アズールレーン─トリカゴ基地の日々─   作:大和亀蔵

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饅頭からの言葉は通じない設定

実際のところはどうなのでしょうかね...


「愛するあなたに、イヴの林檎を」 シュペー&ガスコーニュの場合

「うひゃー、本部からの物資船って初めて見たピヨ。おっきいピヨぉ」

 

未だ清潔さの漂う作業帽を被った一匹の饅頭が見上げるのは、先程トリカゴの埠頭に停泊した物資船だった。

 

自分の何倍もの大きさを持ったその船を間近にして、思わず感嘆の声が漏れてしまう。

 

「ぼーっとするなよ新人。ピヨ」

 

「すっ、すみません隊長!」

 

新人と呼ばれた彼に声をかけたのは、どこか貫禄を感じさせるくたくたになった作業帽を被った饅頭こと隊長だった。

 

トリカゴ基地を最初期から支えてきた歴戦の饅頭として、新人をはじめに基地にいる饅頭からの信頼は厚い饅頭である。

 

「ふっ、そんな肩に力を入れなくても大丈夫だピヨ。持てる荷物も持てなくなるピヨ」

 

「は、はいっす! 本日は、物資搬送ですよねピヨ?」

 

「そうだピヨ。コンテナの中にある荷物を全部基地にへと運び出すだけの仕事だピヨ。一応、今日は俺と一緒に作業をしてもらうピヨ」

 

「あ、ありがとうございますピヨ!」

 

「礼はいらない、下手に仕事をされたら困るだけだからなピヨ。ほら、みんな動き始めたぞ。行くぞ新人」

 

「ぴ、ピヨ!」

 

威勢よく返事をしてから、新人は隊長の背中を追ってコンテナ置き場にへと足を運び、二人(二匹?)で物資を運び出していく。

 

「お、重い......」

 

「ふっ、いつか一人で持ってもらわなきゃ困るピヨ」

 

「ら、らじゃっすピヨ!」

 

隊長の言う通り、周りを見渡してみると確かに先輩達は皆一人で荷物を運んでいる。

 

今の新人には到底無理な光景ではあったが、いつかは自分も一人で持てるようになろうと胸に誓うのだった。

 

そのまま助けを借りながら、なんとか重い荷物を基地のドック近くにまで運ぶと、隊長が口を開いた。

 

「おっ、やけに確認の列が短いと思ったら、今日はガスコーニュちゃんだったかピヨ」

 

「ガスコーニュちゃんですかピヨ?」

 

新人はまだここに来て日が浅い。KAN-SENが所属していることはもちろん知ってはいるが、まだ顔と名前が一致していなかった。

 

「ほら、あそこ見てみろピヨ」

 

「うわあ! 片手を離さいで下さいピヨ!」

 

「はっはっは! すまんピヨ!」

 

すんでのところでバランスを立て直し、ほっと息を吐く。

 

それから、隊長が一瞬指さした先を新人は目線で追いかけた。

 

「......わぁ」

 

その先にいたのは女神だった。

 

「第一備蓄庫へ、次......第三整備室、次......食堂へ、次......その執務室への荷物はガスコーニュが預かる、次......」

 

深い海のように蒼い髪、黄金色に染まる無感動な双眸は太陽に透かした饅頭の羽とは比較にならないほど綺麗だ。

 

あまりに変化のない表情から、高価な人形を思わせるが、それでも彼女は僅かに艶やかな唇を動かし、言葉を発して生きている事を証明していた。

 

(綺麗な人だピヨぉ......)

 

リストを確認するガスコーニュの姿に新人が目を奪われている事に気が付いたのか、隊長は思わせぶりな声音で彼に問いかけた。

 

「ははぁん。新人、お前さてはガスコーニュちゃん推しだなピヨ」

 

「お、推しですかピヨ?」

 

「そう。ここの饅頭達は、それぞれの心の中で密かに応援している推しKAN-SENがいるんだピヨ。それが推しピヨ」

 

「な、なるほどですピヨ」

 

初めて聞く単語だったが、隊長の説明通りに習うなら新人にとってはガスコーニュが推しである事に間違いはなかった。

 

「よし。じゃあ俺達もさっさといくぞピヨ。ガスコーニュちゃんと話せるチャンスピヨ」

 

「は、はいっす!」

 

俄然やる気の湧いた新人は、ガスコーニュのいるところにまでえっちらほっちらと協力して荷物を運ぶ。

 

そして、ついに彼女前まで辿り着き、待望の時が──

 

「......第一備蓄庫、次」

 

一秒足らずで終了した。

 

「......」

 

「はっはっは! そう気を落とすな。ガスコーニュちゃんは、いつもあんな感じだからなピヨ。仕事がスムーズに進んで助かるピヨ」

 

「隊長ぉ」

 

新人が欲しているのは、そんな言葉ではなかった。

 

「まあまあ。あと八往復はするピヨ。一瞬のコミュニケーションを楽しんでいこうピヨ。俺たちは饅頭。こうして声をかけて貰えるだけでも、有難いことだピヨ」

 

「............そうですね! よーし頑張るぞ!」

 

「ふっ、その意気だピヨ」

 

ガスコーニュの言った第一備蓄庫にまで荷物を運ぶと、また二人はコンテナへ。

 

それから荷物を持ち運びながら、もう一度ガスコーニュのいる場所にまで向かう。

 

