天空(そら)の彼方に響く旋律 -穢れた七世界の中で生き抜く戦士達-   作:室谷 竜司

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Episode22. うまい飯には中毒性あり!? レンの胃袋は小雪の手の中に……

「お、お邪魔します……。」

 少しおどおどした様子で、星永さんが小雪の部屋に足を踏み入れる。それに続くようにして、俺と彼方も小雪の部屋のドアをくぐる。順応とはすごいものである。まだ俺も、小雪の部屋にお邪魔させてもらったのはこれで3回目だというのに、ほとんど緊張しなくなってしまっている。

「まだちょっとだけ散らかってるけど、どうぞ上がって。」

「昨日も思ったけど、普通に綺麗だと思うよ?」

 彼方の指摘通り、小雪の部屋は目立った汚れもなく清潔であることが一目でわかる。もしかすると、俺の部屋以上に清潔かもしれない。くっ、掃除だけは自信があったんだけど、やはり根本的な家事スキルが小雪の足元にも及ばないというのか……。悔しいが、もはや何も言えない。

「そ、そうかなぁ? まぁとにかく、みんな座って、座って。 今、何か飲み物入れてくるね。」

「そ、そんな、お構いなく。」

 遠慮する星永さん。まぁ、無理もないだろう。学校の先輩、それもあまりかかわりのない人の部屋にあげてもらってしまったのだからな。むしろ、この状況で遠慮せず甘えられる奴は勇者だと俺は思う。

「気にしなくていいよ。 アイスティーでいいかな?」

 でも、小雪の笑顔に気おされたのか、星永さんの表情は強張ったものから大分和らいだように見えた。流石は我が沖月のプリンセス、といったところか。

「は、はい……。 では、お言葉に甘えて……。」

「はいはーい。 二人も同じでいいかな?」

「うん、大丈夫だよ。」

「ああ。 俺もそれで。」

 3人分の注文……にしてはやや強引だったようにも思うが、俺たちの意思を確認した小雪は軽い足取りでキッチンに向かい、4人分のカップを用意してそれぞれにアイスティーを注ぐ。手慣れているな。

 そして、ほんの2~3分後には、俺たちの前にカップが置かれていた。

「ありがとね、小雪ちゃん。 それじゃあいただくね。」

「い、いただきます。」

「まぁ大層なものじゃないけどね。 さてと、わたしはお昼ご飯の用意をしようかな。 うーん、みんなは何が食べたい? って言っても、何があるかもわからないんじゃ、答えようがないよね。」

 あはは、と笑みをこぼす小雪。それから、キッチンの方へ戻り、現状何があるかを探っているようだ。こちらに来たばかりとは思えないほどの食材があるように見えるのは俺だけか?もしかして、ご両親からの仕送り的なやつか?

「あ、パスタ。 みんな、パスタでもいい? クリームパスタとか。」

「あ、いいね。 食べたい!」

「わ、私も……、食べたいです……。」

 かなり遠慮がなくなってきた彼方と、未だに遠慮がちな星永さんとがクリームパスタに賛成の意を示す。すると、小雪は確認とばかりに俺に視線を向けてくる。

「うん。 俺も食べてみたいな。」

「わかった。 じゃあ、少し待っててね。 すぐに作っちゃうから。」

 最後に俺の意思を確認した小雪は、さっそく食材を用意して調理に取り掛かる。相変わらず、素人の俺から見ても手際が良いように思う。

「あ、ワタシも手伝おうか?」

「ん? あ、今日は平気だよ。 彼方ちゃんも座ってて。」

「そ、そう? それじゃあお言葉に甘えちゃおっかなぁ。」

 手伝いが必要かどうかを小雪に聞きに行く彼方だったが、今日は小雪一人で作るようだ。彼方は、料理を振舞われる側に回ったことによって、ウキウキしているように見える。ティーカップ片手に、俺の向かいの席でニコニコと小雪の調理風景を眺めている。

