大まかな流れをさっさと知りたいんじゃ!!って方はそちらをどうぞ。
それは、流星群のように流れ込んできた。
数多の記憶が脳裏に火花を散らし、前の『僕』と今の僕とが融合する。
『見えるか!!?もう100人以上は救い出してる!やべーって!まだ10分も経ってねーってやべーって!!』
地震によって引き起こされた、何百人もの人が生き埋めになった倒壊事件。
その一部始終を撮影した映像に突如として現れた人影は、まさに誰もが思い描くヒーロー像そのものだった。
『もう大丈夫、何故って? 』
『私がきた 』
その懐かしくも頼もしい声に、閉じていた記憶の蓋が突如開け放たれたのだ。
「……あ」
矢のように緑谷出久という男の一生の記憶が溢れ、処理落ちしたかのように固まる。
これは、『僕』の記憶。
前世の『僕』だ。
オールマイトから個性を授かり、雄英で過ごした日々のこと。
プロヒーローとして華々しくデビューをし、無理を推してオールマイトの次世代を築いたこと。
随分と早くに身体に限界を感じ、信用出来る弟子に個性を託したこと。
……死柄木弔との一騎打ちで命を落としたこと。
プロヒーロー時代の傷の名残りすらない艶々とした滑らかな肌を見て、前世と今世の記憶が混ざり合うのを感じる。
まだ幼い身体は、初めてオールマイトを知った3歳の頃のものだ。
それならこれは、生まれ変わりというものなのか。
転生なんてまるでコミックみたいな事が本当にあるなんて。
でも僕がやりたいことは変わらない、オールマイトみたいなヒーローになりたい。笑顔でカッコいい、最高のヒーローに!
「出久ー?またそんな動画見てるの?」
「おかあさん!」
カチ、と勝手にブラウザを閉じられてしまう。
前世での記憶が溢れている今、お母さんを見るととても懐かしさを感じる。
「あのね、僕ヒーローになるんだ!」
まだ若いお母さんに無邪気に告げる。
前世では無個性に産んでごめんと涙を流したお母さん。
ストレスで太ってしまったけど、今世ではあんなに泣かせたりしない。身体を壊さず、お母さんの心配性にもカラリと笑って心配し過ぎだよと言えるような、そんなヒーロー……
「あのね、出久。ヒーローなんてカッコいい言葉に騙されちゃだめなんだよ。あのオールマイトって人は犯罪者なんだから」
……え、?
「お父さんの書斎、やっぱり鍵を付けるべきね……。出久が勝手に見ちゃうわ、この違法動画」
はぁ、とため息と共に抱き上げられ、出久の言葉も聞かず書斎から追い出されてしまった。
オールマイトが犯罪者?
何だか様子がおかしい。生まれ変わって、お母さんもオールマイトも変わらず存在していたから無意識に前世と変わらない世界を想像してしまっていた。
ここが、元プロヒーローにとって無慈悲な程冷たい世界だと言う事を知ったのはそれからすぐ後。
事の始まりは中国軽慶市。「発光する赤児」が生まれたというニュースだった。
以後、各地で超常が発見され、理由も判然としないまま時は流れる。
世界人口の約8割が何らかの特異体質である超人社会となった現在、しかし法というものは意固地に「個性」の使用を禁止し続けた。
人命救助のための個性使用ですら例外は無いと犯罪者扱いされ続けた民衆は巨大デモを決行し、その結果個性の使用は特殊訓練を受けた警察や自衛隊、国の許可した一部の半国営企業……医療機関、研究所などのみ許可されることになる。
しかしこの個性飽和社会において敵(ヴィラン)の犯罪数や不満は鰻登りに増えつつあり、無許可で個性を使いまるでヒーローのように振る舞う不法自衛団組織(ヴィジランテ)も次々と粛清対象になる世の中は大混乱を極めた。
それを憂いた警察の1部上層部と自称正義の味方達は手を組み、秘密結社を発足させる。
名前は『UA』。
オールマイトを始めとしたS級犯罪者やその予備軍のみが名を連ねるとされているその秘密結社は、正しくヒーローであり民衆の憧れだった。
事実上の解体かと言わしめる、ある大事件が起こるまでは。
これは、僕緑谷出久が最高のヒーローになるまでの物語だ。
「出久は女の子なんだから、ケーキ屋さんとかには興味ないの?」
「へっ!!?無いっ!!」
「そっかぁ……」
お、女の子として。
……嘘だろ。
*
お前連載はどうしたのかって?ははは(棒)
とりあえずこの数ヶ月更新が途絶えてしまったことお詫び申し上げます。クリスマスにお正月、スマホを見る機会も増えましょう。過去作ではありますが少しばかり手直ししておりますので、暇つぶしによろしければ。