アズールレーン─トリカゴ基地の日々─   作:大和亀蔵

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オペレーションOSG(オーソージ)終了?


「オペレーションOSG!」 終

机本体の引き出しは終わり、ついにOSG作戦はフェイズを進めキャビネットにへと手をかけていく。

 

すでに言ってはいるが、キャビネットは三段構成となっていて、一番上の段と真ん中は高さ八センチほどの引き出しが、最も下段の引き出しだけはその倍ほどの高さとなっている。

 

いかにも何か入っていそうなのは最下段。

 

しかし、ここは順当に上から確認していくと、ノースカロライナ隊長は決断した。

 

「では、キャビネットの方イキますわぁ♡」

 

「「......」」

 

最早お約束となってきた大鳳隊員の艶っぽい息遣いと共に、キャビネット最上段が呆気なく開披される。

 

気になる中身は、

 

「普通ですね」

 

「普通ですわね」

 

「......」

 

報告するなら、文房具。

 

実にありふれている中身。

 

それだけ。

 

ここは、報告会でもパスしてしまって良さげな内容だった。

 

既に三人の興味は次の段にへと移ってしまっている。

 

「とりあえず、一本貰っておきますわぁ。じゃあ、次の引き出しいきますわね」

 

「「............いやいやいやちょっと待って!!」」

 

さも当たり前すぎる手際に、危うくスルーしてしまうところだった。

 

すぐ様、大鳳隊員を現行犯で取り押さえる。

 

「何ですの!? 私が何かしましたっ!?」

 

「もはや無意識ですか!? とりあえずで胸にしまったそのペンを戻しましょう!?」

 

「そうですわ大鳳さん! 指揮官様の私物の盗難は、トリカゴ条約違反ですわ! 貴方がお忘れなわけではないでしょう!?」

 

トリカゴ条約 第十八条 第二項

 

指揮官の私物を盗んだ場合、二週間分の秘書艦禁止処分とする。なお、貰った場合はこの限りではない。

 

「ううっ、先っちょ。先っちょを使うだけですからぁ!」

 

「そりゃペンですからね!」

 

「逆に先端以外のどこを使えと言うのですの!?」

 

「それは......指揮官様の事を考えながら、このペンを私という筆箱の中......」

 

「言わせませんわよっ!?」

 

「あぁん♡ 大鳳の中で『すき』って書かないでぇ♡」

 

「だまらっしゃい!」

 

大鳳がナニを想像しているのかはともかく、これ以上はイケない。

 

じゃなくて、これ以上はいけない。

 

まだお昼というか、すぐそこでエルドリッジが寝ているのもあるが、大鳳の一言でR18タグを付ける必要性が出てきてしまう。

 

「はい、大鳳さん戻して! まだ未遂で済ませてあげますから!」

 

「秘書艦禁止処分になりますわよ! 私はぜんぜん構いませんけど!」

 

「くうぅぅ、指揮官様のペン......」

 

「ほら、離しましょう。自分で出来ないなら私が──大鳳さん力強いですねほんと!?」

 

「かったい! 林檎潰せますわよこれ!? というかペンが折れそうですわっ!?」

 

「それは駄目!」

 

そんな事件がありながらも、この世の終わりのような声を出す大鳳から盗難品を回収し、被害者もとい被害物であったペンはちゃんと元の場所にへと返しておいた。

 

「はあはあ、何も無かったのになんでこんなにも疲れるはめに......」

 

「本当ですわ......」

 

「お二人共大丈夫です? まだあと二つ、しかも本命が残ってますのに。ここでへばるなんてぇ、お早いのでは?」

 

「「......」」

 

一体誰のせいでこうなっているのかと思っているのか、この女は......

 

いや、気を取り直していこう。

 

まだ、引き出しは二つ残っている。このまま何も無い可能性の方が高いだろうが、見てみなければわからない。

 

シュレディンガーの引き出し。

 

「おほん、では大鳳さん。次の引き出しをお願いします」

 

「はいはい、イキますわよ」

 

全く詫びるつもりもないまま、一応悪意はなかったということで釈放された大鳳は、キャビネット中段の引き出しへと手をかけ──開けた。

 

「これは、また指揮官様らしい」

 

「ですね。いかにもです」

 

「なるほどですわね」

 

顔を覗かせ、三人口を揃えて納得の声を出す。

 

キャビネット中段の引き出しから出てきたのは、地図だった。

 

