バトルスピリッツ コラボストーリーズ   作:バナナ 

14 / 74
14コア「サバイブ-烈火-」

この国においての最高位の身分、エックスを持つ少女エール・オメガは夏だと言うのに粉雪が降り続ける極寒の町、ユキカイ町を走っていた。その胸元にはオレンジの犬、ムエが抱き抱えられている。

 

行き先はこの町のコロシアム。この町での宿を探し終えたエールはアスラのバトルを一目見ようと急いでいた。

 

 

「ハァッ…ハァッ……間に合うかしら?……いや、別にあんな奴のバトルなんて興味ないんだけど……!!」

「むえ〜?」⬅︎じゃあ走るのやめようぜ?

 

 

息を切らしながらもツンデレを発揮するエールに、ムエは自分の言葉が伝わらない事を知っていながらもツッコミを入れる。確かに別にアスラのバトルに興味がないなら急いで走る必要性は皆無である。

 

やがて彼女らはユキカイ町の氷で覆われたスタジアムに到着するのだった…………

 

 

ー…

 

 

エールは今、到着したスタジアムの床を走っている。バトル場のある中央を目指しているのだ。そして突然見知った人物の声が聞こえて来た。

 

それはとてもとても喧しいが、自分にとっては馴染み深く、落ち着く声であって………

 

 

「ドラゴンライダーキックッッ!!」

「ッ!!……アスラの声…間に合った!!」

 

 

聞こえて来たのは仮面ライダー龍騎の技名である「ドラゴンライダーキック」の名を叫ぶアスラの声。技名を叫んでいると言うことは絶賛バトル中であると言う事。エールはホッと肩を下ろし、再び走り出すと、ようやくアスラがいるであろう中央のバトル場に辿り着いた。

 

その瞬間、バトルしているアスラの光景が目に映った。宣言通り龍騎が赤き龍の火炎弾に背を押され、対戦相手に飛び蹴りをかましていた。

 

しかしその相手は…………

 

 

「………ぐっ!!」

 

 

〈ライフ4➡︎2〉ロン

 

 

「………あれ、アイツ確か…………ロン??……だったっけ?…アスラのライバルの………」

 

 

そう。その対戦していた相手は白のカラーリーダーではなく、アスラのライバルであるロン。龍騎のライダーキックを受けてそのライフが大きく削がれた。

 

ロンのカラー戦を見届けた後、アスラは何故か彼に突然バトルを挑まれ、現在に至る。

 

 

「お〜い!!…バカスラ!!」

「ッ……おぉエール!!…宿探し終わったのか!?…ありがとなッ!!」

「そんなことより何でアンタ白のカラーリーダーじゃなくてライバルとバトルしてんのよ!!」

 

 

気になったエールがアスラに声をかけた。

 

 

「……まぁ、色々あって……」

「カラーリーダーとはバトルできたの?」

「……なんか予約制だとかで無理なんだと」

 

 

ある程度の事情を簡潔に説明するアスラ。その様子を見ていたのは白のカラーリーダーとアスラの対戦相手であるロン。

 

 

「おいアスラ。バトル中によそ見するな……次はオレのターン、手は抜かない!!」

「おぉ!!悪い!!……どっからでもかかって来やがれ!!ターンエンドだ!!」

手札:3

場:【仮面ライダー龍騎】LV2(4)BP4000(疲労)

バースト:【有】

 

 

ロンに急かされ、アスラはそのままターンをエンドとした。

 

因みに現時点でアスラとロンのライフは共に『2』……ロンの場はスピリットどころかネクサスもバーストも無い状況であり、若干アスラが優勢だった。

 

 

「あの少年。コモンでしかもソウルコアが使えない身でここまで生き残って来たのか?……なかなか骨があるじゃないか」

 

 

ここまでのアスラのバトルスピリッツを見て、そう呟いたのは白のカラーリーダーゴゴ・シラミネ。素直にアスラが成して来た事に関心を示す……が。

 

 

「………まぁ、どちらにせよロンには勝てんがな」

 

 

直ぐにそう言い返した。彼は既にどちらに勝利の女神が微笑むのかを見抜いているようである………

 

 

(………オレが伏せたバーストは第二の龍騎。ロンの奴が龍騎を破壊したらこれを発動させてやるぜ!!)

 

 

一方でアスラは割と余裕であり、次のロンのターンを凌いで勝つ気でいた。

 

そして、様々な人物の考えが交差する中、ロンのターンが幕を開ける………

 

 

[ターン05]ロン

 

 

「メインステップ………鎧魂と第二のナイトを召喚!!」

 

 

ー【鎧魂】LV1(1)BP1000

ー【仮面ライダーナイト[2]】LV2(3)BP6000

 

 

鎧を着た人魂ならぬ鬼魂、鎧魂と、ロンの持つ紫の騎士型のライダースピリット、ナイトが現れる。

 

 

「ナイトの召喚時効果!!…龍騎のコア2つをリザーブへ送く!!」

「っ!!」

 

 

ナイトは『ソードベント』のアドベントカードをバイザー付きの剣に装填し、黒槍を手にする。そしてナイトはそれを振るい、風の斬撃を龍騎に飛ばす。龍騎はそれを両手をクロスさせてガードするも、体内のコアは吹き飛ばされてしまう。

 

 

(……っしゃぁ…これで良い…これで龍騎のコアは2つ。第二のナイトのアタック時効果で破壊される……その時第二の龍騎のバーストが火を吹く!!)

