アズールレーン─トリカゴ基地の日々─   作:大和亀蔵

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重桜編スタートです。独自解釈や設定がまたしても盛り沢山なのでご注意ください。


「桜降り積もる、この場所へ」 重桜編その2

 

 

「......ここは?」

 

光に飲み込まれた後、ニューカッスルの瞳に映る景色は執務室とはまるで違うものだった。

 

古風さを感じる木造作りの部屋、床には畳が敷かれ、何やら儀式的に五芒星やらが描かれている。

 

「......うっ」

 

ニューカッスルに遅れて、指揮官も弱々しく声を上げ、目を見開いた。

 

「貴方様! ご無事ですか!?」

 

「ああ、なんとか............ここ、重桜か?」

 

「重桜?」

 

辺りを見回す指揮官の口から出た言葉に、ニューカッスルは疑わしく声を上ずらせた。

 

トリカゴから重桜まではかなりの距離がある、それをあの一瞬で渡ってきたというのだ。指揮官が嘘をついているとは言わないが、到底信じられない。

 

「間違いない。長門のいる居城の一室だ。大樹重桜の根元のとこにある社だな。なんでこんなとこに?」

 

「私にきかれましても......」

 

二人して呆然と状況を受け入れる中、部屋の襖が勢いよく開かれ、溌剌とした声が出迎える。

 

「殿様ー! 大鳳さーん! おかえりなさい! 一日はやかっ、えええええええ!!?? 全然知らない人ぉ!?」

 

すかさず指揮官の盾となったニューカッスルを見るなり、頭に猫耳を生やした巫女の少女は大きく声を上げて驚いてみせた。

 

「あなた、所属艦隊と名前を言いなさい。さもなくば」

 

「さ、さもなくば?」

 

ごくりと喉鳴らす巫女の少女。

 

ニューカッスルは少し考えると

 

「......ここで指揮官様とキスします」

 

「えええっ!? それはダメです! えっと、わたしはやまひ、山城といいます! 重桜神祠の巫女の一人です! 本当ですー!」

 

「貴方様?」

 

確認の判断を迫られた指揮官は、やや呆れ気味に返した。

 

「あってるよ。というか、今の寸劇いる? 最初から俺に喋らせたらよくないか?」

 

「私としてはいります」

 

さもなくば指揮官とキスできたかもしれないのだから。

 

一瞬指揮官は首を傾げたが、今はそれどころではないと。目の前にいる巫女のKAN-SEN、山城にへと久方ぶりの挨拶を交わした。

 

「......まあいいか。久しぶりだな山城、元気してたか?」

 

「殿様! はい! 山城は今日も元気です! あっ、昨日も元気でしたよ!」

 

「それならよかった。ほら、ニューカッスル」

 

指揮官に自己紹介をするように促され、ニューカッスルは目で承諾すると、山城へ名乗りを上げた。

 

「......現トリカゴ所属。ロイヤルメイド隊が元統括ニューカッスル。以後お見知りおきを」

 

「ひゃ、ひゃああ。これは、ご丁寧に」

 

ニューカッスルの無駄のないカーテシーの所作に、山城は感銘の声を上げると改めてペコペコと頭を下げた。

 

海の向こうにいるサフォークの姿が頭にチラついたが泡となってすぐに消えた。

 

「山城さーん。指揮官と大鳳さんきたの......えええええっ!? どちら様さんがいるよっ!?」

 

続けてやってくるなり目を丸くしてみせたのは、紅白の巫女装束に身を包んだ狐耳の少女だった。

 

見た目こそ幼い少女ではあるが、数多の人間を見てきたニューカッスルは即座に彼女の格が高いことを察知し、指揮官に小声で訊ねた。

 

「貴方様、あの方は?」

 

「陸奥だ。長門の妹。位的にはウォースパイトと同列と思ってくれていい」

 

「かしこまりました」

 

敬うべき相手だと判断したニューカッスルは、自分から挨拶をするなり名前を述べた。

 

「はじめまして。トリカゴ所属、元ロイヤルメイド統括のニューカッスルと申します。どうぞ以後、お見知りおき下さいませ」

 

もう一度ゆっくりと、カーテシー。

 

陸奥は目を輝かせて、ニューカッスルの挙措動作を見届けていた。

 

「わああっ、はい! はじめまして! わたしは陸奥! 長門姉の妹なんだ! ねえねえ、今の動きなんて言うの!? 初めて見た!」

 

「カーテシーといいます。メイドの基本所作です」

 

「かぁてしぃって言うんだ! 優雅って感じでいいなあ。あっ、重桜はね、お辞儀とね、あと握手! よかったらわたしと握手しようよ!」

 

「はい」

 

はしゃぎ立てる陸奥を微笑ましく受け止め、ニューカッスルは陸奥との友好を結んだ。

 

「殿様殿様」

 

「ん、どうした山城?」

 

朗らかな雰囲気の中、山城が邪魔をしないようにそっと指揮官に耳打ちをした。

 

小声ながらも嬉しそうに山城は

 

「ロイヤルの人って挨拶をいくつも持ってるんですね! 二つも聞けるなんて、山城幸運です!」

 

「............よかったな」

 

知らぬが仏、言わぬが花。

 

「あっ! そうだ会えて嬉しいけど、長門姉に知らせなきゃ!」

 

「私、行ってきますよ!」

 

「あー、すまん。その前にトリカゴと通信させてくれないか?」

 

「それこそ、長門姉じゃなきゃわからないや。山城さん大丈夫? いけそう?」

 

「まっかせてください! 殿様もいるし今日は大丈夫です! 山城、仕ります!」

 

えっへんと誇らしげに大きな胸をはると、一礼してから山城は部屋から退出していき、長門に知らせに行った。

 

『はわわあああああああああ!!??』

 

早速、大丈夫そうじゃない声が廊下に響いていた。

 




神祠についてですが、大樹重桜の守護を目的とした長門や陸奥をトップとする組織の名称です。勝手につけました( 読みは「しんし」です。

重桜イベント早速濃度が高そうで続きが楽しみです
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