バトルスピリッツ コラボストーリーズ   作:バナナ 

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13コア「サバイブ-疾風-」

「にしたって夏に雪が降ってるなんてスゲーよな!!」

「暑かろうが寒かろうがアンタはどこにいてもうっさいのね」

 

 

パラパラと並木通りに降り注ぐ季節外れの粉雪。

 

アスラ、エール、ムエ。そして一時的に同行する事になった三王の1人、テンドウは歩きづらい雪道をただひたすらに歩んでいた。

 

その道の先にある年中真冬の白の町、『ユキカイ町』へと行くためだ。季節は夏だと言うにもかかわらず降り積もる雪にアスラは感動し、興奮する。

 

 

「ここら辺は年中真冬だからな」

 

 

タバコを吸いながら歩いているテンドウがそう呟いた。そしてその後、人差し指を真正面に向けると、そこには………

 

 

「ゴタゴタ抜かしているうちに着いちまったぞ、ユキカイ町」

 

ー!!

 

 

アスラとエールは会話を止め、テンドウが指差した真正面を振り向く。

 

そこで目にしたものは粉雪で煌めく輝かしい氷の町並みであった。そここそ、次の目的地、『ユキカイ町』であった………

 

 

******

 

 

「うぉぉぉぉお!!!スッゲー!!」

「むえぇぇぇぇぇぇぇええ!!!」⬅︎便乗

 

 

町のゲートに到着するアスラ達。そして最早お約束と言うべきか、到着するなりアスラはその驚愕な情景に思わず声を張った。頭の上に乗っかっているムエも同様だ。

 

無理もない。何せこのユキカイ町、家々が至るところまで氷や雪で作られているのだから…………

 

 

「見ろよエール、家や建物が全部氷か雪だぞ!?」

「多分知らなかったのアンタだけよ」

 

 

興奮するアスラ。しかし、ユキカイ町の家々が全て氷か雪で作られている事などこの国においては常識の一つ。普通は驚く事はまず無い。彼がどれだけパトスピ以外の事に無頓着であったかが見て取れる。

 

 

「そんじゃ、オレとはここでお別れだな」

「えっテンドウさんもう行っちゃうんすか!?…オレのカラー戦観にきてくださいよ!!」

 

 

テンドウがアスラ達に掌を見せながらそう告げた。アスラとしてはテンドウに成長した自分のバトルを見て欲しかったのか、それらしい発言をした。

 

 

「うるせぇぞ小僧。オレぁ観光じゃなくて仕事でここに来たんだよ」

「そう言えばその仕事って何??…アンタが自分で赴く程なわけ?」

 

 

エールがテンドウに訊いた。

 

 

「あぁ、ちょっと名物のメタルアイスクリームを食べにな」

「絶対ウソでしょ!?…てか何、その硬そうなアイスクリーム、アイスなの?」

「と、言うわけでここらでオレは失礼しまーーす」

「あざァァァーっす!!テンドウさん!!またお会いしましょォォォー!!!」

 

 

適当にそれらしい事を言ってアスラ達の元を去って行こうとするテンドウ。アスラはそれに対して全力でお辞儀をする。オウドウ都で彼に頂点王になれと言われて以降、彼はどこかテンドウを尊敬の目で見ているようである。

 

 

「あっ…そうそう小僧」

「はい!!」

「ここのジジイは今のオマエに突破は難しいかもな」

「??」

 

 

テンドウは最後にそう言い残すと、人混みの中に消えて行った。アスラは正直言われた言葉がピンと来ておらず、そのジジイが誰なのかもわからなかった。

 

 

「テンドウの奴、いつも勝手よね………じゃあアスラ、私はムエと今晩の宿探して来るから、アンタはスタジアムにでも行ってさっさとカラー戦やって来たら?」

「むえ?」

 

 

エールがアスラの頭の上にいるムエを取り上げ、胸元に抱き寄せながら提案して来た。確かにそっちの方が手っ取り早いと言うか効率的だ。

 

 

「おぉ!!わかったぜ!!サンキューな!!」

「べ、別にアンタのためじゃないんだからね!?」

 

 

アスラに感謝されて顔を赤くするエール。そして、アスラ達は二手に分かれて行動することとなった。アスラは白のカラーカードを得るべく、この町で最も大きくて目立っている氷のスタジアム目掛けて走り出す。

 

 

******

 

 

「うっひゃー!!ここがユキカイ町のスタジアム!!……ホントに氷でできてんだな!!」

 

 

走り出して約5分が過ぎた頃、アスラはスタジアム前に到着した。その見た目麗しい外観及び神秘さは、このスタジアムは他のどのスタジアムにも劣らないであろう。

 

 

「ここにいるカラーリーダーは白属性の使い手だったな……白と言えば鉄壁の防御力。オレの龍騎で突破してやるぜ!!」

 

 

思い出しながらそう呟いたアスラ。

 

そうだ。今回のカラーリーダーは白属性の使い手。今までのカラーリーダー達が己の扱う色の長所を重視して来た戦いぶりから、今回は白属性の特徴である鉄壁の護りが活かされた戦いを彼は推測していたのだ。

 

事実その考え方は正しい。

 

カラーリーダーとは言わば色の頂点。各々がその色の持ち味を最大限に発揮させるのである。

 

 

「っしゃぁ!!…そんじゃいざ行きますかァァァー!!!」

 

 

アスラが大声で息巻いていたその時だ。アスラの聞き覚えのある声が聞こえて来たのは………

 

 

「そこで何をしている………」

「っ!!」

 

 

その聞き覚えのある声主は当然エールでもなく、テンドウでもない…………

 

何年も何年も聞いていた、自分とは違って冷静で落ち着いた声だ。

 

アスラは思わずその声のする方へと首を傾けた…………

 

 

「アスラ……!!」

「………ロンッ!!」

 

 

そこにいたのは自分の片割れとも呼べる存在であるライバルの少年、ロン。相変わらずイケメンで背が高い。

 

