ハイスクールD×D 雷帝への道程   作:ユキアン

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使い魔の森ってかなり広いんだな

木場をロン・ベルクに預けてから2年程の時間が流れた。その間に色々な事があった。本当に色々な事が。軽い出来事から話そう。

 

まずは、眷属が4名増えた。騎士としてレイフォン・アルセイフと桜咲刹那、兵士として犬上小太郎、そして変異の駒を使用した僧侶の桃地美雪だ。全員、オレが人間界で運営している孤児院の子供だ。他のハーフの子供達よりも事情が事情な為に眷属にして保護している形だ。特に美雪は危険もある為に常に傍に置いている。

 

美雪は神器持ちだったのだが、所有していた神器が未確認の上に神滅具に数えられても不思議ではない代物だった。美雪はそれに“リィンロッド”と名付けていたが、能力はかわいらしくもない。その能力は所有者を守る自動防御障壁機能と浮遊能力、そして想像を創造する能力、簡単に言えばどんな物でも作り出す事が出来る創造系の頂点に位置する代物だ。

 

神滅具の中にはイメージ通りの生き物を産み出せる魔獣創造(アナイアレイション・メーカー)があるが、リィンロッドはその上位に当たる。イメージさえすればどんな物でも産み出せるのだから。

 

そして美雪は幼い頃から色々な神話の本を読んで育ってきたらしく、神話の武器の大半を産み出したり、神獣や魔獣を使役する事が出来る。正直に言えばオレですら手に余る。だが、美雪はその力を無闇に振りまく様な子ではない。両親を失った悲しみから逃れれるはずの力を振るう事なく、オレの孤児院にやってきたのだ。そしてオレの力を感じ取って正直にリィンロッドの事を話してきたのだ。

 

まあオレが存命する限り、リィンロッドを使う様な自体にはならないだろうと眷属にして保護する事にしたのだ。現在は小学校に通っている。

 

 

 

 

桜咲刹那と犬上小太郎は妖怪と人間のハーフで共に親を亡くし、行き場が無いと聞いてオレが保護した部類だ。昨今、妖怪と人間のハーフは決して少ないとは言わないが、それでも少数派であり、ハーフ同士でつるんだりするのが多いのだが、刹那は忌み子として扱われるアルビノ種であり、小太郎は先祖帰りと言えば良いのか妖怪の世界の歴史に名を連ねる大妖怪の血が色濃く現れている所為で、居場所を追い出されてしまったのを例の不良退魔師が拾ってオレに押し付けたのだ。

 

引き渡された当初は威嚇されて、暴れられと大変だったが、そこは根気よく付き合って不信感を解いて、少しずつ周りの孤児達とも馴れさせてと動物相手な感じだった。今はもう普通に笑える様になっている。苦労したけどな。うん、苦労した。二人にかかり切りになった為にあまり構ってやれなかった所為でへそを曲げたリアスと黒歌の機嫌を取るのに……

 

女心を男に理解しろと言うのは無理だと思う。女心と秋の空とは良く言った物だ。黒歌との関係が変化したから余計にそう思う。それについては後ほど説明しよう。

 

刹那と小太郎は妖怪屋敷の主(ぬらりひょんと人間のハーフ)経由で一人でも生きていける様に師を見つけて現在修行中だ。むろん、学校にも通わせている。どちらの世界でも生きていける様にな。

 

 

 

 

レイフォン・アルセイフは人間にしては異常な程の鬪気を身に秘め、そして目が良かった。言葉にすれば単純だ。物を見る目がしっかりし過ぎている。そして柔軟に動ける身体と、通常では考えられない力を発揮出来る鬪気が合わさり、幼さからくる暴力で幼なじみの少女を殺しかけた。その少女が砕ける瞬間もしっかりと目に焼き付けて。

 

初めて会った時は死人だった。死んではいないが生きてもいない。孤児院を管理する職員以外誰も近づこうとせず、その目には恐怖が宿っていた。レイフォンが少女を壊した事を皆が知っていた。だから次は自分ではないかと恐怖する。

 

オレはレイフォンに枷を与えた。壊した少女の世話をさせる事にした。どれだけ拒絶され様とも逃げる事も諦める事も許さずに。レイフォンは少女の世話を続けていくうちに生傷を増やしていった。少女に傷つけられているのだろうがそれで少しでも互いの気が晴れるのならそうするべきだとオレは思っている。

 

