ハイスクールD×D 雷帝への道程   作:ユキアン

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家族が増えるよ、やっt

 

 

「ふむ、予想以上に回復が早いな。これなら明日からこの周辺でなら遊び回っても大丈夫だろうな。遊びついでに狩りの仕方も教えてやる」

 

さすが子供だな。一週間でほぼ完全に回復している。

 

「いいんですか!?」

 

この一週間、工房の外に出れずに暇だ暇だと言い続けていた白音が嬉しそうに尻尾を振りながら飛び跳ねる。その隣に居る黒歌も嬉しそうな顔をしている。二人は基本の形態である人型で耳と尻尾が生えている状態でオレの用意した服を着ている。尻尾を通す穴を作るのが面倒だったとだけ言っておこう。

 

「ああ。幸い、この山には危険な動物も居ないからな。川も綺麗だし森の恵みも豊富だ。狩りの練習や食べれる野草や茸なんかを見分ける練習をするには持って来いの場所だ」

 

「上級悪魔で長男なのにそんなことまで出来るのかにゃ?」

 

黒歌が不思議そうに聞いてくる。まあ普通は知らないだろうからな。

 

「家族間の仲が悪くてな。家の名に傷をつけない程度に好き勝手させて貰っているからな。家の者達や学校の奴からは化け物の様に扱われてる。努力して頭を使えばオレ程度の実力など簡単に手に入るのにな」

 

マントはさすがに無理だろうが、オレの雷程度なら自分たちが得意とする属性の魔法で打ち破るなど簡単だ。頭を使えよ。

 

「まあオレの事はいい。お前達も明日は思う存分遊べば良いさ。子供は遊びから色々な事を学んでいくものだ」

 

 

 

 

 

「おっと、こいつも食べれる野草だ。葉っぱじゃなくて根っこの方だがな」

 

「お姉ちゃん、綺麗な茸」

 

「白音、そいつは毒茸だ捨ててきなさい」

 

「は~い」

 

「意外と食べられる物って多かったのにゃ」

 

「知らなかっただろう。意外と食べれる物は多い。物が溢れる様になって忘れ去られていったからな。そろそろ昼だな。川の方に移動するぞ。魚の簡単な取り方を教えてやる」

 

「「わ~い」」

 

黒歌をおんぶして白音を抱きかかえて、木の幹を蹴って山を駆ける。時折、枝を握って軌道を変更する。二人は楽しそうに声を上げている。

 

「到着」

 

二人を地面に降ろして簡単に川魚を回収する為に用意した川の中央に置いてある岩に飛び乗る。

 

「あんまり褒められた方法ではないが、この方法を使えば簡単に魚が捕れる。二人とも川のそっちの方に立っていろ」

 

岩よりも下流の方を指差すと、二人とも服を脱いで川に入っていく。黒歌はさすがに下着を身に付けているが白音は全裸だ。あっ、ちなみ黒歌は6歳で白音は3歳だ。そしてオレはロリコンではない。邪な考えなど一切無い。

 

「よし、それじゃあ行くぞ」

 

足下の岩を砕かない程度に思い切り踏みつけて水中に衝撃を叩き込む。すると次々と魚が浮かんでくる。日本で禁止されている爆発漁法に近い方法だ。二人は驚きながらも次々と魚を集めて岸に置いていく。

 

オレはオレでマントを使って薪を用意して火をおこす。更に十本の長い枝を尖らせる。

 

「いっぱいとれました~」

 

「大漁、大漁にゃ」

 

二人が両手一杯に魚を抱えてやってくる。

 

「ああ。昼ご飯は焼き魚になるが良いか?」

 

「「うん」」

 

「なら焼き上がったら呼んでやるから遊んでな。少し時間がかかるからな」

 

「「は~い」」

 

二人して川に逆戻りしていくのを見送りながら包丁を使って魚の腸を切り出していく。それが終われば先程作った串を突き刺してから塩を軽く振って火の近くに刺していく。ついでにここに来るまでに拾っておいた茸も焼いていく。

 

魚が焼き上がった所で二人を呼んでタオルを渡してやる。服を着直したら串に刺した魚をマントを使って渡してやる。

 

「熱いから気をつけろよ」

 

