お弁当券は、果たして誰の手に?
ノースカロライナ「──と、いったところでした。以上がキャビネット二段目の報告です」
カブール「遺書か......あまり知りたくはなかったな」
エルドリッジ「指揮官、絶対死なせない」
ノースカロライナ「そうね。私もそう思う」
ウォースパイト「私も同意よ。さて、次で最後だし、ここまでの結果を一旦整理しましょうか」
ニューカッスル「ホワイトボードに書いておきましたが、こんなところですね」
フォーミダブル「まさか、所属する国ごとにお菓子を集めてたなんて......」
オーロラ「言われてみれば、私達が食べ慣れてる味でしたね」
カブール「つまりだが、小生がねだればサディアのチョコ菓子が貰えるという事だろ? 今度試してみよう」
ウォースパイト「あと、手紙の件も了解よ。彼の力になるのなら。協力は惜しまないわ。折角だし、クリスマスカードついでに書いてもいいわね」
シュペー「ガスコーニュさんにも伝えとくよ」
ノースカロライナ「お願いします。あと、手紙での告白でもダメとだけ。素直な感謝のお気持ちを書かれるのが良いかと。では、最後の段の報告にうつります。ネプチューンさん」
ネプチューン「承りましたわ。最後の引き出しには、私達へのクリスマスプレゼントが入っていましたわ。それも、人数分の!」
『おぉー!』
トリオンファン「ホッとしましたわ。最悪、争うことになるかと」
北風「さすが指揮官だぞ」
エルドリッジ「楽しみ」
マラン「私には何をくれるんだろ」
ワイワイガヤガヤ
ニューカッスル「待ってください。それは個人のプレゼントですよね? プレゼント交換会では、あの人は何を?」
『!!』
ノースカロライナ「さすがニューカッスルさん、お気付きになりましたか。というわけで、大鳳さんのおかげで十五個目のプレゼントも見つかりました。ただ、その......」
『......?』
ノースカロライナ「モノがモノというか。最悪殴り合うことに......」
トリオンファン「ええっ!?」
シュペー「なんだろう? 指輪、とか?」
カブール「あの指揮官に限って、それはないな」
ザワザワ
ウォースパイト「......静粛に。まだ、殴り合わないからとりあえず教えてくれないかしら? 指揮官は何を私達に提供するつもりなの?」
ノースカロライナ「その......『手作りお弁当券』です」
『!!』
マラン「指揮官のお弁当! ......今度こそ、私だけの」
シュペー「どんなお弁当なんだろう。重桜の人だしやっぱりお米と何かかな」
ネプチューン「あ、あの人が私のために、それだけで十分ですわぁ」
フォーミダブル「言ったらきっと、アーンも......」
『確かに!』
ザワザワ
シキカンサマー♡
ウォースパイト「おほん。とりあえず訊くわ。この中で指揮官のお弁当を食べた事がある人間は?」
『......』
北風「エルドリッジでもないのか?」
エルドリッジ「お弁当ない。スキヤキとお菓子とお餅はある」
オーロラ「お餅以外は恐らく、全員食べてますね」
カブール「つまり、超プレミアだ。プレゼント交換会ではこれを取り合う羽目になるわけか。ふっ、腕がなる」
ウォースパイト「それはこちらのセリフよ。確かくじ引きだったわね?」
ニューカッスル「その予定ですが、変更の余地も出てまいりました。ウォースパイト様は、とても運が良い方なので」
ウォースパイト「我ながら認めざるを得ないわね」
ネプチューン「ですが、別案なんてありますの?」
エルドリッジ「宝探し?」
シュペー「あっ、それいいね。指揮官に隠してもらって見つけた人にみたいな」
大鳳「彩雲を使っても?」
ノースカロライナ「ダメに決まってるでしょう」
ネプチューン「そもそも大鳳さん。匂いで分かるのでは?」
オーロラ「え、ええ......」
ニューカッスル「大鳳様だけ鼻に洗濯バサミかザリガニでも付けとけば大丈夫でしょう」
大鳳「断固拒否ですわ! そんなみっともない姿、指揮官様に見せられませんもの!」
ニューカッスル「お似合いかと思いますが」
大鳳「さすがに騙されませんわよっ!」
ニューカッスル「残念です。しかし、詳細なルールは決めるべきでしょう。大鳳様の彩雲など、艤装に頼る行為の禁止など、穴のないように」
シュペー「確かにそうだね」
カブール「マラン、君は少し手は空いていたな。小生とルールの制定を担ってくれないか」
