アズールレーン─トリカゴ基地の日々─   作:大和亀蔵

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龍鳳さん出ません(泣


「桜降り積もる、この場所へ」 重桜編その4

「ならん!それだけは絶対にならんぞ!重桜に君臨する身として告げる!それは許さぬ!」

 

指揮官の提案に、長門は声を大にして否定の意思を示していた。

 

「えぇー、そんなこと言わずに頼むよ長門えもーん。そんなに遠くないし」

 

「誰が長門衛門だ!余は長門だ!ともかく、大社から出ることは許可せぬぞ!考えてもみろ、間違いなく赤城達に捕まる!そうならないために、余はここにお主をよんだのに!」

 

「赤城かあ、確かにそれは厄介だな......でも重桜以外で刀剣の手入れ用油を用意出来るところを俺は知らないぞ」

 

「そうかもしれぬが......ダメだ。軍側にお主を渡したくない」

 

「姉妹だからってわけじゃないけど。わたしとしても、長門姉に賛成かなあ。赤城さん達に連れてかれちゃうのが目に見えるよ。明日に帰られなくなっちゃうよ?」

 

「陸奥まで......確かにそうか、いい機会だと思ったんだけど」

 

ノースカロライナに靴下を飾っている子達のプレゼントを確認してもらったところ、エルドリッジが『指揮官なでなで券』、そして北風は『刀剣油』だった。

 

前者はともかく、後者は重桜なら一級品を取り扱っている。好機逸すべからず、良い子へのプレゼントを準備するなら、休みになってしまったこのタイミングしかない。

 

ないわけだが、赤城のことを出されると、指揮官も考え込むしか出来なかった。

 

「物品を買う役目だけならこちら側の誰かでも出来るぞ? それではだめか?」

 

「ご最もではあるんだけど。プレゼントは自分の手で用意してあげたいというか。ついでに重桜も見て回りたい気持ちもあってな」

 

「むぅ、言いたいことは分からんでもないが。すまぬ、赤城達の事を考えると、やはり首を縦には振れぬ。諦めてくれ」

 

「仕方ないか......」

 

長門も贈呈をするされるの楽しさや、彼の気持ちは理解しているので、快く承認はしたいが、明日に帰すという約束がある以上、わざわざヤマタノオロチに差し出す生贄の如く、指揮官をうろつかせるわけにもいかないのだった。

 

腑には落ちているが、残念そうに指揮官が肩を落としていると、ニューカッスルが手をあげた。

 

「貴方様、私が行きましょうか?」

 

「ニューカッスルが? んー。確かに、トリカゴからと考えたらニューカッスルでも俺でも一緒か......」

 

「あっ、じゃあ私のネコさん連れていってよ!にゃにゃにゃにゃんにゃにゃーん♪ヨシマルー出てきてー!」

 

「聞き流すぞ俺はー!」

 

国民的アニメのお助けシーンのメロディーと共に、陸奥は式神札を懐から取り出してみせると、ポワンと煙が舞い、

 

「ニャス」

 

可愛らしい声で鳴く、一匹のネコの様な何かが姿を現した。

 

白を基調としていて、所々茶色や黒ぶちも入っているが、何より二本足で立っており軍帽を被っている。

 

「貴方様、これはネコですか?」

 

「......俺もよく分からん」

 

「明石さんがくれたの!私もよく分かってないけど、おふぃさー............ともかく、外に出るならヨシマル連れてってよ。ピンチな事があったら私に教えてくれるから!もちろん、変な事があってもだけど!」

 

「それは、凄いな(オフィサー、何!?)」

 

指揮官は悪くないなとも思ったが、長門は黙りこんで顎に手を置いたままだった。

 

「............すまぬが、めいどは道はわかるのか?重桜は初めてなのだろう?」

 

「地図さえいただければ、問題ありません」

 

「......折角だ。案内役を付けるが?」

 

「ニューカッスル?」

 

「では、その様に。お手数おかけします」

 

「気にせずとも良い。無事に任を果たせるよう手を貸したまでだ」

 

「......かしこまりました」

 