 

 

第二のナイトのアタック時効果。コア2つ以下のスピリット1体を破壊する。たった今龍騎はその効果範囲内に収まった。アスラはこの効果による破壊で第二の龍騎のバースト発動を狙っていたのだ………

 

 

「アタックステップ!!」

「っしゃぁ!!…どんと来やがれロンーー!!」

 

 

アタックステップに移行するロン。待ち構えていたアスラはロンを挑発するように腹の底から声を荒げる。

 

………だが、

 

 

「鎧魂でアタック!!」

「………え……そっち!?」

 

 

最初にアタックして来たのは第二のナイトではなく、まさかの鎧魂。龍騎を破壊して来なかった事に動揺が隠せないアスラ。

 

さらにロンは畳み掛けるべく手札からある1枚のカードを抜き取る。

 

それは進化したての最強カード………

 

 

「フラッシュ煌臨発揮!!…対象は第二のナイト!!」

「!?」

 

 

ロンの宣言と共にナイトはベルトからカードを引き抜く、それと同時にナイトとロンを中心に疾風の風が吹き荒れ、武器であるバイザー付きの剣はバイザー付きの青いシールドへと変わる。

 

そしてナイトはその引き抜いたカードを青いシールドに装填………

 

 

………『サバイブ!!』

 

 

無機質な機械の音声がそう告げると、ナイトは瞬く間にその姿を青い騎士へと一変させる。

 

 

「煌臨!!…ナイトサバイブ!!」

 

 

 

ー【仮面ライダーナイトサバイブ】LV2(3)BP11000

 

 

 

「ッ………さっきの進化したナイト……!!」

「………何コイツ……あんなカード持ってたの??」

 

 

ナイトの強化形態、サバイブの登場にたじろぐアスラ。これを初めて見たエールもまたその圧倒的な強者のオーラを感じていた。

 

ロンはそんな彼らのリアクションなど気にも止めず、ナイトサバイブの効果を発揮させる。

 

 

「ナイトサバイブ…煌臨アタック時効果!!…第一の龍騎のコア2つをトラッシュへ!!…よって消滅する!!」

「ッ!!……」

 

 

ナイトサバイブが盾から騎士の剣を引き抜くと、そこに疾風の力を込め、アスラの龍騎へ向けてそれを放った。龍騎はガードするも、体内のコアが全て弾き飛ばされ、この場から消滅してしまう………

 

 

「第二の龍騎のバースト発動条件は【自分のスピリット破壊後】……消滅では発動できない!!」

「!!」

 

 

ロンは完全にアスラの戦術を読んでいた。だからこそ第二のナイトで先にアタックする事はせず、敢えて鎧魂でアタックし、そのフラッシュ間でナイトサバイブによる消滅を行ったのだ。

 

 

「鎧魂のアタックは続いてるぞ!!」

「くっ……ライフだ!!………ッッ!!」

 

 

〈ライフ2➡︎1〉アスラ

 

 

鎧魂が手に持つ古びた刀でアスラのライフを1つ斬り裂いた。これによりアスラのライフは残り1つだ………

 

 

「終わりだ………ナイトサバイブ!!」

 

 

ナイトサバイブはロンの指示により、戦闘態勢に入り、アスラのライフ目掛けて走り出した。

 

………もうアスラにはこれをどうにかする手段は残されていない…………

 

………できる事と言えば、このバトルのラストコールをするのみであり………

 

 

「…………ライフで受ける……ッッ!!」

 

 

 

〈ライフ1➡︎0〉アスラ

 

 

ナイトサバイブの疾風を纏わせた剣の一撃がアスラの最後のライフを難無く断ち切った…………

 

アスラはロンとのバトルに敗北したのだ………

 

 

「アスラ………」

 

 

バトルに敗北し、その場で膝をつくアスラに対し、エールは心配しているのが見て取れる言い方で彼の名前を呟いた。

 

だが…………

 

 

 

「クッソォォォー!!!……オレの負けかァァァー!!!」

「わっ!?…うるさ!!」

 

 

別にとうの本人は落ち込んでいるわけではない。アスラは勢い良く立ち上がりながらいつものように大音量で叫んだ。彼は悔しそうにはしているものの、どこか満足気な表情でもであり………

 

 

「良いバトルだったなロン!!……でもいつか必ずオマエを追い越してやる!!」

 

 

アスラがロンに向かってグータッチを求めるように拳を突き付けるが、ロンは自分の拳をその拳に合わせる事はせず………

 

 

「………オレはオマエみたいな奴をライバルだと言っていたのか……」

「っ!?」

 

 

ロンの口から放たれた言葉はいつもの友人やライバル目線で言える言葉ではなかった。まるで他のレア以上の身分を持つ者達のようにアスラを見下しているような………そんな棘のある言葉だ。

 

 

「ライダースピリットを得てもやる事は突撃の選択のみ。とんだ体たらくなバトルだ。オレはもうオマエみたいなバカをライバルとは呼べない……!!」

「………なんだと………!!」

 

 

例えばこの言葉が特に顔も知らなくて、見知らぬ人物であったのなら、アスラはいつものようにおちゃらけて終わったはずだろう。そんな言葉聴き慣れたものだからだ。ある程度は水に流せる………

 

