指名手配犯ヒーローズ   作:詩亞呂

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Demonstration-1

 

 

 

『どうしよう……わた、私、個性使っちゃった……』

 

あの時麗日さんが咄嗟に僕と子供を守って個性を使った時、不正使用をしてしまったことに酷く怯えていた。

 

僕には前世のこともあり個性使用にそこまでマイナスのイメージを持つことは難しい。けれども今世での個性に対しての規制は度を超えているのだ。それまで気丈だった麗日さんが震え涙を流す程にその罪は重い。

 

 

例えば、災害時の正当防衛の個性使用は命に関わる場合のみ特別措置として無罪になる。これは人災では無く自然災害のみという所がミソだ。

 

人災に巻き込まれた際の自衛使用は情状酌量の余地はあれど不正使用の前科は付く。

人に……例え相手が敵であっても被害者が加害者に殺傷性のある個性を向けた場合は、その時点で最悪殺人未遂罪に問われる可能性があるのだ。今回麗日さんが恐れたのがこれに当たる。

個性の不正使用は事実確認が難しいため現行犯逮捕が原則。そのため敵に隠れて個性使用が警察に見えなかった事や証言する可能性のある住人らの避難誘導が済んでいた事が幸いした。

例え転ばせただけであってもそこに『個性を使って』が付けばたちまち犯罪者扱いだ。

 

オールマイトが死刑すら有り得るとされるのはそのせいでもある。彼にはなまじファンも多く、ネットに敵と対峙する動画や写真、アンチからのタレコミ等誤魔化しの効かない証拠が多過ぎる。未遂とはいえ数が多すぎる上に影響力が強い。ヴィジランテ集団を叩くのに見せしめとしての死刑は最も効果的だろう。

 

しかしここまではまだマシなのだ。これでもマシなのだ。

そう、こんなガチガチな法整備下で、異形型の個性持ちはどうなるのかという話。

 

異形型の中には勿論、普通に生きているだけで個性使用と同等の『普通の人間には無い』ものが常時発動している人だって存在する。

麗日さんの手のひらにある肉球やかっちゃんから香るニトロの匂い等だって『普通の人間には無い』ものではあるものの、異形型のそれはある程度の許容範囲(見て見ぬふり)を超えるのだ。

顔が動物や魚なもの、体の一部が動物のように発達したもの。人間と動物とがミックスされたような個性持ちはその最もたる例だ。

 

彼らは生きているだけでその個性を使わざるを得ない。ならばどうするか。

このくそったれな世界では、異形型個性を持つ人達は「個性障害者カード」が配布されるのだ。

 

異形型……お国の定めた言葉で言えば『個性障害者』。彼らはありとあらゆる場面において、個性の不正使用の面に関してだけある程度の配慮を求めることが出来る。生まれ持っただけの個性が障害に分類されるという何とも胸糞悪い話だ。

 

……個性を使うだけで犯罪者呼ばわりされるこの世の中で、個性を使わないと生きていけない人達にとって個性は正しく人生の「障害」足り得るのかもしれないけれど。

 

そんなものがあるせいで異形型は依怙贔屓だ、犯罪予備軍だと騒ぎ立てられ何かと社会的弱者になりやすい。

差別の的を積極的に作り出しているのは国だけれど、この差別を無くせば結果的に個性使用の緩和が始まるため手が出せない。

臭いものに蓋をされ、犯罪者にしない代わりに生きにくい一生を強制される異形型。

 

あぁ……この世界は、今日もこんなにも歪んでる。

 

 

 

 

「聞いてんのかクソデクァ!てめぇ自分が無個性だっつーこと忘れてんのか!!