アスラはそんなライバルの久し振りの登場に体中がゾクゾクした。

 

 

「へへー!!…何ってそりゃ、ここにいる白のカラーリーダーにバトルを挑むに決まってんだろ!!…言っとくけど、今回はオレが先だったからな!!」

 

 

アスラが得意げにロンに言い放つが………

 

 

「オマエ……予約は取ったのか…?」

「………え」

「その様子じゃ知らなかったみたいだな。ここのカラー戦は予約制だ。つまり次はオレがここのカラーリーダーとバトルすると言う事になる」

「な………なんじゃそりゃァァァー!!!」

 

 

アスラは論破された………

 

いや、遅かれ早かれこうなっていたに違いない………

 

 

ー…

 

 

「なぁロン!!予約ってどうすんの!?…どこ押せばいい!?……ねぇ!?」

「知らん。自分でやれ」

「この薄情モノォォォー!!」

 

 

白のカラーリーダーにバトルを挑むべくスタジアム内の中心を目掛けて早歩きするロン。アスラはそんなロンを追いかけながらBパッドでどうにかバトルの予約を試みていた………

 

彼らがそんなやり取りを交わしていくうちに、ようやくスタジアムの中心であるバトル場に到着した………

 

そこには年齢が4、50と言った程度の男性が1人いた。寒さ故に着込んだその図太いコートやワイルドな風貌から、明らかな強者のオーラが伝わってきて………

 

 

「………『また』オマエさんか………スーミのロン」

「今日で終わらせます。覚悟してください」

「おぉ!!アナタが白のカラーリーダー!!…オレ、スーミのアスラって言います!!」

 

 

アスラが目をギラギラさせながら白のカラーリーダーらしき人物に全力で挨拶をした。

 

 

「ほぉ??…オマエさん此奴の友人か??」

「ハイィ!!コイツのライバルッす!!」

「おぉ……ワシも若い頃はそう言った存在達と切磋琢磨したもんじゃ…懐かしい………遅れたな。ワシの名は『ゴゴ・シラミネ』……知ってるとは思うが、白のカラーリーダーじゃ」

「よろしくお願いしまァァァーす!!……ゴゴさん!!コイツとのバトルが終わったらオレともバトルしてくださァァァーい!!」

 

 

アスラがまたしても目をギラギラと輝かせてゴゴにバトルをする約束を取り付けようとするが………

 

 

「まぁ良いけど、先ずは予約じゃな」

 

 

予約は大事………

 

 

「グダグダ喋ってないで、早くオレとバトルしてください」

 

 

長々とアスラと話していたゴゴに痺れを切らしたロンがそう告げた。何か今回の彼は落ち着きがないように思える。

 

 

「………オマエさんもしつこいの……何度ワシに負ければ気が済む?」

「…………え」

 

 

アスラはそのゴゴの言葉に驚きが隠せなかった。

 

何せ、その口振りはまるで『ロンが何度もこの人に負けていた』と感じざるを得ないモノであるからだ。仮にもあのロンが同じ相手に何度も負けてしまうとはアスラも思ってはいなくて………

 

 

「オマエさんはワシに55回負けた。ここからさらに負けて56回にしたくはないんじゃ………5が並ばなくなるから」

「えぇぇぇえ!?理由がめっちゃ変ー!?……てか55回回負けたァァァー!?」

 

 

ロンはこの町で彼に55回バトルを行い、その全てに敗北した。しかも圧倒的な程の力を見せつけてのだ………

 

よく見たらロンの体は既にボロボロだ。どうやら55回バトルに負け続けていた事は隠しようがない事実であるようだ………

 

アスラはバトルに負けた数だけに及ばず、ゴゴの妙なこだわりにもツッコミを入れてしまう。

 

 

「大丈夫です。56回目でオレが勝てば良い。そしたらアナタに56回負けた事にはなりません」

「ふむ……まぁ確かにな………じゃが、手を抜く理由にはなりはせんぞ??」

「それは当たり前だ……!!」

 

 

ゴゴの言葉に言い返すロン。

 

そしてお互いにBパッドを懐から取り出し、それをバトル台へと変形させ、展開。バトルの準備を早々に行って見せた………

 

そして………

 

 

………ゲートオープン、界放!!

 

 

アスラが見守る中、ロンの56回目となる白のカラー戦がコールと共に幕を開ける。

 

先行はロンだ。

 

 

[ターン01]ロン

 

 

 

「メインステップ…ネクサス、ミラーワールドを配置してターンエンド」

手札:4

場:【ミラーワールド】LV1

バースト:【無】

 

 

ロンがミラーワールドを配置した事により、この場の空間が鏡向きになる。

 

 

「このカードはもうとっくに見飽きたな」

 

 

ゴゴにとって何度も目にして来たミラーワールド。この空間が反転する現象もいい加減見飽きている。

 

そして次はそんな彼のターン。ゆっくりとそれを進行していく………

 

 

[ターン02]ゴゴ

 

 

 

「さてメインステップ…ワシも地の利を固めるとするか…ネクサス、獣の氷窟をLV2で配置してターンエンド」

手札:4

場:【獣の氷窟】LV2

バースト:【無】

 

 

ゴゴの背後に凍てつく氷で包まれた洞窟が配置される。その奥にはまるで強大な獣でもいるかのような気配が感じられて………

 

そして今度はロンのターンだ。ゴゴを倒すべくターンを進める。

 

 

[ターン03]ロン

 

 

 

「メインステップ…オレのライダースピリット…ナイトを召喚する!!」

 

 

ー【仮面ライダーナイト】LV1(1S)BP2000

 

 

「おぉ出た!!ナイト!!」

 

 

このバトル、初めてスピリットを召喚したのは挑戦者のロン。群青色に身を包んだ騎士のライダースピリット、ナイトが現れた。それに伴ってアスラも声を上げる。

 