しかし、それを言い放つのがロンなら話は別だ。彼がそう言った言葉を言い放つからこそ、アスラは珍しく怒りを露わにしている………

 

 

「だが……もう一度だけチャンスをやる……2日後…この町の外れにある雪原広場で再びオレとバトルしろ。そこでもまた同じようなバトルをしたら、今度こそオレはオマエとの好敵手関係を切る!!」

「………あぁ、わあっったよ……2日後、オレがオマエのライバルだって事を改めて自覚させてやる!!」

 

 

彼らは2日後に再戦を交わし、この日はそれで一旦幕を閉じた。

 

 

******

 

 

 

翌日。ユキカイ町の繁華街の一角にて………

 

 

「と言うわけなんですテンドウさァァァーん!!……この黄金の翼のカードを進化させるため、是非オレにバトルのご教授をォォォー!!!」

「え……やだ」

「えぇぇぇぇぇえ!!?」

 

 

アスラは仕事でこの町に来ているテンドウに会いに行っていた。そのすぐそばにはエールとエールに抱っこされているムエも確認できる。

 

ロンに対抗すべく、アスラが見出した作戦は黄金の翼のカード。先日頂点王シイナからもらい受けたそれをロンと同じく進化させればきっとサバイブに対抗できる力が手に入ると思っていたからである………

 

だが結果は聞いての通り、テンドウはあっさりとそれを拒否した。

 

 

「なんでですかァァァー!!?……今なんか「よし、やろう」って言う空気だったじゃねぇっすか!!」

「いや、だってめんどくさいだろ。アイス溶けるし」

「………ホントにあったのね、メタルアイスクリーム………」

「むえ〜!」⬅︎私も欲しい!!

 

 

テンドウがやる気なさそうな雰囲気を晒しながらユキカイ町名物「メタルアイスクリーム」を舐めていた。「溶けるし」とは言いつつも、流石メタルと言ったところか、そのアイスクリームは全く溶ける気配が無かった。

 

エールも信じ難かったその存在に思わず声を漏らす。ムエはそれを見てよだれが止まらなかった。どうやら食べたいようだ。

 

 

「………てか何、オマエそんなにその天才イケメン君のスピリットが怖いわけ?」

「え?……いや、別に怖くはねぇっすよ!!……オレはただロンにまたライバルだって認められたいだけっす!!」

「………ふーん」

 

 

テンドウがそう言うと、アスラはそれに否定的な言葉を並べる。

 

彼は兎に角ロンにまたライバルであると認められたかった。理由は最大の好敵手を失いたくないと言う、もはや本能と言っても過言ではないモノであり………

 

 

「だァァァー!!!しゃぁねぇ、オレ1人でも特訓してやらァァァー!!!…明日は負けねぇぞロンーーー!!!」

「ちょっとバカスラ、どこ行くのよ!?」

「足腰鍛えるために雪原走って来る!!」

「特訓のベクトルが全然違うじゃない!!…バトスピしなさいよ!!」

「むえ〜」⬅︎いってら〜

 

 

アスラはそう言いながら全力疾走でこの場を去っていく。このバトルスピリッツ絶対主義の世界において、走り込みや筋トレなど愚の骨頂極まるが、運動が得意なアスラにとってはどうやらその方法が一番平常を保てるようだ。

 

 

「………行っちゃった………にしたって男ってホントバカよね」

「何が?」

 

 

エールが漏らした言葉に、テンドウが反応した。

 

 

「アスラもそのライバルも、ライバルとして認めないからなんだって言うのよ。自分は自分じゃない」

「………エレンに認められたいとか思ってたオマエが言う?…結構なブーメランよ?」

「そ、それとこれとは話が違うわよ!!」

 

 

エールは今回の出来事により、そう思い至っていた。

 

 

「……まぁ、アイツらはガキの頃から一緒だったみたいだしな。他人にはわからないモンがあんじゃね?」

「他人にはわからないモノ…………」

「てか何エール、オマエあの天才イケメン君に小僧取られて嫉妬してんの?」

「し、ししし、してないわよ!!…誰があんなチビ!!」

 

 

テンドウの言葉に、エールは顔を赤くしながら全力で否定するが、正直、彼女はアスラをあそこまで必死にさせるロンとの関係を羨ましく考えていた。

 

 

 

******

 

 

ユキカイ町外れにある雪原広場。足元に軽く雪が積もるこの場所にて、決戦は明日だと言うにもかかわらず、アスラのライバル、ロンはこの場に1人佇んでいた…………

 

その手には昨日進化を果たしたナイトサバイブが握られていて………ロンはそのカードを凝視していた。

 

 

「やっほーー……おっ、やっぱロンは良い感じのイケメンになったんだな〜」

「!!」

 

 

ロンが耳覚えのある明るい声に反応した。それは女性の声。自分とアスラにとっては忘れられない懐かしい声だ。ロンは思わずその声のする方へと振り向いた。

 

 

「………シイナ……なのか?」

「正解!!…久し振り、大きくなったね!」

 

 

そう。そこにいたのは他でもない。自分とアスラを5歳になるまで育ててくれた恩人、現頂点王シイナ・メザだ。

 

 

「………なんで頂点王のアナタがこんなところにいるんですか?」

「アスラ程のリアクションはしてくれないんだね。ロンは大人だな〜……背丈も私より高くなったし」

「リアクションに関してはアイツがバカなだけです」

 

 

