アズールレーン─トリカゴ基地の日々─   作:大和亀蔵

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指揮官に恋心を気付かせようキャンペーン、トップバッターはマランとトリオンファンです。

前話までのお話を読んでからだと、より楽しめるかと思います(露骨な誘導


「愛するあなたに、イヴの林檎を」 マラン&トリオンファンの場合

 「お疲れ様だぞ指揮官。新しく出来た懺悔室には、もう行かれたか?」

 

 「......なんて?」

 

 ある日の昼下がりより少し前、トリカゴの食堂にて。

 

 顔を合わせるなりそう言ってきた北風に、指揮官は反射的に懐疑のこもった声で聞き返してしまった。

 

 「いや、だから。懺悔室には行かれたのかぞ?」

 

 「言ってる言葉は分かるんだけど、意味がわからない......」

 

 そんな「こんにちは」みたいな挨拶のノリで懺悔室なる部屋がトリカゴに出来ていると言われても、易々と受け入れられるほど鈍くは出来ていない。

 

 懺悔室......とはすなわち、教会にある罪を告白するあの懺悔室の事だろう。寺の方でも存在するが、主に思い浮かぶのは教会だ。

 

 重桜は神社や寺が信仰の主であるが、教会も無い訳では無いのでその存在は知っているけれど。ただ、どうしてその懺悔室がこのトリカゴに?

 

 「しかし、北風からもそうとしか言えないぞ」

 

 「そうなのか。なんでそんなものが......あっ、もしかして饅頭達か?」

 

 トリカゴにて雑用をこなしてくれている謎の生物饅頭は、時折季節に合わせて大きく模様替えを決行することがある。

 

 少し前のクリスマスではツリー、なんなら正月の時には鏡餅などを置いてもくれていた。

 

 極東にある重桜文化さえも精通してくれているらしい。

 

 そんな饅頭達が、気まぐれでトリカゴの模様替え並びに懺悔室を作ってしまったのなら、ある程度の納得は出来る。一言報告はしてほしいが。

 

 しかし、指揮官の考えはどうやら外れているようだった。

 

 「いや、饅頭達ではないぞ。マランとトリオンファンが作ったものだ」

 

 「マランとトリオンファンが?」

 

 「うむ」

 

 あの本性ぐーたら娘と生真面目お姫様の姉妹が、無断でそんな事をするとは......少しお説教だが場所は懺悔室だ。説教なんて言語道断。

 

 むしろ入ったが最後、迷える子羊として罪を告白しなくてはならない。

 

 二人の事だし、恐らく何か考えがあっての行動なのだろう。

 

 気になる真相は、本人達に直接確かめるしかなさそうである。

 

 「北風は、その懺悔室にはもう行ったのか?」

 

 「うむ、もちのろんだ。朝方、任務の前に行かせて頂いた。伴天連のしきたりに従うのは初めてだったが、少しだけ気持ちが楽になった気がするぞ」

 

 「へえ。北風でも悪いことするんだな」

 

 「ま、まあな。北風も人間だ。少しくらい悪いことだってする」

 

 「例えばどんな?」

 

 「ご飯の前にお菓子をつまんだり、歯磨きをせずに寝てしまったり......あぁ、北風はなんて悪い事を。閻魔様に叱られてしまうぞ......」

 

 「......大変だな」

 

 一度くらいなら誰でもありそうだが、きちんとその事に罪の意識を感じているあたりは、いかにも真面目な北風らしかった。

 

 「あと、トリオん......司祭様の助言も非常に参考になった。指揮官もぜひ行ってみたらどうだ? 休憩時間は、まだあるのだろう?」

 

 確かに北風の言う通り、午後からの執務開始まではまだ余裕がある。

 

 今日は秘書艦がカブールだったおかげもあってか、お昼の時間が早めだったのだ。

 

 「......そうだな。様子見に、俺もいってみるか。なんで懺悔室を作ったのかも気になるし」

 

 「おお、それがいい。懺悔室は二階の一番奥のところにあるぞ」

 

 「二階の一番奥って、資料室か。元々ある本棚達を動かせば、懺悔室っぽくはなりそうだな」

 

 実際、懺悔室に入った事は一度もないが。

 

 ごちそうさまと、食材への感謝を告げる。

 

 それから指揮官は、迷える子羊として新しく出来た......もとい、改装された資料室にへと足を運んでみるのだった。

 

 *

 

 「こちら、北風。指揮官の誘導は完了したぞ。お二人共、あとは頑張ってくれぞ」

 

『ありがとうございます』『お任せあれですわ!』

 

 *

 

 「本当に、懺悔室になってる」

 

 北風に言われるがまま二階の一番奥の部屋、つまりは資料室にまで辿り着いた指揮官は、彼女の言葉が嘘ではなかった事を改めて認識した。

 

 資料室の木扉にはロザリオが飾られていて、それっぽい厳かな雰囲気が漂っている。

 