 

「召喚時効果で1ドロー」

 

 

そしてロンはその効果でカードを1枚デッキから引き抜くが………

 

 

「ここで獣の氷窟…LV2効果。ワシも1枚のカードをドロー」

「えぇ!?…何それ、ズル!!」

 

 

驚くアスラ。獣の氷窟LV2の効果は所謂便乗ドロー。敵のスピリットかマジックの効果で手札が増えればその分だけカードをドローできるのだ。

 

ただ、56回も彼とバトルしているロンにとってそんな事百も承知。

 

 

「ミラーワールドのLVを2に上げ、アタックステップ、ナイトでアタック!!」

 

 

ナイトで攻撃を仕掛けるロン。そしてこの瞬間に配置していたミラーワールドのLV2効果が発揮されるも、それはアドベントカードではないため、彼の手札へと加わった。

 

 

「アタックはライフで受ける……」

 

 

ブロックできるスピリットも無ければカウンターも無い。

 

ゴゴは当然このアタックをライフで受ける宣言をする。

 

ナイトが手に持つレイピアのような鋭い剣で強烈な刺突を繰り出し、彼のライフを砕こうと試みるが………

 

 

 

「…………ふむ」

 

 

 

〈ライフ5➡︎5〉ゴゴ

 

 

 

「え!?…ライフ減ってねぇぞ!?」

 

 

ゴゴを守ろうとするライフバリア。それは通常のバトルならば容易く破壊されるモノであるが、今回は違う………

 

 

「獣の氷窟LV1、2の効果。BP4000以下のスピリットのアタックではライフは減らない」

 

ー!!

 

 

またしても獣の氷窟だ。その効果により、ナイトのアタックでライフが砕けなかった………

 

 

「まさか、アレだけワシとバトルしておいてこの効果を忘れるとは、愚の極みじゃな」

「……オレはただミラーワールドの効果でカードをドローしたかっただけです…ターンエンド」 

手札:6

場:【仮面ライダーナイト】LV1

【ミラーワールド】LV2

バースト:【無】

 

 

「……またその減らず口か。ワシと長期戦して勝てると思っとるのか?」

 

 

ロンはゴゴと言い合いになりながらもそのターンをエンドとした。実際に彼が手札を増やしたかったのも事実中の事実である。

 

 

「そんなバトルではワシのこのライフには傷一つつかんぞ」

「いやいや、流石に傷一つはつくだろ」

 

 

そう告げるゴゴにアスラは思わず口を挟む。

 

それもそのはず。何せ、このバトルスピリッツと言うゲームにおいてライフとは自ずと減っていくモノ。一つも傷がつかないわけがない。

 

それが当たり前だ。

 

しかし、この男、白のカラーリーダーであるゴゴ・シラミネは違う。

 

 

「アスラ、この人の言っている事はハッタリじゃない。オレはこの人と55回バトルをして、ただの一度もそのライフを破壊できなかった」

「ッ!?」

 

 

信じられないことをアスラに告げるロン。この白のカラーリーダーであるゴゴはつまりライフ5をバトル中ずっと維持し続けていた事になる。

 

 

「5という数字は美しい。それ故にワシはこの初期ライフ5を維持し続ける」

「………いや、意味がわかんねぇ」

 

 

流石のアスラも彼の妙なこだわりにちょっと引いた。

 

だが、その実力は本物だ。彼は今までロンを含めてほとんどの挑戦者からライフ5を守り切っていた。

 

正に挑戦者達にとって彼は立ち塞がる巨大な壁と言える。

 

 

「ワシのターンじゃな」

 

 

そんな鉄壁の防御力を誇るカラーリーダー、ゴゴのターンがまたしても幕を開ける………

 

 

[ターン04]ゴゴ

 

 

 

「メインステップ…ネクサス、侵されざる聖域を配置してターンエンド」

手札:5

場:【侵されざる聖域】LV1

【獣の氷窟】LV2

バースト:【無】

 

 

「えっ…それだけかよ!?」

 

 

ゴゴの背後にはまたしてもネクサスカードが配置される。それはデッキに1枚しか入れる事ができない強力なカードではあるものの、あれだけ豪語しておきながらこの程度の動きしかしないのは少々実行性に欠ける。

 

しかし、それでも確実に彼のフィールドが完成しつつあったのは間違いない。

 

 

 

[ターン05]ロン

 

 

 

「メインステップ…ミラーワールドのLVを1に下げ、オレは第二のナイトをLV2で召喚!!」

 

 

 

ー【仮面ライダーナイト[2]】LV2(2)BP6000

 

 

 

ロンは攻勢に回ると言わんばかりに第二のナイトのカードを切った。

 

ナイトはカードを読み込むバイザー付きの剣にカードを装填。

 

 

ー『トリックベント!!』

 

 

の音声がそこから発せられたかと思えば、全く同じ姿をした第二のナイトがその隣に現れていた。

 

 

「アタックステップ!!……第二のナイトでアタック!!…BPは6000、獣の氷窟の効果は効かない!!」

「っしゃぁ!!これでライフを破壊できる!!」

 

 

第二のナイトが黒い剣を手に持ち、地を駆ける。狙うは当然ライフ5のゴゴ。アスラもなんだかんだでロンの応援をしているようである。

 

だが、

 

彼のライフを破壊するのはそう易い事ではなくて………

 

 

「フラッシュマジック、ミストカーテン」

「!!」

「第二のナイトを指定。このターン、そのスピリットではワシのライフは減らん」

 

 

清廉潔白な白いカーテンが第二のナイトの眼前に現れ、その行く手を阻む。少なくともこのターンはほとんどの身動きはできないであろう。

 

しかし……

 

ロンも負けてはいない。手札からカウンターのカードを引き抜いた。

 

 

「フラッシュマジック…ソードベント!!」

「!!」

「この効果により、このターンの間、第一のナイトのBPをプラス5000!!…よって、獣の氷窟のラインを超える!!」

 