久し振りに母に等しい存在と再開したと言うのに、ロンはあまり驚くような素振りは見せず、冷静な口調でシイナに訊いた。

 

 

「ふふ、ロン。私はね、楽しみなんだよ。…自分が育てた子が私に挑んで来る事と、その過程を見るのがね」

「………随分と変わった趣味を持ってたんですね」

 

 

約10年前、シイナは2人をスーミ村に残し、頂点王になる旅に出た。そして頂点王になり、今があるのだが………

 

簡単に説明すると、彼女はアスラとロンの2人が切磋琢磨し合い、強くなっていく過程を頂点王という立場で眺めたかったのだ。そのためだけに三王さえをも倒し、この国初の頂点王になった。

 

そして、次はシイナがロンに質問する。彼女は小さく微笑みながら口を開き…………

 

 

「………ねぇロン。そんなにアスラが弱いのがイヤ?」

「!!」

 

 

何も事情を説明していないにもかかわらず、このシイナは何故か今の自分の心境や状況を知っていないとできない質問を投げてきた。

 

流石のロンも若干の戸惑いを見せたものの、直ぐに冷静さを取り戻し、飄々とした態度で返答する………

 

 

「………はい。嫌です」

「なんで?……別にいいじゃん」

「昨日。オレのナイトが進化しました………その時、同時に感じたんです……オレとアイツの実力差を…オレの方が圧倒的に強くなってしまったと………」

「ふーーん……つまりロンはアスラに手応えを求めていると?」

「………そうなりますね」

「自分より弱過ぎてもダメ。もちろん強すぎてもダメ。ふふ、ライバル関係は複雑だ〜」

 

 

好敵手と言う存在に弱い奴は要らない。

 

ロンの考え方だ。幼馴染みだとか、同型のライダースピリットとかがでアスラをライバルにしていたわけではない。

 

自分がいくら強くなっても、アスラはその差を直ぐに埋めて強くなって来る。それが堪らなく楽しいから彼は今までロンのライバルでいられた。

 

しかし、サバイブによりそれは崩壊。ロンはアスラの手が届かない強さに至った事を悟り、それを確かめるべく彼にバトルをけしかけて現在の状況に陥っている。

 

シイナの言う通り、ライバル関係と言うのは簡単には言い表せない複雑極まるモノなのである。特にアスラとロンの場合は…………

 

 

「そっかそっか!!……どちらにせよ、明日が楽しみだ!!……2人の途中経過を拝めるんだからね!!……じゃあ、明日見に来るから、頑張ってね〜」

「………」

 

 

最後にそう告げてその場を立ち去るシイナ。ロンはそれに対して何も言葉は返さず、ただ黙って彼女の背中を見送った…………

 

 

そして翌日…………

 

遂に決戦の時…………

 

 

******

 

 

粉雪が浅く降り積もった雪原にて、アスラとロンは対峙していた。その周囲には彼らのバトルを見届けるべく、エールとその頭の上にいるオレンジ犬ムエ。テンドウがいた。

 

その場はとても殺風景で、如何にも決戦と言った言葉が似合う雰囲気であり………

 

 

「どうだアスラ。少しは強くなれたか?」

「たった2日で強くなれるなら苦労はしないぜ。でも、昨日散々走り回ったり叫んだりしたら色々とスッキリしたぜ。今日、オマエのライバルはオレしかいないって事、もう一度バッチリ叩き込んでやる!!」

「それがいつもの空回りじゃなければ嬉しいがな!!…行くぞ!!」

「おう!!」

 

 

………ゲートオープン、界放!!

 

 

言い合いの中、2人は展開されたBパットにデッキをセット。コールと共にバトルスピリッツを始める。

 

……先行はアスラだ。

 

 

[ターン01]アスラ

 

 

「っしゃぁ!!…メインステップ…ドラゴンヘッドとシャムシーザーをLV2と1で連続召喚!!」

 

 

ー【ドラゴンヘッド】LV2(2)BP2000

ー【シャムシーザー】LV1(1)BP2000

 

 

 

アスラのいつものスピリット達、龍の頭部のみで活動を続けるドラゴンヘッドと、背に数本のトゲを生やした赤きトカゲ、シャムシーザーが場に現れる。

 

 

「さらにネクサス、ミラーワールドを配置して…エンドだ!!」

手札:2

場:【ドラゴンヘッド】LV2

【シャムシーザー】LV1

【ミラーワールド】LV1

バースト:【無】

 

 

立て続けにネクサスカードを配置するアスラ。これにより、周囲が一瞬にして鏡向きになる。

 

そしてアスラはこれ以上は動かず、ターンを終えた。

 

 

「……そういや、アイツあの黄金の翼のカードはどうした?」

 

 

バトルを傍観しているテンドウが横にいるエールにアスラの持つ黄金の翼のカードの事を聞いてきた。

 

 

「……結局何も変化は無かったみたいよ。でも、「デッキに入れときゃ勝手に進化するだろ!!」とか言ってたから、多分デッキに入れてるんだと思うわ」

「…………ふーーん」

 

 

アスラが鍛えたところで特に何も反応を示さなかった黄金の翼のカード。楽観的な考え方により、今はそのデッキの中に眠っている。当然それをドローして仕舞えば全くの死に札。アスラのこの行いは博打に近い。

 

 

(………そう言えばシイナがいないな……)

 

 