マラン「いいですよ。出来あがったら、ウォースパイトさんかニューカッスルさんに見せたらいいのですか?」
ウォースパイト「話の腰を折るようで悪いのだけど。ルール制定については、手間がかかるわ。加えて、絶対にルールに穴が出来る。いや、あえて作るのかしら?」
カブール「......さて、どうかな」
ウォースパイト「なら、私が最後に引くか、指揮官本人に引いてもらえばいいわ。それなら、彼の運という事でしょ?」
『......』
ウォースパイト「反対意見はないようね」
カブール「......では、手間の少ないその手筈でいくか。ノースカロライナ、他に報告はないのか?」
ノースカロライナ「えっと、そうですね。男性が好むような本はありませんでした。はい、私からは以上です」
カブール「なら、報告会はここまでとする。質問会の方にうつらせてもらおう」
*
トリオンファン「お姉様、私も鼻を鍛えるべきでしょうか?」
マラン「切実にやめて......」
*
カブール「では、食堂に置いてあるこの質問箱を開けていくとしよう。皆知っているだろうが、対象者は質問に対しては必ず答えてくれ。嘘をついてもウォースパイトがいるから、下手な抵抗はしないように」
質問箱オープン
トリオンファン「そこそこありますわね」
マラン 「トリオンファンがちゅっちゅしかけたからじゃない?」
トリオンファン「お、お姉様!」
ウォースパイト 「はいはい、静粛に。それじゃあ、カブール。一つ目といきましょう」
カブール「了解だ。匿名の差出人だ。『ニューカッスルさん、重桜のKAN-SENにも会われたと思いますが、向こうの人達も指揮官に想いを寄せていましたか?』」
ニューカッスル「イエスです。重桜のKAN-SENほぼ全員からと言って過言ではないかと。向こうの方は、かなり積極的に振舞っていらっしゃるようでした」
フォーミダブル「例えば?」
ニューカッスル「先程も少し話に出ましたが、お布団とか、お背中お流しします的な」
ネプチューン「ああ、やっぱり」
ノースカロライナ「納得ですね......」
ニューカッスル「......?」
北風「そ、そうなのか? 北風の知っている限り、そんな事をしそうな人はおらんと思うが、いや軍の方なら......」
大鳳「そうそう、軍の奴らよ。うふふ」
『(......おぉう)』
オーロラ「ま、まあ。指揮官さんはお風呂で攻めてもダメと言うのは、わかりました」
フォーミダブル「そもそもトリカゴって、基本シャワー......」
ウォースパイト「ちなみにニューカッスル。本当に重桜では何も美味しい思いはしなかったの?」
ニューカッスル「ありませんでしたよ」
ウォースパイト「ふぅん......そう」
シュペー(嘘なのかな?)
マラン(ぽいですね)
ニューカッスル「............あーんしてくださいました」
オーロラ「ほっ。なんだ、その程度なら」
フォーミダブル「わ、私もやってもらった事ありますわ。ウォースパイト様、そう睨む事はないのではなくて?」
ウォースパイト「......本当にあーんだけ?」
ニューカッスル「ええ、あーんだけです.....あの人が使ったお箸でですが」
『!?』
シュペー「それってつまり」
トリオンファン「か、かかかか間接キス......///」
大鳳「そんな羨ましい事があったのに無罪を主張するおつもりでしたの!? やはり有罪! 無期限秘書艦禁止ですわ裁判長!」
ウォースパイト「いつからここは裁判所になったのかしら......」
カブール「そもそも彼から進んでの行動なら、我々は何も文句は言うまい。そういう決まりだろう?」
大鳳「ちぃ!」
ニューカッスル「ありがとうございます、裁判長」
カブール「誰が裁判長だ。ふぅ、次いくぞ。ル・マランからか。『カブールさん。仕事を代わってあげたあの日、どうして倒れたのですか?』......貧血だ。うん」
マラン「ウォースパイトさん」
ウォースパイト「嘘ね」
ノースカロライナ「カブールさん、質問箱を開ける前のご自身の言葉を思い出してください......」
カブール「ぐぬぬ」
ウォースパイト「それで? 本当は何があったの? 貴方が倒れるなんて、よっぽどよ」
カブール「あ、あの時のガスコーニュが、小生に塩を送ってくれた......ではダメか?」
フォーミダブル(誤魔化した)
シュペー(誤魔化したね)
マラン「指揮官関係ですか?」
カブール「......そうだ」
