『頂点王』
それはこの国において最強と呼ばれるカードバトラーにのみ与えられる栄誉ある称号である。
そんな頂点王にバトルを挑むためには難題且つ様々な工程が必要になってくる。
先ず、各地に散らばる6人の『カラーリーダー』とバトルを行い、彼らに勝利した証である『カラーカード』を得る。その『カラーカード』を6種6枚を持ってこの国の中心部にある最大都市『オウドウ都』へと赴き、『三王』と呼ばれる『カラーリーダー』をも凌ぐ実力を誇る3人のカードバトラー達にもバトルを行い、勝利し、その後にようやく『頂点王』に挑む事ができる。
決して楽な道のりではない。山あり谷ありの険しい道のりである。そのため、大半の挑戦者達が腕試し気分で『カラーリーダー』に挑戦するのだ。本気で『頂点王』を目指すものなど、おそらく手の指だけで足りる程の人数しかいないであろう…………
そして、今の頂点王、もとい、初代頂点王の名は『シイナ・メザ』と言う三十路もままならない若い女性だ。
彼女こそ、孤児であるアスラとロンを育てた親のような存在であり、バトルスピリッツのあれやこれをレクチャーさせた張本人だ。アスラとロンは彼女の事を実の母、又は姉のように慕っていた。
だが、彼女はまだ幼かったアスラとロンに
『私は頂点王になる。……あんたらは頂点王になった私に挑んで来な!』
……と、軽いノリのような言い方の言葉を言い残したっきり旅に出てしまった。
その時、アスラとロンはシイナの言っていた事を信じていなかった。何せ、この世界で三王よりも強いカードバトラーなど、当時は誰一人として存在していなかったのだから………
しかし、その数ヶ月後、彼女は恐ろしい速度でカラーリーダーと三王を倒し、本当に実力をこの国に示して『頂点王』の座席に着いた。
その当時は、いや、10年経った今でも凄まじまい快挙であり、アスラとロンはそんなシイナのような最強のカードバトラーに憧れた。自分達の育ての親だった事もあったのだろう。
そして誓った。約束通り、自分達が頂点王であるシイナに挑むと。
******
生まれつきソウルコアを使うことができないコモンの少年アスラが赤いライダースピリット『龍騎』に選ばれてから半年が経った現在………
「おいロン、そんなに離れなくても良いじゃん、一緒に行こうぜ!!」
「ライバルと戯れる趣味はない」
「んな固い事言うなって!!…途中までだよ途中まで!!…どうせ『新人交流戦』が終わったらそれぞれ別れて自分で旅するだろ?」
アスラとロンは故郷であるスーミ村を離れ、長い森の道を歩んでいた。アスラがロンの隣に行くまで歩幅を合わせるが、その後直ぐにロンがアスラを遠ざけるように歩幅を広げる。さっきからこれの繰り返しだ………
2人が何故こんな長い森の道を歩んでいるのかにはある理由がある。
この世界では、齢15になる年、『カラーリーダー』と呼ばれるこの国を代表する6人のカードバトラー達に挑戦する権利が与えられるのだが、この国の中心部に位置し、尚且つ最大都市である『オウドウ都』にて、その新しい挑戦者達を互いに讃えあうべく、コロシアムにて『新人交流戦』が行われるのだ。
アスラとロンはそこに参加するべく、長い旅路を歩んでいたのだ。
だが、その後にスーミ村に帰郷する予定はなく、バトル交流会後、そのまま各地の街に散らばっているそれぞれのカラーリーダーに挑戦するつもりであった。そして、三王に挑み、自分達を育ててくれた恩人であり、師である、『頂点王』に挑むのだ。
「あぁ、もうすぐシイナに会えるんだな〜〜!!…成長したオレの姿を見たらなんて言うかな〜〜!!」
余程楽しみなのか、アスラはその目をキラキラと輝かせていた。
それもそのはず、何せ、『オウドウ都』と言えば、三王と頂点王であるシイナが住まう場所であり、挑戦者が彼らにチャレンジする場所でもあるのだから。
アスラは頂点王であるシイナに久し振りに会える事を楽しみにしていた…………
「何言ってるんだ。頂点王であるシイナが新人交流戦なんかに赴くわけないだろ?」
「えぇ!?そうなのか!?」
「オレたちが思ってる以上に頂点王の立場は忙しいんだ。きっとな」
が、現実はそうはいかない。
ロンの言う通り、頂点王であるシイナはその新参の挑戦者が集新人交流戦には参加しない。そもそも、頂点王自体、滅多な事が無ければ顔を拝むことすらできない。
「ちぇ、じゃあホントに三王を倒すまではお預けか〜〜」
「そう言う事だ。まぁ、先に三王を倒すのはオレだけどな」
「んだとロン!!オレだろ!!オレが三王とシイナに勝って新しい『頂点王』になる!!」
「いや、オレだ」
「オレだ!!」
「オマエの身長の低さでオレより前に歩けるわけがない」
「身長関係ねぇ!!」
ちょっとした事で軽い言い争いになる2人。しかし、これはいつもの事、親友だからこそできる微妙なニュアンスで伝わる会話のようなものに近い。
そんな時だ………
………むえぇぇぇぇぇぇぇえ!!!!
