虹の橋がかかるまで―女神となった強面青年の勘違い冒険譚―   作:一二三 四五八

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1・2話が1話にまとまり、
3話が差し替わっております。
未読の方はそちらから読んで頂ければ幸いです。


4)神様と家族とお着替え

4)神様と家族とお着替え

 

あれからお互いの事を説明しあった彼らは現在。

 

 現在木陰の中でカミナは座りこんでその身にかけていた赤い布、マントに身をくるませており、それを取り囲むように美女、美少女に囲まれていた。

その小脇には未だに抱きついたままの幼き二人の姿が見える。

 

 彼女達から説明を受けたカミナはようやく状況を理解した。どうやら彼女達は全部自分の力で女の子にした元は装備だったモノらしい。

 

 それで自分も女の子になったのかとカミナはやっと理解した。

 

そうなったのは自分の責任である。カミナはそれで誰を恨む事なく、素直にその現実を受け入れた。元々耐える事に慣れている彼はそれこそあっさりとそれを飲み干し、むしろ多くの女性の心を歪めずにすんだ事を女神に感謝して今へと至る。

 

唯一染めていた髪の毛の色が落ちていたのが気になったが元々のくすんで色褪せたような色から綺麗なった金色になっていたので問題があるならまた染めればいい。

 

そんな事を考えるばかりだ。

 

「神様、落ち着かれましたか?」

「ありがとう。おかげさまで落ち着いたわ」

 

 そう言って尋ねてきたのは騎士のような出で立ちをした美女。金髪の美しい髪を真っ直ぐに降ろし、その碧眼は糸のように細く、浮かべた微笑みがどこまでも優しい人だ。

彼女は元はカミナの着ていた鎧だったらしく、何かと気遣い上手で頼りになる女性だった。

今も自分の頬に手を添えながらカミナの事を心配げに見つめてくれている。

 

「いやぁ、ワタシもびっくりしたよぉ」

「「ワタシもぉ」」

「辺りの探索から戻ってみれば、あのご立派な御姿がそのような麗しい御姿に変わられていていささか驚きましたぞ?」

 

 こちらの武士のような着物姿の出で立ちの黒髪黒目で髪を頭の後ろで束ねた凛々しい乙女は、元はカミナの持たされていた剣が形を変えた姿らしい。

快活そうで、どこか古めかしい言葉を使うその少女を見ると彼女の元となった刀のような形の剣の姿が連想できる。カミナの前でその片膝をつき、礼の形をとっている彼女の瞳にはどこまでも純粋な忠誠の心が宿っている。

 

 彼女達から自己紹介を受けたカミナは自分の力がどのようなモノかなんとなく理解した。そして彼は今彼女達に謝りたかった。自分が勝手に人の姿へと変えてしまった彼女達の事を思うと、それは絶対におろそかにしてはいけないケジメだと彼は考える。

 

「多分私の力を使ってしまったせいでしょうね。驚かしてごめんなさいね?

貴方達の姿も勝手に変えてしまった。本当に申し訳ないわ……」

 

 カミナの口から出る言葉はどうやら自動的に女性のものに変換されてしまうらしい。正直違和感しかないが、本人は意味が伝わればいいとそれをあまり気にしていない。

ちなみに原文は「多分俺の力のせいだ。騒がせてすまん。君等の事も、本当にすまない」である。口数の少ない男の言葉をだいぶ補完してくれている辺り、翻訳さんは仕事をしている。

 

「そんな事はございませぬ!」

「どうかお気になさらないで下さいませカミサマ」

「ワタシね。神様がこの姿を与えてくれてとってもうれしいの!」

「……動けるってすごいの。カミサマありがとう」

「またそんなの気にしてぇ。カミナくんは考えすぎだぞぉ」

 

 カミナが頭を下げて言った言葉を聞いて女性達はみな一様に驚いた。彼女達はみなカミナに姿を変えられた事に深い感謝を抱いていたし、神様が下の者に謝罪するなどこの世界の常識ではありえない事だった。なによりカミナの変化を、

 

(たぶん我々に姿をお与えになる為に、力を使いすぎてあの雄々しい姿を維持できなくなってしまわれたのだろう。おいたわしい)

(お美しい御姿。鎧は貴方様をこの身にかけてお守りしますわ)

 

みながこのように受け取っていた。

 