マラン「......キスしました?」
カブール「きっ!? キスではない! ハグだハグ!」
『......』
カブール「......あっ」
大鳳「まあ、あの日の指揮官様からは貴方の匂いがプンプンしてましたからね、気付いてはいましたわ。流星、真に転ぜよ」
カブール「艦載機を出すな! というか、誰か止めろ!」
ノースカロライナ「はいはい、大鳳さんそこまで。撃ち落とされたくないでしょ?」
大鳳「ちっ......」
カブール「助かった......」
オーロラ「ですが、指揮官とハグですか......」
カブール「彼からやってくれたから全くの無問題だぞ! 据え膳食わぬは艦船の恥!」
エルドリッジ「どうだった?」
カブール「......何というか、よかったぞ///」
『......』
ウォースパイト「でも、それで倒れるなんて、貴方結構初心なのね」
大鳳「普段から偉そうなわりには、ねえ」
ノースカロライナ「私は可愛いと思いますけど」
エルドリッジ「かわいい」
ネプチューン「ギャップ萌えというやつですわね。どこかの誰かさんみたいな」
フォーミダブル「誰の事かしら?」
ネプチューン「さあ? ふふっ」
トリオンファン「私、カブールさんってもっと大人な方かと......」
オーロラ「私は一番大人だと思いますよ。カブールさんって、秘書艦の時は仕事をなるべく早く終わらせて、出来るだけ指揮官に独りで休憩してもらおうって考えてる健気な人ですし」
ウォースパイト「へえ」
カブール「なっ!? なぜ知って!?」
オーロラ「指揮官さんが言ってましたよ。カブールの時はいつも仕事が早く終わって休憩出来るから、きっとそうだろうって。私、素敵だなって思いました」
カブール「なななっ///」
北風「おぉ。三歩後ろを歩くというやつだな、参考にしたい......」
シュペー「普通独り占めしようって思うよね......凄いな」
ニューカッスル「公務中の来訪に口うるさいのも納得ですね」
ノースカロライナ「全ては指揮官のためと」
カブール「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!! チェザーレぇぇぇぇぇぇ!!!!」
マラン「あっ、カブールさん!? 待ってください! 私もハグしてもらえるように根回しを!」
バタン!
『(逃げたというか壊れた......)』
フォーミダブル「まだ、二通しか読んでいませんのに......」
ウォースパイト「いいじゃない。進行役が抜けたのなら、今回のコーヒー会は中断。あとは各自、自由行動としましょう。異論があるものは?」
シュペー「あの」
ウォースパイト「何?」
シュペー「前々から思ってたんですけど。どうして、この会ってあるんですか?」
ウォースパイト「どういう意味かしら?」
シュペー「ウォースパイトさんも、指揮官の事を独り占めしたいと思ったりしないのかなって......情報を流しちゃったら、逆に不利になるんじゃ」
ウォースパイト「......個人としては勿論そうしたいわ。でも、組織としては指揮官は皆の指揮官よ。なら、皆の指揮官の事は皆が知っておくべき。そうは思わない?」
シュペー「......」
ウォースパイト「それに、今の私は、トリカゴの事が好きよ。指揮官だけじゃない、貴方も含めたこのメンバーが。だからね、なるべく仲良くしたいのよ。それこそが、あの人がトリカゴを作った意味でしょう?」
シュペー「......ちょっと嬉しいです。ウォースパイトさんが、そう思ってるんだってわかって」
ニューカッスル「素晴らしき主に恵まれました」
ウォースパイト「うるさいわよニューカッスル。まあ、指揮官の事で、手加減するつもりはないわ。それはそれ、これはこれ」
シュペー「それは私も」
エルドリッジ「ふんす」
大鳳「うふふふふ、そういう事なら、私も手加減致しませんわぁ」
ウォースパイト「くれぐれも、指揮官に迷惑をかけない程度でね」
ノースカロライナ「あはは......ともかく皆さん。楽しいクリスマスパーティーにしましょう!」
エルドリッジ「もち!」
*
「えーと、引いた紙に名前が書いてあった子にあげるんだな?」
「はい、そうです。そうした方が楽しいじゃないですか?」
「確かに?」
日付は過ぎ去り、楽しい楽しいクリスマスパーティー当日。
