「ロンッッ!!……オマエがなんと言おうが、オレはオマエのライバルであり続ける!!」
「………オレもそれを望んでいる……!!」
穏やかに粉雪が降り続ける雪原にて、アスラとロンのライバル対決は続く。アスラとロン。そしてサバイブと化した龍騎とナイトは互いを倒すべき好敵手であると認識しているかの如く睨み合う。
「アレが龍騎の強化された姿、龍騎サバイブ………」
このバトルを見守っているアスラの旅仲間の少女、エールがアスラの龍騎サバイブを見てそう呟いた。もう1人の傍観者、三王の1人であるテンドウ・ヒロミはバトルで熱くなっている2人とは裏腹に、冷静で落ち着いた表情を見せながらタバコを吸っていた。
「リザーブのコアとシャムシーザーのコアを使い、ミラーワールドのLVを2にアップ!!」
シャムシーザーは消滅してしまうものの、龍騎を強化できるネクサスカード、ミラーワールドのLVが強化された。
……そして遂にアスラのアタックステップが開始される。
それはサバイブ同士の激闘の狼煙………
「いくぜロン!!……龍騎サバイブでアタックッ!!……この瞬間、ミラーワールドの効果でカードをオープン!!……めくられたのはアドベントドロー!!…オレは2枚のカードを引くぜ!!」
アスラの宣言により、龍騎サバイブの仮面の奥にある赤き眼光が光輝く。そして龍騎サバイブは龍頭を模した大きめのショットガンの銃口をロンの場に存在する魔界竜鬼ダークヴルムへと差し向け………
「アタック時効果、BP15000以下のスピリット1体を破壊する!!」
「!!」
「ダークヴルムを破壊だ!!」
そこから炎の弾丸を放つと、ダークヴルムをあっさりと焼却して見せた。これでロンの場に残ったのはナイトサバイブのみとなる。
しかも効果はこれで終わりではなくて………
「この効果で破壊に成功した時、龍騎サバイブに赤のシンボルを1つ追加する!!」
「効果で破壊して自力でダブルシンボルになった!?」
龍騎サバイブのその効果に驚いて見せたのはバトルを見守っているエールだった。これにより、龍騎サバイブのシンボルは2つ。ロンの残りライフ2を一撃で無きモノにできる力を得た………
「……その程度、ブロックして仕舞えばなんの問題も無い……迎え撃てナイトサバイブ!!」
アスラの龍騎サバイブのアタックに対してロンがライフの砦として差し向けたのは自身の持つ最強のスピリットナイトサバイブ。
ナイトサバイブに銃口を向け、先程と同じく炎の弾丸を何発も放つ龍騎サバイブ。
しかし、ナイトサバイブはそれらを全て紙一重で避けるか騎士の剣で叩き落しながら龍騎サバイブの元までジリジリと接近してくる。
「BPはオレの方が上だ!!」
「なめんじゃねぇ!…燃えさかる戦場の効果!!…アタック中の龍騎サバイブのBPをプラス3000!!…ナイトサバイブと同じだ!」
ー【仮面ライダー龍騎サバイブ】BP13000➡︎16000
アスラの背後で燃えさかる炎がアタック中の龍騎サバイブに力を貸している。これにより、龍騎サバイブはロンのナイトサバイブとほぼ同格のパワーを発揮している。
しかし………
相打ちで終わらせる程ロンと言う好敵手は甘く無くて………
「オマエの龍騎がオレのナイトと差し違えるのは有り得ない………フラッシュマジック…ソードベント!!」
「!?」
ロンが手札から引き抜いたカードはアスラも良く知っているカード。同型のライダースピリットを使っているからこそその効果の強力さを理解していて………
「効果によりナイトサバイブのBPをプラス5000し、オマエのサバイブからコア2つをリザーブへと叩き返す!!」
「くっ!?……」
ー【仮面ライダーナイトサバイブ】BP16000➡︎21000
