虹の橋がかかるまで―女神となった強面青年の勘違い冒険譚―   作:一二三 四五八

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5)蝶の少女は女神を導く

 現在、先に仕上がった若草色のスカートと、キラキラ光る銀色の布を胸に巻き、肩からマントを羽織る事でとりあえずの仮衣装を手にしたカミナは、最後の名付けに挑んでいた。

 

「えっと、じゃあ下着だからアンダーと、ランジェリーのラン。どちらがいいかしら?」

「うーんアンダーかなぁ。そっちの方が下着っぽい♪」

「あ、判断基準そのなのね……」

 

これでようやく全員に名前をつけ終わったカミナは1人そこで安堵する。満足そうに微笑む彼女達の姿が、カミナのつけた名前が受け入れられた事を教えてくれる。

 

「カミナくんの衣服もうちょっとかかりそうかなー。その間カミナくんステータスでも確認してなよ?」

「ふむ、では某はメイルと一緒に周辺の警戒だな」

「はい、ツルギさんと一緒に少し出かけて参りますね?」

 

 お互いに名前を呼びながら立ち上がる二人。どうにもカミナに名前を貰ったことがうれしい二人は、お互いを見つめあって1つ笑顔をこぼれさせた。

 

「ありがとうメイルさん、ツルギさん。気をつけてね?」

「ええ、ふふ。では行ってまいりますね」

「何かあったら叫んで知らせて下さい。すぐに帰ってまいります」

 

 颯爽と歩きだす二人の姿を見送ったカミナその両脇で既にオプションの如くくっついたままのワカバとコイシが、カミナの事を抱きしめながら元気よく話かけてくる。

 

「じゃあワタシ神様にステータスの説明するぅ!」

「……ワタシもワカバ一緒に頑張る」

 

「ええ、二人ともお願いね」

「微笑ましいにゃあ~」

 

やる気は十分。きらきらお目々のなんとも可愛いらしい先生2人を得たカムイは、彼女達の身振り手振りを説明を聞きながら、微笑まずにはいられなかった。

元より可愛いモノが好きな彼にとって、この二人の姿は特に魅力的に映るのだ。

 

「ステータスって唱えるだけで、ぱぁって出るの」

「……知りたい事指で突っつくと、詳しくわかるよ」

 

「へぇ。ステータス。なんか凄いわね!」

 

 カミナがそう唱えると、自分の目の前にRPG等で見かける画面が浮かび上がってくる。それを見るとなんだか自分が物語の中の世界に飛び込んでしまったみたいで、一気に彼のテンションが上がる。ステータスすごい。

 

「ステータスが見えるのは自分のだけなの!」

「……ステータスはこまめに調べたほうがいいよ?」

 

「そっか。ありがとう2人とも」

 

「えへへぇワカバが神様に教えるの面白い♪」

「……コイシ役にたててうれしい」

 

パタパタと愛らしい動きで教えてくれた小さな先生達の優しく頭をなでると、カミナは改めてステータスへと向き合った。

 

中空に浮かぶ半透明の不思議な板。そこにはそんなモノが浮かんでいて。

 

「おお、すごいわね!」

 

 カミナは思わず感動の声を漏らしそれを凝視した。異世界の謎の技術は、しっかりこのピュアな青年の心を掴んでしまったようだ。支えもないのに宙に浮かぶそれがなんとも不思議に思えてその辺りで手をぱたぱたさせると、感触はあるが、通過する。うむ、不思議。

 

 ついついそのまま手をグーパーやってカミナがその感触を確かめた瞬間。辺りが閃光に包まれた。予測していなかったまさかの展開にカミナはキョドる。

 

「え、え、どういう事かしら?」

「ステータスさんも家族になるの!?」

「……カミサマすごい」

「わっ、これって、カミナくん何やったの!」

 

『始めましてイリス カミナ。当機は貴方のステータス表示システム。これより貴方専用の支援システムとしてそのサポートに努めます。よろしいですね?』

 

「え、あ、ありがとう?」

 

