ハイスクールD×D 雷帝への道程   作:ユキアン

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友人、増えました

ローウェルに相談してから半年、オレはリアス・グレモリーの誕生パーティーに招待され、初めて顔を会わせた。リアス嬢も婚約の話は聞いているのか、肩に無駄な力が入っているのが見て取れる。11歳という多感な時期の女の子だから、それも仕方のない事だろう。

 

「はじめまして、リアス・グレモリー。オレはゼオン、ゼオン・ベルだ」

 

「はじめまして、リアス・グレモリーです。ゼオン様の噂は色々と聞こえて来ていますわ。近々、最上級悪魔に昇格される事も」

 

がちがちに緊張していて所々棒読みに近い挨拶になっているがここはスルーするのが大人の対応だろう。見ればグレモリー卿も苦笑している。

 

話が少しズレるがオレは今期のレーティングゲームの大会でランク9位に勝利した事で最上級悪魔への昇格がほぼ確定したのだ。ランクの変動は大会後に行われるので今はまだ上級悪魔だ。だが、ここから残り3戦を全て不戦敗にでもならない限り昇格出来るのだ。我ながらよくここまで一人で来れた物だな。

 

最上級悪魔になればレーティングゲームの大会には招待されるか、自分で開催するか、最上級へと昇格した大会への義務参加以外は出場する事が出来ない。そうなれば時間が大分取れるから、それをリアス嬢に使うとしよう。残っている分は使い魔を捜したり人間界で孤児を保護する旅に当てれば良いか。

 

話がそれ過ぎたな。今は目の前のリアス嬢をフォローしなくては。

 

「ゼオンで結構だ。堅苦しいのは大人になってからで十分。今は子供らしく楽しむ時期だ」

 

そう言って懐から用意しておいたプレゼントの入った小箱を手渡す。中には銀術士がオレの婚約者の為にと無理をおして作ってくれた髪飾りが入っている。

 

「綺麗」

 

隣に居たグレモリー卿に促されて小箱を開けたリアス嬢は髪飾りに見惚れる。

 

「生憎と誰かに贈り物をする事など無かったから悩んだのだが、気に入ってくれたなら何よりだ」

 

「ええ、とても気に入ったわ。ありがとう」

 

年相応に笑うリアス嬢を見て、オレもそんな風に笑いたかったと思ってしまう。無論、それを外に出す様な真似はせずにリアス嬢に笑いかける。リアス嬢も髪飾りに見惚れた事で緊張が解けたのか軽い雑談を交わせる位になった。まあ、最後にグレモリー卿に勧められてリアス嬢にプレゼントの髪飾りを、今付けている物と交換して褒めると顔を真っ赤にしていたがな。

 

 

 

 

その後、他の招待客にも挨拶の必要のあるリアス嬢達と別れて会場の端の方で待っていたローウェル達と合流する。ローウェルの他はローウェルのクイーンで妻のシャリエラとローウェルの友人2名だ。

 

「待たせたな、ローウェル」

 

「いやいや、ここからグレモリー嬢との会話とか最後の髪飾りを手ずから付けて差し上げて、シンプルなだけに心に響きやすい『綺麗だ』の一言。それはもうにやにやしながら見させて貰ったからな」

 

「ほう、からかう覚悟はあるみたいだな、ローウェル。新魔法の餌食にしてくれようか?」

 

「おっと、そいつは楽しみだ。いずれ全部の魔法を引きずり出して対策を練ってやるよ」

 

「そういうのは上級下位(ディオガ級)を攻略出来てから言うんだな」

 

「痛い所を突いてくるな。それでもエクセレス・ザケルガは今回攻略しただろうが」

 

「たまたま運が良かっただけだろうが。まあそれについては追々でいいだろう。紹介して貰っても?」

 

「おっと、そうだったな。右がサイアス・グラシャラボラス、グラシャラボラス家の次期当主。見た目はタトゥーとかの所為でヤンキーに見えるが」

 