 星永さんは、やはり居心地悪そうに視線を彷徨わせている。それもそうだよな。ちょっと気の毒だ。

「そういえば、星永さんはどんな能力を持ってるの?」

 だから俺は、少しでも気がまぎれるようにと思い、質問をしてみることにした。これからレジェリザムの使い方について指導をしていくうえで、聞いておくべき情報でもあるしな。もしかすると、星永さんがレジェリザムを使えないのは、単に星永さん自身のスペックの問題ではなく、その能力の難易度が高いということが関係している可能性もあるだろうからな。無論、特訓環境を奪われているというのは大きな要因ではあるのだが。

「えっと、む、無属性魔法……です……。」

「マジ? 無属性魔法? そりゃ、簡単には使いこなせないわけだ。」

 あろうことか、星永さんの能力は特殊魔法能力の中でも1,2を争うレベルで難しいといわれる無属性魔法だった。というか俺、初めて無属性魔法の使い手に会ったような気がする。へぇ、まさか星永さんがその使い手だったとはなぁ。これは、鍛えがいがありそうだ。今から少しテンションが上がってくる。

「そんなに無属性魔法って珍しいの?」

「まぁな。 魔法能力の仲じゃトップレベルの難易度だ。 使いこなせれば一流のリージェリストと称賛されるくらいにはな。」

「そ、そんなにですか!? うぅ、なんかそれを聞いただけで一つしかないはずのリージェルがすごく大きくて重い細胞のように感じられてきました……。」

 まぁ、普通はそうなるわな。これ、星永さんの周りの人間たちに伝えたら、掌をくるっと返して全面的に協力と貸してくれたりしないかなぁ。いや、それはないか。子供感覚が抜けきっていない連中にとっては、能力の内容など些細な問題だろう。ただ誰かを陥れて優越感に浸りたいと思ってしまう未熟な心だもんなぁ。

 むしろ、そういうことをしかねないのは大人だ。大人は利益を原動力として動いているもんな。自分たちのためになることなら惜しむことなく手を差し伸べるだろう。そして、あわよくば田主名を握り、そいつを支配して自分たちのために利用しようとする。大人の汚さに比べれば、子供の考えなんて可愛いものだろう。いや、もちろん、どちらのやり方も俺は好かんよ?当然、褒められるような行為じゃないしな。

「へえ、そんな能力を持っているなんて、すごいんだね! あっ、ってことはさ、ワタシたちみんな、特殊魔法能力を使えるってことになるんだよね? まぁ、ワタシはまだ使ったこともないんだけど……。」

「あー、そういえばそうだな。 俺は鉱石弾丸魔法、小雪は色彩魔法で彼方は星魔法。 となると、結構教えやすいかもしれないな。」

「み、皆さん、特殊魔法の使い手だったんですか?」

「純粋な特殊魔法の使い手なのは、小雪と彼方、あと星永さんかな。 俺は、またちょっと違うんだ。」

 星永さんは、俺の説明に理解しかねるといった感じで首をかしげる。

 だから、俺は自身の能力について星永さんにも説明しておくことにした。

「俺の能力、コピー能力なんだよ。 だから、他人の能力を使うことができる。 もちろん、コピーするときにいろいろとやらないといけないから、無差別に能力複製ができるってわけでもないんだけどね。」

「な、なるほど。 ということは、やろうと思えば、全ての能力を使えるようになるんですか?」

「まぁ、できないことはないんじゃないかな。 流石にそこまでやるとなると、俺の身体に難かしらの異変が起きそうだけど。」

 対象者のリージェルをコピーすると、俺の体内に対象者と同じリージェルが新たに生まれるため、流石に全てのリージェルを俺の体内に構築しようとすると莫大な量になってしまい、身体の一部が変に発達してしまいそうだ。現状で発見されているリージェルは、全部で2000に届くか届かないかくらいだった気がする。しかも、まだ未発見の能力は存在するだろう。それを全て自分の中に取り込んだ時、俺の身体のバランスは維持されるのだろうか。いや、あんまり試したくない。というか、試そうにも、全ての能力を見つけ出すだけでも骨が折れそうだ。これがもし、身長が伸びるとかそういうものだったら、ちょっとやってみたいとも思うけどな。どんなリスクが課せられるかもわからない状態での実験をする度胸は、俺にはない。俺はチキンなのである。