 閃光が覚めたその場所には、手のひらに乗る程の大きさでディフォルメされた女の子の姿があった。その背中には紫色の綺麗な蝶の羽が生えており、それと同じ色のコンパクトボブの髪の毛がその肩の上で揺れている。全体的にどこかクールな雰囲気のねんどろいどの様な姿の少女。それが彼女をもっとも端的に表す言葉だろう。

 

小さい少女の言葉にとっさにお礼で返したカミナはどこか上の空である。それは彼女のその愛らしい姿に問題があった。

 

(うわぁ、手のひらに乗るサイズの漫画とかに出てきそうな女の子。かっわいいなぁ)

 

 その小柄な姿と誇張されたその造形は可愛いモノ好きの青年の心をものの見事に掴み上げてしまったのである。控えめに言って最高です。それが今のカミナの心境だ。

 

「わぁ、ステータスさん可愛い!」

「うん、かわいい」

「……綺麗な羽」

「おお、ここまで来るとなんでもありだねキミ♪」

 

 彼女はその光のこもらない紅い瞳で静かにカミナを見据えながら、ひらひらとその羽で翔び始めると、その道筋に星屑のような光が振りまかれては消えていく。

そして彼女は彼の肩に降り立つと、そこへちょこんと座り込んで言葉を続けた。

 

『貴方に感謝をイリス カミナ。

貴方のおかげで当機は実体を得れたようです。これからよろしくお願いしますね?』

「は、はい、もちろん、もちろんですとも!」

 

耳元でその鈴のような、抑揚のない声が聞こえてくる。しかしその表情はうっすらと緩んでおり、彼への好意を周囲に伝える。

 

(うわぁ、俺の肩に止まって、うわぁ!)

 

「わぁ、わぁ!」

「……妖精さん、きらきら」

「はいはい、落ち着きなアンタ達ぃ」

 

 必然的にカミナの周囲に座る少女達にとってその光景はとても魅力的に映った。ふわふわ、ちっちゃい、きらきら、きれい。小さな女のコの好きそう要素を全て兼ね備えたまさに期待の新人である。並んで座る3人のお目々はもうキラキラが止まらなかった。

何か1人混じっている。

 

『それではイリス カミナ。早速ステータスの確認を始めますか?』

 

 その小さな小首をかしげながら彼女はカミナへと訪ねてくる。しかしカミナにはそれよりも先に済ませたい事が出来ていた。先程みんなの名前とつけてたんだから、この素敵な少女とも早く名前で呼び合いたい。彼にとってはそれは重要な事だった。

 

「あ、うん。それもだけど、ステータスさんって名前ないのよね、やっぱり?」

「お名前、ワタシ、ワカバ!」

「……ワタシコイシ」

「あはは、そうねぇ。ついでにアタシ、アンダーって言うの。よろしくね♪」

 

 名前と聞いてワカバが大きく手を伸ばして、コイシが胸の上で指を組んで、それぞれに自己紹介を始めてしまう。自分の名前がある事がうれしくてしょうがないといった風だ。仕方ないのでアンダーも名乗った。

 

なんのかんのみんな自分についた名前を誰かに聞いて貰いたかったし、そんな名前を目の前の少女にも手にして欲しいと思っていたのだ。

 

そんな目の前の光景を見て蝶の少女はあまり変化しない顔をまた1つ、少しだけ緩める。

 

『ええ、みなさんよろしく。……そうですね。そうなりますね。ふふ、でしたら貴方が当機に名前を贈って下さいますか?』

「ええ、もちろん! えっとぉ……、じゃあステ、ラ。ステラなんてどうかしら? ステータスをもじった感じだけど、こうキラキラしてる貴方にぴったりじゃない?」

 

 カミナが考えた名前には、星とか星の光とかいう意味がある。以前同名の大型車につけられれたソレの不思議な響きが気になって調べた時に知ったソレは、星の光を纏いながら翔ぶ少女にとても似合っていると、カミナには思えたのだ。

 