 

ー【仮面ライダーナイト】BP2000➡︎7000

 

 

第一のナイトはまたカードを装填する。

 

 

ー『ソードベント!!』

 

 

今度はその音声と共に大きな黒槍がその手に装備された。これにより、このターンのみだが、第一のナイトもゴゴの配置するネクサス、低BPスピリットを無力化する獣の氷窟のラインを超えた。

 

 

「………第二のナイトのアタックはライフで受ける……そして5は維持される」

ライフ5➡︎5

 

 

このタイミングは飽くまで第二のナイトのアタック中。ゴゴはそのアタックをライフで受ける宣言をする。第二のナイトが剣で彼のライフを斬り裂こうとするも、ミストカーテンの羽衣のようなバリアが身代わりとなった。

 

 

「続け、第一のナイトでアタック!!」

「よし、今度こそいけるぜ!!」

 

 

ソードベントの恩恵を受け、第一のナイトがゴゴのライフを斬るべく走り出した…………

 

だが、ゴゴはこのタイミングで手札のカードを切る………

 

 

「フラッシュマジック、ミストカーテン」

「ッ!!……2枚目だと!?」

「第一のナイトを指定し、このターンの間そのスピリットのアタックではライフは減らん………よってそれもライフで受ける」

 

 

〈ライフ5➡︎5〉ゴゴ

 

 

2枚目のミストカーテンが今度は第一のナイトに纏わり付く。ナイトが黒槍でゴゴのライフを貫こうとするが、またしてもミストカーテンが身代わりとなった。

 

 

「ま、マジかよあの人ホントにロンを相手にライフ5をキープしてやがる」

 

「………ターンエンドだ」

手札:5

場:【仮面ライダーナイト】LV1

【仮面ライダーナイト[2]】LV1

【ミラーワールド】LV1

バースト:【無】

 

 

その余りの絶対的な隙の無い防御力に唖然とするアスラ。ここでようやく今までの事が嘘ではなく紛れも無い事実である事を悟る。

 

対するロンはここは致し方なくターンエンド。ゴゴにそのターンを明け渡す。

 

 

 

[ターン06]ゴゴ

 

 

 

「メインステップ……さて、そろそろ頃合いかな?」

「!!」

 

 

ゴゴがメインステップに入る直後………

 

ロンはある悪寒を感じた。55回のうち何度も感じたそれは………

 

間違いなくあのスピリットだ。それはゴゴのバトルスピリッツを象徴すると言っても過言では無いモノであって…………

 

 

「………召喚。コスト5!!メカゴジラ!!……獣の氷窟のLVを下げ、LV3で召喚じゃ!!」

 

 

 

ー【メカゴジラ[1993]】LV3(4)BP9000

 

 

 

ゴゴがそう告げると、獣の氷窟から何かが飛び出して来た………

 

それは正しく機竜と呼べる存在。その名はメカゴジラ。白のテクノロジーが全て注ぎ込まれたロボットであり、ゴゴのバトルスタイルそのものを表しているスピリットでもある。

 

ロンは合計55回このスピリットに敗北して来た………

 

 

「な、なんかスゲェ!!かっちょいいィィィー!!」

 

 

まるで緊張感を感じていないアスラはただただそのメカゴジラのカッコよさに痺れ、目をギラギラと輝かせていた。

 

 

「さらに装備。ガルーダ!!」

 

 

ー【メカゴジラ[1993]+ガルーダ】LV3(4)BP13000

 

 

まだゴゴのメインステップは終わらない。戦闘機がメカゴジラの頭上に現れ、そのままそれとドッキング。メカゴジラは両肩からのビーム砲に加え、ジェット機の翼を手に入れた。

 

 

「なんかまたカッコ良く!?」

 

 

そしてアスラはまだカッコいいだのと呑気にほざいている。

 

 

「アタックステップ!!……翔けろメカゴジラ!!…アタック時効果で第二のナイトを手札に戻す」

「っ!!」

 

 

メカゴジラは両肩に備え付けられたビーム砲を第二のナイトに向けて射出。それは見事命中し、ナイトの身体はデジタルの粒子となってロンの手札に帰還してしまった。

 

 

「さぁ受けよ、ダブルシンボルのアタック!!」

「くっ……ライフで受ける…………ぐぁぁぁ!!」

 

 

 

〈ライフ5➡︎3〉ロン

 

 

メカゴジラがジェット機の逆噴射で加速し、恐ろしい速度で一気にロンとの間合いを詰めると、鋼でできた強靭たる素手で彼のライフ2つを粉々に粉砕した。

 

余りのバトルダメージにロンは思わず膝を着いた。

 

 

「……ターンエンド。スーミのロン。オマエは何度もワシに負け続けた。そのボロボロの身体でまだ立つか?」

 

 

ゴゴがロンに訊いた。

 

そうだ。バトルを始める前から既にロンの身体は限界を迎えていた。彼と56回ものバトルを繰り広げたゴゴならばその事をより深く理解している。

 

 

「うるさい………オレはアンタを超えて、頂点王にもなる男だ。頂点王は限界のあるモノがなってはならない!!」

「……そうか。ならば力尽きるまで真っ向から向かって来るといい」

「初めからそのつもりだ!!」

 

 

勢い良く膝を立ち上げたロンが確かな意気込みと共にそのターンシークエンスを進行させていく…………

 

 

[ターン07]ロン

 

 

「メインステップ…鎧魂を召喚し、手札に戻った第二のナイトを再召喚!!」

 

 

 

ー【鎧魂】LV1(1)BP1000

ー【仮面ライダーナイト[2]】LV2(2)BP6000

 

 

 

鎧を着た小さな幽霊、鎧魂が現れたかと思えば、再び第二のナイトがロンの場に姿を見せる。

 

そして今度はその強力な召喚時効果も発揮されて………

 

 