この繰り返しを何度かした後、コンテナへと歩いている最中、

 

「そういえば、隊長の推しKAN-SENは誰なんですかピヨ?」

 

「ピヨ? 俺か? 俺の推しKAN-SENは大鳳様だピヨ。あのゴミを見るような光のない濁った目がたまらないピヨぉ」

 

「そ、そうでしたかピヨ」

 

新人の中で若干彼への信頼が崩れさっていったが、隊長は気にせず続けた。

 

「ちなみに、一番人気はトリオンファンちゃんだピヨ。饅頭全員に優しいせいで、勘違いしている奴が続出してるピヨ」

 

「む、虚しい......二番人気は誰なんですかピヨ?」

 

「指揮官さんだピヨ」

 

「指揮官さんですかピヨ!?」

 

KAN-SENじゃないのもあるが隊長のくちばしから指揮官の名前が出てくるとは思わず、新人は大きく鳴いた。

 

「指揮官さんも俺たち全員に優しい。なんなら仕事を手伝ってくれたりもするピヨ。指揮官さんがもし小さくて可愛い女の子だったら、トリオンファンちゃんの不動の順位も危なかったかもしれないピヨ」

 

「ピヨぉ。指揮官さん、そんな良い人だったのですかピヨ」

 

「そりゃ、KAN-SEN全員に想われてるからなピヨ。納得の人の良さピヨ......ん?」

 

話をしているとコンテナにへと二人はまた戻ってきたが、そこに残されていたのはさっきまでの重たい荷物ではなく、新人一人でも運べそうな小さな荷物だった。

 

「あっ、これくらいなら一人でもいけそうですピヨ!」

 

「じゃあ最後に頑張ってこいピヨ!」

 

「はいっす!」

 

勢いよくガスコーニュの元へ走っていった新人を朗らかな笑みで送り出し、隊長はゆっくりとその後を追った。

 

仕事を終えて清々としているだろうと、トリカゴの裏口に辿り着くと......

 

「警告、静止行動を推奨。警告を聞き入れない場合、直ちに実力行使にへと移行する」

 

「あばばばばばばば」

 

どうやら、リストにない荷物を運び出そうとしていた新人に、ガスコーニュは艤装を展開して最終警告を促していた。

 

ガスコーニュの慈悲のない冷徹な目線に、新人はたまらず鳥肌をたたせ涙目で身震いをする事しか出来ていなかった。

 

(ど、どうするピヨ!?)

 

考えはするが、しかし隊長にはどうする事も出来ない。

 

KAN-SEN達には饅頭の言葉は通じないし、下手に暴れたらそれこそ実力行使されてしまう。

 

緊張が空気を包む中、ガスコーニュはゆっくりと荷物に貼られた送り状を読み上げる。

 

「トリカゴ。アドミラル・グラーフ・シュペー様。差出人、綾波......?」

 

「......!」

 

訝しんでみせたガスコーニュに、ビクンと新人は大袈裟に羽を揺らす。

 

もしかしたらこのままあの艦砲の上で丸焼きにされるのではないかと、死を悟った。

 

しかし一転、ガスコーニュは表情は変えずとも態度を柔和なものに変え、艤装を解除すると

 

「......問題はナシと判断。この荷物はガスコーニュが預かる。それと、饅頭への措置行動を謝罪する。ごめんなさい。最後に、饅頭達。お疲れ様」

 

それだけを言って、ガスコーニュは執務室に運ぶ荷物を腕に抱えると、姿を消した。

 

「だ、大丈夫かピヨ!?」

 

すぐ様、隊長は新人の元にへと駆け寄り、彼の身を案じる。

 

少し運が悪かった。恐らく、リストの完成後に追加で荷物が入ってしまい、それを偶然彼が運んでしまったのだろう。

 

トリオンファンならともかく、ガスコーニュは不審物を見つけるとああいう態度をとる。こればかりは、彼女も仕事なので仕方ない。

 

推しにあんな態度をされるなんて、隊長ならご褒美だが、新人には辛かったに違いないだろう。

 

そう思ったのだったが......

 

「ガスコーニュちゃんのあの目、た、たまらないですピヨぉ......」

 

「......」

 

新人もわりかし、そっちの素質がありそうなのだった。

 

この後、酸素コーラで乾杯する二人の姿が見かけられたらしい。

 

*

 

「お疲れ様指揮官。ガスコーニュさん。はい、コーヒー」

 

「............ありがとう」

 

「ありがとう。それと、シュペーもお疲れ様。ガスコーニュもありがとうな。今日は休みなのに、手伝ってくれて助かったよ。量が凄かったのに、いつもよりも早く終わったし」

 

「主の補佐をするのが、ガスコーニュの使命。加えて、シュペーとの私的な約束もあったためだと主張」

 

「そっか、それでもありがとう」

 

「......うん」

 

(満更でもなさそう)

 

指揮官に頭を撫でられて淡く頬を染めるガスコーニュを見て、シュペーはそう思った。

 

海が波光によって黄昏色に染まる頃。

 

執務室に積み上げられていた書類の山が無くなり、代わりに茶色い木机の全貌が昨日ぶりに姿を現していた。

 

それに手を貸したのは秘書艦であるシュペーはもちろん、お昼終わりと同時に、暇を持て余していたガスコーニュも仕事を手伝うと来訪してきた。

 