金輪際敵前へ無鉄砲に飛び出さない!復唱!!」

「テキゼンへムテッポウニトビダサナイ」

「再度復唱ォ!!」

 

僕は帰宅後、かっちゃんにみっっっっっちりお説教を食らった。

……たしかに寄り道をお知らせしてはいたけれど。その周辺で敵が暴れてるニュース速報があって迎えに行けば、顔を真っ青にしてマーライオンしてる女の子抱えた僕がいればそりゃあ目が点になることだろう。

麗日さんが泣きながらもうあんな無茶はしないでと縋り付いてきたのにも参った。

 

「なんでてめぇはその便利な文明の利器を使って俺を呼ばねぇ!!」

「……忘れてました」

「……ッッッ」

 

スマホを指さして固まるかっちゃんは怒りで声も無くなってしまったようだ。申し訳ない。

護衛対象が勝手なことをして、さぞかっちゃんも相澤さんから怒られたことだろう。お説教はごもっともだ、甘んじて受け入れる。

「あの丸顔女がてめぇを守ってなきゃ今頃死んでたぞ。一般人に迷惑かけんなクソが!」

「う……。あの子は麗日さん。丸顔じゃないし……それにね。あの子ヒーローに向いてると思うんだ」

「あ?」

唐突な推薦に目を丸くするかっちゃん。

 

「ヒーローらしい正義感、自己犠牲の精神、何より今の個性使用の規制に強い不満がある。個性も強力で根性もある」

麗日さんは記憶が無くともヒーローの器足り得るものを持っていた。UAヒーローに名を連ねるのにも相応し───

 

「やめとけ」

 

静かにかっちゃんは否定した。

「あまり一般人を巻き込むな。

お前は仕方が無かったとはいえ、俺らは世間からみたら敵と同等の犯罪者だ」

オールマイトが僕に声をかけるのを足踏みした理由と一緒だ。

昔、ヒーローになりたいと口走った僕をどうにか考え直させようとお母さんが言葉を尽くしていたのを思い出す。

 

「UAの規則でもある。勧誘は、絶対にしない」

過去に何かあったのだろう。

前世ではあんなに脚光を浴びていたヒーローが、今やただの犯罪者。

 

「本人が本当にヒーローになりたがって、行動を起こし始めるようだったら考えてやる。だからそれまでは何も話は振るな。どこから話が漏れるかわからない」

「……わかった」

 

やろうとしていることは人助けなのに、身の振り方は正しく犯罪者のそれであるのが、なんともやるせなかった。

 

 

 

 

 

「『表』の依頼?」

『そうだ。警備会社のバイトスタッフとして話を聞いてやれ。今日は相談だけとのことだ、お前でも出来るだろ。俺は遅れて到着する』

「……デクを1人にする訳には」

『なら彼女も連れていけ。というかお前1人よかマシだろう』

 

そんな相澤さんからの連絡があったのは、巨大敵の襲撃事件から数日後の休日だ。

一応会社として名前があるため、仕事が入ればきちんと対応するらしい。ボロボロのビルにある胡散臭い警備会社なせいか、常に閑古鳥が鳴いている状態らしいが。

完全にUAのためのハリボテ事務所だと思い込んでいたため、一応会社として機能していたことにびっくりだ。

 

「聞き役として一番使っちゃダメな人に連絡寄越すとか、UAって人手足りてないんだね」

「ふざけんな余裕だわ!……今は色々あんだよ」

 

含むような表情のかっちゃんはそれ以上言う気は無いようで、「行くぞ」と準備を始めたのだった。

 

 

 

 

「今日は休日にわざわざありがとう、私達平日は学校があるから難しかったの。私、蛙吹梅雨。よろしく」

「万偶数羽生子です」

 

寂れた事務所にやってきたのは、中学校のセーラー服を着たかつての級友蛙吹さんとその友達の万偶数さんだった。

少し驚いたけれど、こうして昔の知り合いと遭遇する機会はままある。それよりもまだ中学生だという彼女らがこんな怪しい警備会社に相談に来る方が衝撃だ。

養ってもらっている身としてはあまり悪いことは言えないけれど、所長である相澤さんの合理的主義から観葉植物の一つも置いていない事務所は酷く殺風景で、おそらくオールマイトの趣味であろう無駄に豪華なソファとラグに恐ろしく合っていない。

 

「……中学生?用件は」

訝しげに相手を睨むかっちゃん。

お茶を淹れ終えたおぼんでガンッとぶん殴る。

「ッッッて!!何しやがる!!」

「相談者にガンつけないの!それとまずこっちも名乗るのが普通でしょ!