「ブースターの役割があるタトゥーに人間が使う魔術的要素を取り込んだ服装に髪型か」

 

正装とは言いがたい、と言うか不良高校の頭みたいな格好に顔の右半分を覆うタトゥーの所為で普通の感性の奴には受け入れられないだろうな。

 

「おっ、よく見抜いてくれたな。大抵の奴はこの格好を見ると嫌そうな顔をするんだがな。これでも他人に迷惑をかけるつもりは無いし、力のある奴や知識が豊富な奴からは一目置かれるんだよ。まあ、弟が意味もよく分からず真似してただの不良みたいになってるのが最近の悩みだ」

 

「苦労しているみたいだな。ゼオン・ベルだ。ゼオンでかまわん」

 

「オレもサイアスでかまわん。それにしても前から気になっていたんだが、何で一人でレーティングゲームに参加しているんだ?」

 

「ああ、オレの眷属なんだが一番年上でもまだ12でな。足手まといにしかならん。それにあまり戦いの場には出したくないんだよ」

 

「ほう、なぜと聞いても?」

 

「オレの眷属は、皆辛い過去を持っていてな。特に最古参の二人は、特に、な。悪いがこれ以上は」

 

「いや、こちらこそすまない。軽々しく聞く物じゃなかった」

 

「気にするな。まあ、そんな訳もあってオレの眷属は家族として扱っている。他人からは傷の舐め合いと見えるだろうが、こればかりは本人達にしか分からない物だからな」

 

「そうだな。本人達がそれで良いのなら周りからあれこれ言う必要は無いな」

 

「そろそろ私の方も紹介してくれても良いんじゃないかしら?」

 

人間界の空の様に青い髪を肩の辺りで切りそろえた女性がサイアスを押しのける。

 

「おっと、すまんなカリナ。彼女は」

 

「カリナ・アンドロマリウスよ。アンドロマリウス家の二女。よろしくね、ゼオン」

 

「ああ、よろしく頼む」

 

握手を交わそうと伸ばした右腕でオレの懐の前の空間を掴む。

 

「中々手癖が悪いようだな」

 

「あ、あら〜、バレてた?」

 

「最近、新しく開発している魔法が似た様な物でな。姿を現せ。それで手打ちだ」

 

そういうと何も無い空間を掴んでいる手の中に紫の蛇が姿を現す。その蛇はカリナの首元から伸びてきている。

 

「全く、財布をすった所で中身など入っていないぞ。ダミーだからな」

 

懐から財布を取り出して中身を見せる。

 

「空とは私の鼻も鈍ったかな?」

 

首を傾げているカリナの後ろでローウェルが驚いた顔を見せる。

 

「いや、カリナ、よく見ろ。中身は空だが、よく見れば財布に使われている革、ドラゴンの革だ!!それも龍王クラスの1ランク下ぐらいの」

 

「げっ、何でそんな伯爵でも手に入れるのが難しい物をダミーなんかに使ってるのよ!?」

 

「うん?そんなに稀少な物だったのか?借金のカタに不良退魔師から貰った物なのだが」

 

「借金のカタって、一体どれだけの借金をしてたって言うのよ。これがあれば人間界でなら100年は豪遊して遊べるものよ」

 

「ラーメン30杯分」

 

「「「「ちょっ!?」」」」

 

ラーメン30杯と交換になったと聞いた全員が驚いて声を荒げるが、寸前に結界を張ったので回りに注目されると言う事は無かった。

 

「いや、オレも知らなかったからな。と言うかあいつ、いつも金が無いからって色々な物を渡してくるから人間界でのブランドものみたいな扱いをしていたのだが、まさかそこまで高価な物だったとは」

 