かき込む様に食べ始める二人を見て苦笑しながら新しい焼き魚を用意していく。新しく魚を串に刺していきながら、少なくなった薪を回収する為にマントを伸ばして拾っていく。その様子を黒歌が不思議そうに眺めている。

 

「どうかしたか?」

 

「前から不思議に思ってたんだけど、そのマントってなんにゃの?」

 

「こいつか?こいつは、なんと言えば良いんだろうな?あ~、そうだな、オレの身体の一部と言っていいだろうな。さっきも言ったが家族間での仲が悪い原因だな」

 

「便利なマントにゃのに?」

 

「確かに便利だな。だけどな、オレは母親の中に居る頃からこのマントとブローチに守られる様に生きて来ているのさ。そしてそんな不気味なオレに嫌悪感や負の感情をぶつけた者達にマントが反応して切り裂いたそうだ。オレにはそう聞かされているが、マントが反応して切り裂いたと言うのは嘘だ。このマントはオレの強い意志とイメージと魔力によって初めて姿形を変えるからな」

 

「にゃ?」

 

「オレがまともにマントを変形させれる様になったのは2歳の時からだ。それまでは動かそうとも動かせなかったし、動かせる様になっても伸びたまま元に戻らなかったりしたからな。だけど、不気味だったのは間違いない。だからオレは家族から距離を置かれても何も言わない」

 

「……寂しくないのかにゃ?」

 

「なんだかんだで人間の知り合いは多いからな。それに今はお前達が居てくれるから寂しくなんてないさ」

 

「私も寂しくないですよ」

 

「「白音?」」

 

今の今まで焼き魚から目を離さずに居た白音がそう告げた。

 

「お父さんもお母さんも何処かに行っちゃったけど、お姉ちゃんが居るし、ゼオンおにいちゃんも居るから寂しくないよ」

 

「白音」

 

「……ゼオンお兄ちゃんか」

 

「駄目?」

 

「いや、いいさ。そう呼びたいのならそう呼べば良い。なんなら黒歌もそう呼ぶか?」

 

「えっ!?いや、それは、そのぅ」

 

「黒歌お姉ちゃん?」

 

「あ~、でも、うにゃ~」

 

白音に純粋な目で見つめられて恥ずかしそうにしながらも黒歌ははっきりと言ってくれる。

 

「ゼオンお兄ちゃん」

 

 

 

 

 

 

 

その日の晩、久しぶりに工房に銀術士がやってきて黒歌と白音を紹介して、二人が寝た頃に酒に付き合ってもらう。

 

「おいおい、兄ちゃん見た目はともかく中身はまだ子供やろ。そんなペースで飲みよったらすぐに潰れるで」

 

「素面で話せる様な事じゃないから良いんだよ。喋り終わったらすぐに潰れる位がちょうどいいんだよ」

 

コップに注ぐのすら面倒になり直接瓶を煽る。

 

「それで、なんや愚痴を聞いてくれ言うとったけど、どないしたんや?」

 

良い具合に酔いが回ってきた所で一気に話す。

 

「今日、昼間に白音にゼオンお兄ちゃんと一緒に暮らせて寂しくないって言われてな。その後、冗談で黒歌にもそう呼ぶかって聞いたら、恥ずかしそうにしながらも結構真面目に呼ばれちまったんだよ。それを不覚にも嬉しいと思っちまったんだよ。そんな自分が嫌いになった」

 

空になった瓶を横において新しく蓋を開けて中身を煽る。

 

「そりゃあ、兄ちゃんも寂しかったんやろ。ガキの頃から親元離れて一人で人間界で暮らしとったんやろ。独り身やとたまにある事やさかい気にせんとき」

 

「だけどよ、オレはあの二人の家族になんてなれねえぞ。社会的にはオレはまだ保護される側だ。独立している様に見えてるがな」

 

「それやったら眷属にすればええやんか。人間界で好き勝手しとるんやからもっとるんやろ?もしかして駒全部使ってもうとるん?」

 

「駒?ああ、悪魔の駒か。持ってねえよ。あれが貰えるのは学園の卒業時だ」

 

「へぇ、そうなんやな。あれ?兄ちゃん何歳や?確か学園てこっちで言う中学やったはずやろ?その上にレーティングゲーム専用の学園があったはずやけど」

 