そしてロンはこの場に昨日来ると告げたシイナが見当たらないのを確認しながらも、自分のターンを進めていった………

 

 

[ターン02]ロン

 

 

「メインステップ……鎧魂、ソードールを召喚し、ミラーワールドを配置!!」

 

 

 

ー【鎧魂】LV1(1S)BP1000

ー【ソードール】LV2(3)BP3000

ー【ミラーワールド】LV1

 

 

 

ロンの場に鎧魂と、全身が剣で構築されたスピリット、ソードールが現れる。ミラーワールドは既にアスラが配置していたためか、周囲の変化は特に起きなかった。

 

 

「アタックステップ…ソードールでアタックする」

「来やがったな…ライフだ!!……ッッ!!」

 

 

 

〈ライフ5➡︎4〉アスラ

 

 

手始めと言わんばかりにソードールでアタックを仕掛けてきたロン。BPでソードールに敵う者を有しないアスラはこれをライフで受ける宣言をした。

 

ソードールはその鋭利な両手を活かし、アスラのライフ1つを斬り裂く。

 

 

「………ターンエンド」

手札:2

場:【鎧魂】LV1

【ソードール】LV2

【ミラーワールド】LV1

バースト:【無】

 

 

ロンはブロッカーとして鎧魂を残し、そのターンを終えた。アスラはその宣言と共に反撃を開始すべくターンシークエンスを進めていった………

 

 

[ターン03]アスラ

 

 

 

「メインステップッッ!!……行くぜ相棒!!…仮面ライダー龍騎をLV1で召喚!!」

 

 

 

ー【仮面ライダー龍騎】LV1(1)BP2000

 

 

 

アスラが勢い良くカードをBパットに叩きつけながら召喚したのは、赤きライダースピリット、仮面ライダー龍騎。因みにこの龍騎はいわゆる第一の龍騎であり、召喚時効果が発揮される。

 

 

「召喚時効果により、オレはオープンされた第二の龍騎を手札に!!」

 

 

それにより、アスラはバースト効果を持つ第二の龍騎を手札に加えるが………

 

 

「ドラゴンヘッドのLVを下げ、ミラーワールドのLVを2にアップ!!…アタックステップだ!!」

「??……第二の龍騎を伏せないの!?」

「っ!?…どう言う事だアスラ……」

 

 

アスラのプレイングに反応したのはエールと対戦者のロン。しかし、反応を示してしまうのも無理はない。バーストが手札にあると相手に知られていてもブラフとして伏せるのがもっとも一般的な戦術であるからだ。

 

 

「うるせェェェー!!!…オレにも考えがあるんだよ!!……龍騎でアタック!!…ミラーワールドの効果でカードをオープンし、アドベントカードならそれを発揮させる!!……よし、オレが引いたのはストライクベント!!……鎧魂を破壊してドローだ!!」

「!!」

 

 

龍騎がベルトにあるカード束からそれを1枚引き抜くと、左手にある龍を模したバイザーにそれを装填………

 

 

『ストライクベント!!』

 

 

と言う無機質な機械の音声と共に、龍騎の右手に赤き龍の頭部が取り付けられる。龍騎はそれを鎧魂に向け、龍口から爆炎の炎を放出した。

 

狙われた鎧魂は抵抗する間も無く焼き尽くされてしまった………

 

………が、

 

 

「鎧魂の破壊時効果。ソウルコアが自身に置かれていた時、相手スピリット1体のコア1つをトラッシュに送る……!!」

「!!」

「消えろ、シャムシーザー……」

「くっ!!……」

 

 

鎧魂の破壊に合わせるように紫色の靄がシャムシーザーの周囲に発生。シャムシーザーはなす術なくその靄に体内のコアを抜き取られてしまい、消滅してしまった………

 

 

「……オマエはオレの鎧魂の効果を知っていたはずだ。なのに何故わざわざ鎧魂から破壊した?」

「あぁ!?…んなモン残しててもしょうがねぇからに決まってるだろ!?」

「………これだからオマエは成長できないんだ……」

「んだと……!?」

 

 

ロンはアスラに自分と肩を並べられるような理想のライバルを求めている。

 

アスラのわざわざ鎧魂の破壊時効果を踏みに行くようなプレイングに軽く失望していた。アスラもアスラでこう言った文句に対しては基本怒りを見せたりはしないものの、話し手がロンなのもあってどうしてもそれを堪え切れないでいた………

 

 

「………残ったドラゴンヘッドでアタック……!!」

「ライフだ………っ!」

 

 

〈ライフ5➡︎4〉ロン

 

 

飛翔するドラゴンヘッドがロンのライフ1つを噛み砕いた。

 

 

「っしゃぁ!!……これで残りライフは同じだぜ!!…ターンエンド!!」

手札:4

場:【ドラゴンヘッド】LV1

【仮面ライダー龍騎】LV1

【ミラーワールド】LV2

バースト:【無】

 

 

互いの仲に亀裂が走りながらも、アスラはそのターンをエンドとした。

 

 

「………あのロンとか言うイケメン君はバトルが面白くねぇんだよな……」

「何よ、藪から棒に……」

 

 

エールと共にバトルを眺めているテンドウがそう呟いた。

 

 

「……あのイケメン君はそのデッキのテンプレみたいな動きしかしないだろ?……」

「………あぁ……まぁ確かにね……紫ならやりそうって感じの事しかしないわよね」

「バトルは上手いし、センスもあんだが、あの小僧と比べると真面目すぎてこれっぽっちも面白くねぇ」

 