ガスコーニュの休息を執務で邪魔するのは悪いと思い、最初は指揮官も断ったのだが、どうやらガスコーニュには執務後にシュペーとの約束があったらしい。

 

「それで、ガスコーニュとシュペーは、これからゲームをするんだったか?」

 

「肯定」

 

「うん。綾波がオススメしてくれたゲームがこの前届いたから、一緒にやろうって」

 

「綾波? 綾波って、KAN-SENのか?」

 

シュペーの意外な交友関係が明らかになり、指揮官は思わず重桜にいる鬼神の異名を持つ少女の名を半音高く呟いた。

 

「そうだよ。やっぱり知り合い?」

 

「重桜のKAN-SENなら、会ったことない方が少ないからな。もちろん知ってるよ。どうやって知り合ったんだ?」

 

「同じゲームをしてて、そこからオンラインチャットで。ガスコーニュさんに勝つくらいだったから、思わず声をかけたの」

 

「へえそんな事が。というか、ガスコーニュってそんなにゲーム上手いのか?」

 

「ガスコーニュ自身では判断不可能なため、返答しかねる」

 

「私からしたら、滅茶苦茶上手だと思うよ。ガスコーニュさんってどのゲームでもミスがないというか。ゲームなんて、突き詰めたらタイミングよくボタン押すだけだから......」

 

「ああ、そう言われると確かに納得だ。勝手な想像だけど、音ゲーとか凄そう」

 

「実際凄いよ。音ゲーアプリのハイスコアランキング、大体ガスコーニュさんの名前で埋まってるし」

 

「まじか」

 

「反射神経機能のテストとして、利用しているにすぎない。指示通りに動いているだけだと主張する」

 

ガスコーニュはそう言ってみせるが、その指示通りがゲームにおいては一番難しい。

 

「これに勝てた綾波何もんなんだ......」

 

「音楽ゲームはともかく、格闘ゲームならって話だよ。ガスコーニュさん、正確な操作をするから凄く強いんだけど、読み合いとかも含めると」

 

「綾波の方が強いわけか。奥が深いな。ちなみに、綾波からどんなゲームを借りたんだ?」

 

指揮官のその言葉に、シュペーは僅かに眉毛をあげた。

 

今すぐ叫びそうな彼女の言葉を代弁するなら「その言葉を待っていたよ!」である。

 

さすがに声を上げるわけにはいかないので、持っていたマグカップを一度傾け、息を吐いてから

 

「気になる?」

 

「もちろん。綾波がシュペーとガスコーニュのためにわざわざ送ってきたんだろ? 気にもなるさ」

 

「じゃあよかったらさ。指揮官もどう?」

 

「どうって?」

 

「これから、一緒にやらないかって意味。気になるんでしょ?」

 

後半少し早口になってしまった気もするが、大丈夫。違和感なくちゃんと誘えた。

 

あとは、彼が頷いてくれるか......

 

「そうだな。ただ、俺ってやるより見てる方が楽しい人間なんだけど、それでもいいって言うなら」

 

「全然大丈夫だよ。ゲームの楽しみ方なんて、人それぞれだから」

 

「なら、お邪魔させてもらおうかな」

 

(ふぅ、よかった)

 

作戦の第一ステップが無事に進行出来たことに、シュペーは胸を撫で下ろすと、ガスコーニュにアイコンタクトを送った。

 

「ガスコーニュも問題ない。主、ゲームをしたいならシュペーの部屋への移動を提案」

 

「とりあえず、飯食ってから行くとするよ。さすがにお腹が空いちゃってさ」

 

「あっ、私も!」

 

危ない。部屋に誘う事ばかり考えていて、すっかりこのイベントの到来を忘れていた。

 

咄嗟にシュペーは時計を確認した。

 

(この時間なら......)

 

他の面々は、まだ任務中で食堂には来ないため目撃される心配はない。

 

マランとトリオンファンの二人とすれ違う可能性はあるかもしれないが、問題ないだろう。

 

「主、ガスコーニュも」

 

「なら、コーヒー飲んだら三人で食堂行くか。にしても、綾波がオススメするゲームかあ。楽しみだなあ」

 

「「......」」

 

ガスコーニュがどうなのかは分からないが、期待にココロを弾ませているのは、シュペーも同じだった。

 

(指揮官は誰を選ぶのかな)

 

ゲームの多くには、選択が迫られる事がある。

 

基本的には反射的なものが多い。

 

アクションゲーム、シューティング、格闘ゲーム、音楽ゲーム......

 

落ち着いて考えられるものとしてはRPGやボードゲームがあるわけだが、

 

恋愛シュミレーションゲームもまた、選択を迫られる事に変わりはなかった。

 

女の子を選ぶという選択が。

 

*

 

Ayanamiさんからの新着メッセージがあります

 

『どうですか? うまくいきましたか?』

 

─誘うとこまではうまくいったよ。ありがとう

 

『それは重畳です。首尾よく終わる事を祈っています』

 

─うん。

 

─結果はまた連絡するね

 

『らじゃなみです』

 

─よろしゅペだよ

 

─そういえば

 

『はい?』

 

─恋愛ゲームなのは聞いてるけど、なんでゲームのパッケージ剥がして送ってきたの?

 

─それに、デモもやるなって

 

『やってみてのお楽しみだからです』

 

─???