 彼女達は神様であるカミナ自身が間抜けにも自分に力を使って女になって戻れなくなってしまったなんて欠片も思っていないのだ。

誰もが自分達を変えてしまった代償か何かだと、考えている。

 

おかげで彼女達の神様の評価は爆上げ中だ。

 

 なお彼女達の好感度が恋愛感情だけでなく、友愛や信仰にも影響しているのは女神アルメリアのずさんな仕事のせいであるのだが、その話は別の機会に。

 

「カミサマ美人になった~♪」

「……でもワタシ元の姿のカミサマの方が好き」

「ワタシもぉ~。大っきいお手々できゅっとされるの好き!」

「アタシも違和感しかないなぁ。カミナくんっていったらあのごっつい方だもん」

 

「それならば某も雄々しき姿の神様の方が望ましいぞ。あの力強い御姿。さぞ力ある武神の神格をお持ちだったのでしょう!」

「あら、ワタクシは神様の麗しい御姿も素晴らしいと思いますわ。だってどのような御姿も本当に絵になる御方なのですもの」

 

「……ありがとう、みなさん」

 

 ここで意外な事だが彼女達の中で、カミナの元の姿の評価はすごぶる良かった。

ぶっちゃけみんな元々器物である。人の美醜はそれほど気にならない。好みはあれどそこまでのこだわりがないのである。大っきくて頼りになりそう。彼女達にはこれが重要だった。

 

 それでも今のカミナの姿はそんな元器物の彼女達の目で見ても綺麗だと分かる程の異常な美を備えている。これはこのまま人前に出ると、元の姿とは別の意味で凄いことになるのだが、もちろんこの時のカミナも彼女達もそんな事には気づいていない。

 

 カミナは続けて彼女達にどうしても言いたかった言葉を伝えた。彼は家族を望んでいる。だからこそ、もっと彼女達には気安い関係を望んでいるのだ。

 

「それでね、みんな。出来ればその神様と言う呼び方もやめて貰えないかしら。私は貴方達と家族になりたいと思っているわ。だからどうかそんな呼び方じゃなくてカミナと私の名前で読んで貰えないかしら。そしてもっと隔たり無くお話しましょう?」

 

「そのような事、恐れ多いです!」

「もったいないお言葉ですわ。……本当によろしいのでしょうか?」

「カミサマのカミナサマ?」

「……カミナサマのカミサマ?」

「アタシはもう呼んでるけどね?」

 

 反面、彼女達は神であるカミナがそのような関係を求めるとは露ほど思っていなかった。神とは天上の存在。崇めるのが普通であり、それを怠ったものには破滅をもたらすと言うのが、この世界の器物ですら知っている常識である。

 

「そうしたいの。みんなで助け合って、みんなで支え合って、みんなで励ましあって、みんなで一緒に笑いたいのよ。そこには上の下も必要ないの。私もアナタも。みんな一緒よ。私は家族をそういうモノだと思っているのよ。だからね、みなさん。

お願いします。どうかそんな私の家族になって頂けませんか。」

 

「家族、我々が、貴方さ、……貴方の?」

「お優しい御方なのですね……」

 

 物言わぬ器物であった自分たちに、戦う為に存在しながら自分では何も成せず、何も守れずに悔しい思いをしてきた自分達に自由を与えてくれた神様は、さらに共に生きたい等と言ってくれる。彼女らにとってそれは夢のような話であった。

二人共涙ぐんでそれに答える。

 

 なんと優しい御方だろう。物言わぬモノまでその愛を分け隔てなく注いでくださる。慈愛に満ちた素晴らしい神様。そんな思いが彼女らの心に溢れた。自然と神様への好感度は大幅に上昇する。神への好感度。すなわち信仰心である。

 

親愛と信仰が増大した。

 

「わぁ、ワタシ達家族?」

「……ワタシ達も家族」

 

 草と石の少女に至ってはなおひどい。彼女達は未だ自分と他の草木、石土の区別がついていないのだ。種として存在する彼らはその境界が曖昧で、カミナの言葉が自分たちだけに、向けられた言葉とはそもそも考えていなかった。彼女たちの言葉を正確に表せば。

 

(草木達がカミサマの家族?)

(石土達もカミサマの家族)

 

と、次のようになる。もちろん周囲の草土達と石土達も、しっかりとこの光景を眺めている。カミナの言葉に期待を込めて。

 

「うんうんおねーさん分かったわ♪」

 

たった1人、下着の少女だけが素直に頷く。

 

「みんな家族よ!