改めて魔法で調べて見ると確かに龍王の1ランク下ぐらいのドラゴンの革で作られている。金属部分も冥界で流通している魔法金属の中で最もランクの高い物を使っている。縫い合わせている糸も現在では絶滅危惧指定されている虫から採れる物で、在庫分しか存在しない。

 

やばいな。一度あの不良退魔師から貰った物を全て確認した方が良いかもしれないな。だが、詳細は分からない物の方が多そうだな。

 

「こういう物に詳しい者は居るか?」

 

「一応そこそこ詳しいわよ。これでもオークション会社の社長だから。なに、もしかして他にも?」

 

ほう、中々のやり手のようだな。まあ、盗品とかも扱っていそうだが関係ないな。

 

「そこそこな量が。もしかしたら似た様な物があるかもしれん。出来れば鑑定を願いたい。それからそいつを売りに出したいんだが、買い手は付くか?」

 

「状態からして新古品だろうから多少値は崩れるだろうけど、多少値段が高くても言い値で買うと言うのはごまんと居るわね。まあ、今度のオークションの目玉に出してみるから、様子を見に来ると良いわ。招待状も送ってあげるから連絡先を教えて貰っても良いかしら」

 

「少し待て」

 

髪の毛を一本引き抜き、それを手紙に変化させる。中にはオレの拠点の住所とホットラインの魔術コードを記してある。

 

「信用しているから渡す。悪用すれば何処まででも追いかけるからな」

 

「顧客情報を漏らすなんてヘマはしないわ。まあ、拷問されちゃったら勘弁してね。出来るだけ頑張るけど」

 

「そのような状況に陥るなと言いたいが、まあ良いだろう」

 

手紙をカリナに投げ渡すとその豊満な胸の間にしまう。隣に居る慎ましい胸を持つシャリエラがカリナを睨みつけている。

 

「それにしても噂は当てにならないわね。全然付き合い良いじゃない。なんでこれではぶられてるの?」

 

「おい、カリナ止せ」

 

「気にするなサイアス、大した事じゃない。カリナ、お前が聞いた噂の中にマントとブローチについての物はあるか?」

 

「ええ、あるわよ。確か、産まれた時から身に付けていてそれで周囲を傷つけたって。あとは子供らしくない子供だったって奴位ね」

 

「その噂、半分は真実だ。オレは産まれた時からマントとブローチを身に付けて産まれ、泣きも暴れもしない赤ん坊だった。それを不気味に思っても仕方ないだろう。殺されなかっただけオレは恵まれている」

 

「それ、本当に恵まれているって言えるの?」

 

「オレは今こうして生きているし、自由だったからな。それすらも出来ん奴は幾らでもいる」

 

「前向きなのか後ろ向きなのか分かり難いわね。それに自由は既に過去形になってるけどそれは良いの?」

 

「真の自由と言う物は存在しない。産まれや性別や能力で区別される以上、義務と制限がある。だが、そこに自由は無いのかと言われればそうでもない。義務を果たせば自分の能力が及ぶ範囲内での自由が与えられる。今回の婚約も家を残さなければならない貴族としての義務だからな。拒否などしないさ」

 

「う〜ん、話せば話す程中身が分からなくなってきたなぁ〜。かなり突っ込んだ話になるけど、ずばり絶対に許せない事は?」

 

「家族を傷つける事、家族を侮辱する事、悪意ある者が家族に近づく事。敵には一切容赦はしない」

 

「う、うわぁ〜、清々しい笑顔。理由さえ知らなければ騙される女の子がいっぱい居そうな位に清々しい笑顔」

 

「オレも初めて見るな」

 

「だが、そこまではっきりと言い切れるのは信頼出来る。オレは、そこまではっきりと言えそうにないな」

 

「私も」

 

「オレも。というかウチは殺す方が大変だからな。まあゼオンなら簡単に殺せるんだろうけどな」

 

「簡単とは言わないが、フェニックスであろうと最上級(シン級)を使えば殺せるだろうな。オレの身体も耐えられないから多少の怪我を負うので使いたくはないがな」

 

