どうか、今年もよろしくお願いします
走り抜けることしばらく、長門達のいる大社へと半分ほど折り返した所。
後方を細かく確認していた瑞鶴は、あまりに順調に逃げる事が出来てしまっている現状に疑念を抱いていた。
全ての事柄は順風満帆とはいかない、山があり谷があるのが当たり前だと、そう瑞鶴は教わり、そして教えてきた。
早速瑞鶴は、その懸念をニューカッスルへと知らせる。
「加賀先輩達、追ってこないね。絶対追手がつくと思ってたのに」
「待ち伏せではないでしょうか? 我々の行き先は分かりきっているのですから」
どうやら、谷はそろそろやってくると言うより、特別深いものが待ち構えているようだった。
見えてしまった峠に瑞鶴は顔を青ざめた。
「待ち伏せ。てことは、軍の誰かとドンパチは確定かあ。誰だろう......全員嫌だ」
「軍の皆様は、瑞鶴様よりお強いのですか?」
「そうじゃなくて。昔は仲悪かったけど味方でもあるからさ、ほら、ね? 刃を向けにくいというか、変に喧嘩売ると、また内紛に繋がりかねないから。ロイヤルはそういうのないの?」
「私はメイドですので」
「メイドと忍が私の中で一緒になったよ......」
煙幕弾持ってたし。
試しにこの場で手裏剣を渡したら、上手に投げてくれそうな気がしてきた。
「忍者いるんですか!? やはり!?」
「すっごい食いついてきた!? え、いるよ何人か。私は違うけど。ニューカッスルさんみたいに傘もってる子とか」
瑞鶴はまだ知らなかった。他国から見て忍者とは、サンタさんに匹敵するほど夢がある存在であることを。
「なるほど、実はこの傘。忍者に憧れて携帯するようになったものでして」
「......嘘でしょ」
「バレましたか......」
軽口もその辺りに、やがて瓦屋根の絨毯も終わりが見え、鳥居の並ぶ参道の入口にまで戻ってきたところで。
案の定、待ち伏せは二人の前に立ち塞がってみせた。
「御二方、お待ちしておりました」
彼女を見た瞬間、大和撫子という言葉をニューカッスルは思い出した。
凛として、それでいて純粋さや慈悲深さがその姿に現れているが、同時に芯の強さも感じ取れる。
艤装を展開しながら座り込んでいた彼女はゆっくりと立ち上がると、持っていた刀の鯉口を切り、泰然自若にゆらりと二人へ切っ先を向け、名乗りを上げた。
「特別計画艦、もとい大型巡洋艦、吾妻。そこの巫女様、いえ、ロイヤルからの不法入国者様を捕縛させていただきます」
計画艦。つまり、トリカゴに所属している北風と同じ対セイレーンへの切り札。
そのスペックの高さは、身を持ってニューカッスルは知っている。
しかし、だからと言って突破口が無い訳では無い。
いくら性能が高くても、経験値の差は易々とは埋められないからだ。
ニューカッスルがネプチューンとの演習にて無敗を保っていられているのは、その経験の差によるものが大きい。
いずれ抜かれるだろうが、抜かれないように努力をすることもまた経験である。
「ちょっとちょっと待って!? 何で艤装展開してるの吾妻さん!? 海上以外での艤装展開は禁止事項だよ!?」
「そうなのですか、瑞鶴様?」
「あ、うん。というか、決めたの指揮官なんだけどね」
ミズホを使ってはいいが、艤装は海にいる時だけ。
それが君たちが、人として受け入れられるために必要なルールだ。
彼はそう言ったらしい。
「うふふ、お答えします。私も北風さんと同じく、共鳴の日の後に生まれたKAN-SEN。そう、指揮官の事をお目見えした事は一度もありません。なので」
「なので?」
一拍置いて、吾妻は述べた。
「そのお言葉は、聞いていないということです」
「何で皆、言い訳は上手なのかなあ!?」
嘆く瑞鶴の姿に、いかにも嘘とか下手そうですねとニューカッスルは言いかけたが、すんでのところで留まり、代わりに吾妻への印象を口にした。
「私、あの人と仲良くなれそうな気がしますね」
「ニューカッスルさん!?」
どちらにせよ傷付く羽目になる瑞鶴であった。
「あら、穏便に片がつくのであれば、非常に助かります。ニューカッスルさんでしたか? 大人しく捕まっていただけませんか? 指揮官が迎えに来てくれますよ、きっと」
「......とても魅力的な提案ですね」
「喉唾鳴らさないでよニューカッスルさん!?」
「これは失礼しました」