ー【仮面ライダー龍騎サバイブ】(4➡︎2)LV3➡︎2
遂に龍騎サバイブの眼前まで接近したナイトサバイブが騎士の剣で龍騎サバイブの胴体を斬りつける。その衝撃で龍騎サバイブの体内のコアが2つ弾き飛ばされ、LVダウンに陥ってしまう。
「……ふぅーーーー………これでイケメン君のスピリットのBPは21000。対する小僧は燃えさかる戦場の効果込みで14000……7000差か」
エールの横でバトルを眺めているテンドウがタバコの煙を吐き出しながらそう呟いた。バトルスピリッツというゲームにおいてBP7000の差はかなり深刻的だ。ここからの逆転は難関極まる。
そんな差がついた2体のBPバトル。剣を持つナイトサバイブと銃を持つ龍騎サバイブの勝負において、接近戦ではどちらが優位に立てるかは一目瞭然。ナイトサバイブが凄まじい速度の剣撃で龍騎サバイブを斬りつけていき、追い詰めていく。龍騎サバイブは銃を盾がわりになんとか凌ぎ続きているが、やられるのは時間の問題である。
「強化されてもこの程度、終わりだアスラ。疾風の剣技の前に沈め………!!」
「ッ!!」
何度も攻撃を続けるナイトサバイブが龍騎サバイブに膝を突かせる。そしてナイトサバイブは騎士の剣に執筆の風を纏わせ、龍騎サバイブにトドメの一撃を振るった…………
龍騎サバイブはその一撃にあっさり斬り裂かれ、溜まらず爆散………
するはずだった………
「………何!?」
その光景に思わずいつもの冷静さを欠いて驚愕してしまうロン。
それもそのはず、何せ、追い詰めたはずの龍騎サバイブの銃口の先から短い剣が伸び、それでナイトサバイブの疾風を纏わせた剣技を食い止めていたのだから………
「………甘いのはそっちの方だぜロン……オレのデッキにもこのソードベントは入ってんだ!!」
「!!」
「これにより、龍騎サバイブのBPを5000アップさせ、ナイトサバイブのコア2つをリザーブへ叩き返す!!」
「くっ!?」
ー【仮面ライダー龍騎サバイブ】BP14000➡︎19000
ー【仮面ライダーナイトサバイブ】(6➡︎4)LV3➡︎2
龍騎サバイブが反撃開始だと言わんばかりにナイトサバイブの腹を蹴り上げながら起き上がる。ナイトサバイブは思わず姿勢を崩してしまい、体内のコアが弾き出され、LVダウンに陥る。
「こ、これでアスラの龍騎サバイブのBPは19000……対するナイトサバイブのBPはLVダウンして16000……アスラが上回った!!」
「フッ……行け、小僧!!」
エールとテンドウがアスラの背中を押すようにそう言った。
「ロン!!…オマエがいくら強くなろうとも、オレはオマエに直ぐ追いつく!!……でもって必ず超えてやる!!」
「くっ……」
「そのタイミングが今だァァァー!!!」
アスラの叫びに呼応するように龍騎サバイブはその銃剣の刀身に赤々と燃え滾る炎を纏わせると………
「……バーニングセイバーツバイ!!」
龍騎サバイブはナイトサバイブに向けてエックスの字を描くようにナイトサバイブを斬りつけた。ナイトサバイブは咄嗟に青き盾でガードしていたものの、あてにはならず、それ事焼き尽くされてしまった。
そして力尽きたように膝から倒れると、溜まらず爆発四散した………
鉄壁のカラーリーダー、ゴゴ・シラミネのメカゴジラをも倒したロンのナイトサバイブをアスラは超えて見せたのだ………
「龍騎サバイブの効果、バトル終了時、龍騎サバイブのシンボルの数だけ敵のライフを破壊する!!」
「!?」
さらにここに来て龍騎サバイブの第二の効果が適用される。龍騎サバイブは自身の効果で既にダブルシンボルと化しているため、ロンのライフをこの効果で2つ破壊できる事になる。
ロンの残りライフもまた2つ。この一撃で勝負が決する…………
