ユキカイ町路地裏でのトゥエンティとのバトルに敗れたアスラ。彼に龍騎のカードを取られかけるが、彼を助けるべくエールとテンドウが駆けつけた。
「テンドウさん……アイツが弟子って、知り合いだったんすか!?」
「……昔の話な。今はただの犯罪者と捕獲者だ」
テンドウとトゥエンティが師弟の関係にあった事に驚くアスラとエール。
だがそれは彼の言う通り昔の話であり、今は追う側追われる側の関係になってしまっている。
「……丁度良い、今ここでアンタのライダースピリット、カブトもいただく!!……覚悟しろ」
「オマエがオレに勝てた事あったっけか?……ナメんじゃねぇぞ、殺されてーのか?」
「……あの時のオレのままだと思うなよ……!!」
今にも始まりそうな彼らのバトルスピリッツ。睨み合ったこの時点で既に熾烈極まる内容が予想される………
しかし………
「ぐっ!?……ぐぁぁぁ!?!」
ー!!!
困惑するアスラ達。無理も無い、何せ、トゥエンティが目の前で何故か突然苦しみ出したのだから………
その表情や上ずった声から、相当な痛みが彼を襲っているのがわかる。
「お、おい!!…大丈夫かよ!?」
「う、うるさい!!……この勝負は預けておく!!……オマエ達のライダースピリットは今日中に必ず貰ってやる!!」
「………逃すかよ!!」
痛みにもがきながらも、特別仕様のBパッドの機能でワープゲートを生み出すトゥエンティ。テンドウがそれを見るなり追い討ちをかけようとするも、それを行う前に彼はそれを潜ってこの場から立ち去ってしまった………
「チッ……逃したか……」
トゥエンティを取り逃した事に腹を立て、舌打ちをするテンドウ。癖なのか懐からタバコを吸い始めた。
「ちょっと大丈夫なのバカスラ?」
「あぁ、助かったぜエール」
「べ、別にアンタのために動いたわけじゃないんだからね!!」
「えぇぇぇえ!?…じゃあ誰のため!?」
トゥエンティに倒され、地べたに這いつくばっていたアスラに肩を貸すエール。強敵であるトゥエンティを前にして恐怖しながらも自分を助けるために飛び出して来てくれたエールに感謝するが、彼女はまたしても特有のツンデレが発揮してしまい素直になれなかった。
「てかエール、なんでオマエオレの場所わかったんだ?」
一段落落ち着いたところでアスラがエールに純粋な質問を投げて来た。
確かに、ここは横幅は広いとは言え薄暗い路地裏。広大なユキカイ町からここまで辿り着けるのは少々厳しいだろう………
「あぁ、それならアイツのおかげよ……なんか腹立つけど」
「え」
と、言いながらエールがある方向に指を刺した。アスラもその方向へと首を向ける。
そこにいたのは…………
「ブッハハ!!…久し振りだなアスラ!!」
「あっ!!オマエ………誰だ?」
「ブスジマ・トミオだ!!…忘れんじゃねぇ!!」
体型太めで、ドクロマークの革ジャンを来たアスラ達の同期、レアの身分を持つブスジマ・トミオだった。
「ブッハハ」と言う独特な口癖が目立つ彼だが、アスラにボコボコにやられたり、ヘラクレスに逮捕されかけたり、基本的には散々な目に合っているのが印象的………
久し振りに勢い良く登場したが、アスラに名前を忘れられてしまい、出鼻を挫かれてしまった。
「アンタの帰りが遅いなーって思ってたらこのネズミが『噂のライダースピリット狩りが近くにいるって噂を聞いたんだブッハハ』とかなんとか言って話しかけて来て、もしかしたらと思ってね」
「……成る程〜」
最初ブスジマは軽くエールをナンパする感じで話しかけて来たが、エールはそれをすぐさま一蹴。その後ブスジマが話題としてライダースピリット狩りの話を持ちかけた際に、エールはアスラがそれと出くわしたのでは?…と考え、バトルできそうな路地裏を虱潰しに探し回ったのだった。
「つまりはオレのお陰だ!!感謝しなブッハハ!!」
「アンタそこ以外何もしてないじゃない」
「ぐっ……この女いたいところを……!!」
「ワッハハ!!…でもサンキューなブスジマ!!」
本当にいたトゥエンティを前にして恐怖で前に出れなかったブスジマ。だがアスラはそれでも彼に感謝の言葉を贈った。