「この前13になった所だな。今は学園の1年だ。まあやりすぎて授業完全免除を貰っちまったがな。一応、向こうで何かあった際にすぐに戻れる様に屋台を開いてねえんだよ。学園の教師達からも化け物扱いだ。軟弱者ばかりが!!あの程度の雷位防げよ。土の盾を用意すれば殆ど防げるんだぞ。所詮は電気なんだから」

 

いかん、話がズレた。だが止まらん。

 

「治療は全部教師陣が治すとか言ってるくせに、ほとんど何も出来ずにオレが治療したらしたでオレの事を憎悪の目で見たり、何を考えてやがるんだ!!何百年と生きておいてガキに技量で負けやがって!!オレの治療なんて大量の魔力で強引に治してるだけなんだぞ!!」

 

「相変わらず悪魔とか天使の魔法は雑なんやな。弱っちい人間には真似出来へんわ」

 

「オレの雷なんて、その雑な部分を細かく操作してるだけなんだよ。雷に関する知識を深めて、性質を学んで、後はそこに後付けのイメージを乗せてるだけなんだよ。回復魔法は強引だけどな」

 

そうなんだよ。ちょっと理解するだけで魔法の威力は上げれるんだよ。なんでそれを怠るんだよ。さすがにバアル家の滅びの魔力みたいな物はどうやれば鍛えられるのか分からんがな。

 

その後も愚痴の内容が色々と飛んだ覚えだけはある。結構な本数の日本酒を飲み、意識が飛びかけになっている時に銀術士の言った言葉だけははっきりと残っている。

 

「あの子らは兄ちゃんを信頼しとるんや。だから素直に話してみ。それだけで大丈夫や」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ちゃん、ゼオンお兄ちゃん」

 

身体を揺すられながら耳元に白音の声が聞こえる。頭痛のする頭を抱えながら身体を起こす。時計を見るととっくに起床時間を超えていた。頭痛がするのは二日酔いが原因だな。正面には机に突っ伏す様に寝ている銀術士と酒瓶が見える。

 

「すまんな白音。今朝食を作ろう」

 

「朝ご飯は黒歌お姉ちゃんが昨日の魚を焼こうとしてる」

 

それを聞いて急いで台所に向かう。さすがに黒歌に火の扱いをさせるのは早い。

 

「黒歌、オレが作るから良いよ」

 

「おはようにゃ」

 

「おはよう。火の扱いはまだ早いぞ」

 

「うにゃ~、でもお腹が空いたから」

 

「それはすまん。寝坊なんてかなり久しぶりだからな。すぐに用意するから白音と一緒に待っていろ」

 

腸は既に取り除いてあるので軽く塩をふってから火に掛け、豆腐の味噌汁を作り始める。ご飯は晩酌の前にタイマーを掛けていたから問題無く炊きあがっている。あとは卵焼きでも焼けば良いだろう。味付けは、砂糖を入れた甘いのでいいだろう。出汁の繊細な味は子供の舌では分からないだろうからな。

 

手早く人数分の朝食を用意してお盆に乗せて食卓に運ぶ。白音と黒歌は行儀よく席に着いて待っている。配膳を済ませてから手を合わせる。

 

「「「いただきます」」」

 

一口魚を口にした時点で気付く。やはり二日酔いの状態ではまともな料理は出来んな。味付けがいつもより濃い。二人も気付いたのか微妙に眉をひそめている。

 

「昨日、何かあったのかにゃ?」

 

「あの人になにかされたんですか?」

 

黒歌が不思議そうに、白音が銀術士に敵意を向けながら尋ねてきた。

 

「いや、銀術士の所為ではないさ。あ~、なんと言えば良いんだろうな」

 

なんと言えば良いのか悩み、昨晩銀術士に言われた言葉を思い出して素直に告げる。

 

「黒歌、白音。約束を破る様な形になるが、オレの眷属にならないか?まあ今は候補だけどな」

 

「「眷属?」」

 

「そうだ。まあ、なんだ、昨日、お兄ちゃんと言われたのが存外嬉しくてな。本当の兄妹になることは出来なくても、それに近い関係になれるのを真面目に考えた結果だ。別にオレ自身は眷属にしなくても良いと思っているんだが、オレは悪魔の中で悪目立ちし過ぎているからな、二人を守る為には眷属が一番良いんだ」