「召喚時効果!!…相手スピリットのコア2つをリザーブへ!!」

 

 

第二のナイトは黒槍を装備し、その一太刀で疾風の斬撃を放つ。それは一直線にゴゴのメカゴジラに飛びいき、直撃。

 

その体内にあるコアはリザーブへと弾き出されてしまった…………

 

かに見えた。

 

 

「無駄な事を。侵されざる聖域の効果により、メカゴジラは赤を除いた【装甲】を得ている!!……それによりナイトの効果は無効!!」

「くっ!!」

 

 

届いたかに見えた第二のナイトの斬撃はメカゴジラには全く通用しておらず、ただの一つもコアは外れてはいなかった。

 

現在。メカゴジラはゴゴの配置していたネクサス、侵されざる聖域の効果で赤を除く装甲を与えられている。それに加えて元より所有している超装甲:赤により実質全ての装甲を獲得しているに等しいのである。

 

 

「………第一のナイトのLVを3に上げ…ソウルコアを魂鬼と入れ替える……………ターンエンド……ッ!」

手札:5

場:【仮面ライダーナイト】LV3

【鎧魂】LV1

【仮面ライダーナイト[2]】LV2

【ミラーワールド】LV1

バースト:【無】

 

 

「ふむ。まぁ、そうなるだろうな」

「おいロン!?…なんでアタックしねぇんだよ!?…今ならゴゴさんのライフを破壊できるじゃねぇか!!」

 

 

苦渋をなめたような苦しい表情を見せながらそのターンをエンドとするロン。彼がこのターンアタックしなかったのにはアスラも知らない理由があるのだ。

 

 

「少年。メカゴジラはLV2、3の時疲労状態でブロックができる。今アタックしたところで皆返り討ちに合うだけなんじゃ」

「ッ!!……マジ!?」

 

 

そう。このメカゴジラ。疲労状態でのブロックを可能とする効果を持ち合わせている。疲労状態でブロックができると言うことはそれすなわち無限ブロッカー。負けない限り何度でもライフを守る事ができる。

 

これこそ、このスピリットが彼の象徴たる証の効果であって………

 

装甲の効果も相まって、この状況を打破できるのは至難の技と言えよう………

 

そして次はそんなゴゴのターン。56回目となる勝利のため、ターンシークエンスを進めていく………

 

 

 

[ターン08]ゴゴ

 

 

 

「メインステップ…1体ずつ消して行こうか。マジック、光速三段突……第二のナイトをデッキの下へ」

「!!」

 

 

光速で放たれる光の刺突が第二のナイトを貫く。第二のナイトはデジタル粒子と化し、ロンのデッキ下へと消え去ってしまった。

 

 

「さらにアタックステップ!!……進撃せよ、メカゴジラ!!…その効果で第一のナイトを手札に!!」

「っ!!」

 

 

メカゴジラは両肩に備え付けられたビーム砲を第一のナイトに向けて放出。見事に命中させ、それをロンの手札へと戻した。

 

そしてさらに追い討ちをかけるかの如くゴゴは手札のカードを引き抜いて………

 

 

「フラッシュマジック…全武装攻撃!!…効果によりメカゴジラを回復させる!!」

「!!」

 

 

 

ー【メカゴジラ[1993]+ガルーダ】(疲労➡︎回復)

 

 

 

 

連続アタックを可能にするマジックカード、全武装攻撃が発動される。これにより、メカゴジラは疲労状態から回復状態となった。

 

 

「………アタックは鎧魂でブロック!!」

 

 

これに対し、ロンは唯一のブロッカーである鎧魂に防御を命ずる。鎧魂が主人を守らんとメカゴジラの元まで浮遊するが、その鋼の腕で吹き飛ばされ、爆発してしまう………

 

 

「……鎧魂の効果…ソウルコアが置かれていたため、メカゴジラからコア1つをトラッシュに送る……」

「無駄だ!!【装甲】により、その効果も無効!!」

 

 

鎧魂が破壊された直後、紫の靄がメカゴジラにまとわりつくも、メカゴジラはそれさえも弾き飛ばしてしまう。

 

 

「このターンの進撃はまだ終わらん!!…メカゴジラで再度アタック!!」

 

 

メカゴジラが眼光を輝かせ、再びその鋼の身体を起動させる。狙うは当然ロンのライフ………

 

もはやロンに打つ手は残っていなくて……

 

そのままこの攻撃を受け入れるしかなかった………

 

 

「ライフで………ぐっ…ぐぁぁぁ!!」

 

 

 

〈ライフ3➡︎1〉ロン

 

 

 

「ロンーーー!!!」

 

 

メカゴジラはその鋼の手腕でロンのライフを打ちつけ、一気に2つ破壊した。ロンはその上から来た強烈なダメージにより、地面に叩きつけられる。ライバルのピンチに、アスラは思わず彼の名を叫んだ。

 

 

「………ターンエンド」

手札:1

場:【メカゴジラ[1993]+ガルーダ】LV3

【侵されざる聖域】LV1

【獣の氷窟】LV1

バースト:【無】

 

 

できる事を可能な限りやり終えたか、そのターンをエンドとするゴゴ。次はロンのターンとなるのだが………

 

彼はまるで力尽きたように地面に倒れているままであり、一向に起き上がる気配が無かった………

 

 

「立ち上がれないか……無理もない。寧ろよくここまでやったと称賛したいくらいじゃ……身分はコモン。ライダースピリットに選ばれているとは言え周囲のカードは安物ばかり……それでよくもまぁ3番目まで辿り着いた」

「ロン………」

 

 

自分を上出来であると称賛し、そう告げるゴゴの言葉を耳に入れながら、ロンはふと思い至った………

 

 

ーもう…コイツに勝つ事はできないと………

 

 

力の差があり過ぎる。

 

何度やっても勝てる気がしない。

 

何が生まれた時からライダースピリットに選ばれているだ………

 