茶化し合いを交えつつではあるが、ニューカッスルは吾妻の言葉に、自分の考えが合っていたことを確信した。
赤城と同じく、指揮官を好きな人間として。
出身以外で二人の決定的な違いは、ニューカッスルには赤城と違って責任がない。
たった、それだけ。
昔は彼女にもあったが、今は元統括、その重荷は既に下ろしている。
そんなニューカッスルの潜考を知るはずもない瑞鶴は、我先に思った事を吾妻に訊ねていた。
「というか、吾妻さん。外に出てきてたんだね。あれ、でも指揮官に会ったことないはずなのに、何でこんな事に手を貸してるの?」
瑞鶴にとって吾妻とは、重桜唯一の甲巡であり、なおかつ北風の後に生まれ、彼女とは違って軍の方で訓練を重ねてきていた、くらいの認識しかない。
顔は知っているが、実は面と向かって話すのは初めてで、彼女の人となりはそこまで詳しくないのだ。
知る限りの計画艦、伊吹、出雲、そして愛弟子である北風の性格から推察するにイイ人である事に違いはないと確信はしているのだが。
ただ、瑞鶴の考えるイイ人なら、こんな真似はしない気もするが。
そんな瑞鶴の問に、吾妻は敵意を逸らすことなく笑顔で応じた。
「ふふふっ。会ったことがないから、でしょうか」
「......?」
意図を掴み損ねている瑞鶴へ、小さく呼吸を整えてから、吾妻は己が心情を吐露し始めた。
「私は、北風さんの後に生まれたKAN-SEN。内戦もトリカゴへの選抜も、全てが終わった重桜で、この国を守るために生を受けました。そんな責務を背負って生きてきて、ふと思ったんです。ここまでの重桜を築き上げた方は、一体誰なのだろうと」
自らの血を流し、誰かの血を流させるのが最新鋭である己の役目ではないのかと。
そんな私に国を守れだなんて、どこまでも真っ当すぎる任務の下準備をしてくれた人は、誰? と。
「色んな方に聞いてまわりました。もちろん、共鳴の日の事も聞きましたし、何より皆さん共通していたのは、とても嬉しそうに指揮官の事を語っていたということです」
「う、うん」
自分もだし、姉である翔鶴も指揮官の事を話す時は楽しそうにするので吾妻の言う情景は容易に想像が出来る。
神祠に彼女がいても、きっと皆同じ反応だっただろう。
「指揮官。あの人は英雄です。ミズホの神秘の力を犠牲にしてでもこの国を守り、そしてこの国をひとつにしてみせ、私の生まれる意味を変えてみせた......そのような人」
「そのような人?」
「好きになるに決まっているじゃないですかっ!」
「「......」」
燃えるような目で、否、メラメラと恋の炎を灯した目で吾妻は告白してみせた。
あまりの圧に圧倒される二人だが、吾妻の話はまだ終わらない。
「ニューカッスルさん。貴方を捕縛すれば、トリカゴへの私の参戦を考えると聞き及んでいます。信じる信じないはともかく、私としては最後の希望です。あぁ、考えるだけでも、楽しみです。きっと、度重なる執務などでお疲れでしょうし、是非この吾妻が肩を揉んであげたり、耳かきなどをしてあげて、癒しのご提供を。ふふふっ♡」
饒舌に妄想を暴露し、抑えきれない笑顔がこぼれた所で、吾妻の話は終わった。
「瑞鶴様」
「......何かな、ニューカッスルさん」
話を振らないで欲しかったが、自分以外いないので仕方なく瑞鶴は応じた。
出来れば、ヨシマルに代わってほしいくらいだ。つまるところ、今すぐ知らないと言って帰りたい。
が、猫の手はそもそもいなければ借りられない。
「大鳳様といい。重桜の方は、皆あのような?」
「いや、油の話に戻るけど、本当に色んな人が......色んな人がいるから。私とか参考にしてくれると嬉しいかなって」
「ティースプーン一杯の紅茶で、ケーキを味わえとは、かなり無理があるご注文ですね」
「来てもらってなんだけど、本当にごめんなさい......」
瑞鶴の身内の不手際? に対する謝罪など露知らず、吾妻は自らの任を思い出したのか、自分の世界から帰ってくるなり切っ先を改めて二人に向けると、敵として見据えてみせた。
「申し訳ありませんが、刀を向けさせていただきます。私と指揮官の癒しの為にも」
「私、だけな気がするけどなあ。それに、悪いけどニューカッスルさんは渡せないよ。神祠として、大事な客人なんだ」
「そうですか。では、私に刀を向けるのですね? 神祠の人間として」
組織を背負って戦う覚悟があるのか?