どうやら彼女もそう思ってくれたらしく、瞳を閉じ満足げに頷くと、軽くお辞儀をしながらカミナへと笑いかけた。表情こそあまり変わらなかったが、優しくなった瞳の色がそれをみなに分からせてくれた。

 

『……ええ、そうですね。当機にはそれが好ましい。貴方に感謝を、カミナ。どうやらステラは貴方と、いえ貴方達といい関係が築けそうですね』

 

「そう、ふふ。こちらこそよろしく!」

 

「ステラちゃんよろしく。ステラちゃんも一緒にカミサマの家族だよね?」

「ステラさんも家族。ステラさんもみんな一緒なんだよねカミサマ?」

「あっはっはぁ、どうもそういう事らしいよ」

 

「ええ、貴方にもぜひ私の家族になってもらいたいわ!」

『肯定。ステラも貴方達とソレを望みます』

 

「やったぁ」「……家族、増えた」

「ええ、うれしいわ♪」

「もう、はしゃいじゃってこの子らは」

 

『ふふ、随分楽しい家族のようですね? ステラも好ましく思います』

 

 互いに笑い合う姿を見てステラは幸せそうに羽を少しだけはためかせると、改めてカミナに向かって確認をとる。

 

『それではカミナ。改めてステータスの確認を。貴方の能力は一度に展開すると分かりづらいかも知れませんから、区切りながらお見せしましょう。なにか不明な点があれば指摘を。ステラがそのつど説明します』

 

「ええ、お願いね!」

 

 思わぬ所で増えたその家族は、どうやらとても頼りになりそうである。カミナは彼女を肩に乗せながら彼女がカミナの目の前に見やすく展開してくれたステータスを、初めて眺めることになる。

 

 

 

名前 依里朱 神那(イリス カミナ)

種族 ヒト族

性別 女

職業 未選択 職業選択可【タッチで表示】

レベル 15

BS(バットステータス):なし

信仰:アストレア

 

 

「あれ、レベルって1レベルが最初じゃないのかしら?」

『貴方の場合、地球での戦闘行為による経験値だけはレベルに変換されているようですね。あの場所はレベル制を廃止して久しい。普通はそのような経験などあまり得られないものなのですが。日常生活の中でどうやってここまで多量の経験値を稼いだのです?』

 

「覚えがないわね。

しいていえばお山で身体を鍛えている時に猪を仕留めて食べたり、たまに熊とかを退けたり、あとは不良の子達とやりあったりが、ほぼ毎日色々あったくらいかしら?」

『……なるほど。理解しました。それにしてもアストレアを信仰、ですか?』

「ええっと、女神様の事よね?」

 

(ああ、彼女また名乗り忘れましたね)

 

『ええ、そうです。この世界の主神の女神です』

「ええ。女神様にはすっかりお世話になったから。これからお祈りだけでも続けるつもりよ。こんなにもよくして貰ったんだもの。決しておろそかには出来ないわ」

『……そうですか。』

 

 彼にとってアストレアはどこまでも大恩人であり、崇めるべき偉大な女神様だった。ここに自分の信者を貶めようとする女神と、そんな女神をひたすら崇める男の、奇妙な関係が成り立ってしまう。カミナはきっとこれからもアストレアの悪意に気づく事はない。

 

裏側事情を知るステラにはなんとも複雑な事だった。

 

「あ、職業が選べるのね?」

『現在最高レア度を含めた多くの職業条件を達成しています。先に選びますか? そうすれば他の数値を見返す手間はなくなりますね』

「そう、それならお願いできるかしら?」

 

『肯定。職業欄を表示します』

 

以下の職業に転職可能です。

 

コモンクラス

村人

戦士 槍使い 格闘家 斥候

神官 護衛者 

 

レアクラス

神官戦士 重戦士 狂戦士

調教師 剣闘士 護衛闘士

 

ダブルレアクラス

戦闘強者 野獣闘士 聖闘士

拳闘強者 肉弾王者 超戦士

 

トリプルレアクラス【トップレアリティ】

女神見習い

 

各クラス説明表示可【ここをタッチで表示】

各クラスタッチで初期スキルを見る。

 

 

「女神?」

 