「……小僧、オマエとエールはもうこの町を出ろ」
「え!?」
ブスジマの登場で和んで来た一面も束の間、テンドウがアスラにそう提案して来た。
「トゥエンティはしばらくこの町に残るはずだ。オレが逮捕する。オマエらは先に安全なとこに行け」
「テンドウ……」
三王として以前に大人らしい判断と言える。ライダースピリットを持つアスラは常に彼の標的になる。今は少しでも距離を置く必要があった。
「………アイツにまた挑むなんて馬鹿な事考えんじゃねぇぞ。身に染みたはずだ、今のオマエじゃどんなに限界を越えようがアイツには勝てないってな」
「………わかりました……ッ!!」
下唇を噛みしめながら悔しそうな表情を見せるアスラ。
トゥエンティが本当は善人であれ、他の誰かのために戦っている事がわかったとは言え、自分はあのバトル、完全に敗北したのだと、この瞬間に痛感したのである。
本当ならば「いや、リベンジさせてくださァァァーい!!」と言いたいところだが、今の自分がテンドウにそんな事を口にする資格は無いと感じ、その提案を承諾した。
「ブッハ……オレは?」
そう言えば自分はどうしろとか何も言われたないよな………
と思ったブスジマがそう言った。
「あぁん!?…オマエはライダースピリットなんて持ってねぇだろうが、殺されてーのか!?!」
「ブッハハァァァー!?!…すみませんでしたァァァァァァー!?!」
そして何故かテンドウからブチ切れられた。何故みんなしてここまでブスジマの扱いが雑なのだろうか…………
******
一方、アスラ達とは別の場所にあるユキカイ町の路地裏にトゥエンティは痛みに苦しみもがきながらうずくまっていた。
「ぐぅぅっ……ぐっ…ぐうっ!!」
体の中がえぐられたかのような激痛、
彼はこの痛みの正体を知っている………
そしてそれは今すぐにでも『放棄』する事ができる。
だがやめられない、この世で最も大事な存在であるカナのために、それはまだ捨てられないのだ。
ー『……綺麗な雪だね!!』
ー『あぁ、そうだな』
ー『あっはは!!…いつもクールだねトゥエンティは!!』
ー『……君がはしゃぎすぎなだけだ』
三年前、場所は同じくユキカイ町にて微笑み合うトゥエンティとテンドウ・カナ。
今でも鮮烈に蘇ってくる彼女との記憶、思い出………素敵な笑顔。
あの笑顔だけは守らなくてはならない。
例え自分の身が朽ち果てようとも、彼女の横に自分がいられなくなったとしても………
「……カナ………この身が崩壊しようと、横にいられなくなっても………オレは絶対に君を守る」
トゥエンティは痛みを堪え、身体を奮い立たせながら、ライダースピリットを奪うべく今一度歩みを進めた。
しかし、それも束の間。異常な爆発音や、氷が砕け散るような音が四方八方から聞こえて来た。
「……なんだ?」
その音のサイズからただ事では無い事を察したトゥエンティ。ライダースピリット狩りを行いたいのは山々であるが、念のためその音の正体を確かめる事にし、その音が聞こえた方向のうち1つへ足を進めた。
******
一方アスラ達4人がいる路地裏。ここでもその凄まじい音は耳に入って来ていて………
「な、なんだったんすか今のデッケェ音!?」
「さぁ?………ん?」
胸騒ぎはしていたものの、特にその音には無関心だった様子のテンドウ。そんな彼のBパッドに着信が届いた。彼はそれをめんどくさそうに応答した。
「はいもしもし。めんどくさいから切っていい?」
《なんでじゃ!?……オマエのボケに付き合っとる暇はないぞテンドウ!!》
「なんだよゴゴのじいさん。オレちょっと忙しいんだけど」
通話の相手はこの町のカラーリーダー、ゴゴ・シラミネだった。今は急なギックリ腰のせいで医療施設で療養中である。
そんな彼が切羽詰った様子でテンドウに着信を寄越して来たのだ。この時点でただ事では無い何かが起こっているのをテンドウは察していて………
《忙しいもクソもない!!…ユキカイ町が謎のスピリット軍団に襲撃されとるんじゃ!!》