重桜ではケーキを食べる事から、特別に用意されたクリスマスケーキにフォーミダブルが何故か勝ち誇った様子だったり、大鳳の舞だったりオーロラのバイオリン演奏会だったりと、着々とプログラムは進み、ついにプレゼント交換の時。
指揮官は何故か用意されていた専用のくじ引き箱に、首を傾げていた。
ニコニコとオーロラが説明をしてくれているが、どこかその笑顔が恐ろしく感じる。
後ろに東煌伝統の龍が見えるような......気のせいだろうか。
「まあ、交換用のやつはそんなに良いものでもないし。どちらかと言えばハズレだしな、ある意味盛り上がるか。あっ、ちゃんと個人用にも用意してあるから、安心していいぞ」
『(知ってる!)』
「よーし、じゃあ引くぞー」
何故か一同大きく頷く状況ではあったが、指揮官は気にすることもなく、くじ引き箱に手を突っ込んだ。
ゴソゴソと手を動かす彼に視線が注がれ、固唾を飲む。
ウォースパイトは目配せをしながら、改めて注意を促した。
「(いい? 誰が引かれても文句なしよ?)」
皆、グッと親指を立てて了承の意を返す。
それぞれ、お弁当を作ってもらっている自分を想像しながら、事の顛末を見届ける。
「よし、これにするか。おみくじ思い出すな。どれどれ」
『(きたっ!)』
KAN-SEN達にとっては、さながら折りたたまれた紙を開く指揮官の動作がスロモーションに見え、やがて彼の口から名前が呼ばれる瞬間がやってくる。
「えっと、俺のプレゼントを貰うのは」
『貰うのはっ!?』
「......エルドリッジだ。おめでとう? でいいのかな」
「やった」
『......』
選ばれなかった者達は表では小さく、心の中では大きく溜息をついた。
それでもエルドリッジが選ばれた事に変わりはない、温かみのある拍手で彼女を祝う。
「(エルドリッジちゃんでしたか、やっぱり強いですね)」
「(いいなぁ、私も指揮官のお弁当......)」
「(シュペー、文句は無しでしょ)」
「(わかってますけど......)」
言葉では理解出来ているが、全員に平等なチャンスがあったのだ。もしかしたらを指揮官からプレゼントを手渡されているエルドリッジを見て、考えてしまう。
「指揮官、開けていい?」
「いいぞ。そんないいものじゃないけど」
「そんな事ない」
そう言ったエルドリッジが便箋の封を切ると、ほとんどのKAN-SENが話だけに聞いていたお弁当券がその姿を現す。
「指揮官、これ今使ってもいい?」
「もう使うのか? 明日のお昼が、俺のお弁当になっちゃうぞ」
「指揮官のお弁当がいい」
「わかったよ」
『......』
羨ましいが、プレゼントは選ばれたエルドリッジのものだ。口を挟むことはなし。そう決めた。
「じゃあ指揮官。皆の分、お願い」
『......?』
エルドリッジが一瞬何を言ったのか、彼女以外の全員が理解出来なかった。
それは、指揮官も同じ。
「皆? 皆ってトリカゴ全員ってことか?」
「うん、だってこれ。一枚だけしかないけど。人数まで書いてない」
「.............あっ、確かに。人数の制約までは書いてないな」
「でしょ」
目をぱちくりとさせて、指揮官は自分が作ったお弁当券の使用方法の穴に気が付いた。
直面してしまった事実に指揮官は、顎に手を当てて少し考え込む。
確かにお弁当券には人数の制約は書いていない、普通は一人分となるが、一枚で全員分も解釈としては可能だ。
これに至っては、ちゃんと記載していない自分が悪い。
そう結論づけた彼は、明日のお昼が大して料理上手でもない男のお弁当になってしまう皆に確認をとった。
「皆はいいのか? 明日のお昼、俺のお弁当になっちゃうけど......」
『......』
「えっと? いらないのか?」
『......はっ!』
困り果てた彼の声で、ようやく一同は状況を飲み込み現実に帰ってきた様だった。
「いる! いりますわ指揮官様! ぜひ大鳳にも食べさせて下さい! ぜひ指揮官様の愛を味わわせて!」
「信じていたぞエルドリッジ。君はそういう子だったな。小生でも同じ事はしていたが!」
「はぁ、丸く収まってよかった......」
他のKAN-SEN達も各々エルドリッジへの感謝や安堵の声を零し始め、何が何だかよく分からない指揮官ではあったが、嬉しそうに笑顔を浮かべる皆を見て改めて思った。
──明日は早起きになりそうだし、目覚ましにコーヒーでも飲もうかな。
なんて。
活動報告にも書いたのですが、次の更新は少し時間をおかせていただきます......otz