 

『ふふふ、です』

 

*

 

指揮官にとってアドミラル・グラーフ・シュペーとガスコーニュ......いや、二人だけじゃない。

 

トリカゴの面々が執務終了後にどのようにして過ごしているのかは、よく知らないというのが本音である。

 

というのも、指揮官が私室に入るとそれっきりはパタンとKAN-SEN達との接触はなくなってしまうからだ。

 

よくよく考えてみれば、特別不思議な事でもない。指揮官とKAN-SEN。上司と部下。仕事が終わった後の私的な時間は、好きにやらせて欲しいと考えるのは当たり前だ。

 

なお、指揮官大好きなKAN-SEN達が執務後に彼に会いにこないのは──

 

トリカゴ条約第二条 指揮官にも一人の時間が必要なため、安寧な休息のためにも、執務終了後、指揮官の私室には最低限訪れないこと。

 

──エルドリッジや大鳳でさえも完璧に遵守しているこの条約公文の存在があるためなのだが、指揮官はもちろん知らない。

 

だから、こうして執務の後に誰かに部屋に遊びに行くだなんていうのも、実はトリカゴ着任以来初めての事だったりする。

 

つまり、ウキウキしているというやつだ。

 

その表れからか食事の後、指揮官は落ち着かない様子でキョロキョロとシュペーの部屋の隅々を見回していた。

 

部屋の広さや間取りは彼の私室と同じ、なんなら備え付けなので家具も同じだが、その配置や置かれている小物に至っては全然違う。

 

テレビの向きやパソコン、小型冷蔵庫の位置からして、大体の行動がベットの上で終わるようになっているなと指揮官は思った。

 

「あ、あまりジロジロ見ないで、掃除はしてるけど恥ずかしいから」

 

「悪い、俺や大鳳の部屋とは違うなと思って」

 

「大鳳さんの部屋に入ったことあるの?」

 

「ちょっとだけな。連絡というか、呼び出しで」

 

「......他に入ったことある人の部屋はある?」

 

「お茶会に誘われて、ロイヤルの子達なら全員あるよ。でも、こうして遊びが理由で入るのはシュペーが初めてだ」

 

「ふ、ふぅん」

 

何はともあれ指揮官のハジメテに自分がなれたことに、シュペーは小さくガッツポーズを作った。

 

「すまん、パッと見たところ椅子がないんだけど、どこに座ればいい?」

 

「主、ゲームのプレイにあたり、ベッドに座る事が一番能率的だとガスコーニュは主張する」

 

「そうだけど、いいのかな」

 

確かにガスコーニュの言う通り、ベッドに座ればテレビが一番見やすい。

 

むしろ、ベッドに座らなければテレビが見えないようになっているような気さえする。

 

(......気のせいか)

 

そもそも、ここはシュペーの部屋だ。シュペーが一番過ごしやすいようになってて当然、何も疑問に思うことは無い。

 

ただ、ベッドはかなり個人的なスペース。そうやすやすと腰を下ろしていいものなのか。

 

「いいよ。ベッドに座ってて」

 

いいらしい。

 

「...なら、お言葉に甘えさせてもらうか」

 

そう言って指揮官はベッドの上に座った。

 

シュペーもまた、テレビの画面を見るために指揮官の右隣に腰を下ろした。

 

「ふふっ。全然気にしないで。ガスコーニュさん、ソフトはもう入ってるから電源つけてくれる?」

 

「了解した」

 

シュペーの指示を聞くとガスコーニュは手際よくゲーム機とテレビの電源をつけ、コントローラーを指揮官に手渡すと、指揮官の左隣に座った。

 

両手にKAN-SEN、世の男性なら羨ましい光景だが指揮官はそんな事は気にしない。

 

むしろ気になるのは、

 

「え、自然とコントローラー渡されたけど俺がやるの? 全然ゲーム上手くないぞ俺?」

 

「問題ない、客人をもてなすのは基本」

 

「ガスコーニュも客人なような......」

 

「まあまあ、ガスコーニュさんなりの思いやりだから」

 

「それも、そうかぁ......?」

 

一応納得したようで、指揮官はコントローラーを握ると目線をまだ暗転するテレビ画面にへと向けた。

 

(よし)

 

作戦の第二ステップが完了し、シュペーはほっとしたかのように、近くにある冷蔵庫から水の入ったペットボトルを出すとそれを飲んだ。

 

指揮官を誘うまでが第一ステップ、こうして指揮官をベッドに座らせてゲームをやってもらうまでが第二ステップ、ついでに隣に座るのも。

 

ここまで来たらもう作戦完了と言ってもいい。

 

口を離して小さく息を吐くと、『あかしまんじゅう!』と制作会社らしき可愛らしい文字が映る。

 

続いて、いかにも溌剌とした曲とともに、

 

『KAN-SENマスター! シャイニースターシアター!』

 

と、タイトルらしきキラキラした文字が飛び出してきた。

 

やたら音符とハートも多い。

 

「......どういったゲームだこれ? 音ゲーか?」

 

「主、続行を提案」

 

「あっはい」

 

続けろとの事なので、ボタンを押してゲームを進めていく。

 

次いで名前を打ち込む画面となるが、面倒なのでデフォルトネームで決定。

 

主人公のモノローグが始まり、二人の確認を取りながら物語を読み進めていくと、指揮官も何となくこのゲームの概要が掴めてきた。

 

「ええっと。主人公はアイドルのプロデューサーで、これから羽ばたくアイドルの雛を一人選んで、立派なトップアイドルにしなくちゃいけないのか。アイドル育成ゲームか、初めてだな」