一枚だけではなく、かなりの枚数が重なっていて、さながら地図の辞書とでも言える状態。

 

電子情報もある現代ではあるが、紙の地図ならエルドリッジが停電などを起こしても有事に対応できるからだろう。

 

普通は資料室にでも置いておくものだが、指揮官には地図を見るだけでセイレーンを見つけられる目がある、ここにあって納得の一品だった。

 

「色々ありますね。重桜、ユニオン、ロイヤル......これは北極ですか」

 

「普段見てるのと違うので、大陸の形に違和感ありますわね」

 

「私達でもよく見るのはメルカトル図法ですからね。大陸の形だけならあれが一番ですが、距離や大きさなら他の地図の方がいい時もありますし、状況次第でしょうか」

 

ノースカロライナ先生のお勉強会が開かれながらも、ペラリペラリと地図をめくっていく。

 

すると、

 

「......ん?」

 

唐突に、一通の茶封筒が姿を現した。

 

表面にはただ、こう書かれている。

 

──トリカゴの皆へ

 

「指揮官様の字ですわ。間違いありません」

 

一転、真面目な顔付きで大鳳が告げる。

 

彼女が言うのなら間違いない。

 

「手紙。そして宛先は私達......これ、その。要するにあれですわよね?」

 

少し戸惑った様子でネプチューンはノースカロライナにへと確認をとっていた。

 

「恐らく、指揮官の遺書です」

 

『......』

 

ノースカロライナの答えに、空気が食堂のあの時と同じく重たいものに変貌する。

 

今でこそ和気あいあいとしているが、いつこの場所がセイレーンに襲撃をされるのか、また、指揮官本人がいつ亡くなるのかもわからない。

 

その覚悟を持って彼はここに居て、その意思をトリカゴのKAN-SEN達に残そうとしてくれているのだ。

 

「......これは、見ないでおきましょう。いえ、決して読むことが無いようにするのが、私達の永遠の任務です」

 

「ええ」

 

「......」

 

ネプチューンは短く、大鳳は一瞥だけ。

 

何せ、宛先はトリカゴの皆へ。

 

皆で読むものなのだろう。読もうとも思わないし、読みたくもないが。

 

こうして、キャビネット中段の捜索は、彼の覚悟を受け止めて終わりとなった。

 

さて、早くも残るは最下段ひとつのみ。

 

改めてここまでの収穫を振り返れば、各国のお菓子、ユニオンと重桜のKAN-SENからの手紙、文房具、地図、そして遺書。

 

あんな本とか幼少期の写真とかではなく、まさかの遺書の登場とはなったが、ついに最後のひとつとなったのだ。ここで撤退するわけにもいかない。

 

しかし、ここまでの成果を総評するなら面白くない結果ではある。

 

その事に大鳳は口を尖らせていた。

 

「むう......」

 

「不満そうですわね、大鳳さん」

 

「当たり前です。指揮官様の事を知る事が出来るのは至福の喜びですけど、もう少し大鳳を昂らせる代物が欲しいです」

 

「だからと言ってお土産感覚でペンを盗っていくのは、人としてどうですの......」

 

「何か?」

 

「いえ、なんでも」

 

恐らく大鳳の事だろうから聞こえているが、ネプチューンは誤魔化すことにした。

 

「そうですか。では、お待ちかねの本丸。最後の一段。イキますよ」

 

「はい、お願いします」

 

「ドキドキですわ」

 

キャビネットの最下段は、上二段と比べると高さがあり、それだけに、書類ではない物も色々入っているのでないかと推測出来てしまう。

 

期待が高まるのも自然な事だった。

 

まさに本丸。

 

大本命だ。

 

「──いざっ!」

 

少し甲高い音が執務室に響き、とうとう執務室の机の全貌が明らかになる。

 

果たしてその中身は──

 

『......プレゼント?』

 

三人またしても、今度は一字一句口を揃えてそう言った。

 

引き出しの中には、わかりやすく可愛らしい包装紙に包まれ、リボンがくくられた大小様々な箱が詰められていた。

 

箱の形状からしておそらくお酒だったりと中身の想像がつくものもあるが、そんなプレゼントが全部で十四個、つまりはトリカゴに所属するKAN-SENの数だけあった。

 

「もしかしてというか、クリスマスプレゼントですかね。これ?」

 

「きっとそうですわ! さすがは私達の指揮官様! ちゃーんと全員分用意してくれていましたのね!」

 

