アズールレーン─トリカゴ基地の日々─   作:大和亀蔵

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Exボイスより、またまた10倍くらい元気なガスコーニュを想像していただければ。




「一日限定レンアイガスコーニュ」 その4

『えーっ? 主って妹萌えで、ネコに弱いの? シュペーちゃんそれ本当?』

 

『うん、それをされたらびっくりするって言ってたから。裏を返せばやって欲しいの意味になるかなって』

 

『なるほど、参考にさせていただきますわ』

 

『へー! いいこと聞いちゃった! フォーミダブルさん、帰ったら一緒にやってみる?』

 

『検討しておきますわ』

 

『ふふっ』

 

「......今日は一段と賑やかね」

 

商船護衛任務の真っ只中、通信機器から入る雑談の声にウォースパイトは警戒を怠らずに、皮肉とも取れない端的な感想をこぼした。

 

普段から、通信越しで話に花が咲くことはままあるが、その中にガスコーニュが混ざるなんてことは決してない。

 

彼女はいつでも落ち着きを持ち、緊急の対処の時か指揮官への連絡の時以外には一切口を開かない、そしてウォースパイトはそんな彼女の冷徹さを高く評価していた。

 

人間一人がパニックに陥れば、その伝染というものが想像以上に早いことをウォースパイトは国を背負うものとして知っている。

 

しかしだ。たとえ、艦隊だろうが政治だろうが誰か一人が冷静であるか否かが、その後の組織の生存率を大きく左右することがある。

 

比喩ではあるが、ウォースパイトにとってガスコーニュは言わば艦隊の解熱剤とも言える存在なのだ。浅瀬に仇波、今はウイルス側に回ってしまっているが。

 

「ねえ、ウォースパイトさん」

 

「なにかしら? ノースカロライナ?」

 

護衛班後方担当をしていた、ノースカロライナがウォースパイトにそっと耳打ちをした。

 

ノースカロライナのこともまた、ウォースパイトは高く評価している。こと対人戦闘においてなら、彼女に劣ることを力があるからこそ理解していた。

 

そして、指揮官をずっと護衛し続けてきたという経歴もあり、トリカゴにとっても影のリーダーとして風紀を正してくれていることも。

 

一人の男性をめぐって戦争にならなかったのも、彼女がいたからだ。

 

そんなノースカロライナがこうして秘密裏に接触をはかるとは、彼女もなにかガスコーニュについて考えることが......。

 

「私、お姉ちゃんだし、しかもバニーなんですけど。どうしたらいいと思います?」

 

「ごめんなさい。あなたが何を言っているのか何一つ理解できない......」

 

少し期待した自分が馬鹿らしくなった。

 

「わざとらしく明後日の方向を見ないでくださいよ。これはかなり、いや明日を左右する事案なんです。皆が妹としてにゃんにゃんしてる中、私だけお姉ちゃんとしてぴょんぴょんするのはマナー違反ですかね?」

 

「いや、好きにしたらいいでしょ。ぽんぽこりんでもぴょんぴょんでも......」

 

「余裕そうですね。さては、妹属性にくせっ毛でケモ耳ぽいのをすでに持っているからでしょうか? 私も普段から耳をつけましょうかね......」

 

「やめなさい。護衛人としての示しがつかないわよ」

 

「個性が出るならそれはそれで......」

 

「やめときなさい」

 

ウォースパイトとしては、艷めく長い金髪も、その溢れんばかりの乳房も充分に強力な武器だと考えているのだが、灯台下は暗いと相場が決まっていた。

 

それを耳を付けたことによって自覚されたら、たまったもんじゃない。

 

仲間として背中は預けるが指揮官は譲れない、絶対に。

 

......にしても、確かに自分は妹でもあり何時もは悩ましいくせっ毛も、猫耳に見えなくもない。勝負に出る価値はある。

 

この時ばかりは、自分のくせっ毛ぷりをウォースパイトは感謝した。

 

あと、バニーと言っていたがそれは一体?

 

「そこまで言うなら、私は私で頑張ってみます......ところで、ガスコーニュさんのことなんですが」

 

「......っ! あなたはどう考えているのかしら?」

 

ノースカロライナもちゃんと考えてくれていたことに、やや右肩上がりに彼女への株を上げ、ウォースパイトは彼女の持つ答えを聞き出した。

 

「私としても、ウォースパイトさんに訊ねたいんです。あれは、ガスコーニュさんでいいのでしょうか?」

 

「......難しい質問ね。ネプチューン曰く、しばらくすれば元に戻るらしいけど」

 

「戻る結果はあったとしても、時期については不確定なものです。ウォースパイトさんは大型の対セイレーン作戦の時、ガスコーニュさんが旗艦の理由はご存知で?」

 

「分かるわよ。精神的担保としてでしょう」

 

先も述べたように、普段のガスコーニュはいかなる時でも取り乱さない。

 

指揮を出す側の人間として、これ程嬉しい人材はいないだろう。

 

もちろん、将が冷静であることは率いられる兵にとっても大きな安心感に繋がる。

 

ウォースパイトも自らが将として担うことは可能だと自負し、先日の作戦では現場指揮を執ったが、ガスコーニュの方がその適正が高いことは認めていた。

 