「でも、そうだったんですね。 コピー能力で得た能力の一つが特殊魔法能力なんですね。 やっぱり、せんぱい方に声をかけてみて正解でした。 とても心強いです。」

 そう言って小さく微笑む星永さん。どうやら、大分緊張がほぐれてきたみたいだ。先ほどから、緊張するようなことばかりだったもんな。

 というか、ここまで一切触れられてこなかったが、先ほどの事件の後始末はどうなったのだろうか。まだ小河原さんたちが事情聴取を行っている最中だろうか?まぁ、いずれ連絡は来るだろう。おとなしく待っているのが子供様の仕事だ。

「あっ、いい匂いだねぇ。」

「おっ、ホントだな。」

「えへへ、もうすぐできるからね。 みんな、もうちょっとだけ待っててね。」

 俺たちの反応に、小雪は照れくさそうに笑いながら、もうすぐ出来上がることを知らせてくる。普段、クリームパスタとか自分で作って食べたりしないので、滅茶苦茶楽しみである。

「小瀬戸せんぱいって、お料理がお得意なんですね。」

「うん。 すっごくおいしいんだよ。 響ちゃんも一口食べたら病みつきになるよ? あ、今更だけど、響ちゃんって呼んでもいいかな?」

「あ、はい、大丈夫です。 それなら私も、彼方せんぱいって呼ばせていただいてもいいですか?」

「もちろんだよ。 なんか、先輩っていいねぇ! ワタシ、呼ばれたことないから新鮮だよぉ。」

「それなら、わたしのことも名前でいいよ、響ちゃん。」

 キッチンの方から小雪が再び声を上げる。あ、話しはちゃんと聞こえているの奈。さっき能力の話をしていた時に一切口をはさんでこなかったので、てっきり聞こえていないのかと思っていたがそういうわけではないらしい。

「あ、はい。 では、小雪せんぱいのお料理、とても楽しみです。」

「うん、楽しみにしててね。 今日も力入れちゃった。」

 ホント、なんでこんなにすぐに仲良くなれるのか、不思議で仕方ない。俺にはこんなコミュニケーションスキルなんてものは備わっていないから、本当にうらやましい。少しくらい、その力をこちらに分けてくれてもいいんじゃなかろうか。なんて思ってしまったのは、流石に自分自身でもどうかと思った。

「うん、これくらいでいいかな。 お皿は……と。 これに盛り付けて……。」

 小雪は、テキパキと皿にパスタとクリームソースを順に盛り付けていく。多分、小雪は目指そうと思えば一流シェフにもなれるのではなかろうか。それくらい、小雪の動きは洗練されているようだった。

「はい、完成! みんな、お待たせー。」

 そう言いながら、小雪はパスタが盛り付けられた皿を2回に分けてテーブルに運ぶ。手伝うか迷ったが、小雪のあまりの仕事の速さの前に、俺は断念せざるを得なかった。そりゃそうだよな、皿なんてすぐに運び終わるもんな。変に出しゃばっても、逆効果かもしれないもんな。

「ささっ、食べよ食べよ。」

「そうだね。 お腹空いちゃった、ワタシ。」

「すごくおいしそうです。」

 俺たちはそろって手を合わせ、それから小雪の作ってくれたパスタに手を付ける。正直、先ほどの襲撃者どもを撃退したせいで気疲れし腹も減っていたので、一刻も早く小雪の手料理を口に運びたかった。

 さっそく一口食べて、俺は感動した。小雪の元のスペックと、空腹という最高の調味料が合わさり、尋常じゃなくうまく感じたのである。あぁ、最高すぎるだろ、この味。小雪が嫁に欲しいと感じた瞬間だった。まぁ、あまりにも不純な動機過ぎるため、口に出すことは躊躇われたけど。いいなぁ、将来小雪と結ばれる男がうらやましい。というか、なんか複雑だ。小雪が誰か別の男の隣にいるところを想像すると、少しもやもやした気持ちが心中に現れてくる。やっぱり、今日の俺はおかしいみたいだ。俺、小雪とか彼方の恋人でもないし、独占欲をたぎらせるなんてことはないはずなのにな。