最上級(シン級)って上級下位(ディオガ級)の何段階上なんだ?」

 

「二段階上だ。ジガディラス・シン・ザケルガ以外だとオレが全快状態でも一撃、無理をすれば二撃、撃てるかどうかといった物だな。威力はレーティングゲームの会場を崩壊させて余りある威力だ」

 

「ああ、無理そうだな。オレは兄弟の中じゃあ一番不死性が低いから確実に死ぬな。というか誰でも無理そうだ」

 

「ということは、魔王様クラスか、それ以上の攻撃力か。絶対真っ向から喰らいたくないな」

 

「というか年下の子に負けてる私達って」

 

「うるさいな、今は負けてるかもしれないがいずれは勝つぞ!!一度は追いつめてるんだから。それに対策マニュアルも現在有志を集めて製作中だ」

 

「ならばオレも負けない様に増々力を磨かなければな」

 

「これ以上強くなってどうするのよ」

 

「力と金は幾らあっても、あっ、金は溜め込むと経済に悪影響を及ぼすからありすぎると困るか。まあ自分と周りの者を守る為にはあった方が良いだろう?」

 

オレの言葉にちょっとだけ震える三人を見て喋り過ぎたと少し反省する。

 

 

 

 

プライベートに突っ込んだ会話を切り上げて世間話に移る為に結界を解く。基本的に人間界に居るので冥界の話題を聞くのは中々無いので聞きに徹する。まあ、軽い話の方が多いので楽しめている。

 

「新しい番組を立てようとしてるんだけどよ、企画が似た様な物ばかりで困ってるんだけど、何か案は無いか?」

 

「そもそもオレは冥界の事情に疎いんだが」

 

「あ〜、そうだったな。まあ、簡単に言えばニュースとか、過去に偉大な実績を手にした人へのインタビューとか、レーティングゲームの実況とか、式典の生放送とか位しか無い」

 

「なんだそれは?新聞か何かか?半年程人間界に出張してこい。それだけで新しい局が必要になる位の勉強量になるぞ。というか娯楽に関しては人間界が、特に日本が凄いな。あの国は凄いぞ、色んな意味で」

 

「何が凄いの?」

 

「あの国と言うか、あの国の職人は改造とか改良とか魔改造するのが大好きな人種でな。一つ、おもしろい話をしよう。チョコレートを知っているな」

 

「ああ、もちろんだが」

 

「日本で購入する事の出来るチョコレートの中で普通の一般人が良く購入する板チョコ。100円程で購入出来るこのミルクチョコレート、他の国では作る事が出来ない。本場の国や最もチョコレート菓子の最先端を行っている国でもだ」

 

「「「はあ?」」」

 

「ミルクチョコレートに使うミルクの質が他の国では考えられない位の高品質な物をふんだんに使っている所為で他の国では採算が取れないんだ。だが、日本ではそのミルクを高品質だとは思っていない。実際、日本での普通の家庭で飲まれているミルクより品質は高いが、手が出せない程ではない。まあ、食べてもらった方が早いな」

 

孤児院に顔を出した際に配っているお菓子の中から件の赤い包み紙に覆われているミルクチョコレートを収納の魔法陣から引っ張りだして四人に渡す。四人は綺麗に包み紙を外し、銀紙を破ってチョコレートを口にする。

 

「ちょっと甘さがくどい気がするが個人の好みの範疇だな」

 

「私は全然おいしいと思うよ」

 

「多少整形すれば今日の様なパーティーに出ていても問題無いですね」

 

「あ〜、確かに美味いな。100円ってドル計算だとどれ位だ?」

 

「今の為替市場だと1ドル103円だったかな」

 

「この味で1ドルだと買い占めるしかないな。本当に採算が取れてるのか?」

 

