アズールレーン─トリカゴ基地の日々─   作:大和亀蔵

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Cパート、もといエンディングです

後書きもありますので、よろしければ


「一日限定レンアイガスコーニュ」 終

「主、起床時間を連絡。あと三十秒後に直立動作がない場合、強制執行へと移行。三十、二十九──」

 

「ん? ......んー?」

 

聞き覚えのある声、そして聞いた覚えのある声の波。

 

物騒な発言は曖昧に聞き流され、指揮官は体をゆっくりと起き上がらせた。

 

ぼんやりと霞がかる意識を晴らしながら、指揮官は視界にいた蒼髪の少女の名を呼んだ。

 

「ガスコー......ニュ?」

 

「十八......主の意識の覚醒を確認。おはよう、主」

 

「あ、ああ。おはよう。戻ったのか」

 

「......戻った、とは? 疑問、主に不可解な発言の解答を望む」

 

「......いや、何でもない。起こしに来てくれたのか」

 

「起床の遅れは指導者としての威厳の損失と判断。よって、覚醒の手助けになるよう実行行動を遂行。主、起きたのならば、速やかな朝食摂取を提案。......あと」

 

「......?」

 

「お兄ちゃん。ちゃんと、起きられて偉いニャン......では」

 

「あ、うん?」

 

一体どこでそんな言葉を知ったのか、ガスコーニュは妹ネコとなって抑揚のない言葉で指揮官を褒めると、取り乱すこともなく静かに指揮官の部屋を出ていった。

 

「ガスコーニュって、あんなんだったか? そもそも、朝起こしに来るような子だったっけ?」

 

......そう言えば。

 

「(あの、ガスコーニュはこんな風に朝起こしに来てたな、まさか......いや)」

 

指揮官は一旦そこで考えることをやめると、自分の頬をつねってみせた。

 

「......痛いな。ふふっ」

 

頬の痛みは確かに、指揮官に現実を伝えてくれていた。

 

 

*

 

 

「あーもう! 指揮官様! そのような卵の混ぜ方では、この私を虜にする味には出来ませんでしてよ!?」

 

「お前の為に作ってるわけじゃないから、大丈夫大丈夫」

 

「な、なんですってえ!?」

 

ネプチューン、キレたっ!

 

「......」

 

任務も終わったある日の夜、キッチンでわーわーと騒ぎ立てる二人を見守りながら、ガスコーニュは紅茶の入ったマグカップを傾けていた。

 

不満を垂れ流してはいるものの、開発局で作っていた時とは打って変わって楽しそうなネプチューンは、ガスコーニュにとっては新鮮なものだった。

 

そう、開発局で作っていた時とは違って。

 

「(記憶の復元処理を実行......復元失敗)」

 

試しにあの日のことを思い出そうとしてみるが、上手く思い返すことが出来ない。

 

ネプチューンにエクレアを貰ったことまでは鮮明に思い出すことが出来る、その後ネプチューンに招集がかかって、それから......それからは、基地に戻ってきて終日寝込んでいた、はず。

 

「ふん、まぁいいですわ! 散々苦労した私への褒美として、こうして指揮官様と一緒にお菓子作りというのも.....その、し、新婚さんみたいで」

 

「え、なんて?」

 

「ほんっとに! この人はぁ!」

 

またしても、わーわーと騒ぎ出した二人によってガスコーニュの思案は上書きされてしまう。

 

ふと視線を二人にやるが、揉めても手は止まっていないあたり流石だなと、ガスコーニュは思った。

 

容器に注がれるプリン液を眺めながら、彼女は違和感に気付く。

 

「......主」

 

「どうした、ガスコーニュ? 注ぎたいか?」

 

「否定。疑問、過剰な容器数と判断。ここトリカゴにKAN-SENは十四、主を合わせても十五。しかし、テーブル上の容器数は十六。主、何故?」

 

明らかに容器の数がおかしい。

 

十五なら、まだ指揮官自身の分と判断がつくが過剰にもう一つ作る理由が、よくわからない。

 

「あー、そうだな」

 

指揮官はガスコーニュの質問に、どこか目線を遠くへと向け、そして、答えた。

 

「いつか、来るかもしれない仲間の分さ」

 

指揮官の目には、ガスコーニュの知らない仲間の姿がうつっていた。




あとがき


ハグしたらバグがなおったお話はこれでおしまいです。

バグと言っていいのかはわかりませんが。

それよりも、スペクテイターさんを覚えている人はいらっしゃるのか.....(オリジナル要素)

端的にですがこのお話は何度も出ているフレーズなのでお気づきかもしれませんが、『答え』をテーマ的なあれにしています。

組織のため、ガスコーニュを否定するウォースパイト、ノースカロライナ。

ガスコーニュ個人のため、彼女を受け入れたシュペーやネプチューン、そして指揮官。

他のキャラや出てこなかったキャラ達も、それぞれガスコーニュに対する答えを持っていることでしょう。そのどれも、間違ってはいないと思います。

その1で提示していたテセウスの船への問答、その時の指揮官が言い淀んだ答えがガスコーニュへの言葉と思ってくださって大丈夫です。

またまたオリジナル要素ふんだんに盛り込んだお話でしたが、楽しんで頂けたのなら嬉しく思います。

Ps、マランはしばらく機嫌が悪かったらしいです、はい......でも、マランのプリン発言無かったらガスコーニュが戻らなかったかもしれないので、結果オーライ(

ちなみに、彼女自身がバグと気付いたあたりからガスコーニュの一人称を私に変えていたりします。
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