その事をリアスと黒歌と白音に知られてちゃんと仲直りさせろと怒られて色々と策を考える羽目になった。考えた結果、吊り橋効果を狙った策しかないと思い、即日決行……の様な真似はせず、ある程度の時期を見計らう。その間に外部協力者を集めて色々と工作を行う日々やレーティングゲームの大会が重なり、またもやリアス達をかまえずにへそを曲げられて機嫌をとろうとしたのだが、シスコンに襲撃され、後に関係者から『義兄弟戦乱』と呼ばれる事件にまで発展することになる。なお、この事件中と解決後1週間は魔王府は完全に業務が停止することになり、各地で混乱が広がった事を明記しておく。ついでに何名かのランキング上位者も重傷を負い、ランキングに影響が出たそうだ。

 

ようやく『義兄弟戦乱』の傷が癒えた頃に、レイフォンと少女の関係を動かすのに最適とまでは言わないが、生傷を増やし続けていた時期よりは良いと判断出来る状態にまで変化していた。少女もレイフォンを傷つけるのに飽きたのか何もしない事にしたのだ。生きる為に世話はされるがそれだけ。あとは、レイフォン次第で少しはまともな方に関係が変わるはずだ。

 

少女は冥界の病院に入院している。でなければ死んでいたか、生きていたとしても一生ベッドから動けない様な怪我を負っていたからだ。そして、その病院は森に囲まれている。貴族がお忍びで通ったり、入院する為だ。なので金さえ積めばちょっと無理が利かせられる。

 

ちょっといつもの散歩コースが手入れの為に使えないから周囲の森の中にあるルートを使わせるのなんてお手の物だ。少女は未だに車いすがなければ移動も出来ない。無論、レイフォンが押しているのだ。その森の奥深くでオレはザトゥージに協力して貰って捕獲した魔獣を操る術の準備をしていた。用意した魔獣は陸の王者ベヒーモスの幼体。

 

幼体とは言っても5tトラックと変わりない大きさを誇る。これぐらいの魔獣を用意しなければレイフォンを追い込む事が出来ないのだ。それだけレイフォンの鬪気は凄まじい。その為に親であったキングベヒーモスと殺りあうはめになったが、問題は無い。シスコンに比べれば全然問題無い。

 

予定していたポイントまでやってきた二人にオレはベヒーモスを嗾ける。実験は『義兄弟戦乱』の折りに試しているので練習済みである。ベヒーモスと向かい合った二人は硬直してしまう。少女に至っては既に諦観してしまっている。だが、レイフォンはすぐに立ち直り、少女を抱えて走り出す。病院に逃げ込まれては困るので先回りを行いながら森の奥へと誘導していく。その間にも地面を抉って飛ばしたりしてレイフォンを消耗させていく。少女に当たらない様に細心の注意を払っているが、レイフォンが弾かなければ直撃する様な物も稀にある。

 

追いつめられたレイフォンは少女を降ろし、不退転を決め込み、鬪気を一気に解放する。その鬪気の量に驚きはしたが、すぐにベヒーモスを巧みに操り互角以上の戦いを繰り広げる。レイフォンは必死に戦っているが、そもそも武器を持たない子供がどうにか出来る相手ではない。

 

すぐに追いつめられてしまったレイフォンを見て、そろそろオレがベヒーモスを倒そうかと思った次の瞬間、レイフォンの雄叫びと共にその手に白銀に輝く大刀が現れ、一刀のもとベヒーモスを真っ二つに叩き切った。今まで神器を持っている気配は一切無かったと言うのに、その大刀は神器であると感じ取れる。

 

ぼろぼろなレイフォンは大刀を杖にしながら少女の元に歩み、怯える少女を見て傷つきながらも背負い、病院に向かって歩き出す。半分以上気を失っているのだろうか、饒舌にレイフォンが自分の中に溜め込んでいた本音を吐き出している。少女を殺しかけた後悔、無理矢理世話を押し付けたオレの理不尽さに対する怒り、面倒な少女の世話の愚痴など、走馬灯でも見てるのかと心配になって途中で回収して治療を行った。

 

その後、レイフォンと少女は仲が良いとは言えないまでも、他人行儀程ではない付き合い方が出来る様になった。リアス達はそれを見て納得してくれたようだが、あれで良いのか?ちょっとしたことで言い争ってるけど。首を傾げるオレを見てリアス達は溜息をつく。何度も言うが、男のオレに女心を知れと言うのは無理だ。

 