天空から咆哮を張り上げながら現れたのは龍騎に宿る赤き龍。しかし、龍騎サバイブの影響か、その龍の姿も一変して大きく変化して見せる。その姿はより巨大な武装龍となり、アスラの前方、龍騎サバイブの背後に身を置いた。
その後龍騎サバイブはベルトにあるカード束からカードを引き、それを銃のバイザー部に装填………
………『シュートベント!!』
と、無機質な機械音声が流れると、龍騎サバイブは銃口をロンへと差し向け、赤き武装龍は口内に燃え滾る炎を溜めていく………
「………メテオバレット!!」
「ッ!!」
アスラの技名の宣言と共に、銃から発射される赤いレーザーと赤き武装龍の口内から放たれる火炎放射。それらはロンの元へと一直線に飛び行き、直撃。そのライフを焼き尽くした…………
「っしゃぁ!!…どうだコノヤロー!!」
唸る爆発音と漂う爆煙。アスラやエールは勝利を確信した………
しかし………
「…………まだだな」
「え」
そう呟いたのは三王の1人であるテンドウだった。そしてまたその直後に爆煙が少し晴れ、ロンの顔が見れるようになったが………
「………アスラ、オマエにオレは超えさせない……ッ!!」
〈ライフ2➡︎1〉ロン
「な、何……ライフが1つ残ってる!?……オレの龍騎サバイブは確かにシンボル2つだったはずなのに!?」
ロンのライフの生存に戸惑うアスラ。対するロンはいつものクールな表情を崩さず、何が起こったのかを明確にアスラに説明していく………
「オレのライフが減らされる直前、オレはマジックカード、リアクティブバリアを使った」
「!?」
「これにより、自身を破棄。そのダメージを1に抑えた」
アスラの渾身の一撃をマジック1枚で紙一重で避けていたロン。そのダメージ数を抑え、生存に至ったのだ。
「ほぉ、思ったより根性あるじゃねぇかあのイケメン君」
そのロンのプレイングにテンドウがようやく彼を評価した。ロンはBPでは敵わない龍騎サバイブでアスラが特攻して来た時点で大方の予想はできていた。それ故にいつでも即死のダメージが来てもすぐさまカウンターを打ち返せるべく、身構えていたのだ。
「くっ………ターンエンド………」
手札:3
場:【仮面ライダー龍騎サバイブ】LV2
【ミラーワールド】LV2
バースト:【無】
バトルの終了時。動かせるスピリットが存在せず、フラッシュタイミングすら作れなくなったアスラはなす術もなくそのターンをエンドとしてしまう。
そしてその残された3枚の手札には次のターンを凌ぎ切れるカウンターは入って無くて………
「勝負あったな」
「そんな……アスラ……!!」
なんだかんだでアスラの勝利を信じて止まなかったエールが寂しそうな声をこぼした。
そしてその言葉虚しく、ロンのターンが幕を開け、ターンシークエンスが進行されていく………
[ターン08]ロン
「メインステップ……マジック、リターンスモークを使い、トラッシュからナイトを蘇生!!…召喚時効果でドロー!!」
ー【仮面ライダーナイト】LV3(4)BP6000
紫色の煙がロンの場を包み込んだかと思えば、その中から仮面ライダーナイトが姿を現し、復活を遂げた事を周囲に知らしめた。
アスラのライフは残り1つ。このナイトのアタックだけでも十分に事足りる。ナイトはレイピア状の剣を構え、戦闘態勢に入った…………
「……アスラ、最後に何か言い残す事はあるか?」
ロンがアスラにそう告げた。彼なりにアスラの事を考えての事だろう。
「………何言ってんだロン!!……んな事はオレのライフを全部破壊してからに言いやがれ!!…最後まで諦めないのがオレのバトスピだ!!…余裕ぶっこいてんじゃねぇ!!」
「フッ……オマエならそう言うと思った!!……ナイトでアタックッッ!!」