「前年比プラス2%で成長中だな。まあ日本は島国だからな。原材料のカカオは輸入するしかないから稀に赤字を出しているみたいだが、基本は黒字だったはずだ」

 

詳しくは覚えてないがそれ位だったはず。あまり細かい所まで聞かれても困る。

 

「それにしてもチョコレートだけでこの拘り様は凄いな」

 

「外から入ってきた食べ物の大半は日本風に改造するからな。ちょっと考えつかない事をする事も多いな。国風もかなり緩い上に伝染しやすい。宗教的に仲の悪いはずの人種が同じ飯屋で相席になっても普通に笑いながら会話していてもおかしくない国だ。それどころかその緩い空気を気に入って改宗する奴らすら居る」

 

「それは、逆に怖いな」

 

「中々面白そうな話をしているね」

 

突如背後から聞き覚えのある声がかかる。

 

「サーゼクス・ルシファー様!?」

 

サイアスが驚いて大声を上げ、カリナと共に臣下の礼を取ろうとする。

 

「お久しぶりです、サーゼクス様。グレイフィア殿もおかわりないようで」

 

そんな中、オレとローウェルは普通に対応する。リアス嬢との婚約が決まってからサーゼクス様はオレによく会いに来る様になり、オレはローウェルの所に良く居た所為だ。

 

「ははは、久しぶりだねローウェル君。あいかわらず魔王府の方にゼオン君とのレーティングゲームの許可を取る為に色々しているそうだね」

 

「ええ。公式のレーティングゲームでなくては逃げ出しますから。少しでもゼオンの手札を曝さないと勝率が低いですから」

 

「だ、そうだけど。ゼオン君はどう思う?」

 

「ローウェルとの試合は、楽しいですが疲れるのでやりたくないんですよ。まあ、最上級に昇格する次のシーズンからなら少しはやっても良いですね。今までより時間は余っていますから。あまり多くは割けないですけどね」

 

「それは無論リーアたんの為だよね」

 

「リーアたん?」

 

「ああ、すまない。愛しの妹のリアスの愛称さ」

 

魔王様が妹をリーアたんと呼ぶのかよと内心で愚痴りながら答える。

 

「ええ、もちろんですよ。それから家族(眷属)の為にも」

 

「うんうん、ちゃんと考えてくれているようだね。考えていなかったら……」

 

全面戦争かな?リアス嬢を溺愛しているのは周知の事実だからな。超越者であるサーゼクス様の力の正体、噂では“滅び”そのものと聞く。たぶん、クリアの真の姿の様に触れる物全てを滅ぼすのだろう。さすがにそんなのとは戦いたくない。シン・ベルワン・バオウ・ザケルガは使い物にならないからな。

 

「さすがにそれは有り得ませんよ。ですが、私は異端児ですからね。愛想を尽かされるかもしれません」

 

「それは努力でどうとでも出来るさ。それにリーアたんにすれば君以上の婚約者を捜す方が難しそうだ」

 

「オレ程度など、捜せば他にも居るでしょう。オレにあるのは力だけです」

 

「自分では気付けないだけさ。少しでも親しい者ならすぐに気付く魅力が君にはあるのさ」

 

オレに魅力がある?駄目だ、全然分からん。そんなオレを見て、周りの皆が苦笑している。というか、出会ったばかりのサイアスとカリナも分かったのか。

 

「これはお互いに苦労しそうだね。だけど、乗り越えた先には真なる絆が生まれる」

 

そう締めくくるサーゼクス様にオレは余計に首を傾げる事になった。

 

「さて、話は変わるけどゼオン君。今回の君とリーアたんとの婚約に反対する者が何人か居る。まあそのほぼ全てがグレモリー家の権力と地位を欲しての事だ。これ以上は言わなくても分かるよね」

 

「レーティングゲームで黙らせろと。構いませんよ、ちょうど新魔法の実験台が欲しかった所です」

 

「話が早くて助かるよ。準備は既に出来ているけど、何か要望はあるかい?」

 

