“継承”   作:キサラギ職員

1 / 2
『獣のタリスマン』
古い獣の似姿となる、古木のお守り
奇跡、魔法の両方を使用できる

神の象徴は、古い獣の似姿にすぎなかった


楔から火へ

 遥かなる地下空洞。果てしなく続く地平線と、白い砂浜。朽ちた建物。突き刺さったいびつな形状の武器が、まるで墓標のように並んでいる。

 そこには、楔を思わせる、長い形態をした“それ”が静かに鎮座していた。

 生物なのだろうか。全身を植物に覆われている姿からは、そのように見えることだろう。

 その生物の体内には、二人の人物がいた。

 神々しいまでの光を放つソウルを前に、一人の女と、一人の騎士がいた。

 

「これで全て終わりました」

 

 黒衣の女が、どこかほっとしたような口調でそう言った。女は、蝋で潰された瞳を騎士のほうに向けていた。

 騎士は、その声に振り返った。

 

「デーモンを殺す方、あなたは、このまま上に戻ってください」

 

 騎士は何も言わずに言葉を聴いていた。

 

「もう、楔があなたを繋ぎとめることはありません」

 

 女は、古いデーモンの一人であった。いやあるいは、もっとも古い人であったのかもしれない。

 騎士を楔の神殿へと招きいれ、そして、(ソウル)を世界に繋ぎとめた張本人であった。

 古きもの(オールドワン)は全てのデーモンを失い、そして、新しいデーモンを求めて口を開け、騎士を飲み込んだ。誤算だったのは、女も一緒に入ってきていたことであろう。女は、デーモンであった。その身を犠牲にすることで、オールドワンをまどろみにつかせることができるのであった。

 

「私は、獣を再びのまどろみに導きます」

 

 女は言うと、ポールを取り落とし、ゆっくりとソウルの輝きに手を伸ばした。

 

 そして、騎士はなんのためらいもなく、女を後ろから斬りつけた。

 悲鳴を上げて倒れこむ女を文字通り踏み越えて、ソウルの輝きへと手を伸ばす。

 数多くのデーモンを屠り、亡者を殺し、ソウルを鍛え上げてきた、新しいデーモンの誕生だ。

 

 かくて古い獣は、新しい、強いデーモンを得た。

 やがて世界は霧の中に溶け去るだろう。

 

 ………ソウルを求めよ!

 

 世界は、無色の霧に包まれた。あらゆるものは溶け、霧となって消えていく。

 最後に残ったのは、唯一、古い獣だけであった。獣は自らを世界そのものとした。もはや獣は世界であり、ソウルの支配者であった。

 世界は、霧と、獣だけになった。

 やがて獣の体は分かたれ、世界は、霧と、岩と、獣の体を包んでいた樹木ばかりになった。

 

 あるとき、世界の外側から、何者かがやってきた。彼らは竜になり、そして大樹になった。

 彼らは、初め、竜ではなかった。大樹でもなかった。彼らは、差異もなく、差別もない、永遠にも続くこの世界で、ついには竜に、そして大樹になった。

 彼らはこの世界唯一の住民となった。

 

 

 だが、いつかはじめての火が“絵描かれ”、火と共に差異がもたらされた。

 火は、古い獣を焼き尽くした。獣の体は酷く燃えやすい木々に守られていたせいだ。

 獣の蓄えていたソウルもまた、火になった。

 熱と冷たさと、生と死と、そして光と闇と………………。




『黒い魂の血』

奴隷騎士ゲールの、虚ろに生じた暗い魂の血

アリアンデルの「お嬢様」が絵画世界を描くための顔料となる

ゲールが小人の王たちに見えたとき
彼らの血は、とうの昔に枯れ果てていた
そして彼は、暗い魂を喰らった
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。