今現在、ユキカイ町は混沌としていた。
謎の黒い怪物、おそらく誰かがBパッドで召喚したスピリットが町を襲っていたのだ。雪まつりによって町の人々の多くは中心に集められていたのもあり、今のところ大事に至ってはいないが、このままでは危険なのは明白であった。
《避難は大方完了した。ワシは北ゲートへ向かう。オマエさんは西ゲートへ向かえ!!》
「相変わらず仕事がはえーなじいさん。だがどうするよ、この町のゲートは3つ。最後の東ゲートは………」
スピリット達はユキカイ町の3つのゲートを破壊して侵入した。今でもその周辺で町の建物等を破壊し続けている。
三王の一人であるテンドウがこの場に居合わせたのは不幸中の幸いと言えた。3つのうち2つは彼とゴゴで対応できる。
しかしもう1つは………
「オレが行く!!」
「ちょっとアスラ!?…アンタ身体が……」
「他の人達が危険なのに黙ってられるか!!…残りは東ゲートだな!!…オレに任せてくれ!!」
バトルに敗北したばかりで身体が痛いとかは言ってられない。アスラは何の罪もない町の人々を危険に晒さないために走り出した。
「ほっほ、やはりオマエさんの近くにアスラはおったか、予想通りじゃ」
「……知ってて着信よこしたのかよ、このサイコパスじじい……おいエール、オマエは小僧に着いていってやれ」
「ッ……わかったわ!」
テンドウにそう言われ、エールがアスラの後を追うように走り出した。
「……ぶ、ブツハ!?……お、オレはここで待機って事だな!!」
「あっ…オマエまだいたの、帰っていいぞ」
「扱いひでぇぇぇ!?」
正直逃げ出したいブスジマ。見栄を張ってテンドウにそう言い放つが、そもそも存在自体を彼に忘れられていて………
彼の扱いは酷い………
******
「ハッハッハッハッハ!!!!……いいぞデストロイア!!…もっとだ、もっと壊せェェェー!!!」
ここはユキカイ町東ゲート。デストロイアも呼ばれる黒いスピリットの大群が次々と氷や雪で造られた建物を破壊していく。
Bパッドを展開している黒髪の若い男性は発狂しながらその光景を楽しんでいた。おそらく彼がスピリット達の主人であるのだろう。
「やめろォォォ!!!!」
「あぁ?」
その破壊をやめさせるべく彼の目の前に現れたのは他でもないアスラだった。怒りを交えた雄叫びがこの場に響き渡る。
「オマエがスピリット達を召喚したんだな!!…今すぐこんな事やめさせろ!!」
「……灰色のツンツン頭に黒パーカー………あぁ、君ひょっとして最近噂のソウルコアが使えないライダースピリット使いってヤツ?」
「ッ!?」
アスラの顔を見るなりデストロイア達の動きを止める青年。その言動からアスラの事を認知しているようであり………
「オマエオレの事知ってんのか!?」
「あぁ、ヒッヒッ…惨めでクソチビって噂だったけど本当だったみたいだな」
「なんだとコノヤロー!!」
アスラを見下す青年。アスラも腹を立ててプンプン怒り出した。
「僕ちゃんの名はダスト……不滅のダスト……噂通りなら君は赤のライダースピリットを持ってるんだよな?」
「あぁ、それがどうした」
「ヒッヒッ……僕ちゃん実はコレクターの趣味があってね?…ライダースピリットを集めてるのよ。まぁカードに選ばれてるわけじゃないからデッキにはないけど…………どうだろう、君のライダースピリット、僕ちゃんのコレクションに加えて見るのは?」
「イヤだ!!」
「ヒッヒッ……だろうね。ならば力づくで!!」
ダストと名乗るその青年はアスラのライダースピリット、龍騎を力づくで奪うべく、Bパッドを彼の方へと向け直し、デッキをセットした。カードが消えた事でデストロイアと呼ばれていたスピリット達はこの場から消滅し、無残にも破壊された氷の街並みのみが残ってしまった。
「上等だぜ……オマエぶっ倒して必ずこんな事止めてやる!!」
アスラも町のみんなを守るためにBパッドとデッキをスタンバイするが…………
「……コレクターか、成る程……つまり貴様を倒せばたんまりとライダースピリットを得られるわけだ……!!」
ー!!