アスラは何が起ころうとも最後までバトルを諦めない。それは生まれた時から何もなかった彼だからこそ至った考え方であり、それはロンを始め、多くの者達が影響されて来た………
そんな中、ロンがナイトにアタックを命ずる。アスラは追い詰められているが、もちろん彼もまた追い詰められていた事に違いは無い。これを外したら負けるのはロンの方だ。
ナイトが剣を構えてアスラの最後のライフまで走り行く。その過程でナイトは疲労状態となって身動きが取れない龍騎サバイブを素通りする。
そして…………
「ライフで受けるッッ!!」
〈ライフ1➡︎0〉アスラ
ピー……
潔くアスラがラストコールをすると、ナイトは構えた剣から刺突を繰り出し、彼の最後のライフを貫いて見せた。アスラのBパッドからは敗北を告げるような無機質な音が鳴り響く。
これにより、勝者はロン。サバイブ同士のバトルには敗北を喫してしまったものの、このバトル自体は見事に勝利を収めて見せた…………
「………アスラの負け……」
「まぁ、人生そう上手くいくもんじゃねぇからな」
残念そうにそう言葉を漏らすエール。そしてテンドウは人生経験豊富な大人らしい言葉を使って見せた。
バトルの終わりに伴い、Bパッドを閉じる両者。龍騎サバイブとナイトは互いを睨み合いながらほぼ同時にゆっくりとその姿を消滅させて行った…………
「……今回は負けたけど、次は絶対勝つからな……」
「何いつもは勝ってるみたいな言い方してんだ。オマエがオレに勝った事は一度も無いだろ?」
「いいじゃんかよ別に!!……でも、オマエのサバイブは倒したぞ!!」
軽く言い合いになる2人。しかし、絶妙だがこのニュアンスはいつも通りのやりとり。さっきまでと違って大きく反発し合っているわけではない。
「あぁ、わかってる……アスラ、オレ達にとって6人のカラーリーダーと三王を倒す事は単なるノルマでしか無い。次バトルする時はそのノルマ達成後だ…そしてその時、オレはオマエに完全勝利する……ライバルとしてな」
「………おうっ!!……オレもライバルとして、オマエを超えてやる!!」
どっちがこの世界で上に行けるか、勝負だ!!
2人はそう言い合いながらも、お互いの拳を突きつけ、グータッチを交わした。
アスラは生まれながらにソウルコアが使えないし、この世界では最も価値の無いコモン。だがロンはそんなアスラがこの世界で上に行くと確信している。だからこそそのような言葉を口にできるし、ライバルだと思える………
今回の件でロンは改めてそれを強く自覚した。アスラもまた内心では彼が自分の事をライバルだと称してくれて嬉しかった。
「………じゃあな。オレは先に行く」
「直ぐ追いつくさ!!」
「フッ………」
ロンは背中を向け、アスラ達の元を去っていく。おそらく次のカラーリーダーがいる町へ向かうのだろう。
「アスラー!!」
「おっエール!!…どうだった!?オレのバトル!!」
「どうって、無様に負けたわね」
「なんでぇぇ!?…もうちょっと労いの言葉があっても良くない!?」
「なんでエックスの私がコモンのアンタにそんな事言わないといけないのよ?」
ロンが去った後、エールが居ても立っても居られなくなり、アスラに声をかけた。しかし相変わらず態度はとてもデカい。これでも彼女なりにアスラを心配していたのだが、こうして目の前に来てみるとどうしても素直にならないでいる。
「むえぇぇぇぇぇぇぇええ!!!」
「ギャァァァ!!オレの髪食うなァァァー!!!」
そして相変わらず行動が意味不明な謎のオレンジ小動物ムエ。エールの頭の上からアスラの頭の上まで飛び移ったかと思えば、すぐさま彼のツンツンとした灰色の髪の毛を甘噛みし始める。
(久し振りに髪の毛食われてるわね………ムエかわいい……!!)