 

テンドウはどうにもロンのバトルが気に入らなかった。確かに強いし完璧なまでの試合運びをして見せる。だが、それだと意外性が無くて面白味に欠ける。

 

 

「……なんでアスラは面白いのよ?」

 

 

逆にエールがテンドウに訊いた。

 

 

「アイツはぶっちゃけバトスピ下手だし、考える脳なんてほとんどねぇ。けど、何者をも恐れない度胸。最後まで勝負を投げない気合、ど根性。何より天性の感で誰もが驚く事をやってのける。これまでアイツがカラーリーダー含め、多くの強敵相手に勝ち上がって来れたのもその部分がデカイ………故にあの小僧は面白い!!」

「……単なるバカが引き起こした偶然だと思うけど………」

「むえ〜!」⬅︎同じく!

 

 

テンドウがアスラと出会った当初からやけにアスラを気に入っていたのはそう言う理由だった。ソウルコアが使えなくて、気合とど根性と感だけでバトルするカードバトラー。これが面白くないわけがないと確かな自信が彼の胸の奥にはあって………

 

そして2人がそんな会話をしていくうちに、ロンの第4ターンが幕を開ける。

 

 

[ターン04]ロン

 

 

 

「メインステップ……ソードールのLVを1に下げ、魔界竜鬼ダークヴルムを2体連続召喚!!」

 

 

 

ー【魔界竜鬼ダークヴルム】LV1(1S)BP3000

ー【魔界竜鬼ダークヴルム】LV1(1)BP3000

 

 

 

ロンの場に禍々しい気を放つ2体の紫の龍が咆哮を上げながら出現した。

 

 

「召喚時効果……オレのライフを1つ破壊し、2枚ドロー!!…これを2度行い、オレはライフ2つを破壊し、4枚のカードをドロー!!」

 

 

〈ライフ4➡︎3➡︎2〉ロン

 

 

 

2体の魔界竜鬼は現れるなり主人であるはずのロンのライフバリアを噛み砕いて見せた。しかし、それこそ力の代償。彼は新たに4枚ものカードをドローして見せた………

 

 

「アタックステップ!!……2体の魔界竜鬼でアタックする!!」

「ッ……ライフだ!!…どんと来やがれ!!……ぐうっ!!」

 

 

〈ライフ4➡︎3➡︎2〉アスラ

 

 

 

2体の魔界竜鬼は今度はアスラのライフバリアに目をつけると、すぐさまそこへと飛翔し、それを噛み砕いて見せた。

 

これでアスラもロンと同じ残りライフ2となる………

 

 

「……ターンエンドだ」

手札:5

場:【ソードール】LV1

【魔界竜鬼ダークヴルム】LV1

【魔界竜鬼ダークヴルム】LV1

【ミラーワールド】LV1

バースト:【無】

 

 

ソードールをブロッカーとして残し、そのターンをエンドとするロン。次はアスラのターンとなる。

 

 

[ターン05]アスラ

 

 

 

「メインステップ!!……ドラゴンヘッドを不足コストに第二の龍騎をLV2で召喚!!」

 

 

 

ー【仮面ライダー龍騎[2]】LV2(3)BP9000

 

 

 

「っ!?……そのまま召喚するだと!?」

 

 

ドラゴンヘッドが不足コストで消滅する。

 

前のターンで手札に加えていた第二の龍騎のカードをこのタイミングでバーストとして伏せるのでは無く、普通にコストを支払って召喚したアスラ。その意外な登場にロンも戸惑う。

 

 

「伏せたってどうせ発動してもらえねぇんだ!!…ならこうするまでって奴よ!!」

「ワッハッハッハ!!!……やっぱアイツ面白ぇぇわ……!」

「………だからただ単にバカなだけじゃないの?…テンドウも含めて……」

 

 

アスラらしいとも言えるコストの大きいバーストスピリットの通常召喚に腹を抱えて笑いこむテンドウ。それに対しエールはテンドウとアスラを同時に視野に入れながら「バカ」だと一蹴して見せた。

 

 

「オレだって頭くらい使えるんだぜ!!……第二の龍騎でアタック!!…その効果でソードールを破壊!!」

「!!」

「バーニングセイバーッッ!!」

 

 

早速第二の龍騎でアタックを仕掛けるアスラ。第二の龍騎は柳葉型の剣に炎を纏わせ、その刀身でロンのソードールを斬り裂いた。ソードールは堪らず爆散してしまう。

 

 

「さらにミラーワールドの効果!!……アドベントカード、ストライクベントを発揮!!…ダークヴルムを1体破壊してドロー!!」

「なに!?」

 

 

再び『ストライクベント』の音声が木霊すると、今度は第二の龍騎に龍頭が装着され、爆炎の炎を放出。魔界竜鬼ダークヴルムもまた焼き尽くされてしまった………

 

これでロンの場には疲労した魔界竜鬼ダークヴルム1体を残すのみとなった。

 

 

「オマエのライフは2!!…龍騎2体のアタックで終わりだァァァー!!!」

 

 

アスラはこのターンで勝負をつけるつもりだ。事実王手に迫るまでにかなりロンを追い詰めていた。

 

しかし、ロンもそう簡単にはくたばらない。彼は手札から1枚のカードを引き抜いた………

 

 