「「!?!」」
と、森のどこか、遥か遠くから妙に甲高い鳴き声が聞こえてきたのは…………
「なんだ、今の音!?」
「直ぐそこから聞こえてきたようだな。動物の鳴き声のようだったが…………」
「ロン、行ってみようぜ!!」
「……行かない。オマエ1人で行くんだな」
好奇心に負けて鳴き声のする方へ様子を見に行こうとするアスラ。だが、ロンはそこまで興味が湧かず、オウドウ都到着を急ごうとするが…………
「旅は道連れ!!…行くぞ!!」
「っ!!……おい、引っ張るな!!」
アスラに無理矢理袖口を引っ張られて連れて行かれてしまう。ロンはアスラの非合理的な行動に若干呆れるも、渋々着いていく事になった………
ー…
「ん〜〜ここら辺から響いて来たと思うんだけどな〜〜」
「もうどっかに走り去っていったんだろう?…いい加減進路を戻してオウドウ都に向かうぞ…まだまだ先は長いんだ」
腰まであるくらいの草原を掻き分けながら鳴き声のした方角へと歩みを進めるアスラとロン。しかし、肝心の鳴き声の正体は中々見つからず………
「まぁまぁ、後3日あるんだから、ゆっくり探そうぜ〜」
アスラは呑気だ。
確かに、この森を抜ければオウドウ都に着く。一見近く感じるかもしれない。
が、それは真っ直ぐで安全な最短ルートを通った時の話であって、一度迷って仕舞えば取り返しがつかない事になるのは明白。そんなアスラを早くどうにかして心変わりさせてやらなければとロンが考えた直後………
………むえぇぇぇぇぇぇぇええ!!!
「!!」
「っ!!…っしゃぁ!!…今度は逃さねぇぞ!!そこら辺かぁぁぁあ!!!」
今一度甲高い鳴き声が聞こえてきた。しかも1回目よりも断然近くでだ。
アスラとロンはその声のする方へと走り出した。緑豊かな木々の間を抜けていき、辿り着いた光景は…………
ー…
「ここかぁぁぁあ!!!」
アスラが叫びながら鳴き声のする方へと突撃した。その直ぐ後ろにはどうでも良さそうな顔でいるロンも続いていた。
散々探した鳴き声の主、
その正体とは…………
「早くこんがり焼けねぇかな〜〜」
「むえぇぇぇぇぇぇぇええ!?!」⬅︎泣きじゃくってる
「え……ナニコレ……」
アスラとロンが見た光景は人相が悪くて長身で筋肉質な男がオレンジ色の毛並みをしたへんちくりんな小さい生き物の前脚後脚を縛って吊し上げ、焚き火で炙っているというものであった………あの生き物の鳴き声は助けを求めるような悲鳴だったのである。泣き顔である事からそれを痛い程察した………
別にそれ自体は割とありがちなのかもしれない。腹を空かしたらそこらへんの生き物を食べる。昔の人間の習慣だ。
が、異様に感じたのはそのオレンジ色の毛をした40cmくらいの生き物。これが「むえぇぇぇぇぇぇぇええ!!!」の声の正体であるのは明白だったが、その姿形が謎だった。
……オレンジ色の毛意外の特徴と言えば、垂れている耳と尾が黒い事、後、哺乳類には見えるが、犬と言うには顔はどちらかと言えば猫だし、猫と言うには耳と尾の形が変だ………それに脚も犬猫とは思えないほど短い。凄くマスコット感がある。……何より頭部にあるふさふさの髪と、そこから生えた角みたいなアホ毛、また鳴き声がその生き物の異端さを語っていた。
そしてあのガタイのいい男………顔とか表情とかが何人も人を殺してきた目だ。そんな彼があんな行為をしているのだ。これは食料補給とかじゃなくて単に動物を虐待しているだけなんだなと、勝手に認識したアスラは若干の戸惑いを見せながらも、この件に全力で突っかかっていく………
「………お、おい、オマエ!!なんか知らねぇけど、動物虐めたらダメだろぉぉおお!!」
そのガタイのいい男に勢いよく人差し指を刺して突っかかるアスラだったが………
「あぁ!?うるせぇ、殺すぞ」
「えぇぇぇえ!?」
ガタイのいい男はアスラを脅すように殺意全開で威圧をかけてきた。アスラは初対面でいきなり理不尽な殺人宣言をされて困惑する。
「だいたいなんだテメェは、動物愛護団体かなんか??…オレは今、腹減ってんだ。飢死しそうなんだよ、ゆっくりあの犬食わせろやコラァ…!!」
「ギャァァァア!!頭がァァァ!!!………って言うかアレ犬なのぉぉおお!?」
ガタイのいい男はアスラの頭を片手で鷲掴みにし、力任せに握り潰そうとする。それと同時にあのオレンジの生物が犬だと判明した。
アスラは抵抗するように両手でそれを引き離そうとするが、男の力が強すぎて一向に離れる気配がない。
「10………9………8………7……」
「えぇぇぇえ!?なんのカウントダウン!?」
「オマエが死ぬまでのタイムリミット」
「いやぁぁぁぁぁあ!!!」
殺意が凄まじ過ぎてどこまで本気なのか定かでは無いが、さらに握力を上げ、アスラの頭を握り潰そうとするガタイのいい男。アスラは本気で恐怖を覚える。
「楽しそうだな、アスラ。じゃあオレはオウドウ都へ向かうぞ」
「いや、待ってくれロン!!助けてくれぇぇえ!!」
「自業自得だ」
「この薄情者ぉぉおお!!!」
見兼ねたロンがその場から逃げるように立ち去ろうとする。クールな言葉を並べてはいるが、その声色からは若干アスラと同じ目には会いたく無いと言う念が伝わって来て、
しかし………
「アスラ………ロン?……オマエらの名前か?」
「え?……あっはい。そうっすけど……」
「………ほぉ?」
アスラとロンの名前を聞くなり、ガタイのいい男はアスラの頭を離し、カウントダウンを中止した。そして不気味な角度で口角を上げ、微笑むと、オレンジの毛色をした犬??を吊るしていた縄を解き、解放した。
態度の唐突な急変に戸惑うアスラとロン。さらにガタイのいい男は懐から煙草を取り出し、それに焚き火を利用して火をつけ、吸い始める。そしてその後直ぐにとんでもない事を口にし………
「よしオマエら、この犬を連れて行け」
「えぇぇぇえ!?」
「むえっ!!むえっ♪」⬅︎ツッテケテー
男が偉そうな態度でそう言った。どうやら別に動物を虐めていた事に対しての反省はしていないようである。が、そのオレンジの犬??はこの男の言い分に賛成しているのか、喜んでアスラとロンの周囲を自由になった短い脚でツッテケテーと駆けていた。