エールはそんなムエの意味のわからない行動や仕草にメロメロだった。
(………コイツのライダースピリットはいったいなんだ?…)
テンドウはアスラ達の賑やかな光景を目に移しながら、アスラに宿った龍騎と言うライダースピリットについて考えていた。
(ライダースピリットはその最終進化前には必ずソウルコアの力が必要になる……だが小僧にはソウルコアが使えない……)
そう、そんな身体にライダースピリットなんて宿るわけが無い……
この異端のライダースピリットを目の前にして、テンドウはこれから何かが起こるのでは無いかと、どこか胸騒ぎを覚えていた。
(まぁいいや…どっちにしろコイツを張ってたらいずれ現れるだろ………トゥエンティ……)
アスラ達がナミラ町近辺のコラボダンジョンで戦ったトゥエンティと言う青年。テンドウは彼こそが目的だった。
やめさせねばならない。
ライダースピリット狩りなど…………
そんな事、カナは望まないのだから…………
******
場所は代わり、瓦礫の山がこれでもかと敷き詰められ、荒れ果てた廃墟。
そこを今から出ると言わんばかりに堂々と歩いていたのは他でも無い、冷静沈着且つ冷酷であり、通常では有り得ないライダースピリットの複数持ちを可能にしている青年、トゥエンティだ。
「あらトゥエンティ、お仕事?」
「………そんなところだ」
そんなトゥエンティに声をかけたのは美しい大人の女性。色気漂うその雰囲気は目に入った男性を一瞬にして虜にしてしまいそうだ。
だがトゥエンティがそんなモノに目を奪われるわけ無く、まるで自分の方が上であると言いたげな物言いで言い返した。
「ウィルから聞いたわよ〜〜…変なライダースピリットを使う坊やに負けたんだって〜?」
「…………」
「反論しないって事は本当なわけね」
女性の口から言い放たれた『ウィル』と言う名前はおそらくアスラ達の目の前でトゥエンティを連れ去ったあのちょび髭シルクハットの男性の事だろう。
「ガハハハハハ!!!…オレらライダーハンターズの中でトップのトゥエンティを倒すとはな!!…そいつ、なかなか骨があるじゃねぇか……バトルして、殺してやりてぇ!!」
「オロチ、またそんな事したらオウドウ都の人間が黙ってないわよ〜」
「ハッ!!…関係ねぇな!!…オレはバトルして、勝って、殺したい!!…でもって殺したそいつからカードを奪い、デッキを強化する……それこそがオレの生き様だ!!」
今度は『オロチ』と呼ばれる茶髪で筋肉質な男性が口を開いた。それはとても怪しげな発言。まるで今まで何人かを殺害して来たような言い草であった。仮に普通の人間がこの場に居たら、恐怖で背筋がゾッとするに違いないだろう。
「話戻すけどさ〜あ〜…抜け駆けはダメよトゥエンティ〜…私もその坊やに少なからず興味があるんだから〜……どんな子だろう?…かわいい顔だったらいいなぁ!!…あっでも、直ぐ横に女がいるんだっけ、確かエックスの」
「………エックス?」
女性の『エックスの女』と言う言葉に反応して見せたのはオロチだ。
「おい…そいつは何家の奴だ?」
「あらオロチ、ウィルの情報聞いてなかったの?…グレイモンを使ってたから『オメガ家』らしいわよ」
「………オメガ家……!!」
『オメガ家』………
その名詞を耳に入れるなり、オロチは満面の笑みを浮かべた。何か過去にオメガ家との間に何かがあったのだろうか………
「……赤いライダースピリットにオメガ家!!……なんだその面白いラインナップは!!…唆るじゃねぇか…おいトゥエンティ、オレに行かせろ!!…でもって殺させろ!!」
「何よ急にしゃしゃり出ちゃって〜」
「奴との決着はオレがつける。オマエ達は手を出すな……」
「それは…オレに喧嘩売ってるって事でいいんだよな??……今すぐここでどちらが上か決着つけてもいいんだぜ?…あの頃のオレだと思うなよ」
一色触発。ジリジリと睨み合うトゥエンティとオロチ。今にもお互いデッキとBパッドを取り出して殺し合いと言う名のバトルスピリッツが幕を開けそうだ………
しかし………
「そこまでですよ…3人とも」
ー!!!