───ごめんね、僕は赤谷海雲。こちらこそよろしくお願いします」

「……爆豪勝己」

 

遠慮を止めた僕は横からとんでもない殺気を感じながら自己紹介を進める。一応反論しない所、態度がアレな自覚はあったらしい。ならやるな。相澤さんの予想が綺麗に当たっちゃってるじゃないか。

 

「赤谷ちゃんに爆豪ちゃんね。それで、私達が来たのは他でもないわ。私達の警備をお願いしたいのよ」

「……なにかあったの?」

「というより、あるかもしれないのが言葉として正解かしら」

 

す、とプリントを差し出される。

 

「……『異形型個性の規制緩和に対するデモンストレーション活動』?これは……?」

 

「言葉のままよ。私達異形型個性が一般人と同じ生活が出来るような規制緩和を求めてのデモ行進が近々行われるの。オールマイト逮捕に触発された幹部が、自分で自分の身を守ろうと発案したことがきっかけ。私達もそれに参加することになってる。その警備隊をお願いしたいのよ」

 

オールマイトが逮捕されたことで危機感を覚えた一般人が、長く変化を恐れて縛られつつもなあなあで済ませていた一般人がついに重い腰を上げた。

人権団体が疎らに活動しているのは見たことはあれど、デモ行進なんて規模の大きなものは初めての試みだそうだ。

 

「変わりたいのよ、みんな」

「蛙吹さん……」

「……で、なんでウチなんだ。デモとなりゃ警察も警備に動員される。

ウチみたいな人手の足りてねぇクソ寂れた警備会社にわざわざ声かけなんてする必要性ねぇだろ」

「そこなのよ」

 

かっちゃんの人を選ぶだろう粗野な態度に全く動じない蛙吹さんはにこりと微笑んだ。

 

「まず警察の件ね。

あまり誉められた事では無いのだけれど、今警察は敵及びヴィジランテ集団の大量検挙に力を注いでるらしいの。だからそこまで大掛かりに動員出来ないとの回答よ。あとは民間で補え、とね」

「クソかよ」

 

オールマイトに触発されて動き始めたデモ活動が、オールマイトの逮捕で活気付いた警察に阻まれるとは。なんとも因果なものだ。

 

「それを聞いて、大人達は警備体制の薄い中自由にやらかしてしまおうと考える人が少なからずいるらしいの。暴動にでも発展してしまえば事だわ。だから私達がこうしてお願いに回っているのだけど……」

「中学生だと知ってもそのまま話を聞いてくれたの、ここが初めてよ」

 

蛙吹さんの言葉尻を受け継いだ万偶数さんは軽くため息をついた。

「いたずらなんじゃ、報酬は本当に払えるのか、まず親御さんの了承は?そんなのばかり。だからまずお話をきちんと聞いてくれる所に頼もうって梅雨ちゃんと話していたの」

「……なるほど、だからお休みの日なのにわざわざ制服で」

「そうよ」

 

逆説的に言えば、こんな寂れた怪しい警備会社に縋らなければならないくらいには蛙吹さん達も切羽詰まっていたということだ。

 

「……酷い話だよね。

個性は名前の通りただの個性なのに、病気と一緒くたにして障害者だなんて。本当に病気で苦しんでる人にも失礼だ」

歪んだこの国に蔓延る歪んだ法律に、真正面から異議を唱えるのはこれまでオールマイト率いるヴィジランテ集団ばかりだった。

それに甘えず、個性では無く対話で解決しようと立ち上がる人が増えたのは変わろうとする人が増えたから。

僕はその勇気に賞賛の拍手を送りたい。蛙吹さん、万偶数さん。君たちもまた、この理不尽と戦おうとする正義感と意思の強さは前世で目指していたヒーローの心意気そのものだ。

己の個性を障害に分類され、これまで差別に苦しんだだろうにしっかりと前を向いて歩いている。

 

「……そう、そうなんです。私達は身体が悪い訳じゃない。同情も配慮も差別もいらない、ただ普通の人間として生きたい」

 

「……大丈夫。力になるよ」

 

僕は優しく手を握った。

また勝手に決めやがって、とかっちゃんが小さくため息をつくのが聞こえたけれど、表立って否定はしなかった。

中学生ながらこんな所まで来て自分達の活動の手伝いをして欲しいと真摯に頼む女の子を、警備会社のアルバイトという立場から断る言葉を見つけ出せなかったらしい。

 