凍りつくような声が今にもバトルを始めようとしてきた2人の耳を通過していく。
そして声のする方へ現れていたのは………
「……トゥエンティ、なんでオマエ!?」
「それはこっちのセリフだ」
他でもないトゥエンティだった。彼もまたアスラより5メートルばかり離れたところでBパッドとデッキをセットした。その向けられている先はライダースピリットを複数枚所持していると言うダストだ。
「オマエ、なんか痛そうにしてたじゃんか、大丈夫か!?」
「貴様に心配される覚えはない……コイツのライダースピリットを奪った後はオマエだ。覚悟しろ」
「成る程ね〜……君が噂のライダーハンターズ、トゥエンティか……確か複数種のライダースピリットを操るって言う」
「知っているなら話は早い。始めるか……」
Bパッドを構えながら言い合う三名。その間にダストは内心で「まぁオレはそのライダーハンターズのヤツに依頼されて来たんだけどね〜」とニヤついていた。
「あらあら〜…トゥエンティは計算通りだったけどあの坊やまで来ちゃった………んーーー…まぁいいか」
「本当なら今すぐにでも祭りに行きたいところだが………まぁこれはこれで面白そうじゃねぇか」
そう言葉をこぼしながらアスラ達3人を高みの見物をしているのはライダーハンターズの筋肉質の男性、オロチと美しい女性。
「私の知り合いダストちゃんのカードは〜……ちょっとばっかしトゥエンティと相性悪いのよね〜」
女性がさらにそう呟いた。
言動から察するに、おそらくダストに町で暴れるよう依頼したのは彼女だ。今一度トゥエンティを再起不能に陥らせるのが目的に違いない………
「さぁ、君のライダースピリットももらおうか。きっと最&高のレアカードばかりなんだろ??……背筋がゾクゾクして来たよ」
「あぁ……オレもだ」
場面は戻り東ゲート。トゥエンティとダストのバトルが始まろうとするが………
「ちょっと待てトゥエンティ!!……オレもやる!!」
「…なに?」
「オレは今、アイツにとてつもなく腹が立ってる!!…ぶっ飛ばさねーと気が済まねぇ!!」
「……勝手にしろ」
アスラが割って入って来た。トゥエンティはそれに関して特に問題はないのか、意外にもあっさり承諾してしまう。
「ふ〜ん。つまりは1対2のレイドバトルって事だな……良いよ良いよ!!2人がかりで来なよ!!」
トゥエンティにプラスワンで相手をしなければならなくなったと言うにもかかわらず、ダストは余裕な表情を浮かべて見せた。それほどまでに自分のバトルスピリッツに自信があると言える。
「っしゃぁ!!…んじゃ行くぜ!!」
………ゲートオープン、界放!!!
ユキカイ町東ゲートにて、3人の男達のバトルスピリッツが開始される…………
先行はレイドバトルのルールに則り、1人側のプレイヤーであるダストからとなるが…………
「………オレは、4枚のカードをドローする」
「オイィィィ!!?」
トゥエンティが手札となる4枚のカードをデッキからドローした。それは普通のバトルであれば当然の行いであるが、このレイドバトルでは話が変わってくる………
「なんで4枚ドローしたんだよ!?…オレ0枚になるじゃねぇか!!」
そう。レイドバトルでは複数側のプレイヤーは初期手札4枚を割り振る。トゥエンティが4枚ドローしたせいでアスラは今回のバトルに限り初期手札0枚となってしまったのだ。
これではアスラはいないも同然である。
「当然だ。勝手に入って来たのはオマエなのだから……そこで指をしゃぶって見ていろ」
「いやいやいや!!!…勝手に入って来たのそっちだよね!?」
「ヒッヒッ……なんとも間抜けな連中だね……」
アスラとトゥエンティのそのコントみたいな言い合いを目に移し、ダストはニヤケながら自分のターンシークエンスを進行させて行った………
[ターン01]ダスト
「メインステップ……僕ちゃんはネクサス、妖星ゴラスを配置!!」
ー【妖星ゴラス】LV1
ダストの背後に太陽に似た燃える塊が出現。
「配置時効果、デッキの上から5枚をオープン、その中の対象となるカードを加え、残りは破棄……ターンエンドだ」
手札:5
場:【妖星ゴラス】LV1
バースト:【無】
対象となるカードを1枚手札に加え、そのターンをエンドとしたダスト。
次はアスラとトゥエンティのターンだが………
「オレのターン……」
「オレ達のターンだろ!?…ほれ、やり直し!!」
「スタートステップ……」
「聞けよ!!」
トゥエンティはペアであるアスラの言葉を無視しながらターンシークエンスを進めていった………
[ターン02]アスラ&トゥエンティ
「ぐっ……これ一枚じゃ何もできねぇ……」
「メインステップ……第二の仮面ライダーW サイクロンジョーカーを召喚!!」
ー【仮面ライダーW サイクロンジョーカー[2]】LV1(1)BP4000
………サイクロン、ジョーカー!!