 既に他の誰かが懺悔中なのか、取っ手の部分には『現在告解中』と立て札がかけられていた。

 

 仕方がないから横に置いてある椅子に座って待っていようかと思ったところで、ガチャりと扉が開いた。

 

 「あっ、指揮官さん」

 

 迷える子羊として罪を告白していたのは、オーロラだった。

 

 罪を吐き終えたからか、どこかスッキリとした顔をしている様に見える。

 

 「オーロラも懺悔か? 意外と皆、悪いことしてるんだな」

 

 「ふふっ、はい、私も人並みには。フォーミダブルちゃんに悪い事をしてしまいましたから。指揮官さんも告解ですか?」

 

 重桜ではクリスマスに苺のケーキを食べる事を知らずに、彼女を馬鹿にしてしまったので。

 

 までは、さすがに言わない。

 

 「大したもんじゃないけど、興味本位でかな。そういや、俺って信者じゃないけど懺悔とかして大丈夫なのかな?」

 

 懺悔もとい、赦しの秘跡は洗礼を受けていないと出来ないだとか、なんとか聞いた覚えが。

 

 「トリオンファンさんとマランさんも正式な教会の司祭様ではないでしょうし、あくまでもごっこ遊びだと思えば」

 

 「いいのかなそれ......」

 

 重桜なら間違いなく罰があたる。

 

 「本当はダメでしょうけど、お二人も私達の心の平穏を保つために、こうして夜間任務の後に時間を作って下さっている訳ですし。それを非難するのも悪いかなと」

 

 「それも......そうか」

 

 マランとトリオンファンは基本的に夜間任務を任される事が多い。

 

 普段なら寝ている時間をわざわざ割いてトリカゴの為にやっていると言われれば、指揮官も最速姉妹の気持ちを無下にはできなかった。

 

 何よりマランは、ヴィシア聖座護教騎士団の一人であるし、トリオンファンは信心深いアイリス生まれのKAN-SENだ。

 

 時々祈りを捧げているところも見るし、そんな彼女達が大丈夫と判断したのなら、それを信じるとしよう。

 

 「すみません指揮官さん。お話もしていたいのですけど。これから、ウォースパイト様のお茶会に呼ばれていて」

 

 「あぁ、悪いな呼び止めちゃって」

 

 「お気になさらないでください。もし早めに済んだのなら、是非お茶会にも来てくださいね」

 

 「早めに終わったらな。二人には色々と聞きたい事と言わなきゃならない事があるから」

 

 「指揮官さん、迷える子羊がお説教なんてダメですよ」

 

 「わかってるよ」

 

 「ならよかったです。それでは、ご機嫌よう♪」

 

 ロイヤルネイビーらしくオーロラは優雅に、それでも指揮官と話せた嬉しさがこもった別れの挨拶を告げると、足取りも軽く踵を返していった。

 

 そんな彼女の背中を見送っていると、

 

 「指揮官も懺悔ですか?」

 

 「お、マラン」

 

 「ル・マランです」

 

 扉を盾にして上半身と顔だけを出したマランが、指揮官にへと声をかけた。

 

 「珍しく俺の前でも真面目だな」

 

 「当たり前です。今は、迷える子羊を導く者ですから」

 

 そう言ってみせた彼女の瞳の十字架が、心無しか光っているように指揮官は見えた。

 

 「ちなみに聞くが、何でこんなことを?」

 

 「......天啓でしょうか」

 

 「天啓?」

 

 「はい、夢の中で神が仰ったのです。私達姉妹は主に夜間の哨戒任務を担っているので、セイレーンが関わる大きな作戦に参加する機会は、あまりないと」

 

 「大体わかった。働いていない分、この懺悔室をやれってわけか」

 

 「理解が早くて助かります」

 

 言っておくが、もちろん天啓は適当なでっち上げである。

 

 「わかったけど、無理はしないようにな。ちなみに、信者じゃない俺がやっても大丈夫なのか?」

 

 「正式なものではないので問題ないでしょう。ですので、アレンジを加えてトリオンファンによる助言もこの懺悔室では授けます。一応、後で私が告解しておきますのでご心配なく」

 

 「便利だな告解」

 

 「神は全てを赦して下さいますから。さぁ、懺悔をなさるならどうぞ中へ。休憩時間もそう長くはないでしょうし」

 

 「だな。よろしく頼む」

 

 真面目モードのマランに導かれるまま、部屋にへと入る。

 

 指揮官のよく知る資料室の背の高い本棚達が動かされて顔隠しの戸板代わりに立ちはだかっていて、その前に木椅子が一つ置かれていた。

 

 「ここに座ってください。では、私はあちらへ」

 

 促されるがまま椅子に座らされ、マランは壁となった本棚の向こう側にへと回った。

 

 どうやら、司祭様二人体制で罪を聞いてくれるらしい。

 

 「大いなる父と子と聖霊のいつくしみに信頼して、罪を告白してください」

 

 「神は全てを赦すでしょう」

 