「おいしいです! す、すごい……。 こんなにおいしい料理を作れるなんて……。 なんか、憧れます。」

「そ、そんな、大げさだよ。 でも、嬉しいよ。 ありがとう。」

「いやいや、これは普通に憧れるって。 ホント、そのクッキングテクニックを分けてほしいよ。」

「そうですね。 私も、もっとお料理上手になりたいです。」

「響ちゃんは料理とかするの?」

「えっと、まぁそれなりに。 何分、一人暮らしですからね。 嫌でも料理できていないと生活できませんから。」

 星永さんのその言葉に、俺は心がいたくなるような錯覚を覚える。俺、このままだとダメなんですかね……。ちゃんと料理できないとやっぱりこの先生きていくのは厳しいんでしょうか?正直、簡単なものが作れれば、後は市販のもので補うことができるから問題ないぜ、とか思っていたのだが、このご時世、それだけではうまくいかないのかもしれない。生きづらい世の中だ。

「うーん、多少できてればそれなりの生活はできると思うけど。 現に、ほとんどお料理できないって言ってた未来ちゃんだって、普通に生活はできてるみたいだし。 栄養バランスさえ考えれば、何を食べても問題ないからね。 ホント、便利になったよねぇ。」

「小雪ちゃんはレトルトと下には頼ったりすることあるの?」

「ないよ。 あんまりお金の無駄遣いができない身だからね。」

「それもそっかぁ。 でも、やっぱりこのお料理の腕はうらやましいよぉ。 レンくんなんか、もう既に胃袋つかまれちゃってるんじゃない?」

「えっ、俺?」

 いきなり話を振られて思わず首をかしげる俺。

 それから俺は、彼方から飛ばされてきた質問について考える。つっても、さっき嫁に欲しいとか思ってしまっていた時点で、既に俺の胃袋は小雪の手の仲なのかもしれない。いつの間にか、俺は小雪に餌付けされていたとでもいうのか……。小雪、恐ろしい子。

「まぁ、少なくとも毎日食べたいくらいにはうまいかな。」

「ま、毎日だなんて……。 レンくん、大胆だよ……。」

「いや、待って待って! 勘違いしないでほしいんだが……。」

「わ、わたしは……、毎日でもいいよ? む、むしろ……」

 え、何その反応!?というか、どうしてそんなに顔を赤く支店の!?そして、むしろ何ですか!?本当にヤバい……。どんどんドツボにはまってきてしまっているんじゃなかろうか。関わって二日程度しかたっていないのに、そんなバカなことあり得るか……。それも、どちらか片方というわけではなく二人に対してだなんて……、流石にどうかしている……。いや、俺は大丈夫だ……。平常だ……。そう言い聞かせることで、俺の心中の混乱を無理やり鎮圧させる。

「今のはあくまで比喩だから。」

「え……。」

 だから、何故そんな反応をするんだ……。こんな時、透心能力を使うことができればいいのだが、それでは相手のプライバシーを侵害する最低行為を犯すようなものだ。そんな真似をして、彼方や小雪に軽蔑されるのは嫌だ。

「まぁ、レンくんだもんね……。 でも、おいしいって思ってくれただけでも嬉しいよ。 次は、本気で毎日食べたいって思わせるような料理作っちゃうんだからね。」

 冗談めかしてそんなことを言う小雪。でも、俺的には冗談にならない。実際、誤魔化しただけで、先ほどの言葉は本音そのものだったわけだからな。

「あ、ああ。 楽しみにしてるよ……。」

「ワ、ワタシだって、頑張るんだからっ!」

「そうだね。 一緒に頑張ろうね、彼方ちゃん。」

「私も、この際本気で頑張ってみたいです。」

 女性陣は、どうやら料理談議で中を深めたらしい。三人とも、何やら異様なまでにやる気になっているようだったが、俺は気にする余裕もなくただただ自分の心に渦巻く環状に頭を悩ませていた。いずれ、この感情とは本気で向き合わなければならないのだろうが、今は考えたくない。せっかくできた友人なんだ。もし仮にその関係を壊してしまうような感情だったとしたら嫌だ。もう少し心の中にとどめておいても罰は当たるまい。

「うん、やっぱりうまいな。」

 一人、そんなことを呟きながら、黙々と小雪の作ったクリームパスタに舌鼓を打っている俺だった。先ほどよりも少し甘く感じたのは、きっと俺の気のせいに違いない。料理(パスタ)はそんなに甘くない、ってな。