道案内と言ってはいるが、実際のところは自分の監視としての意味なのだろうと、ニューカッスルは気付いていたが口にはしなかった。

 

実際指揮官はともかくとして、自分は不法入国者となんら変わりはないのだから。

 

「ちなみに、長門。道案内って誰を付けるつもりなんだ?江風か?」

 

「いや、江風は余と陸奥の付人。そちらまで手は回せん。今、神祠にいる中で大丈夫そうなのは......ん?」

 

「「「......?」」」

 

何か異変に気付いたようで、長門は狐耳を何度かピクピクと揺らすと、襖の方にへと目を向けた。

 

急にどうしたのかと三人は思い静まり返ると、何やら襖の奥で、小さく空気が揺れていたのがわかった。

 

「ちょっと山城さん、もうちょっと詰めてくれませんこと?私も指揮官の御尊顔を一目見ておきたいですわ」

 

「殿!殿がいらっしゃる!自分の中の自分が喜んでいるのがわかります!」

 

「はわあ!?龍驤さん!?胸の下からいきなり出てこないでくださいよ~」

 

「本当に指揮官、です。お元気そうでなによりです」

 

「私ほどではないですけど。あのメイドさんも凄くキレイですね。私ほどではないですけど。ふふっ」

 

「翔鶴姉......」

 

『......』

 

明らかに覗かれている。

 

しかもこの時間は、どのKAN-SENも休憩時間なんてことはなく、普通に公務や見回りの時間だと言うのに。

 

「......江風」

 

「はい」

 

長門は静かに江風の名を呼ぶと、立ち上がった彼女は襖の戸を勢いよく開いた。

 

『うわああああああ!!!???』

 

支えがなくなり、名のある重桜のKAN-SEN達が部屋になだれ込んでくる。

 

指揮官にとっては懐かしい面々だったが、長門にとってはいつもの面子(サボり)。

 

「お、お主ら......仕事をせんかーっ!!!!」

 

重桜の青空に、長門の一喝が響いた。

 

*

 

「えっと、ニューカッスルさんだったね。買い物は北風に贈る刀の手入れ用の油だっけ?」

 

「はい。なるべく手短に帰ってこいとのことです。道案内の程、よろしくお願い致します瑞鶴様」

 

「ニャス」

 

ニューカッスルが腰を折ると、彼女の足元にいた陸奥のヨシマルも挨拶がわりの鳴き声をあげた。

 

「ヨシマル様も、よろしくお願い致します」

 

「あはは、こんにちは〜ヨシマル。でも、瑞鶴様なんてやめてよ。私は主じゃないんだし、異国の人、それにメイドさんを横に連れて歩くなんて、ただでさえ慣れないのに」

 

「そう言われましてもメイドなので、慣れていただくしか」

 

「じゃあ仕方ないか。でも、緊張するなあ」

 

フランクに苦笑を浮かべてみせたのは、今回ニューカッスルの道案内役もとい監視役として長門に抜擢された艦船、瑞鶴だった。

 

今でこそ和やかな雰囲気ではあるが、ニューカッスルとしては彼女の息遣いや足運びと言った挙措動作から、只者ではないということは感じとっていた。

 

下手に動いては、切られると。

 

「それに、慣れないのは私も同じです」

 

「巫女服のこと?似合ってるよ?指揮官も褒めてたじゃん」

 

「日中、メイド服以外の装束に袖を通したのは、もう何年前のことでしょうか」

 

「生粋だなあ......」

 

メイド服では些か目立つからと、ニューカッスルはカモフラージュのため、紅白の巫女服に袖を通していた。

 

元々黒髪に近い髪色なこともあってか、パッと見では気付かない程度には紛れている。

 

「改めましてですが、私としましては刀を手入れする油につきましては、勉強が足りない面がありますので、手慣れである瑞鶴様の審美眼を頼りにしております」

 

「ニャス」

 

「ヨシマルにも頼られちゃうなんて、責任重大だ。あっ、その傘って仕込みだったりする?映画とかで銃になったりするの見た事あるんだけど」

 

「いえ。申し訳ないのですが、これは普通の日傘です。ご覧の通り」

 