それを制止させるかの如く、また別の誰かが声を発した。
「おいおい、今良いところだったじゃねぇか…主任さんよ〜」
「あらウィル。今日もシルクハットがお似合いね……て言うか、私を頭数に入れないでくれる?」
それはウィルと呼ばれるちょび髭シルクハットの男性。オロチが彼の事を『主任』と口にしている事から、立場上は彼らより上である事は理解できて………
「今回の件はトゥエンティに任せましょう…気は進まないでしょうが、お二人にはどうか気を使っていただきたい」
「あらあら、ウィルがそこまで言うなんて〜」
「ハッ……流石、主任のお気に入りは格が違うな」
ウィルはどうやらトゥエンティにアスラのライダースピリットを任せたいようである。オロチと女性も気に食わない顔を見せるものの、彼には逆らえないのか、意外にもあっさり承諾している様子を見せた。
「オレには時間が無い…もう行くぞ」
対するトゥエンティはウィルに対して詫びも入れず、そのまま外の方へと足を進めた。全てはライダースピリットを20枚集めて、『テンドウ・カナ』の病気を治すため………
「あらあら、行っちゃった。あんな良い男をあそこまで必死にさせる女ってどんな子なのかしら?」
去って行くトゥエンティの背中が見えなくなると、女性がそう言葉を漏らした。
『ライダーハンターズ』は主任である『ウィル』に『ライダースピリット20枚を先に集められたら何でも1つ願いを叶える』と言われて集められた3人から成る。
故にトゥエンティ含めた3人はどちらが先に20枚のライダースピリットを集めるかを競っているわけだが、その中でもトゥエンティの必死さは抜きん出ていた。まるで身を滅ぼすかの如く勢いでライダースピリットを持つ者達を片っ端から倒していき、現在半数近い9枚のライダースピリットを確保し、現在トップに躍り出る程だ。
「………つまらねぇな。トゥエンティの奴だけ祭りの舞台に行くのはよ………まぁでも…ようは手を出さなければいいんだろ?」
「ふむ。まぁほどほどにしておいてくださいね」
「わあってるよ。祭りは眺めるだけでも十分楽しいからな」
オロチがそう言い放った。制止させたところで止められ無い事を自覚しているウィルは、あまりこの件に関与はしないよう忠告するのみにとどまった。
「良いな〜オロチだけ〜…私も見てみたい…ソウルコアが使えない坊や♡」
女性もまたそう言い放った。
頂点王を目指す最弱の少年、アスラの旅はまだまだ続く。しかし、その障害の壁は果てしなく分厚くて…………
《オマケストーリーズ!!》
【龍騎サバイブ】
「どうだロン!!…オレも遂に龍騎を進化させたぜ!!」
「でも相変わらずソウルコアは使えないんだな」
「ぐっ……痛いところを……!!」
龍騎サバイブをロンに自慢するアスラだったが、ロンは飄々とした表情で相変わらずソウルコアが使えない点を指摘する。
「だけど関係ねェェェー!!!…龍騎サバイブはソウルコアが要らない!!…オレはソウルコア無しで頂点王になる!!」
そう。龍騎サバイブはこれまでの龍騎通り、効果の発揮や召喚にソウルコアを必要としない。その効果の攻撃力を相まって正にアスラらしいエーススピリットと言えよう。
「…………チッ…癪だな」
「癪ってなに!?」
ロンはそんなアスラに何となく舌打ちした。
「「これからもバトルスピリッツコラボストーリーズをよろしくな!!」」
2人は最後に声を揃え、読者様に向けて挨拶をして見せた。
******
《用語設定》
【黄金の翼のカード】
ロンはコラボダンジョンで手に入れ、アスラはシイナから伝ってテンドウに手渡されたカード。その者の進化を促進させる事以外は特に明らかになっていない謎多きカード。
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最後までお読みくださり、ありがとうございました!!