 本棚越しにトリオンファンとマランの声が聞こえる。

 

 もう少し前口上があった気もするが、これはごっこ遊び、気にしないでいこう。

 

 「すまない。質問なんだが、懺悔ってどのくらい前のものまで大丈夫なんだ?」

 

 「貴方が覚えている限りの範疇で、思い当たる節があるものです。あと、大いなる父への言葉となるのです。告白は、敬語でお願いします」

 

 「了解、しました」

 

 マランの言葉に、ぎこちなくもそう返す。

 

 少し考え込んでから指揮官は、思いあたった罪を告白し始めた。

 

 「ええっと、トリカゴを結成する前にロイヤルに初めて行った時です。初対面のエリザベス、じゃないな、クイーン・エリザベス女王陛下に馴れ馴れしくタメ口で接してしまいました」

 

 「なぜ?」

 

 「人のせいにするのも良くないのですが、長門にそう言われたからです。指導者は孤独だから、怖気付かずに接してやれと」

 

 告白をしながら、指揮官はあの日の長門との会話を思い出す。

 

 あれは、重桜からユニオンへ渡る数日前の事だったか。

 

 「お主、これから多くの人間、そしてKAN-SENに会うだろうが、人間はともかくKAN-SENであるならば、誰に対しても親しく接してやれ」

 

 「それって、ロイヤルの女王陛下や鉄血の指導者にもか?」

 

 「あぁ。余には陸奥がおるからまだ大丈夫だったが、人は一度頂点として君臨すれば、あとは孤独だけが押し寄せてくる」

 

 「孤独?」

 

 「誰も、余を人間扱いしてこなくなるのだ。長門様、長門様と。まるで神のような扱い。それを否定はせぬ。いや、出来ない。だからこそ、孤独が押し寄せてくる」

 

 「......」

 

 「陸奥だけは、変わらずに余を姉として接してくれた。お主も最初は長門様だったが、今では呼び捨てしてくれている。余はそれが嬉しい。余を一人の人として見てくれている人間がいるのだと、な」

 

 「長門......」

 

 「だからこそ、他の者にもそうしてやってくれ。友が増える事を拒む人は、きっといないから」

 

 長門のこの言葉を胸にユニオンへと渡り、そしてロイヤルにへと赴いたわけだが......あとは告白の通りである。

 

 この間、重桜に帰ってしまった時に長門にこの話をしたら、

 

 「親しき仲にも礼儀ありという言葉を、お主は知らんのかっ!?」

 

 ご最もである。

 

 思い返すだけでも顔から火が出そうだ。女王陛下に思わず「ちっさ」と言ってしまったのもあるが、その後の言葉が「やあ、エリザベス」はない。

 

 親しすぎるというか、さすがに女王陛下に向かって失礼すぎる。

 

 長門の言葉を真摯に受け止めすぎた。

 

 エリザベスも怒ってその場ではトリカゴに了解印はしてくれなかったし、他の陣営の印を貰ってきたら参戦してやるとか難題をふっかけられたし。

 

 この時の反省を活かしてリシュリューやジャン・バール、ヴィットリオやソユーズ、ビスマルクなどには、さすがに程々に抑えた。

 

 エリザベスも、よく最終的に了解してくれたなと思う。

 

 なお、エリザベスとウォースパイトにとってはそんな彼の態度が一つの光になったのだが、彼の中では自責の念が渦巻いているのだった。

 

 「ぷふっ......んんっ! なんでもありません。トリオンファン、助言を」

 

 「......」

 

 明らかにマランが笑声を誤魔化してみせたが、傍から聞けば確かに笑い話だとも思い、指揮官はトリオンファンからの助言を待つことにした。

 

 やがて、落ち着いた声音が指揮官の耳に届く。

 

 「心の距離感は目に見えません。だからこそ難しいですし、失敗もします。しかし、あなたの行動で今があるのですわ。反省も必要ではありますが、御自身を深く責めすぎないでください。私は、長門さんの言葉をしっかりと実践した貴方の行動を素晴らしいと思いますわ」

 

 「お、おお。ありがとうございます」

 

 「いえ」

 

 物凄く褒められてしまい、指揮官はどこか気恥しさを感じた。

 

 「他にはありますか?」

 

 マランの声がかかる。

 

 聞いていた通り、トリオンファンの助言まででワンセットなようだ。

 

 それから、指揮官はまた少し考え込んで、

 

 「ユニオンにいた頃、無理がたたって熱で倒れてしまいました。なにより、ユニオンの方に迷惑をかけてしまいました」

 

 「どうして、倒れるような無茶を?」

 

 「エルドリッジを助けたかったからです。すみません、これ以上は彼女の為にも言いたくありません」

 

 指揮官自身も詳しくは知らないが、エルドリッジは他のKAN-SENとは何かが違うらしく、多くの非人道的な実験を極秘に無理矢理受けさせられていたらしい。

 

 最終的に、スパークを使うあの能力が芽生えたわけだが、同時に人も、ましてやKAN-SENすらも信じられなくなってしまっていた。

 