瑞鶴に指摘され、ニューカッスルは持っていた日傘をさしてみせた。

 

「おっ、ほんとだ。よかったけど、ちょっとガッカリ」

 

「入りますか?」

 

「いやいや大丈夫。戻しといて。じゃあ行こうか」

 

「かしこまりました」 「ニャス」

 

挨拶はその辺に、二人と一匹は歩みを始める。

 

ドミノの如く立ち並んでいる鳥居の参道を歩きながら、ニューカッスルは目線だけを右往左往と忙しく動かしていた。

 

舞い散る桜の花びら、右手には空を反射する広い海。

 

重桜という国を初めて訪れる彼女にとっては、目に映る景色全てが新鮮で、感嘆のこもった深呼吸をするばかりだった。

 

「まだ歩いてそんなに経ってないけど、どう? 重桜は?」

 

五感を研ぎ澄ませるニューカッスルに、瑞鶴は歩きながら話をふった。

 

「とても素晴らしいと思います。ロイヤルとは違う風情や趣があって、世界は広いのだと痛感しているところです」

 

「あはは。大袈裟な気もするけど、悪い気分にはならないかな。この辺りは、人が入ってこない区域なんだ。この参道を抜けたら土産通りに着くから、その時まで楽しんでよ」

 

「人が入ってこないのですか?こんなにも綺麗な場所なのに?」

 

「綺麗な場所だから、かな。何より神聖な場所だしね。一年中咲く奇跡の桜、重桜ってな感じで色んな人から信仰を集めてるから。でも、お正月の時とかは特別にこの辺りも開放されるんだよ。つまり、ニューカッスルさんはすごくラッキーってこと」

 

「指揮官様に、感謝しなければなりませんね」

 

「ああ、そっちになるんだ。本当にメイドさんなんだなあ。ところでなんだけど、北風はどう? トリカゴって他にも優秀な人達が集まってるんだよね? 取り残されてたりしない?」

 

「いえ、そんな事は。北風様は日夜、トリカゴの為、指揮官様の為にと励んでおられます。私から見て、役に立たないと思った事など一度もありません」

 

「そっか、ならよかった。私、こう見えて北風に剣とか色々と教えてたりしたから。なんというか、弟子なんだけど妹みたいな感じもあって、ちょっと心配してたんだ。頼りにされてるなら嬉しいや」

 

綻ばせて見せた瑞鶴のその表情は、家族にへと向ける温情の含んだ優しいものだった。

 

「私からも、質問をよろしいですか?」

 

「何?鳥居を建てる理由とか、文化的だったり難しい質問は出来ればなしでお願い」

 

「いえ、そのような事では。指揮官様についてお訊ねしたいのです。重桜にいた時のあの方は、どのような方だったのでしょうか」

 

「本人から聞いてないの?」

 

「話そうとして下さらないので、大鳳様はもちろん、北風様は知らないといったご様子でしたが」

 

「あの子は共鳴の日の後に生まれた子だから。そりゃあ、知らないかな」

 

「共鳴の日?」

 

「あっ......」

 

無意識のうちに零した言葉なのか、瑞鶴はハッと息を飲んで口元を一瞬抑えた。

 

「教えていただけませんか?」

 

「......話していいのかな」

 

「絶対に口外は致しませんので。ただ、あの人のことを私は深く知りたいのです」

 

「んー......」

 

「......瑞鶴様?」

 

空を見上げながら瑞鶴は考え込んでから、懐から地図を取り出した。

 

「ニューカッスルさん。今、私は地図を見てる。そうだよね?」

 

「はい」

 

「もしもの時のために、道を教えた。必要な事だよね?」

 

「はい」

 

「えっと、そういうことにしておいてくれないかな?」

 

「............ありがとうございます」

 

ニューカッスルの礼の言葉を聞いてから、瑞鶴は道を教えはじめた。

 

 




シェフィとエディが巫女服を着たのなら、ニューカッスルさんが着たっていいじゃない みつ〇

次回オリ設定大公開スペシャルになるかと...

覗き犯は上から金剛、龍驤(仮面ライダーアマゾンズネタ)、山城、綾波、翔鶴、瑞鶴です。
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