で自室にへと走っていった。
「マラーン!? 休み取るなら申請書だせ申請書ー!」
「「(休みをとるのはいいんだ......)」」
ちょうどマランが長い廊下の角を曲がったあたりで、指揮官が執務室から出てくるが、風となった彼女に聞こえるはずもないのであった。
「うお、ネプチューンにシュペー、いたのか。マラン追いかけてくれない?」
「いや、無理ですわ」
「同じく」
「だよな。有給扱いにするにも、本人のサインがいるんだよなぁ」
やれやれと肩を落とす指揮官の後ろから、ガスコーニュも遅れて顔を出した。
「主、マラン出ていっちゃったけど、どうしたんだろう?」
「あー、なんだ。ちょっと疲れてたんだと思う。人間疲れると走ってベッドに飛び込みたくなるものだから」
「そっか! あ、シュペーちゃん。おはよう!」
「うん。おはよう」
満点の挨拶をくれたガスコーニュにシュペーは同じ言葉を返す。
見た目は開発局に行く前のガスコーニュと全く同じ、でも明らかに雰囲気が違う。
それでも記憶はあるのだから、私を知っているガスコーニュさんであることに変わりはなくて。
シュペーは目の前にいる彼女が本当に自分の知るあのガスコーニュなのか、わからなかった。
分からなかったが、彼女は私を受け入れている。
ならせめて、私は彼女を否定はしない。
それが、シュペーの答えだった。