それにオレには他にも頭を抱えなければならない事がある。レイフォンが持つ神器だ。銘はヴォルフシュテインと刻まれていたので分かったが、冥界の資料をどれだけ漁っても確認されなかった新種の神器、いや、神滅具の可能性が高い。持ち主の魔力や鬪気を吸収して、強度や切れ味が向上し、イメージに合わせて形状が変化する。そして何より厄介なのが、オレの魔力を全て叩き込んでも壊れない所か余裕を見せやがったその許容量。腹が立ち病み上がりのローウェルの協力の元、フェニックスの涙を5個使用して魔力を叩き込んだ結果、ようやく限界量まで達したのだが、ちょっと振っただけで次元の狭間への道が作れそうで恐怖した。

 

あまりにも危険な為、桃地美雪と同様に眷属にして保護する事にした。本人も人間でいるよりも、悪魔として見られる方がマシだと思っていたのか素直に転生してくれた。まあ、まだまだ子供なのでそのままの生活を送らせているが、たまに訓練目的で使い魔の森やレーティングゲームの観戦に連れて行っている。

 

 

 

 

次は、シュナイダーの事で良いか。シュナイダーはここ1年の間、オレの使い魔としてレーティングゲームに参加している。だが、すぐに力量不足が見られリタイア率が7割を超えてしまった。

 

シュナイダーが使える呪文は原作と同じ4つ。シュドルク、ゴウ・シュドルク、ディオ・エムル・シュドルク、そしてシン・シュドルク。シン・シュドルクは強大な力を得られるが身体への負担も多い為に、未だに使用許可は出していない。だが、それでは色々と足りないのだ。その為に上級の肉体変化・肉体強化・属性付与魔法の開発に着手することにした。

 

まずは炎だけでは簡単に対処されてしまうので氷のディオ・ギコル・シュドルクと雷のディオ・ザケル・シュドルクと風のディオ・ジキル・シュドルクを開発する。扱う属性を変化させる為にその属性で身体を虐める羽目になったが、何とか開発に成功する。無論、オレ自身もシュナイダーと同じく身体を虐めて同じ様に中級上位の肉体変化・肉体強化・属性付与魔法を身に付けた。

 

次は単純に上級下位級の肉体変化・肉体強化魔法の開発だ。これには自らの肉体を鍛える必要がある為にシュナイダーと共にアイアン・グラビレイの効力圏内での筋トレに励む事で肉体強化を図る。前世の漫画で読んだ様に筋肉は付けすぎず、持久力と瞬発力に優れた筋肉になるように細心の注意は払う。そうしてエクセリオ・シュドルクを完成させる。

 

ここからエクセリオ・シュドルクに属性付与を加えるのだが、それだけでは芸がない。そしてここでも前世の漫画の記憶を掘り起こす。武闘派錬金術士集団の中でも戦闘狂っぽい男の持つ武器の特性だ。自らの肉体を属性の物と同化させる行為。だが、よくよく考えるとかなり怖い行為だ。肉体を全く別の物に変化させてから、また元に戻すのだ。反動や副作用が出てもおかしくない。エクセリオ・シュドルクと各中級上位属性付与魔法でどうにかなる以上、保留にするべきだろう。

 

 

 

 

次は銀術士の事だろう。とうとう、癌で亡くなってしまったのだ。死に際にオレに銀術士としての知識を預けて息を引き取った。銀術士にはまだ返せていない恩があると言うのに。

 

血縁者は全て死に絶えているそうで、オレが葬式を取りまとめることになった。銀術士と交友関係があった者達は少なく、葬式は簡単に終わった。その後、遺書によって幾つかの工房と溜め込んでいた銀がオレの物になった。

 

葬式が終わった夜、オレは今世で初めて涙を流した。

 

 

 

 

 

次、一番胸糞悪い出来事の話だ。主役はハムリオ。禁断の恋の結末だ。あまり詳しい事を聞いてはいないので後始末以外は簡単にしか説明出来ない。

 

たまたまハムリオがはぐれ悪魔の討伐に出ていた際に教会の者とブッキングして、互いに惚れたのだ。しかも、ハムリオと同じ銀術士を扱うエクソシストと。

 

個人的には祝福してやりたいが、敵対組織の者との恋愛と言うのは御法度所か粛正物だ。確か、ごく最近にそんな粛正沙汰が起こっていたはずだ。それを理解している上でオレに連絡を寄越してきたハムリオの行動は、ハムリオとその相手の本気さが伝わってきた。例えはぐれに指定されてでも添い遂げてみせると言い切ったのだ。

 

オレは悩んだ末にハムリオに一つの任務を言い渡した。新潟の山奥にある工房、オレと黒歌達が暮らしていた工房だ。それの管理を無期限で言い渡した。当時使っていたままで色々と結界も敷いてあるので、今でもたまに整備しているのだが結構めんどうなのだ。だからそれの管理をハムリオに任せる。大変な仕事だから人を雇っても仕方ないよな。そう伝えたのだ。