「甘い!!……フラッシュマジック…ネクロブライト!!…トラッシュから鎧魂を復活!!」

「!!」

 

 

ー【鎧魂】LV1(1S)BP1000

 

 

ロンのカウンターマジックにより、龍騎によって破壊されたはずの鎧魂が淡い紫の輝きと共に場へと帰還した。

 

 

「第二の龍騎のアタックは鎧魂で受ける!!」

 

 

そしてロンはこの鎧魂を早速ブロッカーとして運用する。鎧魂が果敢に第二の龍騎に戦いを挑みに行くも、柳葉型の剣で呆気なく斬り裂かれてしまう。

 

しかし、本領発揮はここからである。

 

 

「破壊時により第一の龍騎からコア1つをトラッシュに!!……よって消滅!!」

「ぐっ……!!」

 

 

鎧魂が破壊された直後、紫の靄が第一の龍騎の周囲に発生し、その体内にあるコアを弾き飛ばした。コアが全て無くなった龍騎は堪らず消滅してしまう。

 

このロンのカウンターにより、アスラのアタッカーは損失。このターンをエンドにせざるを得ない状況に追い込まれてしまう。

 

 

「………ターンエンドだ……」

手札:5

場:【仮面ライダー龍騎[2]】LV2

【ミラーワールド】LV2

バースト:【無】

 

 

このターンで決められなかった悔しさに顔を歪ませながらそのターンを終えるアスラ。次は彼の攻撃をマジック1枚で凌いで見せたロンのターンだ。

 

 

「………成る程、少しはやれるように頭を捻って来たみたいだな」

「へっ!!…まぁな」

「………だが、足りない………この程度じゃまだオレはオマエをライバルとは認めない……!!」

「!!」

 

 

このターン、アスラなりにロンの対策をして来たつもりだった。

 

邪魔な存在だった鎧魂は早めに倒し、第二の龍騎を敢えて伏せず、意表を突いた。テンドウが言っていたように非常に面白いバトルだった。

 

しかし、その程度ではロンの圧倒的な強さに追いつく事はできない。それが次のターンで証明される………

 

 

[ターン06]ロン

 

 

 

「メインステップ……仮面ライダーナイトを召喚!!…効果でドロー!」

「ッッ………!!」

 

 

 

ー【仮面ライダーナイト】LV3(6)BP6000

 

 

 

 

満を辞して登場する群青色の騎士型ライダースピリット、ナイト。アスラは幼い頃から何度もこのスピリットを見て来たが、このスピリットにこれだけ存在感を感じたのは初めてだった。

 

その理由としては、やはりあのカードの影響が大きいか………

 

 

「アタックステップッッ!!……ナイトでアタック!!」

 

 

そんなナイトでアタックを仕掛けるロン。そしてこのタイミングですぐさまあるカードを手札から引き抜いた………

 

 

「フラッシュ煌臨発揮!!…対象は仮面ライダーナイト!!」

「………来る……!!」

 

 

ロンの煌臨発揮宣言にアスラは危機感を覚え、冷や汗をかいた。

 

煌臨のエフェクトにより、ナイトはベルトからカードを引き抜く、それと同時にナイトとロンを中心に疾風の風が吹き荒れ、使用武器も青いシールドへと変化する。

 

そしてナイトはバイザー付きの青いシールドにその引き抜いたカードを装填……

 

 

………『サバイブ!!』

 

 

無機質な機械の音声がそう告げると、ナイトは瞬く間にその姿を青い騎士へと一変させた。

 

 

「煌臨……仮面ライダーナイトサバイブ!!」

 

 

 

ー【仮面ライダーナイトサバイブ】LV3(6)BP16000

 

 

 

仮面ライダーナイトの強化形態、ナイトサバイブがアスラの前に今一度立ちはだかった………

 

 

「煌臨時効果!!…第二の龍騎のコア2つをトラッシュへ!!」

「っ!!」

 

 

ナイトサバイブが盾から騎士の剣を抜き取り、そこに疾風の力を纏わせ、第二の龍騎へ向けそれを放つ。第二の龍騎は両手をクロスさせガードするも、体内のコア2つを奪われ、LVダウンに陥ってしまった。

 

 

「さらにナイトサバイブの効果!!…デッキの上から3枚をトラッシュに置き、回復!!」

 

 

 

ー【仮面ライダーナイトサバイブ】(疲労➡︎回復)

 

 

 

ナイトサバイブは二度飛ぶ。ロンのトラッシュにカードが叩き込まれると共に回復状態となった。

 

 

「うーーーん。…やっぱアイツのバトルは面白くないんだよな」

「アスラのライフは後2つ……下手したらこのアタックステップで終わる………」

 

 

ナイトサバイブを初めて見たテンドウはまたしても彼のバトルを面白くないと対評価を送る。そしてエールの言う通り、アスラが何も無ければこのターンで決着が着く………

 

 

「終わりだアスラーーー!!!!」

 

 

ロンがトドメと言わんばかりに声を荒げる。

 

だが、運命の神はアスラを見放さなかった。確かにその手札にはまだカウンターのマジックが存在していて…………

 

 

「終わらねェェェー!!!…フラッシュマジック!!……ファイヤーウォール!!」

「!!」

「第二の龍騎を破壊し、このバトルの終了時にアタックステップを強制的に終わらせる!!…アタックはライフで受ける!!」

 

 

 