 ──彼女を救え、話はそれからだ

 

 それが、新参者だった指揮官にへと与えられたユニオンからのトリカゴ参戦条件であった。

 

 指揮官相手でもエルドリッジは研究の事を話したがらないので、その辺の詳細は彼女の名誉のためにも省いておく。

 

 「......ともかく結果として、倒れてしまったと」

 

 「はい。あの頃は多忙な時期でした。それでも、めげずに頑張っていたら無理がたたりました」

 

 「なるほど。トリオンファン、お願いします」

 

 聞き遂げたマランが、トリオンファン司祭にへと言葉のバトンを渡した。

 

 少し静寂が続いて、トリオンファンは言った。

 

 「人間、無理をする事が必要な時は必ずあります。私にもありました。しかし、そんな時は必ず誰かに弱音を打ち明けていましたわ。辛い、と。助けて欲しいと」

 

 「......」

 

 「あなたも是非そうして下さい。あなたの弱音を聞きたくない人は、このトリカゴにはいませんわ。どうか、同じ過ちを繰り返さないように」

 

 「わかりました。ありがとうございます」

 

 トリオンファンの言葉が、じわりと指揮官の胸に染み渡っていった。なんなら、漏れでてしまって少し泣きそうだ。

 

 いい部下達に恵まれたと改めて指揮官は、痛感した。

 

 ここまでは。

 

 「続けてありますか? 主に、トリカゴに入ってからで」

 

 「トリカゴに入ってからで?」

 

 「はい。告解をしてくださった皆さんはトリカゴに入ってからの内容が多かったので、おこがましいのですが、指揮官も何かないかなと」

 

 「あぁ、なるほど。えっと、そうだな......」

 

 急に懺悔の内容を制限されてしまい一驚してしまうが、あまりに昔の事を話す指揮官への気遣いのようだった。

 

(トリカゴ。トリカゴに入ってからで告白しておきたいことかぁ......)

 

 北風みたいに歯磨きをせずに寝てしまったとかは、枚挙にいとまがないので、他となれば......。

 

 *

 

 「それで、あの時のガスコーニュに正面からちゃんと接してあげられなくて──」

 

 「(んー、空振りですわね。お姉様)」

 

 「(みたいだね)」

 

 指揮官からの告白を本棚越しで聞きながら、トリオンファンとマランは内心、肩を落としていた。

 

 彼が今現在告白しているのは、ガスコーニュがおかしくなってしまったあの時、ちゃんと彼女に接してあげられなかった事について。

 

 既にいなくなってしまったあのガスコーニュにまで罪悪感を抱いていたとは、指揮官は優しい人だなとは感心するが、欲しい懺悔はそれじゃない。

 

 二人が求めているのは、トリオンファンちゅっちゅ事件(マランが勝手に命名した)についての告白なのだ。

 

 マランとトリオンファン、この二人がこうして眠たい眼を擦って懺悔室を開設したのには、指揮官に話したものとは別の理由があった。

 

 言っておくが、もちろんトリカゴの皆の心の平穏を保つ役割も果たそうとはしている。してはいるが、その本当の理由は

 

 「(トリオンファン、本当にエルドリッジさんが来なかったらキスできてたんだよね?)」

 

 「(ま、間違いありませんわ! わ、私も詳しいわけではありませんけど、あの雰囲気は、あと一歩で出来てました!)」

 

 「(ふーん?)」

 

 半信半疑でトリオンファンの言葉を受け止める。

 

 そう、二人が何より確かめたいのは、指揮官が本当に恋心を失ってしまったのかについてである。

 

 この間のコーヒー会では、恋心がないとの報告があったが、トリオンファンには確信があった。

 

 あの時、エルドリッジの邪魔......ではなく、目撃さえなければ唇と唇を合わせる事が出来ていたはずだと!

 

 目線を合わせる+互いに名前を呼ぶ=口付け

 

 だった!

 

 多分!

 

 しかし、コーヒー会で指摘された通り、その後指揮官からの動きもないし、本人がトリオンファンを特別気にしている様子もない。

 

 マランとしては、その事実で九割方諦めモードであるのだが、可愛い妹がどうしてもと言うので、こうして真相を知るために懺悔室を開いて付き合ってあげているのだった。

 

 どうして、懺悔室か?

 

 直接指揮官に「トリオンファンの事、どう思ってますか?」とは聞けないし、見当違いの解釈をされてとぼける未来が見え見えだ。

 

 ならばどうすればいいか。

 

 答えは簡単、彼自身の口から告白してもらえばいい。

 

 「トリオンファンとキスをしかけました」

 

 少なくとも、優しい指揮官ならちゅっちゅ事件については罪として捉えているはず。

 

 それに、この告白があれば彼がトリオンファンに劣情を抱いていたと考えられないだろうか?