と、無機質な機械音が流れると共に左半身が緑、右半身が黒色のライダースピリット、W サイクロンジョーカーが現れた。
「召喚時効果発揮、リザーブにコアを1つ追加。オマエの手札が5枚のため、さらにトラッシュにもコアを1つ追加」
「へぇ、召喚しただけで2つもコアを……便利な効果だね」
「……口を慎め無法者。オレは必ずこの勝負に勝ち、貴様のライダースピリットをいただく……ターンエンドだ」
アスラ手札:1
トゥエンティ手札:4
場:【仮面ライダーW サイクロンジョーカー[2]】LV1
バースト:【無】
「ヒッヒッ……随分と必死なんだね」
アスラの力に頼ろうとはせず、己が力のみで勝利を得ようとするトゥエンティ。そんな彼に対し、ダストは薄気味悪い笑みを浮かべながら、ターンを始めようとする………
「えぇ!?…ちょっとバカスラ!!…どう言うことよこれ!?…なんでアンタがトゥエンティとレイドバトルなんてやってんのよ!?」
「あっ…エール……」
ここでようやくエールが到着した。この混沌とした状況に思わずツッコミを入れてしまう。
「うーーーん……今はちょっと説明しづらいんだけど…………要はあのヒッヒッ言ってるヤツがスピリット出して町を壊してたって事!!」
アスラがダストを指刺しながらエールに告げた。まだ完全とはいかないが、彼女も少しばかりは理解を覚える。
「へぇ〜……おチビちゃんなかなか可愛い娘連れてるじゃないの!!……決めた!!…このバトルに勝ったらその娘ももらったげる!!」
「キモッ!!」
「ふ〜…辛辣なところも素敵!!…最&高!!」
女好きな面も持ち合わせているのか、ダストはさらにエールまでもを要求して来た。
「えぇ……なんなのコイツ……アスラ!!負けんじゃないわよ!!」
「おう!!任せとけ!!…バッチリ守ってやんよ!!」
「ッ……べ、別に守れとか言ってないわよ!?…か、かか勘違いしないでよね!?」
「えぇぇぇぇ!?!…なんかごめん!!」
「ヒッヒッ……ツンデレなところもますます気に入った。必ず僕ちゃんのモノにしてやるよ!!」
「誰がツンデレよ!!」
会話するたびにダストに気に入られるエール。
そしてよりやる気を見せるようになったダストは、ここでようやく第3ターンを開始する。
[ターン03]ダスト
「メインステップ!!…モンスターXを召喚!!」
ー【モンスターX】LV1(1)BP4000
ダストが初めて召喚したスピリットは白き外骨格を見に纏う怪獣。その雄叫びがフィールドにこだました。
「アタックステップ!!…モンスターXで攻撃、【真・激突】により可能な限りブロックしてもらうぞ!!」
「……第二のサイクロンジョーカーでブロック」
早速そのスピリットで攻撃を仕掛けるダスト。効果によりブロックを強制されたトゥエンティはサイクロンジョーカーでそれを迎え撃つ。
モンスターXがサイクロンジョーカーに突進するが、サイクロンジョーカーは華麗にそれをかわして回し蹴りをお見舞いする。その一撃で瀕死に陥るモンスターXだったが、最後の力を振り絞ってサイクロンジョーカーを鷲掴みにして地面に叩きつけた。
この瞬間、両名限界を迎え、たまらず爆散してしまった………
「相討ちか……」
「相討ちではないんだな〜……!!」
「?」
「モンスターXが破壊された事により、手札にあるカイザーギドラの効果発揮!!…これをノーコスト召喚する!!」
ー【カイザーギドラ】LV1(1S)BP10000
爆発による爆煙の中、翼を広げ現れたのは黒き三つ首龍。皇帝の名を持つギドラだ。ダストは最初からこのスピリットの召喚を狙っていたのだろう………
「LV1でBP10000!?」
「ヒッヒッ…どうだ凄いだろう?……まぁでもこのターンはもう動かないかな……ターンエンドだ」
手札:4
場:【カイザーギドラ】LV1
【妖星ゴラス】LV1
バースト:【無】
しかし、強力なスピリットを召喚した束の間、そのターンをエンドとしてしまうダスト。
「ッ!?…アタック無し!?……でもチャンスだ、行くぞトゥエンティ!!」
「黙れゴミ以下」
反撃に転じようとするアスラ。しかしトゥエンティは彼を一蹴しながらそのターンシークエンスを進行していく。
[ターン04]アスラ&トゥエンティ
「メインステップ……オレは仮面ライダージオウに変身する!!」
ー!!