これからよろしくね♪」

 

「「ええ」」

「「わかったぁ!」」

「おっけぇ♪」

 

こうして彼女たちは家族となった。

カミナが彼女達の内面に気づく事はきっとない。

 

「あ、それならみんな名前ないと困るわよね。どうしようかしら?」

 

「それでしたら是非、カミナさ、んがお名前を考えて頂けませんか?」

「ええ、某もカミナさ、殿につけて貰いたいで、貰いたい」

「私ワカバだよカミサマ!」

「……私コイシだよカミサマ」

「あらあら、それ気に入っちゃったんだねぇアンタ達、あ、アタシもよろで!」

 

「ええ、わかったわ。それと、その無理そうならその、無理しなくていいからね、みんな?この子達ももう、カミサマで覚えちゃったみたいだし。あながち間違いでもないから」

 

「カミナサマだからカミサマ!」

「……カミサマのカミナサマ」

 

「っ、ありがとうございますカミナ様!」

「正直いきなり親しくは、……精進します」

 

「テキトーでいんだよ、テキトーで?」

 

「しかしなぁ」

「カミナ様の所作を見ていると、どうしても敬いたくなるのですよ?」

 

「私の所作?」

「貴方様のそれは一分の隙もない貴婦人として完成された見事な振る舞いなのです。」

「はい。あのような武人の如き御姿からはとても考えられないような見事な優雅さでして、まさに女神に相応しい佇まいなんですよ」

 

「ああ、それはわかるわぁ。なんかもう雰囲気あるのよね。なんか高貴な感じの」

「カミサマ綺麗!」

「……カミサマ凄い」

 

「自分では自覚がないのだけれど」

 

「無自覚でその様な振る舞いができるとは」

「素晴らしい事ですわ」

 

 カミナはアルメリアの手によってその姿をより美しく見えるべく変えられている。それはなにも言葉遣いだけでなく、身のこなしにも現れていた。なにげなく佇まう姿1つとっても完璧な貴婦人のソレを思わせる動き、そうなるべく彼の身体の動きは自然と調整されているのである。結果上級貴族も顔負けの完璧な高貴な女性の所作がそこに完成していた。

 

「そうですか。

ではお互いゆっくり距離を測っていきましょう。これからはずっと一緒なんですから」

 

「はい!」

「ええ、よろしくお願いしますねカミナ様」

 

 自然と礼の姿をとる剣と鎧の乙女たち。彼女達にとってそれはどこまでも使えるべき理想の主君の姿として映っていた。彼の理想は未だに遠い場所にあるようだ。

 

 

「あ、それじゃアタシカミナくんが名前考えてる間、カミナくんの着るもの用意するから。皆の着てるものちょっとずつ分けてよ。カミナくんってアタシらの持ってるものなら女の子に変えられないみたいだし、アタシそういうの調整できるから。

さっきステータスでわかったの♪」

 

「もちろん。某はそうですね。この和服と某自身を差し出しましょう」

「あら。それでしたらワタクシはこのマントとワタクシを差し出しますわ」

「ワタシこのマント!」

「ワタシはこのスカーフあげる」

「へっへっへぇ、アタシはアタシをあげるよご主人様♪」

 

「いや、衣服は助かるけれど、みんな自分はもっと大切にしなさい!!」

 

 カミナは戦慄した。自分を差し出すとか云われても。そういうのは本当に大切な誰かにあげなさい。彼は強くそう思った。女の子が自分を安売りするような事は彼にとってNGである。迷わずみんなに言って聞かすと、彼女達は少しばかり顔を見わわせて微笑んだ後、その理由を教えてくれる。

 

「ああ、神様違うのですよ。我等元々器物のモノはその核になったアイテムが本体となっているのです。某の場合はこの剣ですね」

「ワタクシの場合は鎧です」

「アタシはパンツ! カミナくんのだから男モノだよ?」

「そ、そうなの。 ……剣とか鎧って貰ってしまって大丈夫なのかしら?」

 

「我等器人はその元となるモノの性質を持ちますからなぁ。某は十分手足でも切ったり刺したりできますよ?」

「ワタクシも身体を硬くできますので。うふふ、それに神様に直接ワタクシ達を使って頂けると思うと、ワタクシ達皆それだけで喜ばしいのですよ?」

 

「そうそう。だからアタシちょっと今からパンツ脱いでくるね!」

 

「え!?」

 