こんなモノ、アイツの前では何の役にもたちやしない………

 

自分はよくやった。上出来だ。ここがきっとコモンという低身分の者が辿り着ける限界であるのだろう………

 

 

そう考えてしまっていた…………

 

彼をそこまで思い至らせる程にゴゴは強いカードバトラーだった………

 

だが……………

 

 

「何やってんだロン………立てよ」

「!?」

 

 

昔から何度も聞いていたうるさい声が耳を通過する。それは幼馴染みにして最大のライバル、アスラの声だ。

 

 

「好き勝手言われてんじゃねぇ………早く立て!!…オレ達の物語はまだ半分も来ちゃいねぇぞ!!」

「!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

オマエはオレのライバルだ………オレの目の前で…オレ以外の奴に負けんじゃねぇ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あぁ…………

 

そうだった。

 

オレの後ろにはいつもコイツの喧しい声が聞こえて来るんだ。

 

このまま寝てると、アイツがオレの前に行っちまう…………

 

それだけは絶対に許せないし、あり得ない。

 

 

「アスラ……うるさい」

「ッ!!……ロン……!!」

 

 

アスラの言葉を聞き入れるなり、ロンはそのボロボロの身体を奮い立たせて、立ち上がった。そしていつものように飄々とした態度でアスラを「うるさい」と一蹴した。

 

 

「ここから怒涛の反撃が始まるんだ。黙って見てろ」

「だからウソつけェェェー!!!…絶対打つ手無しって感じだったろ!!」

「そのまま寝ていた方が幸せじゃったと思うがの」

「オレは幸せになるためにバトルしてるんじゃない。頂点王になるためにバトルしてるんです…ハッキリ言って、寝てる暇は無い」

 

 

そうだ。

 

ロンの夢もアスラと同じ頂点王になる事。アスラが諦めない限り自分も早々に折れる気は無いのだ。

 

 

「オマエは所詮最も身分の低いコモン。バトルスピリッツ絶対主義のこの世界で生き抜く事はできん!!」

「関係無い……オレはシイナ・メザを超え、いつか必ずアスラよりも先にこの国の頂点王になる!!」

 

 

ロンの怒号とも取れる声が氷のスタジアムに響き渡った。

 

そしてその時だ。

 

ロンの懐にあったあるカードが彼の声に応えるかのように青く光り輝き、彼の前に飛び出してきたのは………

 

 

「………コレは………」

 

 

その正体はコラボダンジョンに捜索に行った際、何故かふと無意識に手に入れていた黄金の翼のカード。

 

 

「えっ………アレって……」

 

 

アスラもその絵柄のカードには見覚えがあった。それはついこの前、テンドウから頂点王からの贈り物と称され手渡されたカードの事だ。今、ロンの目の前にあるそのカードは自分の持つそれと類似していて………

 

 

「…………なんだそのカードは……!?」

「オレも知らない。けど、これだけはわかる………このカードはオレに『生き残れ』と訴えている!!」

「!!」

 

 

目の前の現象に驚かずにはいられなかったゴゴ。そしてロンは目の前にある黄金の翼のカードを握りしめると、それは光の粒子となって新たにデッキへと宿った…………

 

 

「………オレのターンッッ!!」

 

 

啖呵を切るようにターンを進めていくロン。ここから彼の逆襲が幕を開ける…………

 

 

[ターン09]ロン

 

 

「メインステップ……仮面ライダーナイトをLV3で召喚!!」

 

 

 

ー【仮面ライダーナイト】LV3(6)BP6000

 

 

 

「性懲りも無く、またそいつか」

「さっきまでのナイトだと思うな……召喚時効果により、1枚ドロー」

 

 

ロンがナイトの効果で新たなカードをドローする。すると、どこからとも無く、ロンに追い風になるように突風が吹き荒れる。

 

 

「……この風…どこから吹いてきた……?」

「ミラーワールドのLVを2に上げ、アタックステップ!!……ナイトでアタック!!」

 

 

疲労状態でもブロックが可能なメカゴジラを前にしてアタックを仕掛けるロン。だが、決して無謀な行いでは無い。アタックした事により、ミラーワールドの効果が発揮される。

 

 

「ミラーワールドの効果!!…デッキの上から1枚をオープンし、それがアドベントカードならノーコストで発揮させる!!……オープンされたのはソードベント!!…これにより、ナイトのBPを5000上げ、メカゴジラのコア2つをリザーブへ!!」

 

 

ー【仮面ライダーナイト】BP6000➡︎11000

 

 

この効果でオープンされたのは『ソードベント』のカード。ナイトは腰のベルトからカードを引き抜き、それをバイザー付きの剣へと装填し、黒槍を装備する。

 

そしてそのままそれを振るって疾風の斬撃を放つが………

 

 

「その程度の風でメカゴジラは斬れん!!」

 

 

当然、メカゴジラには通用せず、またしても弾き飛ばされてしまう………

 

 

「そのアタック…メカゴジラで承ろう!!…この瞬間、ガルーダの合体時効果により、BPを3000アップさせ、コアを1つ増やす!!」

 

 

黒槍と剣を両手に持ち、メカゴジラに特攻するナイト。だが、BPの差は歴然。その斬撃や刺突はメカゴジラには傷一つつかず、メカゴジラに蹴り飛ばされてロンの元まで吹き飛ばされてしまう………

 

ナイトはなんとか立ち上がるも、破壊されるのは時間の問題であった………

 

しかし………

 

 

「この力。存分に振るわせてもらう……!!」

 

 

ロンは手札に来ていた新たなカード、新たな切り札。

 

おそらく黄金の翼のカードであったそれをこの最後の最後の場面で発揮させる。

 

 

「フラッシュ煌臨を発揮!!…対象は仮面ライダーナイト!!…この時、ナイト自身の効果でコストを5として扱う!!」

「ッ!!……ロンが煌臨!?」

 

 