 

オレの言いたい事が分かったのか、ハムリオは涙を零しながらも任務を拝命して去っていった。それで終わったのなら、どれだけ良かったか。数日後、ハムリオが教会に拘束されたと連絡が入り、至急現地に飛んだ。

 

教会側が指定してきた場所に行くと、拘束された上で気絶しているハムリオと強欲の塊の様な司祭が4名とその護衛らしき聖剣を携えたオレンジ色の髪の少女と熾天使のガブリエルが居た。教会側の言い分は、優秀なエクソシストである銀術士がハムリオの手によって神器を抜き取られて殺された。その際、救助に駆けつけた司祭が負傷したと言う物だった。オレはそれを完全に否定する。司祭の中心にいた男は自分がその証人であると告げた。だからそこでこちらも札を切らせてもらった。

 

記憶を覗き見る魔法の存在を明かすと、急に司祭が狼狽えたのだ。出任せであると、悪魔の使う魔法など信用出来るかと。だが、ガブリエルは悲しそうな顔をしながら、その司祭を拘束してオレに記憶を覗き見る魔法をかける様に告げた。それを見終わった後、確認の為にハムリオの方の記憶も確認する。

 

判明したのはハムリオが今持つ神器、金属の理(ホワイト・キス)は無から有を産み出す神器であり、本来の持ち主である女性は銀を産み出し、それに光力を込めて聖銀に変化させて銀術を扱っていたのだ。

 

その金属の理(ホワイト・キス)に以前から目を付けていたこの司祭は何とか自分の物に出来ないかと考えていたのだ。別にこの司祭が銀術を使える訳では無い。だが、金属を作れる以上、それを売れば金になると考えていたのだ。そしてこの司祭は女性の上司でもあった。

 

ハムリオと同じ様に上司に告げてから教会を去るつもりだった彼女は拘束され、その罪を被せる為にハムリオを誘い出した。後は、見ての通りだ。

 

オレはハムリオを引き取り、神器と遺体の譲渡を条件にこの件を闇に葬る事にした。最近起こったばかりの粛正沙汰を再び起こす訳にはいかないが、私腹を肥やす為に罪をこちらに擦り付けようとしたのだ。強引に譲渡を迫り、代償としてオレの利き腕を肩から切り落とすことになった。

 

天界側もこの件を闇に葬るのは賛成のようだが、だからと言って退くわけにはいかないと判断してオレの腕を要求してきた。さすがに首を縦に振る様な条件とは思っていなかったのだろう。その判断は他の奴らなら妥当だろうが、オレにとっては心に深い傷を負った家族の為なら腕一本程度惜しくない。聖剣を持つ少女に右腕を切り落とさせる。傷口が光力で焼かれたのか出血はほとんどない。ガブリエルは驚き、何かに耐える様に顔を伏せてしまったが、条件を満たした以上神器と遺体を引き渡してもらった。時間が経ち過ぎている為に悪魔の駒での転生も叶わなかったが、それでもハムリオはお礼と腕の詫びを伝えて来た。

 

まあ、腕は生やせるから問題無いと告げておいたがな。目の前で生えてくる利き腕を見て顔を引きつらせていたが、鍛え直さなければならないのでそう簡単にしたくないとだけはっきりと言っておく。後日、腕を切り落とした事を知ったリアス達に数日間監禁される。心配させるなと言う事だが、問題無いからやったのだが、やはり駄目だったか。

 

エクソシストの遺体はいつまでも綺麗なままでいさせてやりたいと言うハムリオの希望のもと、グレイが凍らせて修行に使っている永久凍土の山の一つに安置する事になった。

 

ハムリオは一時期、無気力に暮らしていたが自分の中で何か決着を付け、再び立ち上がった。その胸にはあったドクロのシルバーには蛇が巻き付いていた。

 

 

 

 

報告はそんな所か。えっ?黒歌との関係がどうなったかだと?ちっ、覚えてやがったか。正式にリアスと結婚したらオレの妾になるんだとよ。朱乃と白音も。リアス公認で。以上。これ以上は聞くな!!オレも混乱してるんだから。

 

 

 

 