 

 キスという行為に、少なからず思うことはあるとよめる。

 

 結果として、恋心の消失というニューカッスルの結論を覆す事も出来るし、トリカゴの皆の希望にもなる...かもしれない。

 

 たとえ出てきた告白がちゅっちゅ事件ではなくても、他のトリカゴのメンバーに対しての劣情チックな懺悔ならとりあえずの収穫にもなる。

 

 そんな成り行きから、北風に指揮官がここに来てもらうよう協力してもらって、今となっているのだ。

 

 なっているのだが、指揮官は真面目な告白しかしてくれそうにないのであった。

 

 「──あのガスコーニュさんの最期が笑顔なのだったら、きっと心は穏やかであったはずですわ。それでも償いを求めるのであれば、彼女の事を忘れないであげることが、一番の償いでしょう」

 

 「そうですよね......」

 

(様になってるなあ、トリオンファン)

 

 ガスコーニュの話を聞き、トリオンファンは司祭役として真剣に指揮官にへと助言を渡していた。

 

 元の任務も忘れてはいないだろうが、指揮官をはじめに他のトリカゴのメンバーにも助言を授けるトリオンファンは、マランの目から見てもさながら聖母の様であった。

 

 話が終わったみたいなので、続きがないかをマランは指揮官に問いかける。

 

 「他にはありませんか?」

 

 「えっと......」

 

 「「(......ごくり)」」

 

 緊張の一瞬。

 

 さあ指揮官、トリオンファンの事を懺悔するのです。

 

 神は全てを許して下さいますから。

 

 「北風が人前では嫌だと言っているのに、可愛いかったからオーロラとフォーミダブルの前で、つい頭を撫でてしまいました」

 

 「「(うーん!)」」

 

 またしても空振り。

 

 いやしかし、可愛い?

 

 指揮官も誰かを可愛いとは思うのか、これはしっかり聞き出さなければ。

 

 「指揮官から見て、北風さんは可愛いですか?」

 

 「えっと、は、はい」

 

 「北風さんだけ?」

 

 「いや、トリカゴの皆、可愛かったり綺麗だなと思うよ」

 

 「そうですか......」

 

 嬉しいのだが、そんなステンドグラスの様な綺麗で色彩豊かな解答が逆に困る。

 

 「なあ、マラン。それって懺悔のための質問だよな?」

 

 「............カツ丼食べます?」

 

 「ここ懺悔室だったよな!?」

 

 いつの間にやら、取り調べ室になってしまっていた。

 

 「すみません、少し肩の力を抜いてもらおうと思っただけです。それと、北風さんの件は罪ではありません。惚気です。ですよねトリオンファン?」

 

 「ですわね、お姉様」

 

 「え、ええ......」

 

 立派な罪だと指揮官は考えていたが、二人にとってはただの羨ましい話なので、却下する。

 

 しかし、指揮官も可愛いとか綺麗だなとかは思うようだ。ここは攻めてみようと、マランは考えた。

 

 「ところで、トリカゴの皆さんを気にかけているようですが、特に気になる方とかは、いらっしゃいますか?」

 

 「特に気になる? んー......フォーミダブルなんだが」

 

 「「(おおっ!?)」」

 

 ダメ元だったが、まさかの返答。

 

 この際、もうトリオンファンの事じゃなくてもいい。

 

 フォーミダブルなのは少し残念だが、やはり指揮官も男性、あのワガママボディに対して、すこしくらいは邪な思いが!

 

 「胸の谷間の、あのネクタイ? どういう構造なんだろうなって」

 

 ドンガラガッシャーンっと、指揮官からすれば椅子から転げ落ちるような音が飛び込んできた。

 

 すかさず二人へと心配の声を投げる。

 

 「なんかすごい音が聞こえたけど大丈夫か!?」

 

 「大丈夫です......椅子の脚が折れただけです」

 

 「ですわ......お気になさらず」

 

 「お、おう? 大丈夫ならいいけど」

 

 椅子の脚(心)

 

 どうやら、指揮官の中だと本人やそのカラダより、着飾っているネクタイの方が興味が大きいらしい。

 

 胸元に視線が注がれないと言っていたのも、ネクタイの事しか頭にないからだ。恐らく。

 

 「ちなみに指揮官。その質問についてですが、フォーミダブルさんは胸元に挟むようにネクタイをされていましたよ」

 

 「へえ、そうだったのか。汗をかくからとかかな」

 

 「生憎、私には持てない悩みなのでノーコメントで。しかし意外ですね。フォーミダブルさんに直接訊かないとは」

 

 ちょっとカマをかけてみる。

 

 女性に胸元の事なんて尋ねられないとでも言ってくれれば、御の字。

 

 「そりゃ本人としてはオシャレだろうし。指摘したら気にしてしまうだろうから。自分は似合っていると思ってるのに、その帽子なんで被ってるの? とか言われたら、落ち込まないか?」

 

 「あぁ、なるほど」

 

 「だろ?」

 

 あえなく撃沈。

 

 指揮官がとことん優しい人だと、新たに理解を深めるだけだった。

 

