【完結】例えばボクが死んだとして   作:とくめ一

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第3話

 天空闘技場の中にいると色々と面倒臭そうなので、少し遠いが一応一般人の徒歩圏内にある私の家へと向かう。

 テレビで散々『ヒソカ選手とクロロ選手の戦いにより天空闘技場が──』といったニュースがやっているのだからヒソカと歩いていたら目立つのではないかと思うかもしれないが、そこは隠様様である。

 

 ……歩いている間、私とヒソカの間に会話はなかった。

 私が話しかけなかった理由は単純で、考え事をしていたから。『もしかして、さっきのは“告白した”ということになるのかな』という疑問に自分自身が混乱しているのだ。

 だって私はただただ事実を伝えたつもりだったから、あれが告白だったかと訊かれればどちらかというと“報告”と言った方が近いのではないだろうかと思っていたからだ。

 でもヒソカが言葉を発しない理由については分からなくて、()()()『嫌われたんだったら嫌だなぁ』と心の隅で思った。

 ……あぁ。違う、()()()じゃないのか。これが、『好き』ってことなのか……。うん、慣れないなぁ。

 

 心の隅に閉じ籠っていた筈の感情が突然大きな顔を出来るわけもなく、私は戸惑いがちにその感情に浸っていた。が、案外と早く家に着いてしまって、慣れない感情に浸って慣れられるほどの時間はなかった。

 

「じゃあヒソカは座ってて」

 

 その一言だけなのにいやに緊張して、長く無言でいたせいで少し乾いた喉に響く。

 素直に着席するヒソカ。まぁヒソカはよく家に来るのでいつも通りと言えばいつも通りだけど。

 暖かいコーヒーを一杯ずついれて、ヒソカにコーヒーを渡しながら自分も椅子に座った。

(因みに一人暮らしなのに椅子が二人分あるのは、ヒソカが結構な頻度で訪問してくるせいで毎回床に座らせるのが不憫になったから)

 

「ありがとう」と礼を告げるヒソカはいつも通り__というか寧ろあまりにいつも通り過ぎて、私ばかりが変に意識しているようで何だか悔しい。

 

「ねぇヒソカ」

 

「何だい?」

 

 ヒソカがコーヒーを口元に運ぶ動作が、いつにも増してゆっくりに見える。

 

 今、いつも通りに話したら、きっとヒソカは私の“報告”をなかったことにしてくれるだろう。

 このままいつも通りコーヒーを飲みながら他愛のない話をして、ふらっと去っていって、また血の匂いをさせて戻ってきて__それでいつか、玩具(強敵)を求めて私の前から消えるのだろう。

 それは、何だか……いや、すごくすごく、嫌だ。

 

「私、ヒソカのことが好きだから付き合ってほしいな」

 

 “報告”ではなく“告白”。

 これで逃げ場はなくなった。

『ヒソカの』? 当然『私の』だ。

 

 ……まぁヒソカのことだから、この後私の告白を断っても私が気にするような素振りさえ見せなければ普通に接してくるんだろうけど。

 

「てっきりなかったことにするのかと思ったよ♣️」

 

「まさか。

『前言撤回』って馬鹿らしいと思わない? 言ったことは消えないんだし。

 だったら潔くちゃんと告白をした方がよっぽど生産的」

 

「それもそうだね♠️キミらしい♥️」

 

「で、付き合うの? 

 付き合わないの?」

 

「訊き方に雰囲気がないなぁ……♣️」

 

 流石の私もこの言葉にはすこしムッとした。

 

「告白どころか恋すら初めてなのに雰囲気とか気にしてる余裕ないよ。

 これでもちょっと勇気出したんだから」

 

 ま、ヒソカは経験豊富そうだからそういう緊張とかには無縁そうだけど。

 

「……そう◇

 なら、ボクもそれに応えなきゃいけないねぇ♥️」

 

 え。

 

「それって」

「それじゃあ、これからヨロシク♥️」

 

 言い切る前の返事。

 ロマンチックさも何もないカラッとした挨拶のような言葉。些かテキトー過ぎると怒ってもいいかも知れない。

 ……なのに、なのにこんなにも心が温かくて、嬉しい。

 

「……ヒソカ」

 

「?」

 

「付き合うなら、ちゃんと強敵と戦うときは教えて」

 

「ウン、いいよ◇」

 

「それから、ちゃんと一日一回会いに来て」

 

「仕方ないなぁ♥️」

 

「あと、誰かを殺すのはいいけど……」

 

「?」

 

「出来るだけ怪我、しないで」

 

「! ……そうだねぇ、出来るだけ頑張るよ◇」

 

 本当はもっともっと言いたいことがある。

 でも、ヒソカの自由を奪いたいわけでもないし、当たり前ながらヒソカに嫌われたいわけでもないので我慢だ。

 

 ……この家から出ないでくれたって構わないとすら思っている私は、多分思ったよりもヒソカのことが好きなんだろう。

 

 あーあ。ヒソカも私を手放せないくらい好きになってくれたらいいのに。

 

 そんな叶わないだろう願望を心の中に押し込めて、私は今目の前に落ちてきた幸せを貪るようにヒソカに抱きついた。

 

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