言葉にせずとも、吾妻の言葉はそれを意味していた。
しかし──
「......いや、違うよ」
「違う?」
──瑞鶴は否定する。
「私は、ニューカッスルさんの友達として刀を向けるよ。友達が嫌な思いをするなら、私はそれを見過ごせないな」
「............」
居合の構えをとってみせた瑞鶴から敵意が漏れ始めたのを、吾妻は険しい目付きで受け止めた。
(参道にさえ入ってしまえば、吾妻さんは私達に手を出せない。正直、相対するよりも逃げた方が得策。何より、私は吾妻さんの実力を知らない! それでも負けるな瑞鶴、勝つのに大事なのは心だ!)
(加賀さんが言うには、ニューカッスルさんは煙幕弾を持っているとのこと。使い切りの一発であると期待していますが、経験の浅い私に彼女も瑞鶴さんも対処出来るのか。はてさて)
両者に言葉はない。
息を吐く。
風が頬を撫でる。
すでに、呼吸は生きるためではなく、相手を切るためのものにへと。
先手を取るのか取られるのか。
思考と身体、両者の天秤が互いに釣り合った──その時である。
「............あの瑞鶴様、友達なんですか私たち?」
「おっとー!?」
「あら」
ニューカッスルの一声によって、張り詰めた空気が一瞬にして解けた。
「違うの!? 私としては、友達だと思ってたんだけど!?」
「失礼しました。では友達で。私、友達と言える人があまりいなくて。大方仕事仲間ばかりなので」
「そ、そうなんだ。大変なんだね」
「あの人は......ぽっ」
「今その告白いるかなあっ!?」
「冗談です。いえ、冗談ではありませんが。それに、キメて頂いたところで恐縮なのですが、私としては捕まるのも悪くは無いと考えていますよ」
「ニューカッスルさん!?」
まさかの裏切りに、瑞鶴の面目という名城がバラバラと崩れ落ちていっていた。
吾妻も自首してくるとは思わなかったのか、静かに確認の意味も込めて問いかける。
「来て、いただけるのですか?」
「誰も行くとは言ってないでしょう。悪くないだけです。理由をご説明しましょうか?」
平然と並べられた言葉は吾妻の心を逆撫でしてみせたが、それ以上に答えを求める渇望が天秤の針を大きく揺らす。
「............お願いします」
「かしこまりました。少し長くなりますが、ご清聴下さいませ」
吾妻に向かって、ニューカッスルはゆったりと袴でカーテシーをしてみせると、詳説を述べた。
「吾妻様、瑞鶴様。人間、地位が相応に高くなるにつれ、責任と期待という重みが付いてくるのが世の理。果てには国の象徴にまで至れば、勝手には動けなくなるものです。我等のエリザベス女王陛下が良い例でしょうか」
かつてはニューカッスルも、ロイヤルメイド隊統括という名誉と鎖を手に入れていた過去がある。
その鎖が何処までも重たいモノである事も、勿論知っている。だからこそ、ニューカッスルは位の高い人間を尊敬し最大限の敬意を持って接する。
エリザベス、ウォースパイト、長門、陸奥、ましてや赤城も。そして、指揮官は特別に恋心も込めて。
「私達重桜で言う、長門様や赤城先輩ってこと?」
「そうなりますね。その赤城様についてですが、話を聞いている限り、かなり破天荒な方みたいなので、もしかしたら動いているかもしれませんが、動かないのが定石と考えます。ともかく、方法はともあれ愛する指揮官様に気が付いてしまった。じっとはしていられないでしょうね。動けませんけど」
赤城は軍のトップである。
故に勝手な行動は、組織としての軍の失態になってしまい、積み上げてきた信頼を落としかねない。
それが、重みであり鎖。
「自ら縛られた鎖を、傷だらけになるのを承知で引きちぎるのかは知りませんが、代案として鍵を持ってきて貰うことも出来ます」
「鍵?」
「私が軍に行くことです。いえ、私を捕まえると言った方がいいでしょうか」