 閑話休題。

 

 「では、気持ちも整いましたでしょうし、懺悔に戻りましょう。他にありませんか?」

 

 「............なら、本人がそこにいるけど、トリオンファンの事になるんだが」

 

 「(! きたっ!)」

 

 「(よかったですわ!)」

 

 今か今かと待ち望んでいた言葉の来訪に、二人の胸が大きく高鳴る。

 

 小さくお互いハイタッチをしてから、乾いた口でマランは言った。

 

 「そ、その件は私も聞いています。神はもちろんですが、過ちを犯した相手に向かっての告白も大事です」

 

 「遠慮はいりませんわ」

 

 「お、おお。わかった。おほん」

 

 「「......」」

 

 今度こそ、二人にとっては本当に緊張の一瞬。

 

(指揮官、誰も怒っていないから、トリオンファンへの気持ちをただ素直にぶつけてください)

 

(私が魅力的で、上司と部下の壁を壊しかけてしまったと)

 

 そして、彼の声が二人の鼓動と鼓膜を揺らす。

 

 「私は、トリオンファンに悪い事をしてしまいました」

 

 「......どのような?」

 

 「トリオンファンに、エルドリッジアタックを加えさせてしまいました。エルドリッジもトリオンファンが、俺から嫌な事をされていると思って攻撃してきたのでしょう。ただ、トリオンファンにも当たってしまい、被害者にしてしまいました」

 

 本当にあの時のことは、申し訳ない。

 

 エルドリッジアタックは自分だけがくらうならまだしも、あの時は近くにいたトリオンファンにまで被害を出してしまった。反省しなくてはならない。

 

 トリオンファンは目を合わせて話をしたかったらしく、その為に顔を近づけていただけだし、指揮官もそれを疑問に感じなかった。

 

 傍から見れば、無理やりトリオンファンが膝に座らされている様にも見えるし、よく膝に座ってくるエルドリッジは調子に乗った彼に怒って突撃してきたのだろう。

 

 指揮官の中であの時の出来事は、そう片がついていた。

 

 「「......」」

 

 「......?」

 

 「「......はあああああああああああぁぁぁぁ」」

 

(ため息!?)

 

 「指揮官にしつもんでーす」

 

 「露骨にやる気無くなったな!?」

 

 「一応聞くけどね。もし、エルドリッジさんが来なかったらトリオンファンに何してました?」

 

 「何してたって......」

 

 確か、あの時はトリオンファンがイタズラしてきた事にびっくりして。

 

 それから、顔を近づけて目を合わせてくるなり──そうそう、「アイリスに来てほしい」だとかなんとか。

 

 だから、

 

 「アイリスってどんな観光地があるのか聞こうとしてた、かな?」

 

 「「......」」

 

 「......?」

 

 「「......はあああああああああああぁぁぁぁ」」

 

(二回目っ!?)

 

 「残念だったねトリオンファン。どっちにしてもダメだったよ」

 

 「私が頑張った意味って......」

 

 その後、もう一回ため息。

 

 本棚の壁越しから漂いだした、どんよりと沈んだ空気を感じ取り、指揮官はたまらず口を開いていた。

 

 「すまん。何かマズイ事言ったか?」

 

 「いや、指揮官は何も悪くないです。何も悪くないからこそ、ダメかな......」

 

 そう、指揮官は何も悪くない。

 

 元々はと言えば、トリオンファンが指揮官にアピールをするような真似をしなければ、指揮官もエルドリッジにビリビリさせられることもなかったわけである。

 

 なのにトリオンファンの事は一切責めず、むしろ彼女に悪気を感じているのは見習いたいくらい素晴らしい精神なのだが、その答えはトリオンファンを女性として意識していないと同意義で......。

 

 つまりその......ショックと恥ずかしさからか、トリオンファンの口から魂が抜け出そうになっていた。

 

 いや、既に半分くらい抜け出してる。

 

 「(トリオンファンしっかり)」

 

 「(......うう)」

 

 分かってはいたが、コーヒー会でニューカッスルが言っていた通りだ。指揮官は、鈍い以前に恋そのものに自覚がない。

 

 それ故にだろう。とても無邪気で優しい人だし、そんな彼が二人は好きだ。

 

 ただ、優しさとは時に残酷なものなのである。

 

 トリオンファンの肩を揺さぶってあげる中、マランの返答にキョトンとしていた指揮官は、ためらい混じりの声を出しながら、言った。

 

 「何がダメなのか俺にはさっぱりなんだが。でも、実を言うとあの時は、ちょっと嬉しかったりもしたよ」

 

 「え?」

 

(あ、生き返った)

 

 トリオンファン復活。

 

 そんな事を知るはずもない指揮官は、少し照れた様子で続けた。

 

 「俺からしたらなんだけど、トリオンファンって凛々しくて真面目で高潔で礼儀正しくて、アイリスから単身でトリカゴにやって来てくれた、勇気のある凄く強い子だなって思ってたんだ」