「因みにオマエ達に拒否権は無い」
「えぇぇぇえ!?」
困り果てるアスラとロンをさらに威圧して脅すガタイのいい男。
「ってか、さっきまでコイツ食おうとしていたのはなんだったんすかァァァ!!」
「うるせぇ、拒否権は無いっつってんだろ小僧!!今度こそ頭潰されたいか!?」
「嫌です!!精一杯お世話させていただきまァァァァァァス!!」
(……恐怖がアスラの身体に植え込まれている………)
アスラは『別になんの否定もしてねぇぇぇえ!!』とも思ったが、さっきの経験により、この男に逆らったら命は無いと言う事を学習したため、この変な犬??の世話を引き受けてでもいいからなんとかこの場を早めに締め括ろうと、これ以上の口答えをせず、綺麗な角度で頭を下げた。
「むえぇぇぇぇぇぇぇええ!!!」
「ってオイィィ!!頭の上に乗るなァァァ重てぇ!!」
そんなお辞儀で下げたアスラの頭の上にあのオレンジの犬??が元気に飛び乗って来て……
「むえぇぇぇぇぇぇぇええ♪♪♪」⬅︎髪の毛あむあむ
「髪の毛あむあむするなァァァァァァ!!」
オレンジの犬??はアスラの頭の上で灰色のツンツンヘアーを甘噛みし始めた。その犬??はたいへんご満悦な態度である。さっきまで逆に食べられそうになっていた生き物には到底見えない。
「わっはっはっは!!楽しそうじゃねぇか!!……そんじゃ、元気でやれよ、クソ犬、『スーミ村』の小僧供!!」
「ハイィィィィィイ!!なんか色々すんませんしたァァァァァァ!!」
「……??」
そう言ってオレンジの犬??を残し、タバコを片手に去っていくガタイのいい男。アスラはもう関わりたくなかったからか全力で謝った。対してロンは彼の最後に言い残した言葉に少し引っ掛かった。
(あの人、なんでオレらがスーミ出身って分かったんだ?)
そう、
アスラとロンは一言も自分達の出身地を口にしてはいない。それなのにもかかわらず、あの男はそれをズバリ言い当てた。
この時、ロンはどうでも良い事だったのもあって、特に言及はしなかった。
こうして、アスラとロンは旅に1匹の奇妙なオレンジのアホ毛犬??を連れて行くことになった。
******
「うぉぉぉぉお!!!…デッケェェ!!…そして広ぇぇえ!!」
「アスラ、うるさい」
「でも見ろよロン。あんな鉄の建物なんてスーミには無かったよな!?」
「スーミの家は大体木かレンガだからな」
あの奇妙な出会いから3日後、アスラとロン、そしてオレンジの犬??はようやく目的地である『オウドウ都』への到着した。アスラはその街の巨大さ、広大さにテンションが高くなっていた。
オウドウ都は仮にもこの国の中心部。人も多ければ建物も巨大になるのはある意味自然な現象であるが、田舎者である彼らにとってはやはり感動的な光景であったのだろう。
「あのデッカイ塔が三王と頂点王が住う場所みたいだな」
ロンがBパッドのナビシステムを視認し、その塔を指差しながら落ち着いた口調でアスラに言った。
「へぇ〜〜じゃああそこはいずれオレの根城になるわけだ!!」
「………それはあり得ん。今日オレ達がバトルするのはあそこじゃなくて向こうのコロシアムだ」
アスラとロンの夢は今の頂点王、つまり『シイナ』を倒し、新しい頂点王になる事。だが、それは1人しかなれない。だからこそ彼らは昔から競い合っていた。「どっちが先に頂点王になれるのか?」と………
今日はその第一歩がある場所、オウドウ都コロシアムにて、新人交流戦が行われる。アスラとロンは早速そこへと足を進めていった………
「ってか、オマエいつまでオレの頭に乗ってんだ?」
「むえっ♪…むえむえ!!」
「いや、何言ってんのかわかんねぇ……でも機嫌が良いのだけはなんか伝わるな」
因みに、オレンジの犬??は1日のほとんどをアスラの頭の上で過ごしていた。上機嫌に尻尾を振っている事から、どうやらすっかりそこがお気に入りの定位置になったようである…………
******
ここはオウドウ都のコロシアム。横幅が広大、形が円形であり、上空が空いている。コロッサスと言えば連想がしやすいか………
そんな場所にアスラ達含めた総勢百数人を超える新人挑戦者が集っていた。彼ら皆が今日からカラーリーダーに挑む挑戦権を得る事ができるのだ。
「いや〜〜遂にオレ達の挑戦が始まるんだなロン!!」
「………あぁ!!」
「むえっ♪」
期待で胸を膨らませるアスラとロン。今までこの時のために努力、特訓をし、日々腕を磨いて来たのだ。絶対に頂点王になると言う意気込みがそこから伝わってくる。
その言葉の意味を理解しているのか、アスラの頭の上に鎮座しているオレンジ犬??は嬉しそうに尻尾を振りながら鳴き声を上げた。
が……
「……見ろよアレ、『コモン』だぜ」
「見窄らしいよな〜〜なんであんな薄汚いのにまで平等に栄誉ある新人交流戦に参加させるんだよ」
「でも片方はかっこよくない?」
周囲から2人を非難する声が聞こえて来る。しかもわざと彼らに聞こえるようにだ。
身分が低ければ低い程差別が大きくなる世界だ。彼らにとって最底辺のコモンであるアスラとロンはその身分、身なりだけで価値が下がるのだろう。当然同じ人間ではあるはずなのに…………
しかし……
「あっはは!!酷い言われようですな〜〜まぁ慣れてるけど……てか、聞いたかロン、『片方はかっこよくない?』だってさ!!残念だったな!!」
「いや、アスラそれは……まぁいいか」
『それは多分オマエじゃなくてオレの事だ』と言いかけるロンだったが、そんな事言ったら自分が自意識過剰に思われるため、真実を敢えて隠した。まぁ、側から見てもイケメンで長身のロンとは違い、背が低くて声が大きいアスラは女性にモテる要素がほぼ存在しないので、わざわざ口にしなくても一目瞭然なのだが………
それはともかくとして、アスラとロンは周囲の自分達を蔑んだ声など全く気にしていなかった。元々貧民で下民のコモンである彼らは上の人間達に差別されるのは日常茶飯事、慣れていたのだ。だが、それでも彼らの器の大きさは只者では無いのは確かであるが………
「むえっ!!むえむえっ!!むえぇぇぇぇぇぇぇええ!!!」⬅︎プンスカ!