 先程話題に出たモノが自分の職業候補にあった事で、カミナは思わず呟いた。おおよそ本来の自分からかけ離れすぎたそれが選択にある事がどうしてもおかしく思える。

 

『そうですね。貴方は今いまだ職業につかない状態で複数の者から神として信仰を得ている状態です。それがこのクラスの発生条件です』

 

 ステラが話す理由を聞くと、彼はなんだか納得してしまう。なるほど。確かに呼ばれていた。一度事態を飲み込めば単純な男はあっさりとその事実を受け入れてしまう。

 

「そっか。他にも色々凄そうなモノがたくさんあるけど、これが一番すごいのかしら?」

『ええ、最終的には他とはかなり差がつきますね。神見習いと並んで同率一位の強力なクラスです。詳しく情報をご覧になりますか?』

 

「いいえ、これにするわ」

『……たしかにこのクラスは強力ですが、貴方はいずれ神として人の時の流れから外れる事になります。それでも構いませんか?』

「いいの。……これを選ばなかった事で、いつか家族の誰かを助けられなかったら、その方がずっと怖いわ。だからコレにする」

 

 詳細を詳しく知る事なく迷いなく女神を選ぶ彼の心中には、もちろん家族のことが第一だが、どうせ女性になってしまったのだからという開き直りと、一度は死んだ自分にチャンス与えてくれるだけでなく、色々と気遣ってくれていたあの女神様みたいに自分も多くを助けるスゴイ人になりたいという考えがあった。

 

それならば人じゃなくなってもじいちゃんも文句を言わないだろう。そんな風に考える。

 

『なるほど。……貴方は迷わないのですねカミナ』

「ただ怖いだけよ。迷って掴んだモノを手放すのが恐ろしいだけ」

 

もっともそんな内面は彼の胸の内にのみ存在する。迷いや後悔は1人の時にすればいい。長年孤独の中にいた彼の、悪い癖の1つである。

 

ステラは少しだけそんなカミナを心配に思ったが、結局彼の選択を受け入れた。彼の選択の先にあるだろう多くの優しい未来を思いながら彼女は自分の使命を果たす。

 

『……そうですか。では女神見習いをセットした上で、再計算した能力値を表示します』

 

「おねがいね」

 

 その時、カミナの放つ雰囲気が明らかに切り替った。そばにいるだけで大きく神聖な何かを感じる、神の放つ神々しいオーラを、彼が身につけたからである。

とたん、はねとぶ様にそれを喜ぶ二人の少女達。

 

「わぁ、カミサマ変わった!」

「……カミサマ、世界に認められて今カミサマになってくれた!」

「えぇ、そうなの?」

 

 1人アンダーだけがなんか空気清浄機のそばに居るみたいなんて思っていた。現代生まれの彼女には神々しいとかよくわからないらしい。

 

「ええ、さっき職業で選んだの。よくわかったわね?」

 

「うん♪」

「信仰のとこカミサマの名前になったもん」

「ああ、確かにあったわね?」

 

「うわぁ、なんか加速度的に男の子やめてるにゃあカミナくん」

『いまさらですよ』

 

 はしゃぎあう少女達の横で1人遠い目をしてカミナを見つめるアンダーに。短い言葉でざっくりと切り捨てるように言い放つステラ。

 

この中で彼女だけが、カミナのその人外なステータスの続きを知っていた。それを知ってしまえばもはや彼が色々と人間を辞めた存在であることが嫌でも感じられ、ステラだけは今更彼が女神化したくらいで、騒ぐ気にならなかったのだ。

 

カミナのステータス確認は続く。

 




閲覧ありがとうございます

うっかり仲間を増やしていくスタイル。

どどんこ様、前作の感想で頂いたステータスの美少女化今作でも使わせて頂きます。
素敵なアイデア、大感謝!

黒のアリス様誤字報告ありがとうございます。
毎度のこと助かります!

主にリメイク前から読んで下さってる方に地の文について質問なのですが。

  • 地の文は一人称のほうがいい
  • 地の文は三人称のほうがいい

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