 

 

「悪いけど」

 

……相澤さんが、来るまでは。

 

「うちじゃ無理だよ」

 

 

 

空気を切り替えるように登場早々今までの会話を全て無にするような発言をする相澤さん。

唐突に現れた不審者の代表例みたいな出で立ちの相澤さんに、蛙吹さんらは少し身体を固くする。

 

「どうも。ここの所長の相澤です。

お嬢さん方の話は大体廊下で聞かせてもらったよ」

 

よろしく、と飄々と告げた相澤さんは空いていた下座のソファにゆったりと腰掛ける。

「相澤さん、無理ってどういうことですか!?」

「言葉のままだよ。お前ら話聞くだけっつったのに勝手に了承すんなバイト」

「うぐ」

 

痛い所を突かれて固まっていると、相澤さんは「すまんが」と前置きをした。

「今うちの職員の大半が別任務に当たっていて、実働可能なのが俺と……あと1人くらいしかいないんだ。警備隊なんぞ物理的に組めないから、今は簡単な個人警護の依頼しか引き受けてない。悪いな」

「……そこの爆豪ちゃんと赤谷ちゃんは?」

「赤谷は事務方のバイトだ。爆豪は別件の仕事がある」

 

は、と我に返る。

そう言えばUAにお世話になる際言っていた。良くも悪くも目立つUAヒーローが警察の一斉捜査で芋づる式に捕まらないよう、自宅待機を命じているヒーローがいると。

それもあってかっちゃんが僕の護衛に当たることになったのだ。

少ない人数とはいえ警察と一緒に仕事をするとなるとかなり条件は厳しい。依頼人を警護するだけでは無く近くにいる警察から自分の身も隠さなければならないのだから僕らにとって非常に難易度の高いミッションだ。

人がいないことを理由に断っている相澤さんだけれど、理由はもっと深刻な所にある。

簡単に了承してしまっていたけれど、こちらにも深刻な事情というものがあることに気が付いた。

 

 

「……なら私と羽生子ちゃんの個人警護ならどうかしら。デモ隊全体じゃなくて、私達だけについて欲しいの」

「は……?」

 

しかし、蛙吹さんからの妥協案はこちらの予想を超えてくる。もう話は終わりだと思っていた相澤さんは目を丸くした。

 

「……理由を聞いても?」

「えぇ。まず一つは抑圧が激しい今、非常に攻撃的な人もいてかなり危ない状態なの。だから一人でも止めてくれる人が多い方がいい。

もう一つは学生と大人じゃ同じ前科でも意味が変わってくるからよ。

……個性事故も多い今時、手に職がある人に前科が付いても即解雇なんてことは無いわ。

でも私達学生に前科がついた場合就職に必ず支障が出る、未来を狭めたくないのよ。未来を広げたい、そのためのデモ参加でもあるのだし」

 

異形型はもう存在しているだけで個性を発動しているのだと過激な人間は言う。

万が一軽い喧嘩が発生した場合でも、個性制御が出来ていなかったとクレームを付けられれば終わりだ。

 

「依頼は私達2人。それなら可能?」

「……わかったよ、可能だ。俺が警護につこう」

 

結果は蛙吹さん達の粘り勝ちだった。

相澤さんから了承を得てからは、詳しく当日の動きを詰め始めた。

僕らはこれで完全に蚊帳の外になってしまったため、新しくお茶でも淹れ直そうかなと席を立つ。

「ありがとう、赤谷ちゃん」

「ん?あ、紅茶?今アールグレイしかないんだけど……」

「お茶じゃないわ、相談に最初に乗ってくれたのは赤谷ちゃんと爆豪ちゃんだから。

私達のお話、ちゃんと聞いてくれたの嬉しかったの。ありがとう」

「蛙吹さん……」

「梅雨ちゃんと呼んで」

 

ケロケロ、と楽しげに笑う蛙吹さん、ううん。

「……うん、梅雨ちゃん」

 

 

 

 

 