「おっ、『ムエ』…オマエ怒ってくれてるのか?」
オレンジ犬??がアスラの頭の上で周囲のアスラとロンを非難するような言葉に腹を立てたように威嚇の鳴き声を上げる。まぁ、それでも可愛さは抜けないが………
「『ムエ』?」
「あぁ、コイツの名前!!呼びやすいだろ!!コイツ『むえ』って鳴くしな!!」
アスラはロンの知らぬ間にオレンジ犬??に「ムエ」という名前を付けていた。この3日間でとても仲良くなっていた事が伺える。
「いつ始まるんだろうな!!交流戦!!楽しみだぜぇ!!」
アスラは今か今かとそれが始まらないかと待ちわびていた。
今、新人達がコロシアムに集まっているのはその交流戦が始まるのを待っていたのだ。本来ならばこれを『仕切る上位層の人間』が毎年現れるはずなのだが、今回はその様子が一切見えなかった。
と、そんな時だ。誰かがアスラとロンに声を掛けてきたのは………
「ブッハハ!!オマエらがアレか!!…世間知らずで身の程知らずのコモンか??」
「ん?……だれ?」
「オレは『トミオ・ブスジマ』!!…オマエらと同期の新人だ!!…ブッハハ!!」
現れたのは『ブスジマ』と名乗る体型太めの男。所々で出てくる『ブッハハ』という独特な口癖が妙に頭に残る。どうやら彼も新人のようであるが、その言動、態度、振る舞いから、アスラとロンを良いような目で見ているとは思えなくて………
「……同期!!…なんて甘美な響きなんだ……!!」
だが、アスラにはそんな嫌味は通じない。ブスジマの言った『同期』という言葉の嬉しさに何故だか感動を覚えていて………
「オレ、スーミ村のアスラ!!…よろしくなブスジマ!!」
さらには好意的に握手まで求めようと手を差し伸べる程だ。ブスジマはそんなアスラの様子に鼻で笑いながら手をどかし、嘲笑するように………
「ブッハハ!!なに馴れ馴れしくしてんだ。聞こえなかったか?オマエ達ドブネズミはこの場には相応しく無いって言ってんだよ!!」
「………」
蔑んだ目でアスラを見ながら汚い言葉を押し付けるブスジマ。周囲の者達は彼の行為を咎めるどころかさらに言ってやれと言ってくる次第である……
身分の違いだけでここまで差別されるのがこの世界の暗黙の了解なのだ。アスラとロンはただ単に『コモン』と言う理由だけで非難や差別されてしまう。
「そんな生意気な奴らはこのオレ様がボッコボコにしてクソボロの村にお返ししてやるぜ、ブッハハ!!」
まだまだイキルブスジマは懐から自身のBパッドを取り出し、それをアスラに向けてセットする。これにより、アスラが応答したら直ぐにでもバトルスピリッツが開始されることになった。
「へへ……良いぜ、相手になってやるよ!!」
「むえっむえっ!!」⬅︎アスラの頭から降りる
アスラが当然これを断るわけがなく、自信満々な顔つきのまま、Bパッドをブスジマに向けてセットした。ムエは自分が邪魔になる事を咄嗟に理解したのか、アスラの頭の上から飛び降り、邪魔にならないようロンの足元までツッテケテーと駆け出した。
そして………
「ブッハハ!!行くぜぇ!!」
……ゲートオープン、界放!!