………カメーーーンライダー!!
………ジ、オーーーウ!!
ー【変身!!仮面ライダージオウ】LV1
ハイテンションな音声が流れ、トゥエンティが複眼に「ライダー」と刻まれたライダースピリット、ジオウに変身して見せた。
「……あれがジオウか…噂に名高い風格だ」
「神託の効果、カードを3枚トラッシュへ……対象カードは3枚、よってオレ自身にコアを3つ追加」
変身のカードは飽くまでも創界神ネクサス。神託の効果によりコアが追加された。
「さらにネクサス、パンドラボックスを2枚連続配置し、バーストをセット!!……これでターンエンドだ」
アスラ手札:2
トゥエンティ手札:1
場:【変身!!仮面ライダージオウ】LV2(3)
【パンドラボックス】LV2(1)
【パンドラボックス】LV2(1)
バースト:【有】
不気味な黒い小箱、パンドラボックスや、バーストカードを配置し、そのターンをエンドとしたトゥエンティ。このパターンはアスラの時と全く同じである。
「ちょっとバカスラ!!…アンタもなんかしなさいよ!!」
「無理!!…だってオレの手札2枚だもん!!」
叱咤して来るエールにアスラは悲し泣きしながら2枚しか無い手札を見せつけた………
[ターン05]ダスト
「メインステップ……バーストセット」
ターンの開始早々、ダストの場にバーストが伏せられる。
「さらに2種目のネクサス、偽りの地下帝国を配置」
ー【偽りの地下帝国】LV1
彼の背後に淡い紫の色を輝かせる帝国が配置される。
「残ったリザーブのコアを使ってカイザーギドラのLVを2にアップ!!……アタックステップ、行って来いカイザーギドラ!!」
ダストの指示により飛び立つカイザーギドラ。狙うはアスラとトゥエンティのライフだ。
「……ライフで受ける………ッ」
「ぐっ!?」
〈ライフ5➡︎4〉アスラ&トゥエンティ
2人のライフバリアを噛み砕くカイザーギドラ。その破壊は伝播し、2人にそれ相応のダメージを与えた。
しかしトゥエンティにとってこれは計算のうち。事前に伏せていたバーストカードを勢いよく反転させる………
「ライフ減少によりバースト発動!!……仮面ライダーキバ キバフォーム!!……効果によりカイザーギドラのコア2つをリザーブへ!!」
「!?」
「その後召喚。効果でドロー」
ー【仮面ライダーキバ キバフォーム】LV1(1)BP2000
突如紫の光に包み込まれるカイザーギドラ。その体内のコアが抜き取られ、LVダウンに陥る。
逆にトゥエンティの場では新たなライダースピリット、仮面ライダーキバが地上に降り立っていた。
「ヒッヒッ……複数のライダースピリットを操る力……羨ましいくらいチートだね〜……ターンエンドだ」
手札:3
場:【カイザーギドラ】LV1(1S)BP10000(疲労)
【妖星ゴラス】LV1
【偽りの地下帝国】LV1
バースト:【有】
新たなライダースピリットの出現にもまるで驚くような様子は見せず、余裕のあるダスト。
次はアスラとトゥエンティのターンだ。トゥエンティはここで決めると言わんばかりに勢いよくターンシークエンスを進行させて行った………
[ターン06]アスラ&トゥエンティ
「メインステップ……仮面ライダージオウをLV2で召喚!!」
ー【仮面ライダージオウ】LV2(2)BP7000
トゥエンティは今の自分と全く同じ姿をしたライダースピリット、ジオウを召喚した。
「アタックステップ!!…行け、仮面ライダージオウ!!…アタック時効果で1枚ドロー」
遂に自らアタックを仕掛けるトゥエンティ。仮面ライダージオウが戦闘態勢に入る。
「さらにこの時、オレが先にフラッシュタイミングを行う事ができる!!」
「!?」
「煌臨発揮、対象は仮面ライダージオウ!!」
ジオウは時を操る。本来であれば防御側であるダストからフラッシュタイミングのカード効果を使えるはずが、反転してトゥエンティから行う事が可能である。
ジオウはベルトにさらに別のアイテムのスイッチを入れ、嵌め込み、回転させる…………
…………ジオウ!!ジオウ!!ジオウ!!