 

 

「ごちそうさまでした。 小雪せんぱい、とてもおいしかったです。 ありがとうございました。」

「ホントホント。 ありがとね、小雪ちゃん。」

「ごちそうさま。 いやぁ、うまかったよ。」

 俺たち三人からの連続褒めちぎりに、小雪は恥ずかしそうにはにかむ。でも、どことなく嬉しそうでもある。褒められて嬉しくない人はそういないだろう。

「お、お粗末様。 なんか、嬉しいけど照れるよ。」

「あっ、お皿は私に洗わせてください。 せめてこれくらいはさせてほしいんです。」

 小雪が俺たちの皿を回収しようとしたところで、星永さんがそれを制止する。

「え? ああ、いいよいいよ。」

「そんなわけにはいきませんよ。 私、完全部外者なんですから。 これくらいはしておかないと、むしろ落ち着きません。」

「部外者だなんて、誰も思ってないけどね。」

「で、ですが……、私は皆さんとチームメイトというわけでもないですし……。」

「なら、入る?」

 ただ短く、俺は星永さんにそう問いかける。正直、ここまでかかわっておいて部外者扱いできるほど、俺たちは冷徹な人間ではないつもりだ。

 大きな接点を持っているわけでもないから部外者だと星永さんが言うのなら、その接点を作ってしまえばどうにでもなる。既に俺の中では、星永さんも後輩兼友人として考えていたからな。部外者として自らを俺たちから突き放そうとする星永さんを放っておくことは、俺にはできなかった。それに、もともとチームメイトは探していたからな。これも何かの縁だ。誘ってみるに越したことはないと思う。

「えっ!? そ、それって……」

「ほら、星永さんが俺たちのチームに加われば、部外者じゃなくなるじゃん? だから、もしよかったらうちのチームに入らないかなって思ってな。」

「だね。 部外者なんて、悲しいこと言わないでよ、響ちゃん。」

「そ、その……、なんかすみません……。 そして、ありがとうございます……。 あ、あれ……、どうしよう……、涙が……。」

 星永さんは涙ぐんでいた。彼女はこれまで、能力の扱いが周りに比べて不慣れであるということがきっかけで、周囲から認められず不遇な扱いを受けてきていた。だから、こうして誰かに求められるということを知らなかった。

 恐らくだけど、チーム対抗戦への出場など考えてもいなかっただろう。けど、この子ならきっとできる。そんな確信が俺の胸中にはあった。

「そ、そんな泣くほど!?」

「ご、ごめんなさい……。 なんか嬉しくて……。 えっと、皆さんが良いのでしたら、是非私をチームの一員にしてください。」

「喜んで。」

 星永さんの真っすぐな瞳を俺は見つめ返し、そして短くOKサインを出す。こちらから誘ったのだから、断る理由もない。

「これからよろしくね、響ちゃん。」

「は、はい。 よろしくお願いします。 これから、一生懸命頑張ります。」

「あんまり気張りすぎちゃだめだよ? 無理せずにね。」

「だね。 一緒に頑張ろうね。」

「はい。」

 これでチームメイトは五人か。あと二人見つけないといけないが、この調子ならすぐに見つかるような予感がするな。とは言えども、そんな予感一つで油断はできるはずもないので、今後もちゃんとチームに入ってくれそうな人を探す必要はあるんだけどな。とにかく、またこれで一歩前進だ。この前身は大きい。

 彼方や小雪との会話の中で気合を入れる星永さんを眺めていると、俺も自然とやる気になってくる。昼食時に抱えていた心中のもやもやなど、今は忘れてしまっていた。チームメイトが増えたことへの喜びは、俺の些細な心の乱れをもかき消してくれるようだった。

「改めて、皆さん、よろしくお願いします!」

「うん、よろしくね。」

「よろしく、響ちゃん。」

「ああ、よろしくな。」

 未来はいないが、俺たちは新たなチームメイトを心から歓迎したのだった。ごめんな、未来。後でちゃんと説明はするから。なんて感じで、心の中で未来に手を合わせて謝罪もしつつな。


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