大勢の同期の新人達が見守る中、アスラとブスジマのバトルがコールと共に幕を開ける。そしてこれは当然交流戦でのバトルではなく、単に普通の野良バトルが始まっただけであり、この後も普通にその交流戦でのバトルは行わなければならない。
今回の先行はブスジマだ。勢い良く自分のターンを行なって行く。
[ターン01]ブスジマ
「ブッハハ!!メインステップ、オレはボーン・バードを召喚!!」
ー【ボーン・バード】LV1(1)BP1000
ブスジマが早速Bパッドに叩きつけながら召喚したのは骨のみとなった鳥型のスピリット、ボーン・バード。
「召喚時効果でデッキの上から3枚を破棄し、1枚ドロー………ブッハハ!!これでエンドだ!!…さぁ、惨めな姿を晒しな!!」
手札:5
場:【ボーン・バード】LV1
バースト:【無】
できる事を全て終え、そのターンをエンドとするブスジマ。次はアスラのターンだったが………
ここでブスジマがある事に気づいた。
「ブッハハ!?…オマエソウルコアはどうした!?!」
そう、それはアスラのBパッドにソウルコアが置かれていないという事だ。
「ん?…あぁ、オレ生まれつきソウルコアが出せねぇんだ」
アスラがそれについて説明した。
アスラは生まれつき、ソウルコアが出せない体質の人間。どんなに欲しても、どんなに体を鍛えても、どんなにバトルの腕を磨いても彼のBパッドからはソウルコアが生み出されないのだ。
アスラの説明に沈黙する周囲の新人達。だが、そんな時間はほんの束の間だった………
「ブッ!!ブォッハッハッハッハ!!!?!……はぁ〜!?ソウルコアが出せない〜〜!?なんだそりゃ!?冗談抜かすなよ〜〜!!」
ブスジマが腹を抱えて笑い出した。そしてそれを起点に周囲の新人達もアスラを笑い出した。それもそのはずだ。ただでさえ落ちこぼれのコモンの人間に、まさかソウルコアも生み出せないバトラーがいるなど、誰が考えたか……
側から見たら哀れでしょうがない。笑いの対象以外の何者でもない。
「いや〜〜全く参ったもんだよな〜〜はっはっはっは!!」
まぁ、当の本人はそんな事全く気にしてなかったのだが………
確かに、ソウルコアが欲しいと思わなかった時はない。が、あの龍騎を得てからと言うもの、アスラは誓っていた。『ソウルコアを使わなくてもなくても最強になってみせる』と…………
「よし!!オレのターンだな!!」
「ブッ、あぁ、オマエのターンだ……精々もがいてくれよ〜」
ブスジマがアスラに対しての笑いを必死に堪えながら改めてアスラにターンを渡す。アスラはそれを聞くなり勢い良くターンを進め………
[ターン02]アスラ
「メインステップ、オレはドラゴンヘッドとシャムシーザーをLV1と2で召喚!!」
ー【ドラゴンヘッド】LV1(1)BP1000
ー【シャムシーザー】LV2(3)BP3000
アスラが勢い良くBパッドにカードを叩きつける。呼び出されたのはドラゴンの頭部と翼のみを残した低コストスピリットのドラゴンヘッドと、背に刺々しい刃を生やす赤いトカゲのようなスピリット、シャムシーザー。
「さらにネクサスカード、ミラーワールドを配置する!!」
ー【ミラーワールド】LV1
「!!」
アスラがネクサスカードであるミラーワールドを配置した。すると、そうした途端に全ての景色が鏡写しになったように反転した。
「な、なんだこれ、左右反対になったぞ??」
見たこともないカードにたじろぐブスジマや周囲の新人達。これはアスラとロンに与えられたライダースピリットにしか与えられないカードであるため、知らないのは当然である。
「っしゃぁ!!アタックステップゥゥゥ!!…2体のスピリットでアタックだッッ!!」
「……ライフだ。持っていきやがれ!!……っ!!」
〈ライフ5➡︎4➡︎3〉ブスジマ
アスラの指示で飛翔するドラゴンヘッド。そして地を這って進むシャムシーザー。2体はそれぞれ1つずつ体当たりでブスジマのライフバリアを粉々に粉砕した。
「ターンエンドだ!!」
手札:2
場:【ドラゴンヘッド】LV1
【シャムシーザー】LV2
【ミラーワールド】LV1
バースト:【無】
できる事を全て終え、爽快なターンをエンドとしたアスラ。次は再びブスジマのターンとなる。
[ターン03]ブスジマ
「メインステップ、ブッハハ!!馬鹿め、何も考えずにフルアタックとは、知らないカードを使うとは言え、やはりコモンでソウルコアが使えない出来損ないだな!!……オレは2体目のボーン・バードを召喚!!…デッキから3枚のカードを破棄し、1枚ドロー!!」
ー【ボーン・バード】LV1(1)BP1000
2体目のボーン・バードを展開し、その手札の枚数を維持するブスジマ。さらにまだ動くと言わんばかりに手札のカードを1枚抜き取り………
「ネクサスカード、ダークタワーを配置!!」
ー【ダークタワー】LV1
「!!」
ブスジマの背後に漆黒の色をした塔が配置された。その塔から放たれる異質な気配はスピリットの進化を封じ込めるものであって………
「このダークタワーがある限り、オマエのターン中、お互いに【煌臨】できず、ノーコスト召喚ができない!!…まぁ、ソウルコアが使えないオマエには【煌臨】の無効なんて意味ないけどなブッハハ!!」
ソウルコアの使えないアスラの前では【煌臨】の封印は無意味だというのに、効果の説明を誇らしげな表情で言い放つブスジマ。どう考えてもアスラに対する嫌味だ。
「でもってオレはこれでターンエンドだ!!」
手札:5
場:【ボーン・バード】LV1
【ボーン・バード】LV1
【ダークタワー】LV1
バースト:【無】
「あれ?アタックしねーの?」
「ブッハハ!!愚問だな!!オマエくらいのレベルのバトラーなんてまだアタックしなくても勝てるんだよ!!」