話を詰め終わった彼女らが帰った後、僕はそっと相澤さんに声をかけた。

「あの、良かったんですか?」

「何がだ」

「護衛の了承の件ですよ。1人でなんて、かなり難しい案件になるんじゃ……」

「一番真っ先に了承した奴が何を言う。

……あいつらは万が一を考えて、まず相談実績だけでも作っておきたかったんだそうだ。相当頭が良い。

表向きの断る理由は完封されちゃあ仕方が無いだろう」

 

そう相澤さんは嘯くが、こちらとしては人数不足云々を言うまでもなく『別件で仕事が』とさえ言ってしまえば内情を知らない蛙吹さん達は引き下がるしかなかったはずだ。

わざと選択の余地を残してやったのは、蛙吹さん達のヒーロー然とした行動力を相澤さんも好ましく感じたからかもしれない。

 

……なんて、聞いても絶対答えてなんてくれないだろうけど。でも、そうだと良いな。

 

「でも、相澤さんの個性じゃ異形型の個性に対抗する手段は無いんじゃないですか?」

「……俺はまだお前に個性名を言ってないが」

 

あ、やばい。

 

……と思ったが最初にイレイザーヘッドとしての紹介は受けていたことを思い出した。アングラ系のため世間的認知は酷く薄い。言わずして個性を当てられたことなんてないのだろう。

 

「知ってますよ、アングラ系イレイザーヘッド。僕ヒーローオタクなんで!抹消ヒーロー、カッコイイです!」

 

一瞬うわ……という顔をされたが引かない。傷付いてもいないぞ!

「まぁ……なら話が早い。

俺の個性は異形型には効かない、その通り。けど暴動が起こったとしても俺達は決して個性を使っちゃならない。ウチは個性使用の許可を得ていない民間会社だからな。表は」

 

警備会社で個性の使用許諾を得ているのは国営の、それこそ国家レベルの要人を警護するような所だけだ。しがない民間の会社には存在しない。

 

だから別に誰が行こうが変わらないんだよ。とりあえずタッパがあって体力があるやつ。まぁ、俺でいいだろう、と。

 

「あぁそうだ緑谷。わかってると思うがデモの様子を見にいこうとかするなよ。

お前は別に犯罪を犯した訳では無いから世間に顔は割れずに済んでるが、オールマイトさんの件に関してのキーマンとして警官に顔はとっくに割れている。少ないとはいえ警官が配置されているんだから……わかるな」

「う」

 

釘を刺されてしまった。この短期間で面倒ごとにも困って居る人がいたら率先して突っ込んでいきがちな性格を既に見抜かれてる。

 

「その通りだクソデク。当日は俺がガッチリ見張ってやる。くれぐれも余計な手間かけさせんな」

「よろしく頼む」

「うぅ……」

 

全く信用されてない上に影からこっそり見守ろうと内心で計画を立てていたことがバレバレだったことに歯噛みする。

 

 

そして勝己は、これだけ言ったにも関わらず胸騒ぎがして仕方が無かった。

言葉だけで納得するだけなら、再会早々自殺紛いの大ジャンプも、いきなりUAに自分を保護しろと交渉してくることも、オールマイトと関わりを持つことも、転校早々事件に巻き込まれもしないはずだ。

その悪い予感が的中してしまうのはすぐの話なのだが───。

 

 

*




・「個性障害者カード」
異形型個性を持った子どもが小学校入学前に個性制御の特別訓練を受けた人のみ与えられるカード。のみ、と言っても国策のためほぼ強制的に受けさせられる。
これを提示すると、個性使用時に限り配慮を受けることが出来る。勿論『配慮』なだけで、実際殺人を犯したりした場合減刑は有り得ても無罪放免になるような魔法のカードでは無い。
現代におけるあらゆる差別を個性に置き換えたようなもの。


蛙吹梅雨
万偶数羽生子
Not転生者。同じ中学の同級生。元々異形型ということで苛められていた2人、進級と同時に同じクラスになり友情を深める。
ちなみに羽生子は正確的に言えば発動型の個性持ち。彼女が異形型と見なされたのは頭部が人間とかけ離れたような外見の子供で、発動型としてだけでは無くハブ蛇のような頭部も持つ混合異形型個性との見方をされたため。
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