昔の事はさておき、今オレはグレモリー家を尋ねている。リアスと朱乃が来月から人間界にあるシスコン魔王様が運営する駒王学園に入学し、悪魔稼業デビューをするのだ。悪魔稼業デビューを行うと成人として見なされるので、それのお祝いをする為に訪れたのだ。無論、盛大なパーティーも行われるのだが、それはそれ、これはこれだ。あと、お祝いが少し特殊なのもあって落ち着いている時に渡したかったのだ。

 

「久しぶりだな。今日は個人的な祝いの品を持って来た」

 

「個人的な?一体どう言う事?」

 

「少しばかり特殊な物でな。偶然開発出来てしまっただけで量産は出来ないし、死蔵するには勿体ない物でな。リアスの為になるだろうと思って持って来た。それから朱乃にも少し特殊な使い魔を連れてきている」

 

「わざわざ私の為にですか?」

 

「気にする必要はない。黒歌にも少しばかり特殊な魔道具を送っているからな。まずはリアスの方からだ」

 

オレは持って来ていたトランクの鍵を開けてリアスに渡す。

 

「これは、えっ?嘘でしょう!?」

 

リアスがトランクから取り出した物、それは紅色のマントとブローチだ。

 

「オレのマントとブローチのレプリカだ。偶然、開発出来てな。性能は6割と言った所で伸ばせる量も決まっている。千切れた場合の補充はオレのブローチが無ければ出来ない。だが、使いこなせば便利な代物だ。貰ってくれるか?」

 

「私なんかが貰っていいの?ゼオンの名を傷つけてしまうかもしれないのに」

 

「オレがそんな事を気にしないのは知っているだろう?貰ってくれ、リアス。それはお前にしか渡せない物だ」

 

「……ゼオン、ありがとう」

 

マントを受け取ったリアスはオレに抱きついてきて唇を合わせる。

 

「あらあら、羨ましいですわね。私にも分けて欲しいのですけど」

 

朱乃がリアスとは逆の方向から近づいてくる。だが、今は駄目だ。

 

「リアス、一度離れてくれ。朱乃に紹介する使い魔を召還するから」

 

「仕方ないわね。後でちゃんと二人ともかまってね」

 

「分かっている。今日は緊急の事件でも起こらない限り時間は空いているからな。さて、来いモグ」

 

オレの足下に魔法陣が浮かび上がり、その中から体長は50cm程で白い身体に背中から蝙蝠の様な羽を持ち、肩から斜めにカバンをかけて頭にポンポンのような物がついた魔獣が現れる。

 

「はじめましてクポ。モーグリのモグクポ」

 

「「か、かわいい」」

 

「使い魔の森の奥深くに異界化してる洞窟があってな。その奥の方に住んでいたモーグリ族の一人だ。モーグリ達は手先が器用な上に魔力もそこそこあってな、色々なクスリや魔道具の制作が得意だそうだ。戦闘力もそこそこはあるんだが、住んでいた洞窟の中では最も弱い為に外との交流を持てなかったそうだ。おかげで絶滅の危機に瀕していたのを使い魔になる事を条件に出稼ぎ用の転移魔法陣を設置した」

 

「モグ達は少数民族だからアイテムの生産数も多くないけど、使い魔だから優先的に用意するクポ。代わりに割引の方は出来ないクポ」

 

「出来れば色々と注文して活用してやって欲しい。あくどい奴に騙される可能性は低いが、力づくで商品を安く買いたたかれる可能性がある。時間が経てばブランド化されるだけの力はある」

 

「ゼオンに色々聞いて売れそうな物をピックアップしてきたクポ。お近づきの印にサービスクポ」

 

そう言ってカバンからクスリ瓶を幾つも取り出す。

 

「この青いのが怪我を治すポーションで、こっちの緑色のが魔力を回復させるエーテルクポ。お値段の方はポーションは200ギルでエーテルは500ギルクポ」

 

「ちなみにレートは1ドルで50ギルだ」

 

説明しながらモグはポーションとエーテルを5つずつ朱乃に渡す。

 

「これからよろしくお願いします、ご主人様クポ」

 

「こちらこそよろしくお願いいたしますわ」

 

モグが背中の羽を懸命に羽ばたかせて朱乃の腕の中に辿り着く。朱乃はそんなモグを優しく抱きしめている。気に入ってくれたようで良かった。そして朱乃がモグに夢中になっている隙にリアスが再び抱きついてくる。

 

それを見て朱乃もモグを抱きかかえたままオレに抱きついてくる。おい、モグが潰れてるぞ。今日は完全にオフなんだから逃げないぞ。だから、モグを解放してやれ。

 

なんとか抜け出したモグはオレの頭にしがみつく。かなり間抜けな格好になったな。まあ、オフだからかまわんか。

 


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