「......」
吾妻は何も言わず、黙ってニューカッスルの言葉に耳を傾けていた。
「ここも推論の域になりますが、赤城様はあの人の匂いと、そしてあの人の匂いを持った私に気が付いたのでしょう。あの人に恋する一人の女として会いに行きたいが、軍のトップという身、そしてあの人が神祠にいるという現状。更には内紛の一波乱があった事もあり、下手に動けるはずがありません。そのくらいの理性はあると期待しています」
軍のトップが一人の男に会いたいがために、かつては敵対に近い関係となっていた神祠にへと独断で足を運ぶ。
これから先にある本当の平和でなら、ありえるかもしれないが、今はまだ。
「しかし、会えるなら会いたい。なら、会える理由を作ればいい。不法入国者を捕まえたという理由が」
そこまでニューカッスルが説明をしたところで、瑞鶴も赤城の真意に気が付いたようだった。
「えっ、じゃあ何? 赤城先輩は指揮官が軍に来る理由を作るために、ニューカッスルさんを捕まえようとしてるってこと?」
「でしょうね。もし、軍にへと私が連行されれば、指揮官様は間違いなく助けに来てくださるでしょう。おや、軍にへと会いに来てくれましたね。私としても、迎えに来ていただけるのは悪くない気分です。ご迷惑はお掛けしますがね」
「......そうして下さいませんか?」
こちらを伺うような吾妻の提案に、ニューカッスルは整然と条件を並べた。
「明日に帰れる保証さえ、しっかりとしてくださるのであれば」
「......それはお答え出来かねますね」
そう言って吾妻に視線を逸らされ、ニューカッスルは嘆息をこぼす。
「だから、行きたくないのです。トリカゴからも、明日に戻らないと私............はあ」
「聞かない方がいいやつ?」
「自主規制としておきます」
「そこまで......」
トリカゴにいる北風の身を瑞鶴は案じた。
鳥籠とは言っても、本質は猛獣の檻である。
「......話は終わりましたか? それとニューカッスルさん。お話、とても面白かったですよ。つい、頷いてしまうところでした」
「それは良かったです。が、話はまだ終わっておりません」
「まだ?」
狐疑のこもった吾妻の声に、ニューカッスルは
「貴方の事ですよ吾妻様。恐らくですが、貴方は軍の人間ではないでしょう? 違いますか?」
「......っ!? そこまで」
覆われていたベールすらもあっさり剥がされ、吾妻は思わず息を呑んだ。
瑞鶴もまた、ニューカッスルの指摘に一驚していた。
「えっ、そうなの吾妻さん。私てっきり」
「......正式な配属がまだなだけです」
「なるほど、そちらでしたか。ともあれ軍の人間が神祠の人間である瑞鶴様に手を出せば、それこそあの人が丸く収めた重桜の崩壊に近付きます。だから、軍としても言い訳を作るため、未だフリーである貴方だけが私を捕らえるように命じられた」
「あれ。でも、加賀先輩は?」
「確認役と伝達役でしょうね。私が本当に外の人間なのか。そして神祠の誰が監視していて、武装はしているのか否か。あ、ちなみに煙幕弾はギミックなので一回限りです。ご安心を」
「......」
どうやら先程の見切りの際に多少抱いた懸念までも、このメイドは見抜いているらしい。
お見事。
「なんというか、ニューカッスルさん。敵に回したくない......」
「味方ですよ?」
「そうだったね。あはは......」
瑞鶴の乾いた声によって、場が一旦静寂を保つ。
すっかり敵意を失った瑞鶴とは違って、吾妻は未だ刀の切っ先を二人へ向け続けていた。
「経緯がどうであれ、私はトリカゴへ行くためにアナタを捕まえる。それだけです」
「いいと思いますよ。私を捕まえられない程度の人間が、トリカゴに来る資格などありませんから」
「......っ!」
(まずいっ!? 来るっ!)