アタックをして来ないブスジマに対してアスラは疑問符を浮かべる。そんな彼は自信満々でその理由をペラペラと述べた。完全にアスラを舐めてかかっている。
次は再びアスラのターン。今一度ターンシークエンスを進行させて行く。
【ターン04】アスラ
「メインステップ!!ミラーワールドのLVをアップだ!!」
ー【ミラーワールド】(0➡︎2)LV1➡︎2
アスラはリザーブの少ないコアでミラーワールドのLVを上昇させる。
「そしてそんままアタックステップゥゥゥ!!シャムシーザー!!もっかい頼む!!」
「ライフだブッハハ!!……っ!!」
〈ライフ3➡︎2〉ブスジマ
シャムシーザーが再び地を這っめ進み、ブスジマのライフバリアに突撃した。そのまま体当たりで彼のライフ1つを砕く。
「ターンエンドだ!!」
手札:3
場:【ドラゴンヘッド】LV1
【シャムシーザー】LV2
【ミラーワールド】LV2
バースト:【無】
アスラのこのターンはドラゴンヘッドをブロッカーとして残してのエンドとなった。次はブスジマのターンだ。勢い良くターンシークエンスを進行させて行く………
[ターン05]ブスジマ
「ブッハハ!!メインステップ、一気に畳み掛けてやるぜ〜〜…オレは手札からマジックカード、リターンスモークをソウルコアを支払って使用する!!」
「!!」
ブスジマはソウルコアが使えないアスラに見せつけるようにそのカードを使用した。それはソウルコアを使用する事で力を120%発揮できるカードであって………
「この効果により、オレはコスト4以下のスピリットを召喚する!!さらにコストの支払いにソウルコアを使った際、代わりにコスト6以下のスピリットを召喚できる!!」
「!!」
「来い、オレのエーススピリット!!…アルケニモン!!」
ー【アルケニモン】LV3(5)BP10000
ブスジマの場に紫色の煙が立ち上がる。その中から勢い良く飛び出してきたのは『デジタルスピリット』と呼ばれるやや特殊なスピリット………下半身がクモのような姿をした完全体のアルケニモンだ。
ブスジマはボーン・バードの効果でトラッシュを増やし、リターンスモークの効果で強力なスピリットを呼ぶための準備をしていたのだった………
「おぉ、デジタルスピリットか!!」
「ブッハハ!!そうだ!!羨ましいだろ〜〜!!」
「羨ましい!!」
デジタルスピリットの登場により興奮するアスラ。凄くこのバトルを楽しんでいるのが伺える。これは自分達コモンを惨めな者にするためのバトルだと言うのにだ。
そして『デジタルスピリット』とは、『ライダースピリット』と並ぶカードカテゴリの総称である。『ライダースピリット』程ではないが、それなりにレアなカードもあり、市販に売られているものや、『マスター』や『エックス』などの上位の人間達で代々受け継がれたりしている。
因みに、このアルケニモンは市販のデジタルスピリットであり、ブスジマの身分は所謂平民である『レア』だ。
「ブッハハ!!バーカ、コモンで、しかもソウルコアも使えないオマエにはすぎたカードなんだよぉぉおお……アタックステップ、アルケニモンでアタック!!」
そんなブスジマが呼び出したアルケニモンが戦闘態勢に入る。そして、アルケニモンにはこのタイミングで使える効果がいくつか存在し………
「先ず1つ目のアタック時効果!!…疲労状態のスピリット1体を破壊し、コア1つをアルケニモンに追加する!!」
「!!」
「ブッハハ!!対象は当然シャムシーザーだ!!」
アルケニモンが上半身にある手から闇のエネルギー弾を生み出し、それを疲労しているアスラのシャムシーザーに向かって投げつけた。避ける術がなかったシャムシーザーはそれに被弾し、爆発してしまった。
「そして2つ目のアタック時効果!!…紫1色のネクサスカードがある時、デッキの上から2枚をオープンし、その中の完全体スピリットを召喚できる!!」
「なに!?」
ブスジマの場には紫1色のダークタワーがあるため、この効果を発揮。カードがオープンされる………そしてその中には紫の完全体スピリットである『マミーモン』のカードが確認できて………
「ブッハハ!!…大当たりだぜぇ!!…よってこのマミーモンを召喚する!!……アルケニモンのコアから確保してLV2だ!!」
ー【マミーモン】LV2(3)BP12000
LV2で召喚するためにアルケニモンのLVが3から2へと下降されるが、ダークタワーの頂点からミイラのように包帯だらけのスピリットが場へと飛び降り、アルケニモンの横に着地した。それは紫の完全体スピリット、マミーモン。ブスジマのもう1体のエースと呼べるスピリットである。
「ブッハハ!!アルケニモンのアタックは継続しているぞ!!」
「ライフだ!!……っ!」
〈ライフ5➡︎4〉アスラ
アルケニモンがアスラ目掛けて走り出した。そしてそのまま鋭い爪でアスラのライフ1つを切り裂いた。
「ブッハハ!!まだまだ続くぜ〜〜!!マミーモンでアタック!!……その効果でオマエのドラゴンヘッドからコア2つをリザーブに置き、消滅させる!!」
「!!」
マミーモンが手に持っている機関銃を上空にいるアスラのドラゴンヘッドに向けて連射する。アスラの場にいる唯一のブロッカーであったドラゴンヘッドはたちまち撃ち抜かれ、消滅してしまった。
「ブッハハ!!さらにマミーモンは場にアルケニモンがいる時、BPをプラス5000され、紫のシンボルが1つ追加される!!」
「!!」
マミーモンはアルケニモンがいる事によって真価を発揮するスピリット。このアタックを受ければアスラのライフは一気に2点削られる事になる。もっと言って仕舞えば残った2体のボーン・バードアタックと合わせて全てのライフを破壊されてしまう可能性すらある。
「やるな!!……でも、ここは凌がせてもらうぜ!!フラッシュマジック、ドラゴフレイム!!」
「ブッハハ!?」