〈ライフ2➡︎1〉アスラ

 

 

ナイトサバイブの疾風の剣技がアスラのライフを斬り裂き、風前の灯まで追い込むも、直後に第二の龍騎が火柱に包み込まれ、消滅。その残された火柱はナイトサバイブと魔界竜鬼の道を阻んだ。

 

 

「………ターンエンドだ」

手札:4

場:【魔界竜鬼ダークヴルム】LV1

【仮面ライダーナイトサバイブ】LV3

【ミラーワールド】LV1

バースト:【無】

 

 

結果的に場に2体のブロッカーを残してのエンドとなったロン。次はギリギリで凌いだアスラのターン…………

 

 

 

[ターン07]アスラ

 

 

 

ドローステップ直前までターンを進めると、アスラはロンに対して口を開く。

 

 

「なぁロン」

「……なんだ」

「さっき気付いたんだけど、オレ、オマエのナイトサバイブが………いや、オマエがめっちゃ怖い!!」

「?」

「意味わかんねぇくらい強くなるオマエがめっちゃ怖い!!…心のどっかでオマエには一生勝てねーかもって思ってたかもしれねぇ!!」

 

 

このターン。アスラはテンドウに言われていた事を密かに思い出していた。

 

『………てか何、オマエそんなにその天才イケメン君のスピリットが怖いわけ?』

 

そうだ。アスラはナイトサバイブが……恐ろしい速度で成長して行くロンが怖い。自分がもっと遠くに置いていかれている気がして知らずのうちに凄まじい恐怖を感じていたのだ…………

 

 

「でもだからこそ今はオマエを超えたいって心の底から思ってる!!!…幼馴染みだからとか、ライダースピリットに選ばれてる者同士だからとかじゃねぇ!!……」

「………」

 

 

そこまで言い切ると、アスラは全力で息を吸い、肺を膨らませ………

 

 

 

 

 

オレは頂点王になる!!

 

 

 

それだけはオマエにも譲れねぇんだ!!!

 

 

 

 

 

粉雪積もる雪原にアスラの爆音が木霊する。

 

結局。

 

やる事は変わらない。アスラはただガムシャラに前だけを見て走るしかない。

 

だが、それこそがアスラの真の強さと言えよう………

 

そしてこの瞬間……

 

アスラの決意と言葉に応えるかの如く、デッキが赤く光輝いた。

 

 

「……あ、あれって……」

「進化だな」

「むえ〜」きれ〜

 

 

ソウルコアが使えない少年のデッキから進化の光が解き放たれる。ただ、この場でその事に驚いていたのはエールのみ。テンドウはいつも通りのほほんとしており、ロンは真剣な眼差しでアスラを見つめ、アスラもまた堂々と胸を張り、ロンと向き合っていた………

 

そしてターンを進め、アスラはドローステップに入る………

 

 

 

「……ドロー!!」

 

 

 

勢い良くドローされたそのカードはシイナからもらい受けた黄金の翼のカード。そのカードはドローされた直後にみるみる変わっていき、やがて一種のバトスピカードとなった………

 

 

「メインステップ……シャムシーザーを召喚」

 

 

 

ー【シャムシーザー】LV1(1)BP2000

 

 

 

このバトルでは2体目となるシャムシーザーが姿を現した。そしてアスラは立て続けにカードを引き抜き………

 

 

「ネクサス、燃えさかる戦場を配置!!」

 

 

 

ー【燃えさかる戦場〈R〉】LV1

 

 

 

アスラが配置したネクサスにより、ここら一変が炎に包み込まれた。その炎の熱により、浅く積もった雪が消滅し、大地が顔を出す。

 

燃えさかる炎の中、お互いがお互いを倒すべき存在だと認識しているかのようににらみあうアスラとロン。そしてアスラは遂に進化したカードを引き抜いた………

 

 

「………オレはこいつを召喚!!」

「……龍騎……?」

 

 

アスラがそう言って呼び出したのは仮面ライダー龍騎。

 

しかし、ロンがそう思っていた束の間。その龍騎はベルトからカードを1枚引き抜く。すると、周囲から烈火の如く炎が吹き荒れ、左手のバイザーは龍の頭部を模したショットガン型の武器に変更された。

 

そして龍騎はその武器の龍口たる部位にそのカードを装填………

 

 

…………『サバイブ!!』

 

 

そう無機質の機械音が告げると、龍騎は真っ赤に燃える炎の中でさらなる姿へと昇華して見せた………

 

その名は………

 

 

「仮面ライダー龍騎サバイブ!!」

 

 

 

ー【仮面ライダー龍騎サバイブ】LV3(4)BP13000

 

 

 

ロンのナイトサバイブと対を成す存在、龍騎サバイブ。アスラの諦めない真っ直ぐな気持ちにより黄金の翼のカードが進化させた最強の姿だ。

 

 

「ロンッッ!!……オマエがなんと言おうが、オレはオマエのライバルであり続ける!!」

 

 

アスラがロンにそう言い放つと、

 

 

「………オレもそれを望んでいる……!!」

 

 

ロンもまたアスラにそう言い返した。

 

激しく燃えさかる炎の中、睨み合うアスラとロン、そして互いに武器を構え、戦闘態勢に入るサバイブと化した龍騎とナイト。

 

このバトルの先にあるであろう勝利を手にするのはアスラかロンか………その答えは未だ誰も予想できない………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。