ニューカッスルの挑発に吾妻の息が僅かに乱れたのを、瑞鶴は見逃さなかった。
その乱れが、殺気に変わったことも。
ただ、それを受けてもなお、ニューカッスルの態度が変わることはなかった。
「吾妻様。もう少々お待ちくださいませ。そろそろのご到着かと思われますので」
「......なにを?」
言いたいのか、と吾妻が繋げようとした所で。
「おー、瑞鶴、ニューカッスル。おかえり〜」
今度は彼女だけがまだ聞いたことの無い呑気な出迎えの声が、割って入った。
「うえっ? 指揮官?」
「ただ今戻りました。貴方様」
「......えっ」
憧れていた人がやって来た事実を飲み込み、吾妻はすぐに鳥居の方にへと振り向き、その全形を見定める。
(この人が、あの?)
そんな吾妻のうっとりとした舐め回すような視線には気付かず、帰ってきた二人にへと指揮官は話し続ける。
「すまん、迎えに行ってもいいけど、参道から出るなって長門に言われてるんだ。そっちに行けない」
「全然大丈夫だけど。なんでここに?」
「ん? こいつが帰ってきたからだけど」
流石にタイミングが良すぎる。ニューカッスルが時間を稼いでくれていたとはいえ、どうして帰ってきているとわかったのか?
その答えは指揮官の足元。ちょうどその後ろの影からネコ耳が飛び出すと、チャーミングな軍帽と共に姿を見せた。
「ニャス」
「ヨシマル!? あっ、もしかして加賀先輩が来たあの時!?」
すでに戻って、彼を呼び出してくれていた。
「むしろ、仕事をしていましたね」
あの時、瑞鶴がヨシマルに対して愚痴を呟いた時のニューカッスルの笑顔の真意を今になって知る。
何で言ってくれないのか。
「......あとでお詫びにお魚買ってあげよう」
口封じではなく、真剣に瑞鶴はヨシマルへの感謝の念を抱いていた。
ポツリと呟いた瑞鶴のその言葉に、ニューカッスルが食いつく。
「魚? 重桜のネコは魚を食べるのですか?」
「ロイヤルは違うの?」
「普通にキャットフードか、もしくはネズミ等の小動物なのですが」
「魚を食べるネコって重桜だけだったんだ......」
カルチャーギャップで二重に落ち込む瑞鶴だった。
「グローバルな話に花が咲いているところ悪い。これ今どういう状況だ? なんで抜刀してる?」
「えっ、あっ、そ、その」
抜刀している人間、すなわち吾妻。
ようやく視線に応えてくれた指揮官に、吾妻は声が詰まりながらも主張をあげた。
「えっと、君は? 見ない顔だな」
頭の先からつま先まで、吾妻の姿をゆっくりと目に焼き付け、指揮官は問う。
「は、はい、特別計画艦の吾妻と申します」
「吾妻......ああっ! 君がか!」
「......えっ?」
彼女から名前を聞くやいなや、指揮官は目にも留まらぬ速さで、そして弾けるような笑顔で近くにいた吾妻の手を取り、嬉しそうに声を上げた。
「ずっと会いたかったよ! 書類で知った時から、君のことは気にかけてたんだ! 北風の後に生まれた、名前しか知らない重桜KAN-SEN。しかも超巡だったか? 君くらいなんだろう? 一体どんな子なんだろうって。あ、悪いなはしゃいじゃって、こんな綺麗な人だなんて思ってなくてさ。俺、トリカゴの指揮官やってる......ん?」
「............きゅう♡」
「吾妻!? なんか目がハートになったまま気絶してるように見えるんだけど大丈夫か? 吾妻さん!?」
「「(......堕ちたな、というか堕ちてたな)」」
最初から好感度MAX状態で、その相手に眩しい笑顔で自分の事をずっと気にかけてたなんて言われたら、そりゃ、ああなる。
ライバルが増えるという珍しくもないが、見る機会もあまりない瞬間を二人は目の当たりにする事になったのだった。
実際の吾妻さんはもっとお淑やかな女性だから(戒め
重桜編もう少し長くなりそうです、すんません
イタリアの猫がパスタ食べるってマジなんですかね?