「この効果により、BP3000以下のスピリット全てを破壊!!…つまり、BP1000のボーン・バードは破壊される!!」
アスラの場より放たれる炎の弾丸。それがブスジマの場に存在する2体のボーン・バードを焼き尽くした。
「マミーモンのアタックはライフで受けてやるよっ!!……っ!!」
〈ライフ4➡︎2〉アスラ
マミーモンはアスラのライフにも機関銃を発泡する。アスラのライフは2つ撃ち抜かれ、残りは2つとなった。
が、先のマジックによりボーン・バードは消えた。ブスジマがこのターンのみでアスラのライフをゼロにするのは不可能になり………
「くっ……思ったよりしぶといな。ゴミのコモンの分際で………ターンエンドだ」
手札:4
場:【アルケニモン】LV2
【マミーモン】LV2
【ダークタワー】LV1
バースト:【無】
致し方なくそのターンをエンドとしたブスジマ。次はマジックで彼の攻撃を凌いだアスラのターンだ。そのターンシークエンスを進行させて行く………
[ターン06]アスラ
「メインステップ………」
メインステップ開始直後、アスラは徐に3枚の手札の中から1枚のカードを引き抜いた………
………そのカードはブスジマ含む周囲の新人挑戦者達を驚愕させるには余りにも十分過ぎるカードであって………
「オレは……仮面ライダー龍騎を召喚!!」
ー【仮面ライダー龍騎】LV2(2)BP4000
「な……なにぃっ!?ライダースピリットォ!?!……何故コモンの人間がそんなカード持ってやがんだ!?」
一瞬にしてアスラの場に現れたのは赤いライダースピリット、その名を龍騎。
ソウルコアが使えなくても頂点王になる事を諦めなかったアスラが努力の末手に入れた、『ソウルコアを必要としないライダースピリット』だ。
ざわつき始めるロンを除いた新人達。それもそのはずだ。何せ、散々蔑んできたソウルコアさえ使う事ができないコモンの人間が唐突に秘宝級のレアカードを召喚してきたのだから………
「召喚時効果、オレはカードを3枚オープンし、対象のカードを手札に加える……『ファイナルベント』を加えて、残りは破棄!!」
「な、何かの間違いだろ??………あのコモンの人間が『ライダースピリット』に選ばれるわけがない!!」
そう、ブスジマの言う通り、通常ならば『エックス』か『マスター』といった上位の人間しかライダースピリットに選ばれない。アスラやロンの『ライダースピリット』は例外中の例外といって差し違えなかった………
「そ、そうだ!!どちらにせよあのソウルコアも使えない奴が召喚したんだ!!仮にライダースピリットだとしても強いわけがない!!……ほら、どっからでもかかって来い!!返り討ちにしてやるぜブッハハ!!」
アスラの龍騎を勝手に弱いと決めつけ、開き直るブスジマ。その自信にも訳があった。彼の手札には防御用の白マジック、自軍のスピリット全てを回復させる『ピュアエリクサー』があるからである。これにより、2体のデジタルスピリットを回復させ、アスラの攻撃から身を守る事ができるのだ………
しかし………
「おう……んじゃ、行くぜ………!!」
アスラはブスジマの言葉に対して静かにそう返答すると、ターンをさらに進行させていき………
「アタックステップ!!…龍騎でアタックする!!」
「はぁ!?…終わったな!!それだけではオレのライフは全て破壊できない!!」
「それはどうかな?…ミラーワールドの効果!!龍騎がアタックした時、カードを1枚オープンできる。それがアドベントカードの時、ノーコストで発揮する事ができる!!」
「!?」
アスラはアタックステップに移行し、ミラーワールドの効果を発揮される。そしてその効果でオープンされたのはアドベントカードである「ストライクベント」のカード。見事に的中させた。
「っしゃぁ!!…このストライクベントを発揮!!……BP8000以下のスピリット、アルケニモンを破壊して1枚ドロー!!」
「!!」
龍騎が腰にあるベルトに装着されているカード束から1枚引き抜き、それを左手の龍の頭部を象ったバイザーへと装填。
すると……
……『ストライクベント!』
という無機質な音声と共に、龍騎の右腕に赤い龍の頭部を模したガントレットのような武器が取り付けられる。
龍騎はその右腕をアルケニモンへと向け、龍の口から爆炎を放つ。勢いよく放たれたそれはアルケニモンを瞬く間に包み込んで、焼き尽くした。
「龍騎のアタックは継続中!!」
「っ……馬鹿かオマエ!!返り討ちにするって言っただろう??…フラッシュマジック、ピュアエリクサー!!…効果によりマミーモンを回復させる!!」
「……!!」
ー【マミーモン】(疲労➡︎回復)BP12000➡︎7000
ブスジマが咄嗟に放ったマジックによって、マミーモンは回復状態となる。アルケニモンの破壊に伴って、BPが大幅にダウンしているものの、龍騎には未だに勝っていて………
「さっさと古びた故郷に帰りな!!底辺で哀れなコモン!!……オレは適当にカラーリーダーを倒して、『カラーカード』を売って、金儲けて、適当に良い思いしとくからよ〜〜!!」
「………」
カラーリーダーに勝つ事によってもらう事ができる『カラーカード』は売ることによって相当な金額がもらえるのだ。もちろん、売って仕舞えば三王に挑む事は出来なくなる。挑戦するには6枚の『カラーカード』を持参しなければならないからである。
まあ、逆に『カラーカード』を購入することはできない。お金だけで三王に挑む事ができるのが可能になってしまうのが理由だ。
カラーリーダーに挑む挑戦者なんて、大半はそんな金儲けが目的だ。だが、少なくとも、この場にいるアスラとロンは違う………
「フラッシュマジック……『ファイナルベント』!!」
「!!」
龍騎が再び腰のベルトからカードを1枚引き抜き、左手のバイザーにそれを装填…………
………『ファイナルベント』!!