「時間短縮の為に全員をまとめて相手をさせて貰いたいのですが」

 

「ほう、随分強気だね。いつものマントは身に着けていないようだが」

 

「マントに見えないだけで身に付けていますよ」

 

そう言ってネクタイを指差す。そして軽く動かしてみせる。

 

「なるほどね。本当に便利なマントだ」

 

「オレの身体の一部ですからね。自分の身体を置いて何処かに出かけるなど考えられませんね。まあ、それが気に食わない者も居ますが、これを揺りかごに育った者も居ます。こいつはまさにオレそのものです。まあ今回は出番は無いでしょうけどね」

 

「ゼオン、お前の新魔法の名は?」

 

「ディオ・ギコル・ギドルクだ」

 

 

side out

 

 

 

side ローウェル

 

 

グレイフィア殿に連れられて移動するゼオンを見送り、そのままサーゼクス様に連れられてグレモリー家が集っている所に連れて行かれる。サイアスとカリナは逃げようとしたが、何事も慣れだ。無理矢理連れて行くことにする。

 

「そう言えば、先程ゼオン君に新しい魔法の名前を聞いていたみたいだけど何故だい?」

 

「ゼオンが使う魔法の名前にはちゃんとした法則がありますから、それを独自に解析しているのでそれの確認の為です」

 

「へぇ、よく研究しているみたいだね。親友じゃなかったのかい?」

 

「親友でライバルですから。それに対策を立てられると喜ぶんですよ、ゼオンは。力を持て余している様な奴ですから、少しでも自分の力を好き勝手振る舞える相手が大好きなんですよ。まあ、未だに上級下位の魔法の攻略が出来なくて負け続けてますが」

 

「上級下位?」

 

リアス・グレモリー様が疑問を口にする。まあゲームが始まる前の暇つぶしに説明してあげれば良いか。

 

「ゼオンが使う魔法は下級下位から最上級までの10段階に分かれています。私はなんとか中級上位までの魔法に耐えられるだけの耐久力を得ましたが、上級下位の魔法には対策込みでも耐えられないのが現状です」

 

「彼が上級下位の魔法を使う際は事前にレーティングゲーム会場の結界強化の申請が上がってくるからね。強化しなければ会場が持たないんだ。今回はその申請が無いと言う事は最高でも中級上位の魔法しか使わないと言う事さ」

 

サーゼクス様がオレの説明を補足してくれる。と言うか態々申請してたのかよ。

 

「まあ、今回はディオ・ギコル・ギドルクだけで終わるでしょうね」

 

「ちなみに予想ではどんな魔法だい?」

 

「中級上位の氷の鎧と凍気の操作でしょうね。ディオが中級上位、ギコルが氷や凍気の放出、最後のルクの部分は強化系の意味を持っていますから。確か眷属に静の氷の造形魔法使いが居たはずですから、そこから開発したのでしょう」

 

「氷か。これで彼がレーティングゲームで扱う属性は雷、重力に続いて三つ目か」

 

「訓練に使っていた限りでは、岩、炎、風、水、樹、よく分からない鬪気の様な物が2種類ですね」

 

「随分と多彩だね」

 

「ですが、実戦で使える様な物ではないと言ってましたね。魔力の消費が悪すぎるって。いつもムダに余らせているくせに」

 

そんな話をしているとゲームが始まるらしく、パーティー会場に幾つものモニターが浮かび上がる。そしてゲーム説明が終わり、開始と同時にゼオンがディオ・ギコル・ギドルクを発動させる。

 

「あっ、愚弟が凍った」

 

「これは、また、中級上位の魔法の中でもかなり上位に当たるみたいだね」

 

「凄い!!」

 

「これで中級上位とは、噂以上の強さだろう」

 

「対応を間違えてたら危なかったわね」

 