 

「私も初めて。次の画面でプロデュースする女の子が選べるみたいだよ」

 

シュペーの言う通り、ボタンを押して次に進むと、これからプロデュースする女の子が一斉に映し出される。

 

「......えっ」 「......」

 

候補となる女の子達の姿を見るなり、シュペーは一驚を。ガスコーニュは無言を貫いた。

 

「あれ、十人くらいいるのに、最初は二人しか選べないのか。えっと、こっちはユペーちゃんで、こっちはコーニュちゃんか。あ、プロフィールも見られる。どれどれ」

 

ユペー

 

『自分に自信が持てない女の子。過保護な姉がおり、アイドルになったのも姉が勝手に書類を出したから。それでも、自分が誰かに認められるチャンスかもしれないと、僅かに期待を抱いている』

 

「ふうん、なるほど」

 

ふむふむと納得する指揮官だったが、横で見ているシュペーの心情は穏やかなものではなかった。

 

(すごい私に似てる!?)

 

過保護な姉や、自分に自信が持てないのはもちろんだが、何より似ているのはその見た目。

 

着込んでいる服は白色だが、それを黒にして、反対に髪の毛は、メッシュの赤はそのままに地毛らしき黒髪を白く染めれば、隣のシュペーちゃんの完成である。

 

シュペーは、綾波がゲームについて詳しく語らなかった理由をそれとなく理解した。

 

もちろん、気づいているのはガスコーニュとシュペーだけ、異論をあげることもなく、指揮官はコーニュのプロフィールを読み始めた。

 

コーニュ

 

『人ではなく、実は愛玩用アンドロイド。機体番号を含めた名前はGS-コーニュ。カンジョウモジュールが上手く機能していないが、その歌声は折り紙つき。あなたは、彼女に人としてのカンジョウを与えることが出来るでしょうか?』

 

(こっちも似てるなあっ!?)

 

声にならない叫びをあげる。

 

アンドロイドという設定(実際のガスコーニュはアンドロイドではない)やカンジョウモジュールが上手く機能していない背景、それに見た目は髪が白髪になっただけのガスコーニュと言っても差し支えない。

 

(どっちを選ぶんだろう指揮官?)

 

自ずと、心拍が速度をあげる。

 

真剣に悩む指揮官の横顔を見つめながら、シュペーは朧気に考えた。

 

元々はこの作戦、通称『ギャルゲーをプレイさせて指揮官の好みの女の子を知ろう作戦』は文字通り、指揮官の女性の好みを知るために、ついでにあわよくば、恋心を持ってもらうために決行されたもの。

 

彼から女性の好みを聞き出すことは容易ではない。コーヒー会でのエルドリッジの証言から、すでにその事実を得たシュペーは間接的な手段をとることに舵を切った。

 

その結果がこれだ。

 

ギャルゲー、すなわち恋愛シュミレーションゲームはエンディングに辿り着くために、必ず登場するヒロインの誰か一人を選んで攻略しなければならない。

 

すなわち、指揮官が攻略しようとする女の子は少なくとも、彼の好みによって選ばれた事にならないだろうか。なると言ってほしい。

 

次元が違うとはいえ、この好みをそれとなく参考にしていけば、指揮官の理想の女の子となれるわけだ。そしたらきっと......

 

ただ、シュペーは恋愛シュミレーションゲームをプレイした事がなく、実態をよく知らない。その旨を電子の海で出会った友達、綾波に相談したらゲームを貸してくれる事になったのだ。

 

まさかガスコーニュにバレるとは思ってはいなかったが、作戦にアクシデントは付き物。秘密にしてもらう代わりに、協力していく事となった。

 

なお、ガスコーニュとしては指揮官と一緒にゲームがしたかっただけなのだが。

 

そして今。色々とゲームに詳しい綾波のお墨付きなら変なものではないだろうと信頼はしていたが、まさかこうくるとは......。

 

もし、ここで指揮官がユペーを選べば指揮官はシュペーが、コーニュを選べばガスコーニュの方がそれとなく好みという事になる。

 

指揮官は、一体どちらを攻略したいと思うのか!?

 

「......」

 

シュペーにとっては緊張の瞬間。

 

そして、

 

「んー、二人はどっちがいい?」

 

「えっ」

 

第三の選択肢を、指揮官は提示した。

 

「元々は二人でやるつもりのゲームだったんだろ? 俺が勝手にやるのも悪いからさ」

 

「あぁー」

 

そう来るとは考えてなかった。

 

どうしよう? と、指揮官に悟られないようにアイコンタクトをガスコーニュへとおくる。

 

即座に一瞥してから、ガスコーニュは口を開いた。

 

「主の意思を尊重する。ガスコーニュが着目するのは、後にアンロックされるキャラクターだと言表」

 

上手い。ゲームへの興味がある事を主張しつつも、あくまで最初は指揮官に選ばせるというスタンス。

 

さすがガスコーニュ、こういう時にも冷静な判断には頭が上がらない。

 

有難く、シュペーもガスコーニュが用意した即席船に乗り込んだ。

 

「わ、私もそうなんだ! だから、最初は指揮官が選んでいいよ!」

 

「そうなのか、じゃあ......ユペーちゃんにするかな」

指揮官にしては珍しく、躊躇なくユペーにカーソルを合わせるとボタンを押した。

 

「! へ、へえ! 指揮官はコーニュちゃんより、ユペーちゃんの方が好きなんだね」

 

決して自分が選ばれたわけではないのだが、嬉しげにシュペーは口を動かしていた。

 

「好きというか、うーん直感かな。最初に目に入ったし、ティンときたってやつ?」

 

(勘、かあ......)