 

「ゼオンおにいちゃんと一緒に居られるなら良いよ。ねっ、お姉ちゃん」

 

「……」

 

「お姉ちゃん?」

 

「即答する必要はない。正式に眷属に出来るのも最低でも2年程先になる。だからそれまではオレの眷属候補を名乗れば無理矢理眷属にされる様な事もない。それに眷属にならなくても傍に居るのは全然問題無い。問題無いんだが、周囲の事を考えると眷属で居てくれた方が守りやすい」

 

「……わかったにゃ」

 

「強制はしたくないんだがな。すまない」

 

「別に良いのにゃ。即答出来ないのは私の方に問題がある事だから」

 

「……まさか、いや、何でもない。それより、今日は何をしたい?」

 

なんとなくだが、黒歌がオレを警戒していた事と眷属の件を即答しなかった理由が透けて見えた。多少強引だったが話を変えて今日の予定を決める。

 

 

 

 

 

 

 

その日、黒歌は山で遊びながらも何処か上の空だった。白音が心配そうにしていたけどなんでもないと言って無理に笑っていた。その日の深夜、オレは眠らずに縁側で待つことにした。そんなオレの傍にそっと黒歌がやってきて、そのまま胡座をかいている上に乗ってきてオレに抱きついて甘えてきた。オレは黒歌を抱きしめて耳元で囁く。

 

「お前達が両親と離ればなれなのは悪魔の所為なんだな」

 

その言葉に黒歌の身体が跳ねる。やっぱりそうだったか。

 

「オレの同族がすまない」

 

「ゼオンが謝る必要なんてないにゃ。悪いのは、あいつらだから」

 

「……話したくなかったら話さなくても良い。何があったんだ?」

 

しばらく待つと黒歌が少しずつ話してくれた。

 

「昔はお父さんやお母さんと一緒にここみたいな家に住んでた。本当に、今みたいに楽しかった。だけどあの夜、お父さんとお母さんが怖い顔をしてて、お母さんが私と白音を連れて山の中に入って、少しした後に大きな音と振動が来て、お母さんが私達に猫の姿になる様に言って、迎えにくるまで隠れていなさいって、でも、朝になっても迎えに来なくて、白音が寝ている間に家に戻ったら、大きな穴があるだけで、誰も居なくて、だけど何があったのかは分かった。だから、白音を連れて逃げて、逃げて、逃げ続けた。だけど、中途半端な力しかなかった私達は1年位が限界だった。そして白音が倒れて、私も駄目だって諦めかけた時に白い布に包まれた」

 

「そうか。何度頭を下げても許される事ではないだろうが同族がすまない。それから、よく頑張ったな。偉いぞ、さすがは白音のお姉ちゃんだ」

 

そう言いながら黒歌の頭をゆっくりと撫でてやる。

 

「よく頑張った。だから泣け。ずっと誰にも頼れなかったんだろう。弱い所を見せれなかったんだろう。大丈夫だから。白音には聞こえない様に結界を張っているから泣いている姿を見るのは、お兄ちゃんだけだ」

 

「……お兄ちゃん」

 

「今までよく頑張った。これからも白音の事を守ってやれ。代わりに黒歌の事はオレが守ってやる」

 

「お兄ちゃん、お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん、うにゃあああああああああん、うにゃああああああああん!!」

 

一度泣き始めた黒歌は大声を隠す事なく、体中の水分が無くなるのではと思う位に泣き続けた。どれだけ時間が過ぎたのかはっきりとは分からないが、泣きつかれて眠った黒歌をマントで包む。布団で寝かせようにも服に爪が食い込んでいて離せそうにない。それに今は黒歌を手放したくはなかった。

 

 

 

銀術士の言う様に、オレは寂しかったのだ。前世でも親からは独立したとは言え、連絡はよく取っていたし正月や盆には顔を見せていた。今は何かの用事の時位しか会う事はなく、その時すらまともに顔を合わせない肉親との関係にオレは疲れていたのだろう。黒歌達を保護してからの短い期間ではっきりと自覚する程に。

 

今は、この温もりを手放したくない。明日からは、また頼れる兄として頑張ろう。だからたまにで良い。お前達の、家族の温もりを感じさせてくれ。

 


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