「......勝ち取って、誰が指揮官様の隣にいるべきか分からせるつもりでしたのに」

 

「「言うと思いました!!」」

 

トリカゴで開かれるクリスマスパーティーはまだ少し先のことではあるが、既にしおりは出来上がっており、そのプログラムのひとつにプレゼント交換会がある。

 

音楽を流して止まったタイミングで、みたいなよくあるアレでは牛歩戦術が発生するのが目に見えているので、公平にくじ引きとなっていた。

 

恐らくここで、大鳳は指揮官のプレゼントを勝ち取る予定だったのだろう。

 

「よかった。これなら血で血を洗う事にはならなそうですね」

 

指揮官からのプレゼントなんて滅多にないもの、それを羨ましがって......なんて事もあるかもというか、確実にある。

 

クリスマスプレゼントがきっかけで戦争なんて笑い話にならないので、全員貰えるのならそれに越したことはない。

 

「ふふっ、今からパーティーが楽しみですわ。確かに、クリスマスプレゼントの事を秘密にするなら、ココが一番最適ですわね」

 

「ええ、絶対に開けられる事はありませんしね。さあ、全ての引き出しを確認出来ました。作戦報告書を書かなければなりません。これで終わりに──」

 

「待って!」

 

「「......?」」

 

任務完遂のため、撤退をしようとした二人を大鳳が呼び止める。

 

顎に手を添えながらも、大鳳は抱いたひっかかりを取るためにも口に出しておくことにした。

 

「プレゼント交換会の時に、指揮官様は私達にこれをお渡しするおつもりなの?」

 

「と、言いますと?」

 

「ですから、これらのは多分個人用で、プレゼント交換会では交換会用の別のプレゼントがあるのでは?」

 

「「......」」

 

言われてみれば確かにとなる疑問。

 

交換会で全員分用意した可能性もあるが、ならくじ引きをする意味があるのかという事になって......。

 

それなら、交換会用のプレゼントが他にあると考えてもおかしいことは無い。

 

「十一、十二、十三、十四。うん。ですが大鳳さん。プレゼントの数は十四つしかありませんわよ?」

 

「となると、お忘れになられているか。まだ用意の手筈を進めていないか、どこかに忍ばせてあるか、これが交換会に出るかのどれか......すんすん、匂いがある。もう一つありますわよ」

 

「あの、ノースカロライナさん。大鳳さん当たり前のように匂いで推理しておりますけど......」

 

「大丈夫、私も頭が痛くなってきました」

 

「指揮官様の事を考えると、きっと、ここ......ほらあ♡ あははははっ! みぃつけた♡」

 

凄いという言葉より怖いという気持ちが先行するが、大鳳が見つけ出してみせたのは、これまた一通の便箋だった。

 

「これだけ箱ではなくて、紙ですわね。流石に遺書が二枚もあるはずないでしょうし、プレゼントの所に入っているわけですし、プレゼントですわよね?」

 

「多分そうでしょう。サイズ的に小切手......なわけないですね。なにか、ギフトカードとかでしょうか」

 

「無難ですけど、頂けたら普通に嬉しいやつですわね」

 

「開けてみます? 大鳳にお任せしてくだされば、封を切っても完璧に戻せますよ」

 

「今だけあなたのことが凄く頼もしいです」

 

しかし、三人はこの時すっかり忘れていたのだ。

 

時として波乱とは自らが起こすのではなく、向こうからも起こしてくるのだと。

 

中に入っていたのは一枚の紙切れ。

 

されども、それは誰にとっても甘美なる響きのものであった。

 

このプレゼントについて、男はこう語っている。

 

「ひとつくらいハズレがあっても、いいかなあと」

 

まさかとんでもない。

 

『手作りお弁当券』

 

それは、KAN-SEN達にとっては最大級のご褒美であった!

 

 

 




次回、指揮官が知るはずもない報告会編へ続く......かな?

指輪出そうかと思ったんですけどやめました(

あとポートランドから貰ったインディちゃんのウスイホンも出すか悩みました(

そして、大鳳取り押さえるところでエルドリッジを起こして金色ラブリッチェ(スマブラ)しかけましたが、キャラ壊れるのでやめときました()

ネプチューンが運がいいのか悪いのか分からない引きをしたのは計画艦特有の運0のアレです。北風でも同じ目に?

私的な話ですが。名前の出た駿河、バターン、ホーネット、ヴェスタルはトリカゴ初期案にいたメンバーだったり......いつか登場する......する?
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