 

髪が黒い子が好きとでも言ってくれた方が嬉しかった。

 

そしたら、髪を染めたのに。

 

「ふぅん。その......指揮官はトリカゴに私が来た時もティンときた?」

 

一体何を口走っているのだろうとシュペーは自分でも思ったが、折角の機会なので聞いておきたかった。

 

ティンとこなかったと言われたら、これから頑張ろうと思うだけだし、きたと言われれば、嬉しい。それに尽きる。

 

そして指揮官は、嬉しい言葉をこぼしてくれた。

 

「もちろんティンときたさ」

 

「ほ、ほんと?」

 

「ああ、ほんとだよ。顔合わせ会の時、あのかっこいい艤装をつけたまま来ただろ? すぐにわかったよ。あの時、案内してくれた鉄血の子だって」

 

「ふふっ、よかった」

 

本当によかった。なるべく指揮官に思い出してもらおうと艤装をつけたまま出席したのが、功を奏したようだ。

 

ロイヤルの人達には、白い目で見られたけど。今は仲良いので問題なし。

 

「ガスコーニュもな。開発艦の君が来てくれて嬉しかったよ。ヴィシアも落ち着いたばかりだったのに、本当にありがとう」

 

「......ガスコーニュ、記憶領域への永久保存を完了」

 

「お、おう?」

 

(かなり喜んでるね)

 

ともかく、ゲームはユペーちゃんをプロデュースする事で決まり、チュートリアルが進行する。

 

一通り終わると、これからの行動を選ぶことになった。

 

「なるほど。期間が決まっていて、そこまでにキュート、ダンス、エンジェルとかの値を伸ばしながら、一定のファン数を獲得したらいいのか」

 

「イベントの時に選ぶ選択肢でも、数値が伸びたりするみたいだね」

 

「質問。何故ゲームにおいても、相手のカンジョウを考える必要があるのか。理解に困難を認む」

 

「ガスコーニュさん、RPGとかよりアクションゲームの方が好きだもんね」

 

「まあ、そうだな。こういうのが楽しいって人もいるんだよ。運命とは受け入れる前に、選び出すものって言うだろ? 反射神経の訓練のように、コミュニケーションの訓練と考えてくれ」

 

「......意思疎通においての確かな成果となると理解。ガスコーニュ、静観行動を継続する」

 

そこまで真面目に考える必要もないのだが、ガスコーニュが黙って見てると言うので、それ以上の言及は避けておく。

 

「さて、とりあえずファンが一定数いないと大会に参加出来ないみたいだし、レッスンよりもファン獲得をしようかな」

 

指揮官プロデューサー(ややこしい)の方針が決まり、レッスンではなく、ファンが沢山獲得できるらしいインタビューの項目を選ぶ。

 

すると、画面が暗転し

 

「あっ、イベントみたいだよ」

 

「早速か」

 

不安そうな表情をしたユペーちゃんが、映し出された。

 

『インタビュー中に緊張して上手く話すことが出来なくて......やっぱり、私にアイドルなんて』

 

─(確かに、話し方はまだまだぎこちなかった)

 

①心配しないで、大丈夫だよ

②やる気あるのか!?

③......

 

突然選択肢が表示され、15秒ほどのカウントダウンがはじまった。

 

「うーん......」

 

「あれ、そんなに悩むことある?」

 

シュペーとしては①以外ありえないと思うのだが、指揮官は顎に手を置いて考え込みはじめる。

 

「いや、ユペーちゃんは不安に感じてるわけだろ? そこで心配しないではちょっとなあ。ちゃんと解決案を出さないと......それを考えると、少し怒るのもありだな」

 

「そうかもしれないけど」

 

選択肢はその三つしかないのだから、どれかを選ばないといけないわけで......

 

「どれも納得いかないし、①と②の同時押しでいってみるか。そしたら中間くらいの結果になるかもしれない」

 

「えっ、それありなの?」

 

「なしなのかも、わからないぞ」

 

まさかの第四の選択肢を、指揮官はとった。

 

①と②に当てられていた、四角ボタンと三角ボタンを同時押しすると、

 

─(厳しい事を言ってしまうけど、ちゃんと感想を言って答えを見つけていこう)

 

『えっ、全然ダメだったですか............それでもちゃんと内容はあった? 話し方の練習をしようですか? う、うん! プロデューサーさんがそう言うなら!』

 

パーフェクトコミュニケーション!

 

全ステータス、親愛度が上がりました!

 

「え、えぇ......」

 

まさかの大正解だった。

 

「ちゃんと解決策も提示するのは、偉いなあ主人公。けど、同時押しがいけるなら中々難易度高そうだ」

 

(難易度どうこうで片付けていいのかな......)