 

 「そ、そんな......」

 

 一切の曇りのない指揮官の思いに、復活したトリオンファンの頬は、みるみるうちに紅く染め上がっていった。

 

 「謙遜しないでくれ。贔屓目なしにしてもトリオンファンには、毎日感謝してるんだ。夜間任務を担ってくれているのはもちろんだし。任務明けで眠たいだろうに、朝に会った時には、いつも笑顔で挨拶してくれるしさ。あれ、本当に嬉しいんだ。いつもありがとう」

 

 「......い、いえこちらこそ」

 

 そんな所を褒められるとは思わず、トリオンファンはくすぐったそうに自分の首を撫でた。

 

 挨拶は、高貴たる人間の基本だ。

 

 いや、人間としての基本だとトリオンファンは考えている。

 

 だからこそ、たとえ苦手な相手だろうと、疲れて眠ってしまいたい時だろうと自分からの挨拶は忘れないし、忘れたこともない。

 

 むしろ、指揮官に今言われて改めて意識したくらいだ。

 

 そんなトリオンファンの無意識の人間性を、指揮官は大きく評価してくれていた。

 

 自然と、トリオンファンの顔が綻んでいく。

 

(指揮官は、私の事をちゃんと見てくださっている......いえ)

 

 思えば、初めて会う前から指揮官はそうだ。

 

 元々トリオンファンがこのトリカゴに来たのは、生き別れた姉であるマランが参加を表明したからだった。

 

 姉と会える機会をくれただけでも指揮官には感謝しているが、家族ではあっても敵だったマランと打ち解けられるか。

 

 トリオンファンにとっては、それがずっと気がかりだった。

 

 そんなトリオンファンがトリカゴにてマランと再会を果たした時、姉は優しく微笑んで、言ってくれた。

 

 ──おかえり。ル・トリオンファン

 

 言葉では言い尽くせないほど嬉しかったのを、覚えている。

 

 後々聞いたのだが、マランもまた、トリオンファンとの再会を気にしていたらしい。その事を指揮官に相談した時、彼はこう言ってくれたそうだ。

 

『おかえり──家族なら、それだけでいいんじゃないか?』

 

 この時、トリオンファンは思った。

 

 彼の剣となり、盾となり、そしてこの身、この命を捧げようと。

 

 「だから、そんな気配り上手で頑張り屋なトリオンファンが俺に甘えて来てくれたのは、素直に嬉しかったよ......えっと、それでエルドリッジの件だけど許してくれるか?」

 

 「えっ、あっ、あぁ」

 

 指揮官の疑問のこもった発言で、トリオンファンは我に返る。

 

 そうだった。すっかり懺悔室が談話室になってしまっていて忘れていたが、指揮官はエルドリッジのビリビリにトリオンファンを巻き込んでしまったことを、詫びていたのだった。

 

 「(それはもちろん、許すに決まって──)」

 

 「指揮官、トリオンファンはまだ怒っているみたいですよ」

 

 「あー、やっぱりそうかあ。あれ痛いもんなあ」

 

 「(お、お姉様!?)」

 

 突如として横から覆いかぶさるマランの声に、トリオンファンは大きく目を見開いた。

 

 目線が合わさると、都合のいい天啓を得たマランはトリオンファンに小声で呼びかける。

 

 「(トリオンファン。ここはチャンスだよ!)」

 

 「(ちゃ、チャンス?)」

 

 「(気付いて。今の美味しい状況に!)」

 

 「(えっと? ............はっ!)」

 

 熱のこもったマランの瞳に感化され、トリオンファンはあの時と同じく、今置かれているチャンスに気がついてしまった。

 

 密室、しかも親愛なる姉と三人きり。

 

 そして実質的には何も悪くないのだが、指揮官はトリオンファンに許しを請うている状況。

 

 つまり、マランが言ってくれたように、ここで怒ったままの方が指揮官から何かトリオンファンやマランにとって、嬉しいお詫びをしてくれるのではないだろうか?

 

 指揮官からやってくれるのであれば、トリカゴ条約にも違反しない。

 

 「(という事ですわね!?)」

 

 「(だよ!)」

 

 この状況を活かさない手はない。

 

 決意が固まれば行動が早いのは、姉妹揃ってだった。

 

 「では、お困りの指揮官に、私が司祭役兼姉として助言を。指揮官、ここは何か行動で示すべきではないでしょうか。ですよね、トリオンファン?」

 

 「そ、そうですわね。エルドリッジさんの件だけでなく、毎日夜間任務をしている私とお姉様へのご褒美が欲しいですわ!」

 

 許す許さないというより、最早ただのお願いと化していた。

 

 「ご褒美......プリンじゃだめか?」

 

 悪くない。

 

 悪くないが、しかしそれだと前回のマランのように全員分作り出す結果になってしまう。

 

 二人が欲しいのは、自分達だけが得られるような、そんなご褒美。

 

 「も、もう一声!」

 