上からオレ、サーゼクス様、リアス・グレモリー様、サイアス、カリナだ。愚弟が参加していたのは知らなかったが、おそらくゼオンを倒した者をリアス・グレモリー様の婚約者にするとでも言われていたのだろうな。フェニックスの不死性を活かしてゼオンを倒そうとして突出していたのが仇となり、一瞬にして炎ごと氷付けにされてしまった。

 

ディオ・ギコル・ギドルクはオレの予想通り、氷の鎧と凍気を操作する魔法であったが、予想以上の威力を見せつける。魔法の発動と同時にゼオンは凍気の渦の中に姿を隠し、未だに姿が完全に見えないがチラチラと氷で出来た鎧が見える。そしてゼオンを中心にゲーム会場が凍り付いていく。愚弟が凍り付いた事で他の選手はゼオンから離れた位置で魔法障壁を張って耐えているが何時まで持つ事やら。

 

そしてゲーム会場が全て凍り付いた所で凍気の放出が弱まり、ゼオンの姿がようやく完全に見えてくる。ゼオンを覆う鎧は龍を模した様なデザインが施されており、氷はかなり圧縮を受けているのか金属の様な光沢を持ち、中のゼオンの姿が見えない。選手達はゼオンの魔力が尽きて凍気が収まったと考えて接近戦を主体とする者達が駆け出す。

 

リアス・グレモリー様もそう御考えられたのでしょうが、オレやサーゼクス様やサイアスはゲームの経験から、カリナは今日会ってからの会話だけで気付く。放出していた凍気は全て鎧を生成する為の余波で、今は全てあの鎧に圧縮されている事に。近づいてくる選手に対してゼオンは軽く右腕を振る。それだけで7人の選手が愚弟と同じ様に凍り付く。まだ凍っていない選手が驚き、距離を離そうにも足下の氷で滑り、次々と凍っていく。

 

次にゼオンは氷の上を滑りながら後衛に近づく。うん、近づいていくんじゃなくて近づく。相手選手が気付いた時には背後に立っていて一瞬にして凍らせてしまった。数分後には氷付けで窒息と判定されて選手達が退場になり、氷の世界の王が一人佇むだけとなった。そしてその王がこちらに向かってかかって来いとばかりに腕を振る。

 

「サーゼクス様、オレもあそこに送って貰えますか」

 

「おや、君も行くのかい?」

 

「そりゃあ、親友兼ライバルとしては挑発には乗るしかないですね。サイアスも一緒にどうだ?」

 

「さすがにあの凍気には耐えられそうにないからパスだな」

 

「そうか。なら、一人で行くか」

 

サーゼクス様に送って貰い、全身に炎を纏う。それでも冷気を感じる程にディオ・ギコル・ギドルクの凍気は凄まじい物だ。

 

「良く来たな、ローウェル」

 

「当たり前だ。お前と戦えるチャンスを見逃す訳にはいかないな」

 

お互いに構えを取る。そして同時に踏み込む。オレの拳は鎧の顔面を、ゼオンの拳はオレの左腕を殴り飛ばす。互いに吹き飛ばされ、鎧の顔面は罅割れ、オレは殴った右腕と殴られた左腕は凍り始める。素早く切り落として再生すると、鎧の方もすぐに戻っていた。

 

「良い一撃だ。凍らせるのもかなり難しいようだ」

 

「愚弟よりも火力だけはあると自負しているからな」

 

「なら、凍気のギアを一つあげるとしよう」

 

「へっ?」

 

その言葉と共に凍気が更に強くなった。と言うか寒い。

 

「さあ、第二ラウンドだ」

 

ふ、ふはは、ああ、今回も駄目か。まあ、対策も一切用意してなかったから仕方ない。今度はちゃんと準備してくる。とりあえず今回は玉砕するか。

 

「負けてたまるかあああああああ!!」

 

最大火力を身に纏い、ゼオンに突撃する。

 

 

side ローウェル  完

 


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