Fate/Grand Order ~徹底隔離結界 幻想郷~   作:ハルキゲニア

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ご存じの方はお久しぶりです。はじめましての方、今後ともよろしくお願いします。
別作品のモチベーションがどうしても上がらないので、前々からやってみたかった今回の作品に挑戦してみることにしました。
なるべくFateチックな展開にしていきたいので、かなり鬱展開になる可能性が高いです!
ご注意のほど、よろしくお願いします。



プロローグ

 それは、唐突だった。

 人理継続機関フィニス・カルデアにて、人類最後のマスター、藤丸 立香が食堂でのランチを楽しんでいた時の事。

 万能の人こと、レオナルド・ダ・ヴィンチからの連絡があった。火急を要するとの事なので、慌てて食器類を片付け、メインルームへと急ぐ。

 隣には、多くの特異点を巡り、困難を共に乗り越えた最高の相棒である、マシュ・キリエライトが緊張した面持ちでいる。

 

 彼女は、かつて地球を焼却した第一の獣によってその命を奪われ、しかしある男と別の獣の手により、普通の人間としてこの世界に再び足を降ろした。

 以前のような、英霊としての力は失われこそすれ、あまりにも短く設定されていた寿命と言う足枷ーーーマシュ本人はそう捉えてはいないがーーーを完全に乗り越え、自身がもっとも尊敬する先輩との日々を有意義に過ごしていた。

 つい先程までは。

 

 立香は、その豊富な経験から「また微少な特異点か何かだろう」とあたりをつけていたが、第一の獣が残した四つの課題を経て、己の無力さを痛感していたマシュからしてみれば、やはり不安が拭えないでいた。

 しかも、今回ばかりはあのダヴィンチちゃんですらいつもの余裕を見せなかった。それほどまでに危険がある可能性の高い事態なのだろうか。考えれば考えるほど、マシュの心には不安が募っていく。

 それを見ていた立香はと言えば、ようやくマシュの様子がいつもと違うことに気付いたようだ。

 

「どうしたの?」

「いえ……」

 

 俯き気味なマシュの返事に、彼女が彼女自身に情けなさを感じているのだと理解した立香は、何時ものように笑って見せて、こう言った。

 

「安心して、マシュ。また絶対此処に戻ってくるから!」

「先輩……でも、私は……」

「そしたらまた、食堂で一緒にご飯食べよ!」

「……はいっ!」

 

 マシュは、立香への信頼でもって己の不安を払拭した。幾つもの危機を乗り越え、待ち受ける絶望に立ち向かって来たこの人ならきっと大丈夫だと。

 そうこうしている内に、メインルームへと到着したようだ。自動ドアをくぐり、中で待機していたダヴィンチちゃんと軽く挨拶を交わす。どうやら、先ほどの緊急連絡の時よりも、幾分か落ち着いているように見える。と、言うよりかは深く思考を巡らせているようだった。そして、ダ・ヴィンチが描いた女性であるモナ・リザそのものの、美しい見た目をしたダヴィンチちゃんは口を開いた。

 

「実は、君達が此処に向かって来ている間に、解析班がこんな解析結果を出したんだ。見てくれたまえ」

 

 そう言って、科学と魔術が融合した結果である、近未来的な立体画像を写し出す。そこには、極東の島であり、立香の愛する故郷でもある日本がある。画像は段々拡大していき、とある一点を表示した。

 

「これは……!」

 

 マシュが驚きの声を発する。立香もまた、その異様さに唾を飲み込んだ。

 そこに写し出されていたのは、寂れたボロボロの神社。しかし二人が驚いたのは神社自体にではなく、その人理定礎値。

 

「特異点である、と判断されたのはまさかのこの神社のみ。これだけでもすでに異常なのに、指し示す人理定礎値はまさかの”EX”と来た。何かがあると見て間違いないだろうね、これは。いや~、君たちに連絡した時は詳しい場所や年代は割り切れずに、人理定礎値しか割り出せていなかったんだ。まさか、この古びた神社のみとは思いもしなくてね」

 

 年代に関してはまだ分からないし……とぼやきながら、万能の人ですら悩ましげに腕を組む。それを見ていたマシュは、先ほどと同じか、それ以上に不安そうにしながら尋ねた。

 

「あの、ホームズさんはなんと……?」

 

 マシュの愛読書である”シャーロック・ホームズシリーズ”の主人公ホームズもまた、このカルデアにいる。英霊召喚システム・フェイトによる召喚ではなく、少々特殊な事情での現界だが、彼も頼りになるサーヴァントの一人であることに違いない。

 故に、マシュは何故かこの場にいない名探偵の意見を聞きたかったのだ。

 しかし、ダヴィンチちゃんの返答は渋いものだった。

 

「いやぁ、あいつの事は気にしなくても……」

「え? そ、それは何故でしょうか!?」

「うーん……」

 

 ダヴィンチちゃんがよりいっそう眉間のシワを深く刻ませたところに、落ち着いた、しかし何処と無く興奮しているかのような声が響く。

 

「私をお呼びかな、諸君!」

 

 そう、この声の主こそ、世界でもっとも有名な探偵。明かす者、”シャーロック・ホームズ”その人である。ご丁寧に、宝具のスポットライト的なアレまで使用しての登場だ。

 