 さっそうと下着の子が草陰に隠れてごそごそし始める。カミナはあわてて視線をそらした。

 

 

「はい、じゃあアタシをあげるね♥」

 

 そうして現在カミナには彼女の手から脱ぎたての男性用パンツが渡されようとしていた。正直彼は複雑すぎる気分だった。

 

(落ち着け俺。これは元々俺の下着。彼女が脱いですぐの、俺の下着。なぜメンズの下着を手にするのに、こんなに抵抗感があるのだろう)

 

 女の子の脱ぎたてパンツ。その言霊は今現在確実に童貞青年の精神を削り取った。その姿を楽しそうに正面で見ながら、彼女はイタズラ心も含んだ嬉しそうな顔で微笑んでいた。

カミナは若干以上にビビりながら、その下着へと手を伸ばす。

 

その時だ。

 

「ふにゃぁ♥」

「え?」

 

「うん?」

「「どうしたの下着のおねぇさん?」」

「あらあらぁ?」

「「ねぇねぇなんでおめめ押さえるのぉ!」」

「じばらく辛抱してくださいましね。お耳も塞いでいてくれますか?」

「「はーい!」」

 

 彼女の下着にそっとカミナが触れた瞬間。下着の子から妙に色っぽい声が聞こえてきた。え、なんで。カミナの頭は混乱している。とたん彼女は自分の下着を握りしめて何かに耐えるようにプルプルと小刻みに震えていた。

 

「にゃ、にゃんか、カミナくんに下着触られたらすっごいアツいのが流れてきてね………。身体の奥がぴゅくぴゅくするのぉ」

「な、なんですって?」

「すみませぬ神様。試しにこちらに触れていただけますか?」

 

 神妙な顔で剣の少女に差し出されたのは一振りの刀のような形の剣である。カミナはもう嫌な予感しかしなかったが、目の前で彼女に強く頷かれると触るほかない。

 

「じゃあ、ちょっとだけ」

「あ、あぅ♥」

 

ほんの少し、カミナの指が触れただけで凛々しい彼女から考えられない艶っぽい声が溢れでる。これ以上はいけない。カミナの本能が訴えていた。

 

「これは少し、問題がありますわね……」

「申し訳有りませぬ。神様の指が触れるとその、自分を抑えられませぬ……」

「えー、カミナくんがアタシ以外の子、はくのやだなぁ……」

「「ねぇねぇ、もういいーー!?」」

「あらもう大丈夫ですよぉ」

 

 すごく悔しそうな顔で剣の少女が、嫌そうな顔で下着の少女が不満を漏らす。同時に鎧さんのナイスセーブのおかげで幼い少女達の純真は護られた。彼女は気遣いの人である。

カミナには流石に女性をエロっぽくしてしまう身体で持ってそれらを扱う勇気はなかった。素直に二人にその事を伝えると。

 

「いや、ありがとう。流石にこれは無理よ。ごめんなさいね。2人とも……」

「何をおっしゃいます。これは神様のお力に耐えられぬ某の落ち度。何を謝られる事がありましょう!」

「じゃあ特訓しなきゃだね♪ 今度時間がある時アタシを履いてよカミナくん♥」

「もちろん某も挑みます!」

「あらあら。でしたらワタクシも時間がある時にお願いしますね?」

 

「え!?」

 

「「いいなぁ、いいなぁ!」」

「あなた達はもう少し大きくなったら頑張りましょうね?」

「わぁい!」

「……いっぱいがんばる」

 

「え?」

 

「「「「「おねがいしますね神様」」」」」

 

「えーーーーーーー!!」

 

みんなの意外すぎる反応が返ってくる。彼女達はカミナの持ち物としてみな彼に自分を使ってもらいたい願望がある。神様のゴットハンドなんかで、そのアツい心を止めることは出来ないのだ。

 

 なんでこんな事になったのかカミナにはさっぱりわからない。

 

 衣服の調整が終わるまで、あらためてカミナのリュックサックに入っていた予備の下着に剣さんが履き替えて、複雑な気分で彼女の脱いだそれを受け取ると、彼は早々に自分の力を調べなければと決意を固めた。

 




閲覧ありがとうございます。

エーテルはりねずみ様毎度誤字報告感謝です。
ホント助かりますm(_ _)m

主にリメイク前から読んで下さってる方に地の文について質問なのですが。

  • 地の文は一人称のほうがいい
  • 地の文は三人称のほうがいい

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