……Ⅱーー!!!!
「現れ出でよ!!……仮面ライダージオウⅡ……!!」
ー【仮面ライダージオウⅡ】LV2(2)BP10000
仮面ライダージオウは一瞬にして変化を遂げ、その姿は仮面ライダージオウⅡとなった。
「……如何にも切り札って感じだね!!…それが最強形態なのかな?」
「煌臨時効果、トラッシュにあるライダースピリットを20枚までデッキの下に戻し、戻した枚数2枚につき1体、BP15000以下のスピリットを破壊する!!」
「!!」
「オレはトラッシュに眠る4枚のライダースピリットをデッキの下に戻し、貴様のカイザーギドラを破壊する!!」
トゥエンティのトラッシュに送られていたライダースピリットのカードが合計4枚、デッキ下へと移動する。
それに合わせ、ジオウⅡは自分と同じ顔が持ち手に着いていて刀身に「ジオウサイキョウ」と書かれた剣を発現させる。
そしてその剣を巨大化させ、カイザーギドラに時計の針を描くように一閃。その剣技に避ける術なく、カイザーギドラはたまらず爆散してしまった………
「さらに!!……ジオウⅡのアタック時効果!!…オレのデッキの枚数10枚につき赤のシンボルを1つ追加する!!…オレのデッキは31枚!!…よって3つ追加し、クアドラプルシンボルとなる!!」
アスラを倒した時と全く同じパターンだ。仮面ライダージオウⅡはその効果で4点のシンボルとなり、一撃で4つものライフを破壊できる強力なスピリットと化した。
「………ライフで受けちゃうか!!」
「だったらその身で味わえ!!」
………トゥワイスタイムブレーク!!!
ジオウⅡはベルトのバックル部を回転させると、またしてもハイテンションな音声が流れる。ジオウⅡはそのまま飛び上がり、滑空するようにダストに向けて飛び蹴りを放つ………
「ぐっ………ぐぁぁあ!?!」
〈ライフ5➡︎1〉ダスト
その一撃は重く、5個あるうちの4つを破壊して見せた。
ダストは余りのダメージで思わず膝をついてしまう………
「よし!!……キバのアタックで終わりだな!!」
「黙れ、言われなくとも最初からそのつもりだ……!!」
ライフは残り1つ。トゥエンティがダストにトドメを刺すべくキバで攻撃を仕掛けようとした………
しかしその直後、ダストは徐に立ち上がり、事前に伏せていたバーストカードを発動させて………
「ライフ減少によりバースト発動!!……エクスティンクションウォール!!」
ー!!