ロンの突然の煌臨宣言に戸惑うアスラ。それもそのはず、彼のデッキには煌臨を持つカードなど入ってなかったし、今まで一度もそれを発揮した所を見た事が無かったのだから………

 

煌臨のエフェクトなのか、ナイトはいつものようにベルトからカードを引き抜くと、それと同時にバイザー付きの剣を一瞬にして青いシールドに変化させ、さらに強い突風が発生。そのカードが今までのどのアドベントカードよりも強力なものであると周囲の者達を悟らせる………

 

そしてナイトはバイザー付きの青いシールドにそのカードを装填した………

 

 

………『サバイブ!!』

 

 

無機質な機械の音声がそう告げると、ナイトは瞬く間にその姿を青い騎士へと一変させる。ロンは新たに現れた黒いマントが疾風の中で靡くのを目に移しながら、こう言い放つのだった………

 

 

「これがオレの新たなエース……仮面ライダーナイトサバイブだッッ!!」

【仮面ライダーナイトサバイブ】LV3(6)BP21000

 

 

「………ナイト………サバイブ!?」

「まさかさっきの青く光り輝いた、あのカードなのか!?」

 

 

ナイトの進化系と言っても過言では無いスピリットの登場に驚愕するゴゴとアスラ。特にアスラは「サバイブ」と言う言葉にどこか耳覚えのあるような反応をしており………

 

 

「コイツがいる限り……オレは負けない………煌臨時効果!!…相手スピリット1体のコア2つをトラッシュに送る!!」

「!!」

 

 

ナイトサバイブは青き盾に内蔵された騎士の剣を引き抜く。煌臨時効果発揮の態勢に入ったのだが………

 

 

「愚か者め。いくら進化しようが、そいつが紫のスピリットである事に変わりはない……このメカゴジラには通用しないぞ!!」

 

 

そう………

 

今のメカゴジラには侵されざる聖域の効果と元からある効果と合わせて全ての色の【装甲】を所持している。ナイトから強化されたナイトサバイブは強化前と同じ紫。

 

この効果も無効にされる…………

 

はずだった………

 

 

「愚かなのはアナタの方だ……」

 

 

ロンがそう告げると、ナイトサバイブはその引き抜いた剣で空を斬り裂く。そしてそこから疾風の斬撃がメカゴジラに向けて放たれた………

 

メカゴジラはこれをも難無く弾き返そうと試みたが………

 

 

 

 

ー【メカゴジラ[1993]+ガルーダ】(5S➡︎3S)LV3➡︎2

 

 

 

「なにっ!?………」

 

 

その目に入って来た光景を疑うゴゴ。無理も無い。紫属性のナイトサバイブが放った疾風の斬撃が装甲を持つメカゴジラの体内のコアをトラッシュへと弾いたのだから………

 

 

「ナイトサバイブは煌臨時…このバトルの間色を無色とする……色が無ければ装甲は無意味!!」

 

 

ナイトサバイブの効果は色を無色として扱う事。これにより、メカゴジラの持つ装甲を無視してコアを弾き飛ばす事が可能だったのである。

 

 

「……さらに煌臨スピリットはその煌臨元となったスピリットの全ての情報を引き継ぐ!!……ナイトサバイブ!!…そのままメカゴジラを破壊しろ!!」

「ッ!!」

 

 

メカゴジラ向けて走り出したナイトサバイブ。その手に握る剣に疾風の風を纏わせながらメカゴジラの動体に斬り込んだ。メカゴジラはそれに真っ二つに斬り裂かれ、なす術なく大爆発を起こしてしまう。

 

その際に合体していたガルーダが逃げるように離脱した。

 

白のカラーリーダー…ゴゴとバトルしてから55回。スーミのロンはようやく要塞の如きスピリット、メカゴジラをトラッシュへと葬ったのだった………

 

 

「………まさかメカゴジラを倒すとはの……しかし、その剣はワシのライフまでに届かんようじゃな」

 

 

そう言い放つゴゴ。挑戦者のデッキのカードが異様な進化を遂げ、エースであるメカゴジラが破壊されたというにもかかわらず、妙な冷静さを保っていた。

 

だが、彼のライフを破壊できないプランをロンが考えているわけがなくて………

 

 

「アナタの目はどこに付いている………オレのナイトサバイブは二度飛ぶ」

 

 

 

ー【仮面ライダーナイトサバイブ】(疲労➡︎回復)

 

 

 

「ッ!?……既に回復しているじゃと!?」

 

 

煌臨スピリットは煌臨元となったスピリットの全ての情報を引き継ぐ。

 

故にアタック中だったナイトに煌臨したナイトサバイブはそれに合わせて疲労状態となっていたはずだが、この通り、何故か回復していて………

 

 

「ナイトサバイブの第二の効果……ターンに一度、デッキの上からカードを3枚トラッシュに置く事で回復する……オレはこの効果をメカゴジラとのバトル中に発動していた……!!」

「……ッ!!」

「………オレはこのナイトサバイブでアンタのライフを斬る!!……いけぇ!!!……アタック時効果で今度はガルーダを消滅!!」

「ッ!!……アタック時にも使えるのか!?」

 

 

回復したナイトサバイブがロンの指示により再び駆ける。狙うは今度こそゴゴのライフ………

 

再びその剣に疾風の風を纏わせ、斬撃を放つ。それは戦闘機であるガルーダを捉えて、難無く斬り裂いて見せた。その後、ナイトサバイブはゴゴの元まで一気に距離を詰める。

 

この白のカラーリーダーであるゴゴのバトルスピリッツは正に鉄壁の壁。鋼鉄の如く何人たりともそのライフに傷を入れる事を許さない………

 

そのため、この国のカードバトラーは彼のライフを破壊できるか否かでこの世界で上に行けるかを判別している。

 

そしてようやくこのロンも………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ぐっ!?」

 

 

 

〈ライフ5➡︎4〉ゴゴ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのレールの上を走る事になる………

 

ゴゴのライフが破壊される音はいつものガラス細工が割れるように軽い音ではなく、まるで巨大な門が無理矢理こじ開けられるかの如く鈍い音だった。それは幻聴かもしれないが、そう感じてしまう程に、彼のライフを1つでも破壊する行為は重たいのだ。

 

 

「ハァッ……ハァッ………どうだ。コモンの一撃は……」

 

 

連戦に激戦を重ね、ようやく彼から1つのライフを破壊したロン。流石に息が乱れている。そんなロンの様子を見て、ゴゴは「コモンの少年が、まさかここまでやるとはな」と鼻で笑いながら呟くと………

 

 

「このバトル、ワシの負けだ」

 

ー!?