「呼んでない! 帰れ!」

「まあまあ、落ち着きたまえよダヴィンチ女史。フム、まずは事のあらましを話そうか。今回の特異点について、今現在判明していることは、極東のとある神社に突如として発生したものだと言うこと」

「あーあ、始まっちゃったよ。出来るなら隠居しててほしかったんだけどね、全く」

「その神社の名は『博霊神社』。その歴史はかなり古く、それ故か、祀っていた神の名すら不明。誰が管理していたのか。何故撤去などをせず放置されているのか、他にも様々なことが不明のままだ」

「何か怖いね。オカルトチックな事でもあるんじゃない?」

「ああ。実際におかしな点はいくつかある。恐らく魔術ないし、それに近しい物で隠蔽をしているのだろう。今回は、その隠蔽方法が鍵となる」

「この特異点が神社にのみ存在する……。その異常も、隠蔽している何者かによって起こされている可能性が高い、ということですか?」

 

 つらつらと言葉を紡ぐホームズに、マシュが返した。その言葉にホームズは微笑み、立香はなるほど、と納得している。出番をとられたダヴィンチちゃんは隣で不服そうにしながら引き続きスタッフと解析を行っている。どうやら難航しているようだ。

 

「そして、今回此処に来たのはただ説明をするためだけではない。今回の特異点には私も同行しよう」

「え!?」

「あのホームズが!?」

「はぁ。あのね、こんなの特例だよ! 余りに謎が多いから、今回だけは現場を直に見たほうが良いと判断した。それだけ! いい!?」

「心得ているとも。我が名に恥じぬ行動をして見せよう」

 

 そう言って、名探偵は立香のもとへ歩み寄る。

 立香はなんとも頼もしい?仲間を得た!

 

「話は聞かせてもらったぞ、マスター!」

 

 その声に立香は聞き覚えがあった。何せ、始まりの特異点”冬木”で召喚した時から今まで、ずっとお世話になってきたサーヴァントの声だから、一瞬の声だけでわかるのだ。

 

「エミヤ! 来てくれるの!?」

「当たり前だろう? 昼食の邪魔をされては黙っていられない。それに、日本の特異点には興味がある。是非とも同行させてくれ」

「エミヤさんがいれば百人力ですね! 先輩!」

 

 マシュもまた、長らく付き合ってきたエミヤにはかなりの信頼をおいている。彼のお陰で乗り越えられた窮地の場面は数知れず。霊基も最高値まで成長しており、贔屓目なしにカルデア最強と言っても過言ではない。

 しかしそれだけではない。

 

「arrrrr……」

 

 エミヤの後ろには、全身に深い紺色の甲冑を装備した狂戦士、バーサーカー・ランスロットもいる。彼とエミヤの相性は抜群で、狂ランスロットもエミヤに次いでカルデア古参の一人だった。

 

「おとっ……ランスロットさんも行かれるのですね! 比較的頼りになるほうの霊基でよかったです!」

 

 断っておくが、マシュに悪気はない。彼女の中に存在した霊基の影響がそうさせているのであって、彼女自身、この癖を治したいと思っている。ランスロットも心なしかションボリしているように見えるが、本当に、彼女に悪気はないのである。

 実際、以前よりかなりマシになってはいるのだ。以前のマシュなら、狂化しているランスロットでさえも膝を折っていた事だろう。

 

 話を戻すが、ランスロットの宝具は”手で触れたものは自身の宝具として扱えるようになる”、と言う特殊な物で、彼が武器として認識したものは例え丸太だろうが鉄製の只の棒だろうが、Dランク相当の宝具となる。また、元々が宝具であったり、神秘を纏う物であったなら、そのままのランクで十全に扱えるようになる。

 これはつまり、魔力さえあればあらゆる剣を精製出来るエミヤが近くにいれば、武器に困ることは一切なくなり、エミヤ自身もランスロットの補助・防御等のサポートや、前衛をすべてランスロットに任せた上で、エミヤが後ろから狙撃といった戦法もとれると言うこと。

 こう言った理由から、二人はよく組まされ、それ故に息のあった完璧な連携も可能になった。

 

「よーし! それじゃ! カルデア、ひいては人類最後のマスター、藤丸 立香に命ずる! 極東の地にて突如発生した特異点Xを調査および攻略せよ! ただし、不明なことが多い謎の特異点だ。くれぐれも無茶はしないように。いいね?」

 

 カルデア所長代理であるダヴィンチちゃんの声がメインルームに響く。目指すは前例のない超極少特異点。しかし、決して無視はできない謎を孕んだ危険地帯。

 立香は先程よりも一層顔を引き締め、握った手の甲を見る。赤く輝いた三画の令呪がそこにはあった。胸に手をあてて目を閉じる。深呼吸を繰り返し、ゆっくりと目を開いた。

 

「準備は出来たようだね。さっきはああ言ったけど、君の事だ。きっと無茶をする。そういう性分だからね」

 

 ダヴィンチちゃんの声が聞こえる。それにマシュは肯定した。困ったように微笑みながら。

 マシュの心にいまだ残り続ける不安。いい後輩を持ったと感動しながらも、立香は罪悪感を覚えずにはいられない。だからせめて、生きてかえって来ようと、そう心に誓った。

 視界が光に包まれる。隣には世界一の名探偵、円卓最強の騎士、そして無銘の英霊。

 

 

 新たな旅が始まる。




番外特異点    人理定礎値:EX

A.D.???? 徹底隔離結界 幻想郷

     最後の楽園

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