「この効果により減少された分のライフを一気に回復させる!!……つまり4つ!!……ライフは元通りだ!!」
〈ライフ1➡︎5〉ダスト
「ま、マジかよ!?……一気にライフを戻しやがった!?」
「ヒッヒッ……さらにコストを払いフラッシュ効果、このアタックステップを終了させる……!!」
せっかく1まで追い詰めたと言うのに再び振り出しに戻されたアスラとトゥエンティ。
「フン……所詮は1ターン延命したに過ぎん……」
アスラと違って冷静なトゥエンティはこのターンでの決着は不可能と見て、ターンをエンドとしようとするが…………
「………ターンエン………ぐっ!?」
「ッ……トゥエンティ!?」
「ぐぉぉぉお!?!」
またしても突然身体に激痛が走るトゥエンティ。思わず片膝を突いてしまう。
「お、おいオマエ……ホントに大丈夫なのか!?」
「うるさい!!…オマエなんぞに心配される覚えは無いと言っているだろ!!」
彼の容態を心配するアスラ。だがトゥエンティは痛みを堪えながらそれを拒絶する。
「ヒッヒッ……ヒャァッハッハッハッ!!!」
その様子を見てダストが滑稽だと言わんばかりに汚い笑い声を荒げた。
「やっぱりな!!…オマエ、そのジオウのデッキで何回バトルした?……ライダースピリットを何枚も同様に扱えるなんてチートじみた力になんのリスクも無いわけ無いよなぁ!!!」
「!!」
「もう限界なんだろオマエの身体はぁ!!!」
ライダースピリットを複数操る力を有する仮面ライダージオウのカード。
しかしそれは使用者の身体を徐々に蝕んで行く。トゥエンティは絶対的な強さの代償として己の肉体を捧げ続けて来たのだ。
「そ、そうなのか!?…オマエずっとその誰かのために無茶を……」
「黙れゴミ以下………オレは、オレはまだ立ち上がれる……!!」
アスラはここでトゥエンティが誰かのためにバトルをしていた事を思い出す。きっとその誰かのためにそんな身体になってしまっていた事を直感的に見抜いた。
だがトゥエンティはそんなアスラに聞く耳を持たず、痛みに苦しみながらも、残る力を振り絞り、立ち上がって見せた。
「ヒッヒッ……健気だね〜……そこまで大事なのかい?」
「………何がだ」
「惚けなくてもいい!!……僕ちゃんは知ってんだぜ!!」
オマエが三王、テンドウ・ヒロミの妹、テンドウ・カナと恋仲である事!!
そして病に伏した彼女を助けたいがために、ライダースピリット20枚をウィルとか言うシルクハットの男に献上しようとしている事もな!!!
ダストの口から言い放たれる衝撃的な真実。
それがアスラとエールの耳にも通過してしまい…………
「トゥ、トゥエンティとカナさんが恋仲!?」
「な、何だって!?……おいトゥエンティ!!…ホントなのか!?」
「黙れ」
「黙れじゃわからん!!……オマエ、カナさんのためにライダースピリット狩りなんて非情な事……」
真実に驚愕しながらもトゥエンティに訴えかけるアスラ。だがトゥエンティは話す気など無く、それを軽くあしらってしまう。
「ヒッヒッ……じゃぁ僕ちゃんのターンだね」
そん中、ダストが再びターンを進行させていく。
[ターン07]ダスト
「メインステップ……偽りの地下帝国をLV2へアップ」
ダストの背後にある偽りの地下帝国のLVが上昇する。そしてその効果はコスト10以上の紫のスピリットを召喚する際、そのスピリットのコストを6に定める事。
彼はその効果を見越した上で、さらに手札に手を伸ばした。
「ヒッヒッ……その咆哮は破滅を呼び寄せる……来い、デストロイア・完全体!!」
ー【デストロイア(完全体)】LV3(5S)BP20000
巨大な翼を広げ、彼の場に降り立つ怪獣のような姿をしたスピリットか1体…………
名をデストロイア。
現れるなり本当に世界でも滅ぶかのような咆哮を張り上げ、アスラとトゥエンティをその視界に映した…………
「さぁ、お楽しみは………これからだ」
ダストはまたしても不気味に笑いながら彼らにそう告げたのだった…………
《キャラクタープロフィール》
【ダスト・トラッシュ】
性別:男
年齢:21歳
身長:172cm
身分:レア
使用デッキ:【デストロイア】
好きなモノ:綺麗な物を壊す、レアなカード、女
概要:異名は『不滅のダスト』……ライダーハンターズの謎の女性にユキカイ町で大暴れしろと雇われた男性。数々の犯罪を犯しており、国から追われている身でもある。自由に生きたいタイプだが頭のネジが外れてるため、動きが作者でも予測できない鬼畜。
《用語設定》
【ユキカイ町】
国の最も北側に位置する町であり、年中真冬。建物や建造物は全て氷か雪で造られている。年に2回北海道でありそうな祭りをやる。(ユキカイ雪祭り)
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最後までお読みくださり、ありがとうございました!!
レイドバトルのルールはコラスト8話を参考にしてください!!
でも言うてあんまり普通のバトスピとルールは変わりません
テンドウさん好きな方々には申し訳ない事をしてしまいました………
エールに言い寄る男達ヤバイのしかいない………しかも肝心のアスラは言い寄らないし。
近々本気でコラストの『人気投票』でもやってみようかと思ってます。
作者として誰が人気なのかを知りたいのもありますが、誰が人気なのかがわかればそのキャラを出しやすくできますしね。