と、また無機質な音声が流れた……
龍騎の背後に赤き龍が身体を唸らせ、咆哮を上げながら現れる。
「この効果によりBP15000以下のスピリット、マミーモンを破壊!!」
「はぁ!?」
「ドラゴンライダーキックッッ!!」
高い脚力を活かし、赤き龍と共に上空へと跳び上がり宙を舞う龍騎。そして、マミーモンへと狙いを定め、直後に繰り出される赤い龍の口内から放たれる火炎弾と共にキックを放つ。マミーモンはその強烈な一撃を受けて堪らず爆散してしまう。
「ブッハハ!?!…アルケニモンに続いてマミーモンまで!?」
「さらにファイナルベントの追加効果!!…龍騎に赤のシンボルを1つ追加する!!」
「なにぃ!?」
よって2つだ。今の龍騎は一度のアタックで2つのライフを破壊する事が可能となった。
ブスジマのライフも残り2つ………終わりだ………
ブスジマの眼前まで接近した龍騎が右の拳に赤い炎の力を溜め込み………
「行け、龍騎!!」
「ぐっ……ブッガァァァァ!!?!?!」
〈ライフ2➡︎0〉ブスジマ
……ピー
極限まで溜められた龍騎の拳がブスジマのライフを全力で殴り壊す。彼のライフがゼロになった事によって、Bパットから負けを知らせるブザーの音が鳴り響いた………
「ブッ……ハハ………ハ……」
ブスジマはアタリどころが悪かったか、軽い脳震盪で気を失っていた………
何はともあれ、勝者はアスラだ………身分は最底辺のコモンで………しかもソウルコアが使えない、あのアスラが………圧倒的な実力差を見せつけて勝利して見せた………
「……アスラ、オマエに勝てるのはオレだけだ……!!」
「むえぇぇぇぇぇぇぇええ!!!」⬅︎嬉しい
まさかのコモンの勝利により、唖然とするロンを除いた新人達。そんな中ロンはその光景を微笑ましく見つめながら己のライバルに対してそう呟いた。ムエもアスラの勝利を祝うように鳴き声を上げていて………
オレは適当に良い思いするためにカラーリーダーにバトルを挑むんじゃねぇ!!……死ぬ気で頂点王になるために挑むんだ!!
バトルの終了に伴い、Bパットが強制的に機能を停止させ、龍騎が場からデジタルの粒子となって消滅した直後、アスラは気を失って耳も傾ける事ができないブスジマに大きな声で言った。
「頂点王って……アイツ、コモンのくせになに言ってんだ……?」
「身の程を知れっての、頭おかしいんじゃね?」
アスラがコモンなのに頂点王となると言い出した事によって、さらに周囲の新人達がざわつき、困惑し始める。
「うるせぇ!!ざわざわすんな!!…オレが頂点王になるっつったらなるんだァァァ!!」
アスラが騒がしくなった周囲へと言い放つ。誰がなんと言おうと、頂点王になる夢を諦めるつもりはない。そんな嘘偽りの無い本音が周囲にも不本意ながら伝わって………
……と、そんな時だ。
「……ソウルコアも使えないのに最強の頂点王になるね〜〜……また妙なのが現れたもんだな………」
「っ!!」
聞こえてきたのは男性の図太い声……
その声のする方へと思わずアスラを始めとした新人達は首を傾けた………
すると、そこにはアスラにとって忘れられないあの人物がいて………
「……と思ったらまたオマエか、小僧!!」
「あ!!…あん時の変なオッサン!!」
「誰がオッサンだ、オレは29だ。殺すぞ!?」
「すんませんしたァァァ!!」
最早反射的に誤っている。3日経った今でもあの日の恐怖が体の奥深くで焼き付けられている証拠だ。
そう、そこに居たのは3日前、アスラとロンにムエの世話を無理矢理押し付けた強面で老け顔で、筋骨隆々なあの男だった。
「って、そう言えばなんでアンタがこんなとこにいんだ!?同期じゃないだろ??」
率直な疑問だった。アスラはその男に何故新人挑戦者でもないのに交流戦が行われているコロシアムにいるのかを聞いた。が、次にその男からでた返答はとんでもないものであって………
「あぁ!?…そりゃオマエ、オレが『三王の1人、テンドウ・ヒロミ』だからに決まってるだろ。毎年誰かがここのバトルを仕切らなきゃ行けねぇんだよ」
「……え??」
アスラは今の言葉に耳を疑った………
(え??なに??三王??……三王って言ったら、頂点王に挑む前に挑む、一昔前では誰も敵わなかった最強のカードバトラーの3人組。………このオッサンがその1人か………)
ふ〜〜ん……
「って………えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええええ!?!?!」
信じられない事実に驚愕したアスラの巨大な声がコロシアム中にこだました。
そう、あの日、アスラとロンに無理矢理謎のオレンジ犬??であるムエを預けたこの男こそ………
この国を代表するカードバトラーである三王……
その一柱………
名を『テンドウ・ヒロミ』
ー…
「ソウルコアが使えない??……初めて聞いたわ……そんな小ネズミ」
一方、コロシアムの人集りから外れた物陰では、肩にかかった艶やかなブロンドヘアを片手で"ファサッ”となびかせながら、そこには誰もいないと言うにもかかわらず、『自分は偉い』と言わんばかりに上目遣いをしていた少女が一人………
アスラを見下すような態度で見つめる彼女はいったい………
《キャラクタープロフィール》
【ロン】
性別:男
年齢:15歳
身長:176cm
身分:コモン
使用デッキ『仮面ライダーナイト』
好きなモノ:シイナ
概要:アスラの幼馴染みにして、最大のライバル。天才肌のイケメンで、物心付いた時から『仮面ライダーナイト』を所有していたという。バトルの腕前もアスラと違って天才クラス。性格もほぼ真逆。
黒髪でやや癖毛。垂れ目。
《用語設定》
【スーミ村】
国の端に位置する小さなコモンの村。捨て子であるアスラとロンが育った村でもある。『ハシイモ』と呼ばれるなんとも言えない味の芋の名産地。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました!!
タグにもある通り、ポケモンジムシステムという事で、
『カラーリーダー』はジムリーダー
『カラーカード』はジムバッジ
『三王』は四天王
『頂点王』はチャンピオンみたいな感じだと考えておいてください!!
そしてそんな現頂点王は前作の主人公である椎名です。ただ、この作品においての椎名は『椎名』ではなく、『シイナ』ですので、顔や見た目は全く同じでも別キャラ扱いをさせていただきます。
謎のオレンジ犬??ムエは可愛さ全開のもふもふキャラです。一応メスの設定です。アイツに限っては「むえ」としか口にできないので、ムエだけはたまにわかりやすくするために「」の横に⬅︎でなんか付け加えます。