「話が早くて助かります。仮にです、次のセイレーン作戦が実施されたとして、あのガスコーニュさんに旗艦を任せられるのかと、私は疑問に思うんです。ウォースパイトさんや、大鳳さんの方がよろしいのではないかと」

 

「......あなたは、今の彼女は否定するのね?」

 

ガスコーニュとして求められているのは、いかなる時でも動かないココロ。

 

ノースカロライナの考えは、あのガスコーニュには旗艦を任せられるだけの理由がない、つまりは今のガスコーニュはガスコーニュではないと暗に意味していた。

 

「......ウォースパイトさんは、どう思われますか?」

 

イエスともノーとも、ノースカロライナは答えなかった。

 

「そうね。外見はガスコーニュあのままだし、私たちとの記憶があるのなら、魂が死んでしまったわけでもない。将としての能力も、まだ演習などではかる余地はあるわ」

 

「......それで?」

 

ノースカロライナが求めているのは、結論だった。

 

「............ひとつ試練を課すわ」

 

「試練、ですか?」

 

「ええ。昔、ガスコーニュに一度出したことがあるものよ。勿論アレンジはするつもりだけど。あのガスコーニュも、かつての彼女と同じ答えを出すのなら、私は彼女が彼女であると認めるわ」

 

「もし、違う答えを出したら?」

 

「指揮官に相談かしらね、ロイヤル勢が苦手とする」

 

「あはは......」

 

ニューカッスルの一件を思い出したノースカロライナは、乾いた笑いを返すのだった。

 

*

 

「あっ、主? うん。そう。今終わったよ! これから戻るね。うん......うん。はーい、気をつけて帰りまーす。主の方もお仕事に集中しててね。えっ! 主、プリン作るつもりなの!? やったー! はーい! ガスコーニュ帰投します!」

 

『プリン......』

 

ガスコーニュの口から出た、たった三文字の言葉に、耳をすましていた一同の思考は大好きな人が作ってくれたプリン一色で染まるが、試練の件を思い出したウォースパイトはすぐに恍惚感を振り払ってみせた。

 

「よし、それでは艦隊帰投......の、その前に」

 

「ウォースパイトさん? どうしたの?」

 

露骨に話の舵を切ったウォースパイトに、ガスコーニュは首を傾げてたずねた。

 

剣を携え、ウォースパイトは各員に号令を放つ。

 

「臨時演習を始めさせていただくわ! ガスコーニュ! あなたのメンテナンスとやらが本当に上手くいっているのかを確かめる為にもね」

 

「ええー? いきなり? 帰ってからじゃダメなの?」

 

「なら、ガスコーニュ。貴方は帰投中にセイレーンと接触した際、なんの問題もなく力を出せるのね?」

 

「もちろん!」

 

「本当に?」

 

「も、もちろん」

 

「本当なのね?」

 

「......自信なくなってきた」

 

「よろしい、戦士として必要なのは常に初心を忘れない心よ。ここ一帯での活動許可もすでにとってあるわ。ノースカロライナと私が標的となるから、各員全力で当ててきなさい。逆に当てられても、文句は言うなよ?」

 

「ノースカロライナさんが標的って、艦載機絶対堕とされるじゃない......」

 

「なにか意見があるのかしら、フォーミダブル?」

 

「い、いえ。何でもありませんわ」

 

「ならいいわ。では、五分後に演習を開始する。各員手を抜くことなどないように。行くわよ、ノースカロライナ」

 

「はい。じゃあ、みんな頑張りましょうね」

 

残されたフォーミダブル、シュペー、そしてガスコーニュにへとウインクを見せてから、ノースカロライナはウォースパイトと共にその場を離れた。

 

「よーし、頑張ってウォースパイトさん達に勝って。主にうんと褒めてもらおう! ね、シュペーちゃん、フォーミダブルさん」

 

「そうだね」

 

「ええ、日頃のうっぷn......成果を見せるいい機会ですわ!」

 

何やら物騒な言葉が出かけたフォーミダブルであったがすぐさま飲み込み、ガスコーニュチームは円陣を組んだ。

 

「ファイトー!」

 

「「「おーっ!」」」

 

*

 

そんなガスコーニュチームの様子をノースカロライナは、微笑ましく少し離れた距離から見守っていた。

 

「元気があっていいですね」

 

「あら、じゃあ私達もやりましょうか?」

 

「ウォースパイトさんはカリスマ性がありすぎて、和気あいあいとはいかないので......」

 

「我ながらそう思うわ」

 

嫣然と表情を作った後、ウォースパイトはガスコーニュを見据えた。

 

「ガスコーニュさん、のってきましたね」

 

「......ええ、思惑通りだわ」

 

「どうします?」

 

「どうもこうも、向こうがやる気なら此方もやってやるだけよ。いいじゃない。そうそうないわよ? ガスコーニュとやりあえるなんて」

 

「......そうですね。全力で相手をさせてもらうとしましょう」

 

「ええ、対空は任せたわ」

 

「ウォースパイトさんこそ、当ててくださいね」

 

「任せてちょうだい、指揮官以外でオールドレディに撃てない敵はいないわ............」

 

一人の戦士として、ウォースパイトは猛りを感じると同時に、これから先に起こるであろう未来に曇がさしかかったことを断腸の思いで受け入れていた。

 




何気にトリオンファンの話の時にガスコーニュが応答した伏線回収なんですねー(後付け
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