 

正直に言うと、理不尽な気が。

 

初見でボタン同時押しの発想に辿り着ける人は、そういないはず。

 

どこか腑に落ちないが、指揮官は楽しそうなので黙っておくことにした。

 

その後も指揮官は──

 

「これは③かなあ。ユペーちゃん、おにぎりの具だとツナマヨコーン好きそう」

 

(あ、あってる)

 

──事あるイベント毎に、

 

「ここは②と③の同時押しに見せかけての。①かな。家族の事は、何があっても拒んじゃダメだ」

 

「それは確かに」

 

パーフェクトコミュニケーションを出し、

 

「服に虫が入ったのなら取ってあげないと、背中だったか。というか、服の中に虫が入るとかあるか?」

 

(多分ここ、タッチのチャンス。どこがとは言わないけど......)

 

「よし、楽しく話せたな」

 

ユペーちゃんとの絆を深めていった。

 

「ライブパートは音ゲーなのか!? しかも結構難しいな!?」

 

「主、ガスコーニュに任せて」

 

「おお! 頼む!」

 

(パーフェクトフルコンボだドン)

 

 

──そして、ユペーとの物語は佳境を迎える。

 

 

 

『私は、両親を殺めてしまったんだよ。なのに、姉ちゃんまで失ったら、どうしたらいいの!?』

 

画面には、病院の屋上で夕日を背景に涙を流すユペーの一枚絵が映し出されていた。

 

こうなった経緯としては、次の大会で優勝すればトップアイドルといった直前に、彼女の姉が車に轢かれて昏睡状態に陥ってしまったというものだ。

 

実は、ここまでのイベントにてユペーの両親が亡くなっていることは明らかになっていた。そのせいで姉が過保護というか、シスコンだということも。

 

しかし、まさかその両親を殺したのがユペー自身だったとは思わなかった。

 

彼女にも悪意があったわけじゃない。様々な因果が絡み合ってしまい、ユペーの行動がきっかけで彼女の両親は命を落とす結果となってしまった。

 

そんな彼女にとって、姉の存在は大きかったようだ。親殺しの噂が知れ渡ると、親戚や学校の皆からは避けられるようになったが、姉だけは味方であり続けてくれた。

 

姉が勝手に事務所に書類を出してアイドルにされたのには驚いたが、ここまで支え続けてきてくれた姉のためになるならと、ユペーは指揮官プロデューサーと一緒に頑張ってきた。

 

そして、光り輝くステージは目の前にあった。

 

はずだった。

 

『ねえ、プロデューサーさんは姉ちゃんと違って、ずっとそばにいてくれるよね!? 私を、置いていかないよね?』

 

①ずっとそばにいる

②首を横に振る

 

「......」

 

恐らく、最後の選択肢。

 

ここでの選択が、エンディングの善し悪しに直結するとみていいだろう。

 

そんな大事な場面で、指揮官は黙り込んでしまっていた。

 

「押さないの?」

 

「難しいな。もし①を選んで、ユペーにとっての逃げ場所になったとしても、彼女はずっと変わらないままだ。心の拠り所を変えただけに過ぎない」

 

「......でも、ここで②はないよ」

 

「俺もそれは同感だ。かといって、同時押しも違う気がするんだよなあ」

 

「でも、何かボタンは押さなきゃいけないよ。カウントダウンもはじまってるし」

 

「うーん、それもそうなんだが」

 

何故だろうか、どちらを押してもユペーが幸せになるビジョンが指揮官には見えなかった。

 

同時押しをしても、主人公が中途半端に答えてそのまま飛び降り自殺でもしそうな気がする。

 

(......考えるんだ)

 

何かあるはずだ、画面に明記されていない。そして、同時押しでもないもう一つの選択肢が。

 

「......何も、押さない」

 

「「!?」」

 

ここまで沈黙を保っていたガスコーニュが、小さく呟いてみせる。

 

驚愕する二人をよそに、ガスコーニュは続けた。

 

「主、ガスコーニュは何も押さない、を提案する。この選択肢ではユペーを救えないと判断」

 

「......」

 

なるほど、とシュペーは思った。

 

確かにまだ『何も押さない』選択肢は、取ったことがない。

 

カウントダウンのせいで、何かを押さなければならないと思い込んでいた。もしかしたら......

 

しかし、本当にその選択肢があるのかという、疑問もわいてくる。

 

それでも、指揮官は

 

「......いや、きっとそうだ。俺はガスコーニュを信じるよ」

 

「「......」」

 

三人顔を合わせて頷き合う。

 

ゲームをクリアしたいのもあるが、ユペーちゃんが幸せになってくれることを三人はただただ願っていた。

 

そして、

 

3、2、1......0

 

 

 

─〜♪

 

─(俺は歌を歌った)

 

─(ユペーと一緒に歩んできた。彼女の歌の一節を)

 

『......』

 

─(彼女は何も言わない)

 

─(それでも俺は、伝えないといけない)

 

─(彼女のプロデューサーとして!)

 

─歌おう、ユペー。君がお姉さんにできる恩返しはきっと、それじゃないか?

 

『......』

 

─お姉さんが言ってたよ。ユペーにはユペーを必要としてくれる人達がいることを知ってほしいって。そのために、アイドルになってもらったんだって

 

『姉ちゃん......』

 

─今のユペーなら、君を必要としてくれている人達がいることはわかるはずだ。そしていつか、君だけの力で羽ばたけるまで、俺がずっと傍にいるよ

 

『......うん』

 

─そう言うとユペーは、涙を拭って笑ってみせた。

 

─今の彼女ならきっと、大丈夫なはずだ。

 

全ステータス、親愛度が上がりました!