 

 

そう告げた。

 

ゴゴの言葉に驚きが隠せないロンとそれを見届けていたアスラ。無理も無い。この国を代表するカラーリーダーがサレンダー行為をするなど信じ難い事なのだから………

 

 

「ちょっとォォォー!!!…ライフまだまだたくさん残ってますよォォォー!!?…諦めなかったらまだチャンスはありますってェェェー!!」

 

 

アスラが右手を上げながら提案するように割って入って来た。ロンに勝っては欲しいが、このバトルをしっかり最後まで見届けておきたいという感情もあるのだろう………

 

 

「いや、これで良い。ワシは他のカラーリーダーと比べてもちょっと強過ぎるからの。元々ライフを1つでも破壊できたらカラーカードを渡すようにしておる………ほれ!」

「!!」

 

 

ゴゴはそう言いながらロンに真っ白なカード、カラーカードの1つであるホワイトカードをロンに投げ渡す。これにより、ロンは白のカラーリーダー『ゴゴ・シラミネ』に勝利した証を得る。

 

 

「………まぁ、続けてたとしても、おそらくワシの負けじゃよ。あのスピリットをどうにも止められないしの」

「えぇ……」

「……と言うわけで、勝利おめでとう…スーミのロン。まぁこれからも頑張れ」

 

 

アスラはちょっとだけ残念そうな声を漏らした。どんな理由があれど、天下のカラーリーダーが途中でバトルを投げ出すのはなんか拍子抜けだった。

 

だが、ロンはその言葉を理解したか、デッキとBパッドを仕舞った。それに伴い、ナイトサバイブはこの場から一旦姿をゆっくりと消滅させた。

 

 

「まぁいっか…………おいロン!!…やったな!!スッゲェぞ!!あの人からライフ破壊するなんて!!なんかちょっと腑に落ちねぇけど、オレも負けてられないな!!………てか、さっきのカード何!?…どこで手に入れた!?……実はオレもテンドウさんから似たような物を………」

「アスラ、一度に何個も質問するな。うるさい」

 

 

その様子を見て思わずロンに駆け寄るアスラ。正直言って情報が多すぎてどこから話して良いか良くわからない状況に陥っていて………

 

ロンはそんなアスラを見ながら何かに思い至ったのか、再び懐からデッキを取り出すと、彼に見せつけながら……………

 

 

「アスラ………今すぐ、今すぐオレと戦え!!」

「!?」

「現時点でどちらが上か、この場でハッキリさせよう……!!」

 

 

そう言い放つのだった………

 

そして遂に、幼馴染みであり、尚且つ運命のライバルとも呼べる2人のバトルスピリッツが幕を開けようとしていた……………

 

 

 

 

 




《オマケストーリーズ!!》
【宿賃】


ユキカイ町にて、一旦アスラと分かれたエールはムエと共にこの町での宿探しをしていた。そしてようやくそれらしい所に到着し、受付を行なっていたのだが…………

「3人よ!!」
「いや、ですからお客様。ペットは頭数には入りませんので、ご了承くださ………」
「ムエはペットじゃないわ!!」
「むえ〜!」⬅︎そうだぞ!!
「いや……あの……ですから……(てか、この生き物何!?)」


受付の若い女性の係員は困惑していた。何せ、目の前のこの赤茶の髪のエールという少女が、自身の胸元に寄せて抱き抱えているムエをペットでは無いと言い切るのだから………

この宿ではペットは無料であるはずなのにだ。係員は正直とても困っていた。これでは話が一向に進まない。


「……かしこまりました。3人ですね!!……それでしたら料金はこちらになります!!」


言葉では3人と言いつつ、エールには2人のプランの料金表を提示する係員。絶対絶命に陥った際の切り返しや乗り越え方は流石プロと言える。

しかし、エールはその表を見て「う〜ん」と考えると………


「これで足りるかしら?」
「えぇぇぇえ!?……多過ぎです!!」


懐から信じられない程金貨の詰まった小袋を提示して来た。エールは箱入り娘故、買い物等、お金を支払う際はいつもこの状況になる。まぁ、簡単に言えばお金の計算がよくわからないのだ。


「むえ〜」⬅︎おいおい、大丈夫かよエールちゃん


その様子にムエも呆れる。とてもでは無いが「むえ〜」の一言で収まりきれない内容を口にした…………




******

《キャラクタープロフィール》
【ゴゴ・シラミネ】
性別:男
年齢:45
身長:170cm
身分:マスター(シラミネ家)
使用デッキ:【メカゴジラ】
好きなモノ:5
概要:白のカラーリーダー。鉄壁の防御力でライフ5を維持し続ける。その理由は5と言う数字にこだわりがあるだけのシンプルなもの。実際はそこらへんのカラーリーダーよりも強いらしい。この国では彼に勝てるか否かで大物になれるか決まるらしい。


《用語設定》
【仮面ライダーナイト】
ロンが生まれた時から手にしていたと言う紫のライダースピリット。アスラの龍騎とは同型であり、デッキの共通点も多い。ロンの手にしていた黄金の翼のカードにより、新たな強化形態、ナイトサバイブが誕生した。


******


最後までお読みくださり、ありがとうございました!!

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