 「もう一声!? まあ、そうだな。俺も毎日毎日夜間任務の二人の心身は心配してたし」

 

 「「......」」

 

 そんな事まで気を配ってくれてたのかと、思わぬ飛び火で顔が熱くなるが、二人は指揮官からのご褒美を待つ。

 

 「あっ、そうだ」

 

 「「......!!」」

 

 「なんなら、任務終わりに、あの時のガスコーニュが言ってたみたいにハグでもしてやろうか? 毎日三十秒のハグは、健康にいいらしいぞ?」

 

 「「......」」

 

 「ははっ、なんてな。真に受けないでくれ。上司にこんな事言われても困るだけだよな」

 

 「「......」」

 

 軽くおどけてみせる指揮官。

 

 いや、むしろ

 

 二人にとっては願ってもない程のご褒美なのだった。

 

 *

 

 翌日、早朝のトリカゴの食堂にて。

 

 コーンスープに浸したトーストをかじりつく指揮官に、朝食がのったプレートを持ったシュペーは声をかけた。

 

 「おはよう指揮官。ここ、座ってもいいかな?」

 

 「ああ、もちろん。それと、おはよう。今日からしばらくはシュペーが秘書艦だったな」

 

 「うん、そうだよ。カブールさんみたいに仕事は早くないけど、頑張るね」

 

 「カブールが公務面で優秀すぎるだけだよ。シュペーだって俺からしたら、ちゃんと仕事をしてくれてるさ。助かってるよ」

 

 「う、うん。ありがとう」

 

 惜しみのない指揮官の褒め言葉に頬を染めながら、シュペーは指揮官の対面の席に腰を下ろした。

 

 「シュペーも俺と同じ朝ごはんなんだな。いつもは、シリアルみたいなやつじゃなかったか?」

 

 「ミューズリーだね。そうしよかなと思ったんだけど、ちょうど無くなっちゃったらしくて。次の配給まで待ってって饅頭さん達に言われたというか、ジェスチャーされた」

 

 自分がいつも食べているものを指揮官が覚えていてくれていたことが嬉しくて、つい饒舌に話してしまう。

 

 「へえ、それでか。あれ、でもシュペーくらいしか食べないはずなのに、無くなるものなのか?」

 

 「健康やダイエットに良いよってフォーミダブルさんやオーロラさんに言ったら、ハマったらしくて......」

 

 「いくら健康とダイエットによくても加減があるだろうに......」

 

 「あはは......」

 

 そんな会話をしながら、シュペーにとっては幸せな日常をご飯と共に噛み締めていると、

 

 「おはようございますわ。指揮官、シュペーさん」

 

 「おはようございます。指揮官、シュペーさん」

 

 夜間任務終わりのトリオンファンと珍しいことにマランが、朝日のように眩しい笑顔で声をかけてきた。

 

 たまにはそんな日もあるかと思い、シュペーは挨拶を返す。

 

 「おはよう、トリオンファンさん。マランさん」

 

 「おはよう二人共。えっと、もしかしてだけどマランもいるって事はご褒美か?」

 

 「はい!」

 

(ご褒美? 何故だろう。凄く嫌な予感がする......)

 

 そして、シュペーの女の勘は見事に適中した。

 

 「ほら、おいで」

 

 「わーい!」 「お邪魔しますわ!」

 

 「......えっ」

 

 一体、目の前で何を見せられているのだろうか?

 

 座ったままの指揮官が姉妹の二人に向き合って腕を広げるなり、そこに二人が飛び込んだ。

 

 言葉にするならそれで片付くが、要するに目前で指揮官が二人一緒にハグをした。

 

 「えへへ♡」 「うふふ♡」

 

(しかも凄く幸せそう!?)

 

 そのまま、永遠かと思わしき三十秒が経過すると、指揮官は二人の体を解放した。

 

 「えっと二人共、元気出たか? 別にシュペーの前でやらなくてもいいだろうに」

 

 「いえいえ、指揮官もお忙しいでしょうし、このタイミングが一番いいと判断したまでです」

 

 「ですわ。それに、シュペーさんなら怒らないでしょうから♪」

 

 「......!」

 

 流し目のトリオンファンと一瞬目が合い、シュペーは理解した。

 

 これは宣戦布告だ。

 

 シュペーなら何も言わないのもあるが、指揮官からの行動なのでトリカゴ条約違反ではないことを認識させるために、あえて事の一部始終を二人は見せつけてきたのだ。

 

(......これは、私もうかうかしてられないな)

 

 そう思いながら、シュペーはまだ湯気の立っているコーンスープを一気に飲み干した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 マランとトリオンファンが指揮官に恋心を気付かせようと頑張ってみた場合。

 

 指揮官が、毎朝ハグをしてくれるようになった。




指揮官の失われた恋心を気付かせるため、KAN-SEN達が頑張ってみるお話。

実際の懺悔はこんなんじゃないと思いますが、ごっこ遊びなので、大目に......
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