 

トロフィーを獲得しました!『過去と涙とこれからと』

 

──────

 

────

 

──

 

Ayanamiさんからの新着メッセージがあります

 

『い、一周目でトゥルーエンディングてまじですか』

 

─まじだよ

 

─トップアイドルの結果発表と同時にお姉さんの目が覚めて

 

─ユペーちゃんがプロデューサーに告白しようとしたところで、お姉さんが割り込んできておしまい

 

─だよね?

 

『ですです』

 

『そのエンディングにいくのには、コミュオールパーフェクト必須なんですけど』

 

『同時押しとか、気づけたのですか?』

 

─指揮官、初手同時押ししてたよ...

 

『......』

 

『えっと、最後のところも何も押さなかったのですか?』

 

─押さなかったよ

 

─押してたらどうなってたの?

 

『その場で飛び降りしてお姉さんも目覚めないバッドエンドです』

 

『綾波も最初は飛び降りられたです』

 

─そ、そうなんだ

 

『理不尽ゲーで有名なので、指揮官にも苦しんでほしかったのに』

 

─やっぱりか!

 

『それで、指揮官はユペーちゃんにドキドキしてましたか?』

 

─あっ

 

─ダメだったかな

 

─普通にユペーちゃんのエンディング見られて喜んでた

 

─というか、主人公の方に感情移入してた気もする...

 

『やっぱりですか』

 

─やっぱり?

 

『いやゲーム的に、そうかなと』

 

『あんまりギャルゲーぽくないやつでしたし』

 

─そうなの?

 

『です』

 

『正直、シュペーに驚いてほしくて送りました』

 

─めちゃびっくりしたよ

 

─よく見つけてきたね

 

『ふふふです』

 

『それに、パンチラとかないやつにしましたので』

 

─言われてみれば確かになかったねそういうの

 

─タッチのとこくらい?

 

『エロはダメです』

 

『指揮官、どこタッチしてました?』

 

─普通に虫取ってあげてた

 

『流石です』

 

『いや、残念です?』

 

『その調子ならバッドエンドなしで、エルちゃんまで辿り着けるかもです』

 

─エルちゃん?

 

『全員のトゥルー見たあとに攻略できる隠しキャラです』

 

『ぜひやって欲しいです』

 

─へえ

 

─指揮官に言ってみる

 

『そうしてくださいです』

 

『すみません、これから哨戒なのでこのへんで』

 

─あ、そうだったの。ごめんね

 

─ありがとう

 

『楽しんでもらえたのなら、なによりです』

 

『では』

 

「ふぅ」

 

バイバイと綾波からスタンプが送られたのを確認すると、シュペーはスマホの画面を切った。

 

ゲーム会から翌日の朝、ハッピーエンドを見られて満足した三人はそれから普通にお喋りをして、後に指揮官が明日も仕事があるからと解散した。

 

密室、女性が二人。それでも指揮官は仕事。

 

「楽しんではいたね。うん」

 

綾波に指摘されるまですっかり忘れていたが、そう言えば、指揮官の好みの女の子を知りたくてゲームを貸してもらったのだった。

 

見た目はほとんど自分、もう一キャラはガスコーニュだったが。

 

「私とガスコーニュさんなら、私......でもない」

 

ユペーを選んだのは勘だと言っていたし、指揮官は見た目で女の子は決めないらしい。

 

嬉しいような、残念なような。

 

ユペー攻略後に解放されたキャラクターはどこかヒッパーに似ていたような。

 

「はあ」

 

結局、得られたものは特になかった。夜寝る時にベッドから指揮官の匂いがして、ちょっと悶々......嬉しかったくらいか。

 

ため息混じりに、朝ごはんのミューズリーを食べていると、

 

「シュペー。おはよう」

 

指揮官が声をかけてきた。

 

「おはよう指揮官......えっと、大鳳さんも」

 

ついでに、なぜか機嫌が悪そうな大鳳も横にいる。

 

「ええ。おはようございます」

 

キッと、蛇のような目付きで大鳳に鋭く睨まれた。

 

恐らく、指揮官の匂いか何かで昨晩シュペーが一緒にいたことが分かっているのだろう。

 

何やら黒いオーラを出す大鳳だったが、指揮官には悟られないように発せられていた。

 

「そうだシュペー。今日もガスコーニュと集まったりするか?」

 

「いや、ないよ。なんで?」

 

「集まるなら、また夜にお邪魔しようかと思って」

 

「よ、よる!? ま、また!?」

 

過敏にそれっぽいワードに食いつく大鳳。

 

傍から見てるシュペーは、ちょっと笑ってしまいそうだった。

 

「うん、またやろう。ガスコーニュさんもきっと喜ぶよ」

 

「や、ヤる!? ううっ......」

 

「大鳳!? 急に倒れて大丈夫か!? 大鳳!?」

 

「ふふっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

シュペーとガスコーニュが指揮官に恋心を気付かせようと頑張ってみた場合。

 

 時々、指揮官が部屋に遊びに来てくれるようになった。

 

 




要するにアイ〇ス(シャニミリデレごちゃ混ぜ)する話。歌うところはデトロ〇トのやつイメージ。

最初はときメ〇で書いてたのですが、思ったよりキャラを出す必要性が出てきてしまって、なくなく消しました(

ダイドーちゃんも発表されましたね、ロイヤルの新たなヤベー奴になるのかと心配してますが、杞憂である事を祈ります(
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